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北海道・寿都町および神恵内村の高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた「文献調査」応募決定に対する声明

2020年10月08日

北海道・寿都町および神恵内村の高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた

「文献調査」応募決定に対する声明発出について

 

 さて、10月8日、北海道寿都町および神恵内村は、高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた「文献調査」への応募を決定し、正式に表明しました。

原水禁は別紙の通り声明を発出しましたので、ここに掲載致します。

 

北海道・寿都町および神恵内村の高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた「文献調査」応募決定に対する声明

 

 10月8日、北海道寿都町と神恵内村は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた「文献調査」に応募することを決定し、正式表明しました。

 寿都町も神恵内村も、北海道における他の市町村と同様に、急激な人口減と過疎化、生活インフラの衰退や財政不足に、地域の存亡さえ問われかねない状況があります。地域経済を支えるための農業や漁業、観光業などに従事する方々のさまざまな努力がありますが、しかし、そのことを持っても明るい将来を必ずしも展望できない現状があります。「地方創生」を掲げる国の施策が、スローガンに終始していることに、憤りを感じずにはいられません。

 寿都町の片岡春男町長、神恵内村の高橋昌幸村長は、地方行財政の危機感から、「文献調査」への応募による雇用の創出やインフラ整備など地方財政の再建につなげることを表明しています。しかし、これまで原発誘致などが、地方再建につながった例はありません。原発立地市町村とそうでない市町村との比較においても、財政状況に大きな差異はないと言われています。また、一旦過酷な事故につながれば、生活基盤そのものを失う事態も想定されます。一方で、「文献調査」(交付金最大20億円)から「概要調査」(交付金最大70億円)、さらに「精密調査」(交付金額未定)へと進んでいくことによる多額の交付金は、財政基盤が弱い自治体ゆえに、それに対する依存度を増していくことになり、簡単にそのスパイラルから「抜ける」ことができない状況に陥ることも考えられます。原発立地自治体の多くが、原発1号機誘致から2号機・3号機…と、誘致を繰り返すことが、そのことを象徴するものです。

 「文献調査」とは、「地質図や学術論文などの文献・データをもとにした机上調査」であり、現地に行くことなく、実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)内で全て行

いながら、一方でNUMOは現地事務所を開設し、約2年間にわたり立地に向けての広報活動、いわゆる地元工作を行います。「文献調査」のねらいは地元工作とも言えます。

 片岡町長、高橋村長は、住民投票を望む声に対して「大半が賛成で必要ない」「住民説明会が理解されている」などとして、その必要はないという立場をとっていますが、地元住民の声を置き去りにした拙速な判断は、地域社会を分断し混乱させるだけと考えます。北海道には、すでに核のごみの持ち込みは受け入れ難いとする条例があり、鈴木直道知事も慎重な姿勢を示しています。また、地元漁業関係者は、早くも反対を表明しています。

 半減期2万4,000年といわれるプルトニウムを含む高レベル放射性廃棄物は、10万年以上も閉じ込めておく必要があり、地元は長期間にわたって「核のごみ」との共存を強いられます。何よりも、処分の対象となるのは使用済み核燃料からプルトニウムを抽出した再処理後の廃棄物であり、六ケ所再処理工場建設の見通しが立たない中で、核燃料サイクルのあり方、原発政策のあり方、ひいてはエネルギー政策の根本的あり方を議論することなく、処分を先行させることは問題です。

 処分問題を、寿都町や神恵内村だけの問題にすることはできません。近隣の自治体や住民、関係団体の意見もふまえながら、国民的議論として結論を求めていかなくてはなりません。そのためには、処分場選定の前に、使用済み核燃料をこれ以上出さないため、国策として「脱原発」のエネルギー政策に転換すべきです。

原水禁は、福島第一原発事故の教訓に立って、まず「脱原発」を決定し、新たな使用済み核燃料を出さないことを基本に、使用済み核燃料・高レベル放射性廃棄物の処分については、国民的議論とすることを求めます。同時に、交付金によって誘致を促すような従来の方法を改め、脱原発社会における地方経済の問題も重要な課題として、国民的議論とすることを求めます。そのような基本姿勢に立って、「文献調査」の応募撤回にむけて、地元住民の理解を求めとりくみます。

2020年10月8日

原水爆禁止日本国民会議

議長 川野浩一

 

 

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