2023年声明申し入れ

【原水禁声明】被爆二世国家賠償請求訴訟・広島地裁判決に際して

2023年02月08日

原水禁は、2月8日付で以下の声明を発表しました。

被爆二世国家賠償請求訴訟・広島地裁判決に際して

2月7日、広島地裁(森実将人裁判長)は、「被爆二世」が被爆者援護法に基づく援護から除外されるのは、憲法14条(法の下の平等)や13条(個人の尊厳の尊重と幸福追求権)に違反するとして国に国家賠償を求めた訴訟に対し、「不当な差別とは言えない」として原告の請求を棄却する判断を下した。この訴訟は「全国被爆二世団体連絡協議会」が中心となって2017年12月17日に広島地裁、同月20日に長崎地裁に提訴したものであり、昨年12月12日には長崎地裁(天川博義裁判長)で、同様に原告の請求を棄却する判決が出ている。

判決は、「健康被害の可能性を明確に否定することはできない」「被爆二世が健康不安を抱くことは当然」と指摘しながら、1968年の最高裁判決にある「戦争受任論」を持ち出し「原爆による放射線の健康被害も他の戦争被害と異なるものではない」として、被爆二世の健康不安に対する措置を求めることは、憲法13条よって保障される権利ではないとした。また、健康被害の可能性については「放射線の遺伝的影響の可能性は、科学的に承認も否定もされていないという意味での可能性」としたうえで、被爆者援護法がいう被爆者は「原爆の放射線に直接被爆した可能性のある者」であって、科学的知見の有無や精度は被爆者と被爆二世では質的に異なるとして、援護法の不適用が合理性のない差別的取り扱いと評価することはできず、憲法14条の規定する法の下の平等に反するとは言えないとした。

原水禁は、科学的知見を確立するための被爆二世の課題に沿った研究促進を怠ってきた国にこそ瑕疵があると考える。被爆二世の課題を先送りにしてきた国の責任は明確であり、その判断を国の裁量権の範囲であるとする判決は許しがたい。

一方で、広島地裁判決は、被爆二世の放射線被害に関してその可能性を否定せず、科学的知見の有無や精度の差であるしているところからも、原告の主張を不当なものとして否定したものではない。判決文も指摘している被爆二世の健康不安に対して、国の対応はこれまで全く不十分なものであった。しかも、「科学的根拠を持たない」「遺伝的影響はない」との一貫した主張から、被爆二世の要求に真摯に応えることはなかった。被爆二世自らが、被爆の遺伝的影響に関して科学的根拠を示すことは不可能である。そのことは、国の責任として明確にしなくてはならない。また、明確にできない以上、そして可能性がゼロではない以上、国は被爆二世の不安と医療に責任を持たなくてはならない。

広島・長崎への原爆投下から77年が経過した。生存する被爆者は12万人を切り、平均年齢は84才を超えた。被爆二世の多くは、放射線の影響によるガンなどによる両親や兄弟・姉妹の死に直面し、自らの健康不安と闘ってきた。被爆二世もその中心は60代となっている。原水禁は、被爆者と思いをひとつにしてその援護・連帯の運動にとりくみ、核兵器の廃絶を求めて来た。国は、様々な要求に真摯に向き合い、残されている課題解決にとりくまなくてはならない。原水禁は、速やかな被爆二世への被爆者援護法における援護措置の適用を求める。

2023年2月8日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野 浩一
金子 哲夫
藤本 泰成

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