4月, 2022 - 原水禁

原水禁第98回全国委員会を開催しました

2022年04月22日

原水爆禁止日本国民会議(原水禁)は、4月21日、第98回全国委員会を開催し、2022年度の運動方針を全体で確認しました。

この際、以下の特別決議が採択されましたので、ここにご紹介します。

原水爆禁止日本国民会議第98回全国委員会
特別決議

2月24日に始まったロシア軍によるウクライナ軍事侵攻は、2ヵ月を経過するもののいまだ戦火は止まず、多くの市民が犠牲となっている。ロシア軍によるジェノサイドが行われているとの報道もある。ウクライナへの一方的な軍事展開は、明らかな国連憲章違反であり世界から批判の声が集まっている。

侵攻にあたって、ロシアのプーチン大統領は「ロシアは世界で最強の核保有国のひとつであり、わが国への攻撃が、侵略者に悲惨な結果をもたらすことは疑いがない」と述べた。核兵器の使用も辞さないと他国を威嚇するこの発言は、世界を震撼させた。国連憲章のもとに、国際の平和と安全に主要な責任を持つ安全保障理事会常任理事国として、核不拡散条約の批准国として、国際的信頼を裏切るものであり決して許されない。核兵器禁止条約が発効した今、核保有国を含めて世界は核兵器廃絶への道へ一刻も早く進まなくてはならない。私たちの平和と安全が、核兵器の上に存在するものではないことは明らかである。

しかし、日本では、この事態を奇貨として米国の核兵器を共有する「核シェアリング」を導入しようとする声があがっている。唯一の戦争被爆国として毎年核兵器廃絶決議を国連総会に提案している国として、恥ずべき行為である。日本が批准する核不拡散条約(NPT)は、その第2条で「核兵器非保有国は核兵器の委譲を求めてはならない」としている。「核シェアリング」を日本へ導入しようとすることは、明かなNPT違反であり国際的に許されるものではない。日本への「核シェアリング」導入が、世界に何をもたらすかは明らかであり、半世紀以上に渡って核兵器廃絶を訴えてきた原水禁は、このような政治姿勢をきびしく糾弾する。

ウクライナは、1986年に重大事故を起こしたチェルノブイリ(チョルノービリ)原発の立地する国であり、欧州での有数の原発立地国だ。ウクライナ侵攻は、歴史上初の原発立地地域での戦争であり、稼働中であったザポリージャ原発や南ウクライナ原発などを戦闘に巻き込んだ。ロシア軍による原発の攻撃・占拠は、ジュネーブ条約違反であり、ロシア軍の行為は戦争当事国に留まらない大規模な放射能被害を誘発する可能性を持っている。チェルノブイリ原発事故を経験したウクライナ、福島第一原発事故を経験した日本は、その重大性を、身を以て知っている。世界はその現実と向き合い、脱原発への歩みを加速しなくてはならない。

福島第一原発事故から10年が経過した。しかし、溶融した核燃料デブリの回収は手つかずのまま、その全体像もつかめてはいない。デブリの再臨界を防ぐ冷却水は、放射能の汚染水として貯まり続け、政府は福島沖の太平洋への海洋放出を閣議決定した。海洋放出には、漁業者を中心に自治体や県民からも強い反対の声が上がっている。事故原発周辺は放射線量が高く、いまだ帰還できない住民がいる。その中で政府は、医療や生活への支援を打ち切り始めている。一方で、原発の再稼働、核燃料サイクル計画は続けられ、原子力政策を政府は変えようとしていない。原水禁は、ウクライナ、そしてフクシマの現実を直視し、これまでの原発政策からの脱却を強く要求する。

原水禁は、「核と人類は共存できない」として、反核・平和、脱原発、ヒバクシャの援護・連帯を求めて運動を重ねてきた。混迷する世界にあって、その重要性は増している。核と戦争のない世界の実現に、いっそうの努力を確認して決議とする。

2022年4月21日
原水爆禁止日本国民会議第98回全国委員会

米国の臨界前核実験に抗議し、核兵器廃絶を求める原水禁声明

2022年04月14日

アメリカが昨年6月及び9月に未臨界核実験を行っていたことに対して、原水禁は下記の抗議声明を発表しました。

米国の臨界前核実験に抗議し、核兵器廃絶を求める声明

2021年6月22日と9月16日に米国が臨界前核実験を行っていたと報じられています。核兵器廃絶をめざし運動に取り組んできた原水爆禁止日本国民会議は、このことに対し心の底からの怒りを込めて、強く抗議します。

米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)をこれまで批准せず、未臨界実験を繰り返してきました。この間も、米国は核兵器の近代化のために欠くことのできないものとして、オバマ政権下で4回、トランプ政権下で3回の実験を繰り返してきました。このことがCTBTの意義を矮小化し、核兵器のリスクを高めることにつながっています。バイデン政権は、臨界前核実験を即時停止し、核兵器の近代化競争をやめるべきです。

ロシアのプーチン政権は、ウクライナへの軍事侵攻にあたって「ロシアは最強の核大国の一つ」と発言し、核兵器の使用をほのめかし各国を威嚇しています。核兵器の使用が、現実味を帯びてきている今日、ロシアと並ぶ核大国である米国は、そのような発言をいさめ、核兵器廃絶へのとりくみの先頭に立たなくてはなりません。それが唯一戦争で核兵器を使用した米国の果たすべき責任です。

トランプ政権以来核兵器の近代化政策が継続され、新型空中発射長距離巡航ミサイル(LRSO)や核弾頭W80-4の搭載、新型核弾頭W93の開発などに着手しています。これは、核兵器予算の削減や先制不使用宣言を検討しているとされるバイデン政権の方向性に沿うものではありません。バイデン政権が「核なき世界」への大胆なアプローチを示すことを強く要請します。

米国の核に依存する日本やNATO諸国は、米国の先制不使用や目的限定の宣言に強く反対しているとされています。さらに日本では、米国の核を共有する「核シェアリング」導入を唱える動きもあります。唯一の戦争被爆国であり、まがりなりとも国連での核兵器廃絶決議を自ら提案する国が核保有を求めることは、国際的信頼を失うことにつながります。

原水禁は、米国の臨界前核実験に強く抗議するとともに、核保有5か国が1月3日発表した「核戦争に勝者はなく、決してその戦いはしてはならないことを確認する」とした共同声明に立ち戻ること、そしてさらに真摯な議論を重ね「核兵器禁止条約」への参加をすすめることを要請します。同時に、日本政府に対しても「核兵器禁止条約」即時批准を求めます。

2022年4月14日
原水爆禁止日本国民会議(原水禁)
共同議長 川野浩一
金子哲夫
藤本泰成

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