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特別決議  中距離核戦力(INF)全廃条約失効は許されない

2019年08月06日

原水爆禁止世界大会広島大会が始まる直前の8月2日、米露の二国間で交わされていた「中距離核戦力(INF)全廃条約」が失効した。今年2月に米国は、ロシアが条約に反して中距離核戦力の開発を進めているとして、条約からの離脱を表明して以来、ロシアと対立したまま条約が定める失効日を迎えた。

 INF全廃条約は、東西冷戦の最中1987年12月8日に、米国とロシア(旧ソ連)の間で調印され、条約が定める期限(1991年)までに、米露双方の中距離核戦力は全廃された。中距離核が実戦配備された東西ヨーロッパ社会の危機感から生まれた条約は、ヨーロッパ社会の安全保障に大きく貢献してきた。条約が生まれた意義と果たしてきた役割を省みない米国の姿勢は決して許されない。米トランプ政権は、条約に参加しない中国も含めて新たな核軍縮の枠組みをつくるべきと提案しているが、それは条約離脱の理由にはならない。
 昨年のイラン核合意からの離脱も、ペルシャ湾・ホルムズ海峡の不安定化をもたらし、イランを核開発の再開に呼び込むものだ。中東の平和と安定にとって、イラン核合意は重要な役割を持っている。一方的な離脱と主張からは、何も生まれないだろう。
 「核なき世界」を提唱した米オバマ前政権の政策から一変して、米トランプ政権は、自国第一主義と力による平和を標榜し、自国の主張を押し通そうと、他国に対して様々な圧力をかけ続けてきた。これまで世界が長い間地道に積み上げてきた、平和と核兵器廃絶への枠組みを、一方的に壊していくことは絶対に許されない。
 一方で、米トランプ政権は、「核態勢の見直し」において、地域を限定して使用可能とする核弾頭の小型化や通常兵器の攻撃に対して核の使用を可能とするなど、核攻撃能力の強化を狙っている。核兵器をもって世界に君臨し自国の利益を守ろうとする姿勢で、米国はどのような未来を想像しているのか。そして、その米国の姿勢を大きく評価する日本政府も同様である。米国の核抑止に依存し、核兵器禁止条約の署名・批准に否定的な姿勢は、唯一の戦争被爆国とは到底言えるものではない。
 核兵器禁止条約の署名・批准が進んでいる。条約発効は目の前に迫ってきている。今、私たちは核兵器廃絶の道程からはずれることは許されない。2021年には、新戦略兵器削減条約が期限を迎える。更なる削減に向けて米露両国は、条約の延長にむけた交渉をすみやかに開始すべきだ。そして、核兵器保有国の責任として、核兵器廃絶の国際的枠組みの再構築を図るべきだ。2020核拡散防止条約再検討会議において、自国第一主義から離れ真摯な議論を展開しなくてはならない。そして、日本政府は、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約の署名・批准をすみやかに行わなくてはならない。
 原水禁は、「核絶対否定」の原則の下、核兵器廃絶の声を後退させることなく、全力でとりくんでいくことを改めて確認する。
2019年8月6日
原水爆禁止世界大会広島大会参加者一同

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