原水禁大会 2023年被爆78周年原水禁世界大会2023年原水禁大会

8月9日、爆心地公園で核も戦争もない世界の実現をあらためて誓う 「被爆78周年原水爆禁止世界大会・長崎大会」

2023年08月10日

「被爆78周年原水爆禁止世界大会・長崎大会」は、台風接近により9日の日程をとりやめました。いっぽうで、8月9日の原爆投下による犠牲者・被害者の苦しみと悲しみの大きさと重さを、決して忘れることのできないものとする私たちの原点に立ち、すべての原爆犠牲者に対し哀悼の意を表するため、天候を注意深く見定めたうえ、藤本泰成・共同実行委員長、米村豊・副実行委員長、谷雅志・事務局長などの実行委員会役員が爆心地公園を訪れ、それぞれ追悼の思いを込めたあいさつを行ったのち、原爆投下時刻に合わせ黙とうしました。

(追悼のことばを述べる藤本泰成・共同実行委員長)

(黙とうを捧げる役員一同)

8月9日という大切な日に、多くの参加者の皆さんといっしょに犠牲となったすべての人びとを追悼し、あらためて原水禁運動の前進に向けがんばる決意を確認しあうことについて、本年は残念ながら断念せざるを得ませんでしたが、これからの一年間、職場・地域でのとりくみをいっそう強化しながら、来年は長崎現地でそれぞれの現場で積み上げた成果を持ち寄り共有することができるよう、原水禁大会実行委員会としてもしっかりと準備していきたいと思います。引き続き、核も戦争もない世界をめざして、全国・全世界の人びとと連帯し、がんばっていきましょう。

以下はほんらい「被爆78周年原水爆禁止世界大会・長崎大会」閉会総会において、谷事務局長が提起する予定だったものです。ここに掲載し、長崎大会の意義と成果を確認したいと思います。

「被爆78周年原水爆禁止世界大会・長崎大会」まとめ

被爆78周年原水爆禁止世界大会実行委員会
事務局長 谷雅志

長崎大会は、台風6号の影響により、8月9日の閉会総会ならびに平和行進を取りやめる苦渋の決断となりました。これまで原水禁は、8月9日を被爆地長崎で迎えることに重要な意味があることから、対面での開催にこだわって大会を実施してきました。一方で、大会参加者の安全を確保する責任があることから、ぎりぎりまで現地の長崎県実行委員会と協議を重ねてきました。さまざまな想定をしましたが、結論として、閉会総会と平和行進の実施は困難であるということに至りました。開会行事の中でそのことを確認するとともに、8月9日の11時02分に、個々の場所で黙とうにとりくむことを提起しました。

開会行事では、はじめにコロナ禍で活動を制限された高校生平和大使・1万人署名活動実行委員会が製作したピースブックリレーのDVD視聴からはじまり、川野浩一・大会共同実行委員長によるあいさつ、アメリカ・ピースアクションから大会にゲスト参加したジム・アンダーソンさんのスピーチを受けました。その後、「被爆体験者」問題について、当事者である山内武さん、長崎市議会議員の池田章子さんにお話しいただきました。

次に地元の長崎をはじめ全国各地から集まった高校生が壇上に上がり、核兵器廃絶にむけた日常の活動の紹介と、合唱を2曲披露しました。会場全体の温かなまなざしを受けた高校生たちの、今後のさらなる活躍を願うばかりです。基調報告とあわせて、急遽閉会総会が開催できなくなったことから「大会アピール」採択を行いました。開会行事は800人の参加を得て終了しました。

引き続き開催した国際シンポジウムは、「放射能汚染水の海洋放出に反対する」と題して、今夏に強行されようとしている、福島第一原発事故により生じた「ALPS処理水」の海洋放出に反対する各国の市民運動にかかわるみなさんをパネリストに迎え、議論を深めました。

福島県平和フォーラムの角田政志さんからは、「廃炉のために海洋放出はやむなし」とすることは、事故を起こした側の勝手な都合の押しつけであること、漁業関係者の「海をゴミで汚すのはダメなのに放射能がいいわけがない、当たり前のことだ」とする発言が紹介されました。

韓国環境運動連合から参加したキム・チュニさんは、韓国政府は私たちの活動をプロパカンダだ、科学的根拠がないと言うが、未知のものを安全だということは科学的であるとは言えない、と話されました。

オンラインで参加したアメリカ・核のない世界のためのマンハッタンプロジェクトの井上まりさんは、海洋放出は悪い前例を作ることになる、予防原則や人権に基づいた政策を求める、知る権利の保障という明確な観点からお話をいただきました。

同じくオンラインで参加したマーシャル諸島のREACH-MEのデスモンド・ドラチョムさんからは、核戦争・核実験・核事故の被害を受けた者の抱える不安、気候危機や環境の観点から、持続可能な太平洋には今回の海洋放出が強い懸念になることが紹介されました。

それぞれの反対運動を紹介しながら、最後は連帯することで大きな市民運動のうねりを作り出していけるよう、ともにとりくむことを確認し、シンポジウムを閉じました。

2日目は午前4つ・午後2つの分科会を開催しました。

第1分科会では川崎哲さんから核兵器廃絶に向けた世界の動きと国内運動の方向性についての講演を受け、アメリカ・ピースアクションのジム・アンダーソンさん、ミドリ・モローさんからそれぞれの考えやとりくみの報告があり、質疑応答や討論を通して、参加者の日常活動の紹介などがされました。ミドリさんは被爆3世であり、特にアメリカの「平和教育」が実質ほとんど行われていない状況を踏まえ、自身のルーツと合わせて、どう考えていけばよいかを模索している様子が語られました。

第2分科会では飯島滋明さんから、日本国憲法において最も重要なのは13条であり、「個人の命や権利を大切にする」ためには、戦争など起こすことはできないことが明確に指摘されました。佐賀からオスプレイに関わる現地報告、沖縄から基地をめぐる情勢についての現地報告をそれぞれ受けました。

第3分科会では、原子力推進政策と核のゴミ問題について、高野聡さんと末田一秀さんから現状認識と政府方針の誤りについて講演を受けました。寿都町民の会の三木さん・槌谷さんからは、寿都が文献調査を受け入れたことで、住民の分断が進んでいることのお話がありました。文献調査受け入れについて、議会に請願が出されるなどの動きがある対馬から、上原正行さんにこれまでの経緯と現状についてお話しいただきました。

第4分科会では、急きょ講師が山川剛さんから川野浩一さんに変わりましたが、西岡由香さんとお二人から被爆の実相とこれまでの原水禁運動の歴史、被爆者でなくても少しでも思いを寄せることで、被爆について語っていくことの重要性が話されました。

第5分科会では川野浩一さん、川副忠子さんから被爆の実相と原水禁運動の歴史、核兵器に関係する世界の流れなどの話を伺ったあと、被爆二世協の崎山昇さん、平野克博さんから核兵器廃絶に向けた二世三世の役割と、自身の健康にまつわる諸問題について、二世協としての裁判を通したとりくみについて、詳しく説明を受けました。

第6分科会では在間秀和さんから在外被爆者の問題、戦争責任について「平和に対する罪」「人道に対する罪」という観点から、「犯罪」となった第2次世界大戦後の経緯などの説明を伺いました。平野伸人さんからは「被爆体験者」問題とこれまでの在外被爆者支援、残された課題について話していただきました。

台風の影響により実施が心配された佐世保フィールドワーク等の企画についても、地元の多大な協力を得て、予定通り開催できました。本大会と合わせて開催された「ピースブリッジ 2023 in ながさき」等に参加した多くの高校生が分科会にも参加し、真剣に学ぶ姿が見られました。

この間、原水禁世界大会の大きな柱の一つとして「次世代継承」を位置づけてきました。いつの時代であっても、どれだけ未来であっても、自分がどう生きるか、自分で選ぶことができる、当たり前のくらしを引き継いでいくことが重要です。そのために、今できることを考え、工夫してとりくんでいくことが必要なのは言うまでもありません。全国はもちろん世界のみなさんと連帯して、各地域での原水禁運動にとりくむことを確認し、原水禁世界大会を一つの契機ととらえ、また明日からともにとりくんでいきましょう。

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