2023年

被災69周年3.1ビキニデー全国集会を開催しました

2023年03月03日

原水禁は3月1日、静岡市民文化会館において「被災69周年3.1ビキニデー全国集会」を開催しました。コロナ禍によって2020年は中止、2021・2022年はオンラインのみでの開催でしたが、本年については4年ぶりの現地開催としてとりくまれ、全国から約130人の参加がありました。

集会冒頭、原水禁を代表して藤本泰成共同議長があいさつ、ロシア・ウクライナ戦争が続く厳しい状況を確認しつつ、日本も戦争遂行に向けた諸法制の制定がすすむなかだからこそ、ふたたび若者に銃を握らせないためにとりくむことを呼びかけました。また、開催地を代表して静岡県平和・国民運動センターの福井淳会長があいさつに立ち、全国からの参加の下で現地集会を開催できたことに感謝するとともに、核兵器廃絶に向けとりくむ決意を述べました。

続いて「ビキニ事件70年をまえに被爆の実相をみつめなおす」をテーマに東京都立第五福竜丸展示館学芸員の市田真理さんから講演を受けました。

1954年3月1日未明の南太平洋・ビキニ環礁でのアメリカによる水爆実験によって被爆(曝)した第五福竜丸乗組員の運命は大きく翻弄され、たいへんな苦しみを強いられました。とりわけ第五福竜丸無線長の久保山愛吉さんの死は国内外に大きな衝撃を与えました。また、「原爆マグロ」に代表される水産物の放射能汚染という事態も発覚し、原水爆禁止運動が大きく拡がっていく契機となりました。こうした経過を当時の写真や報道をもとにくわしく解説。

そのうえで、第五福竜丸だけが被害を受けたのではないという事実を確認していきました。核実験場にされた南太平洋の島々に住まう人びとは被爆を強制されたうえにまともな医療や補償もなく、移住をも余儀なくされた実態や、第五福竜丸だけではなく当時周辺海域で操業していた漁船が多数あったものの、被災の事実を口に出すこともできず、被害がほぼ覆い隠されてきたこともお話しいただきました。

亡くなるまで証言活動を行っていた故・大石又七さんのエピソードを紹介しつつ、核廃絶を願ったその思いを引き継ぐために私たちにできることとして、忘れないこと・学ぶこと・自分で考えること・伝えることを挙げ、講演を終えました。

静岡選出の高校生平和大使の佐藤希さん・土屋礼生さん・山中このみさんが登壇、このかんの活動を報告したうえで、ビキニ事件を風化させず継承していくことや若い世代として核廃絶に向けがんばる決意をそれぞれ表明しました。また、戦争をさせない1000人委員会・静岡の共同代表である森正孝さんからは、現下の改憲・軍拡強行に反対するとともに、核抑止論の行きつくところは戦争であるとしてともにがんばることを訴えました。

静岡県知事の川勝平太さん、静岡市長の田辺信宏さん、焼津市長の中野弘道さんからのメッセージを紹介したのち、集会アピールを提案し、会場全体で確認し、集会を終了しました。(メッセージおよびアピールは本記事下部に掲載しています)

翌2日、久保山愛吉さんのお墓のある焼津市・弘徳院で墓前祭を開催しました。藤本共同議長と地元・志太平和フォーラム代表の中山亜樹彦さんがあいさつしたのち、参加者全員で久保山さんのご冥福をお祈りし、墓前に花束を捧げました。

集会へのメッセージ

川勝平太さん(静岡県知事)

「被災69周年3.1ビキニデー全国集会」の開催に当たり、原水爆の犠牲となられた方々に謹んで哀悼の意を表します。

私は、平成23年2月23日の富士山の日に「ふじのくに平和宣言」を行い、富士山のごとく美しく平和な姿の社会の建設を誓いました。

これからも、平和の尊さや核兵器の脅威について考え、富国有徳の「美しい“ふじのくに”」づくりに取り組んでまいります。

本日の集会が、人類共通の願いである核兵器のない、戦争のない平和な世界の実現に向けて大きく寄与されますことを、心から祈念いたします。

田辺信宏さん(静岡市長)

被災69周年3.1ビキニデー全国集会の開催にあたり、原水爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧げますとともに、今年も新型コロナウィルス感染症の影響により制約がある中で、多くの方々の御支援・御賛同のもと開催されますことをお慶び申し上げます。

現在も世界中で紛争問題が解決せず、多くのかけがえのない命が奪われている中、核兵器廃絶に向け、なお一層団結し活動を進めておられる皆様の取り組みに、深く敬意を表し、衷心より感謝いたします。

本集会がビキニ被爆の実相を内外に広く伝え、核兵器の非人道性を強く発信し、世界を恒久平和へと導く大きな力となりますことを心より祈念いたします。

中野弘道さん(焼津市長)

「被災69周年3・1ビキニデー全国集会」が開催されるにあたり、焼津市民を代表してメッセージをお送りいたします。

太平洋マーシャル諸島にあるビキニ環礁での米国の水爆実験により、マーシャル島民や近海で操業していた多くの船や船員が被災してから、本年で69年が経過しました。

このことは、世界各国の多くの人たちによる熱心な核兵器廃絶運動にもつながっており、「核兵器のない世界」の実現は、私たちの共通の願いでもあります。

焼津市では、毎年6月30日に核兵器廃絶と恒久平和の実現を訴える「市民集会」をはじめとした平和推進事業を通じて、焼津市民が平和を愛する心を持ち、後世に語り継いでいくよう、取り組んでおります。

また、本市が加盟しています平和首長会議、非核宣言自治体協議会の一員として、共に平和運動を展開し、世界平和の実現のため、引き続き取り組んでまいります。

結びに、新型コロナウイルス感染症による活動制限も徐々に緩和され、通常の日常生活に戻りつつあります。皆様方の活動が、「核兵器のない世界」の実現につながりますことを念願いたしますとともに、御参加の皆様の御健勝と御活躍を心からお祈り申し上げます。

被災69周年3.1ビキニデー全国集会アピール

1954年3月1日、南太平洋・ビキニ環礁でのアメリカによる水爆実験によって、「第五福竜丸」をはじめとする日本の漁船が被爆し、その後、「第五福竜丸」乗組員の久保山愛吉さんが原爆症によって亡くなりました。

私たちはこの被害の実相を継承し、核廃絶の決意を再確認するため、毎年3月1日に静岡での集会を行ってきました。コロナ禍によって一昨年・昨年とオンライン開催としてきましたが、本年は全国から現地に集い、思いをともにすることができたという、その意義を確認したいと思います。

日本の原水爆禁止運動は、まさにこのビキニでの被災を契機にして、大きく拡がったという歴史的経過があります。広島・長崎・静岡の被爆3県を中心とした核廃絶を訴える声は、核の非人道性を明らかにし、被爆の実相を理解するうえで、世界の人びとの心を揺り動かし、核廃絶への道筋を示し続けてきました。

しかし、残念ながら、いまなお核兵器の廃絶は実現していません。昨年2月24日に始まったロシア・ウクライナ戦争は終結を見通すことが難しい状況に陥り、泥沼の長期戦が続いています。このなかではロシアによる核兵器使用の威嚇が繰り返され、原発を攻撃対象とする事態も引き起こされています。また、米中対立も背景に、核兵器の増強や近代化研究が続けられています。

日本においては、「非核三原則」の見直しや「核シェアリング」導入検討が必要だと公言する勢力が、政府与党内部にも登場しています。さらに、「台湾有事」を煽り立て、改憲と軍拡への道へと突き進もうとしています。

こうした状況について、被爆地・広島選出の岸田文雄首相はあいまいな態度に終始しています。5月にはG7を広島の地で開催しようとしていますが、被爆者の核廃絶への思いを利用しながら踏みにじるものと言わざるをえません。まずは戦争被爆国である日本が、率先して核兵器禁止条約(TPNW)に署名・批准し、国際的な信用を得た中で、核保有国に対し、核の先制不使用宣言を求めるなどのリーダーシップを果たすべきです。

国内外の核と戦争をめぐる情勢は厳しいものがありますが、TPNWは発効2周年を迎えた現在、署名92ヵ国(地域)・批准68ヵ国(地域)とさらに拡大を続けています。世界の核廃絶を求める人びとの思いは、けっして無意味でも無力でもありません。

私たちは「核と人類は共存できない」ということばをいまこそ、いっそう明確に掲げながら、世界の人びととの連携をつくりだしていかなくてはなりません。核も戦争もない世界の実現に向けた決意をあらためて確認し、ビキニデーアピールとします。

2023年3月1日
被災69周年3.1ビキニデー全国集会

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