2022年声明申し入れ

「核シェアリング」に反対し「核なき世界」を求める原水禁声明

2022年03月03日

原水禁は、ロシアのウクライナ侵攻という事態を利用し「核シェアリング」への道を開こうとする安倍元首相らの動きに対し、下記の声明を発表しました。

「核シェアリング」に反対し「核なき世界」を求める声明

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナへの軍事侵攻にともなって、「ロシアは世界で最強の核保有国の一つであり、我が国への攻撃が、侵略者に悲惨な結果をもたらすことは疑いがない」と述べ、核兵器使用をほのめかせて他国を威嚇した。軍事侵攻を前に大陸間弾道弾の発射実験をおこない、戦略核兵器部隊は戦闘態勢に入っている。

今年1月3日、ロシアを含む核保有国5カ国の首脳は、「核戦争に勝者はない」とする「核戦争を防ぎ、軍拡競争を避けることについての共同声明」を出した。ロシア政府は、「この声明はロシア主導で作成した」と胸を張った。世界にむけて発出した声明を反故にすることは、言行不一致との誹りをまぬがれず、主権国家のあり方として許されるものではない。

核兵器をめぐるロシアの姿勢は、ウクライナへの国際的支援を阻止し、自国の軍事的侵略の目的を達成するためのもので、1月3日の共同声明のどの部分にもあてはまらない。核大国の暴挙として、世界は決してこの発言を許してはならない。

唯一の戦争被爆国日本の被爆者は、核兵器の非人道性を声の限りに訴え続けてきた。その思いは多くの国を動かし、昨年1月に核兵器の、研究、製造、保持、使用まで、その全てを禁止する「核兵器禁止条約」が発効した。一日千秋の如く待ちわびてきた被爆者は、どれだけ喜んだだろうか。核兵器廃絶への道程は、核保有国とその核の傘下の国を除いて、ゆるぎない世論になったと言える。

そのような情勢の中で、安倍晋三元首相は、米国の核兵器を配備し、運搬などを担うことで核抑止力を「共有」するとする、いわゆる「核シェアリング」の導入を検討すべきと述べ、自民党高市早苗政調会長も「核の搭載した米国の艦船を、日本に寄港も給油もさせないのか。領海通航も駄目では日本は守れない」と述べた。日本維新の会の松井一郎代表も、「核シェアリング」を岸田首相が否定したことをうけて、非核三原則を見直、核シェアリングに関する議論を求める緊急提言を、政府に提出するとした。

ロシアの姿勢を非難することなく、その状況を利用して非核三原則を否定する「核シェアリング」に言及するなどは言語道断だ。このような主張は、核兵器による威嚇が国際平和に有効であるとする誤った考えを広げ、世界中を核兵器の脅威にさらすことにつながる。

トラテロルコ条約(南アメリカ)、ラロトンガ条約(南太平洋)、ペリンダバ条約(アフリカ)、バンコク条約(東南アジア)など、世界には非核地帯条約を結んだ地域が存在する。日本の被爆者が、どのような思いで世界に核兵器廃絶を訴えてきたか。世界が「核なき世界」に向けて動き出そうとする中、唯一の戦争被爆国の国会議員の発言とは思えない。猛省を求めたい。

原水禁は、被爆者と思いをともにして、「核と人類は共存できない」ことを確認し、「核なき世界」に向けて確実な歩みをすすめることを確認する。

2022年3月3日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野浩一
金子哲夫
藤本泰成

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