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長崎大会第1分科会「脱原子力1学習・交流編-再稼働問題と日本のエネルギー政策」

2015年08月08日

長崎第1分科会

第1分科会では、海外ゲストを含む3名の講師から講演があり、4つの地域から報告があった。主な内容は下記の通り。約300名参加、うち初参加は50名程度。

1. 『我々の責任を再検証する』  シュウ・グァンロンさん(台湾)
台湾国立大学のシュウ・グァンロンさんより、台湾の原子力事情と運動の課題について、報告があった。
台湾には3つの原発があり、もう1つ休止している原発がある。台湾の原子力エネルギープログラムは、核兵器プロクラムを隠すために60年代後半に始まり、今日まで厳密な機密情報として取り扱われてきた。
台湾の原子力エネルギーを所管する「行政院原子能委員会」は、本来の規制機関の役割より国営台湾電力のパートナーとして機能し、多くのことが隠されてきた。①断層の長さを実際により短くした、②放射能に汚染された地域・建物が多くあるが、秘密にされてきた(明らかになった今も、175マイクロシーベルトのアパートの中で暮らしている人も)、③蘭嶼島の低レベル放射性廃棄物貯蔵施設は缶詰工場と偽っていた、④高い放射線量の中で労働を強いていた、⑤竜門(ルンメン)原発建設で材料の手抜き、勝手に1000もの変更をした、ことなど。しかし、抗議・デモなどを経て、2号機の全面停止、1号機は暫定的封鎖とした。他にも、老朽化した原発の延命、核兵器への転用の動きなどがある。
こうした状況の中、福島原発事故がすべてを変えた。市民は、情報の透明性や意思決定へのアクセスなど要求しなければならない。私たち自身が、問題解決すべきであり、それが責務だ。

2. 『再稼働問題と日本のエネルギー政策』 西尾 漠さん(原子力資料情報室)
続いて、西尾漠さんより、「再稼働」に向けた全国の原発の状況が報告された。「新規制基準」申請は25基/43基、25基中35年超は4基、また、「高経年化」炉は、コストをかけた分は寿命延長してでも回収する必要があるため、様子見の状況にある。つまり、「再稼働」は、今、目の前の原発を動かすという問題だけではなく、長く動かすということ、脱原発から遠のくことを意味する。場合によっては、新増設もあり得る。脱原発の分かれ目に来ている。川内原発1号機の再稼働が11日に迫っている。仮に動かされたとしても、問題を市民に訴えていくことが大切と指摘した。
また、再稼働を許すと、①大事故の可能性、②プルサーマル再開、③使用済み核燃料、高レベル放射性廃棄物増大、④核セキュリティ強化、⑤大停電、⑥電気料金再値上げ、⑦温暖化対策後退などの問題が生じる。また、政府の「電源別発電電力量と長期エネルギー需給見通し」は、2030年に原発20~22%とし、電力需要も大幅に増加している。しかし、電力需要はフクシマ原発事故以前から減少傾向にある。原子力を使うには電力需要を増やさないと成り立たないためだ、また、石炭は変化がなくLNGを減らしている。いかに政府の見通しがでたらめかがわかると批判した。

3. 『司法が市民の力で原発を止めるために』 海渡雄一さん(弁護士)
続いて、海渡雄一さんより「原発訴訟」を中心に報告があった。
原発を止めていく方法として「司法判断」がある。2011年7月に「脱原発弁護団全国連絡会」を結成した(海渡さんは共同代表)。
2014年5月21日、福井地裁で大飯原発の運転を差し止める判決が出された。海渡さんは第1回口頭弁論で「福島原発事故には、司法にも責任がある」と厳しく指摘し、全国提訴の最初の成果となった。今年4月21日、福井地裁(樋口英明裁判長)は高浜原発3,4号機の運転差し止めを命じる仮処分を決定した。関西電力は裁判長の忌避請求する中、また、裁判長自身の転勤がある中、樋口裁判長は職務代行辞令を出してもらう中での決定である。これは、司法が現実に再稼働を止めたものである。一方、川内原発は、仮処分却下決定がなされたが、完全には負けてはいない。裁判長は「決定」の結論において、「今後、さらに厳しい安全性を求める世論が高まれば、その安全性のレベルの下で判断すべき」との自己の却下理由を否定する見解も述べている。この闘いは、高裁で勝つ。その瞬間に(再稼働が強行されたとしたら)川内原発は止まる。
また、国と東電の自己責任について、すでに津波対策を講じるよう予測できていた過去の経過と検察審査会が元東電3幹部が強制起訴されたことに触れ、①事実を知ること、②福島原発事故を肌感覚で知り、二度と繰り返さないと子心で感じること、③この闘いは必ず勝てると信じること、そのことで「原発は私たちの知恵と力で止められる!」と、力強く訴えた。
その後、鹿児島(川内原発)、佐賀(玄海原発)、愛媛(伊方原発)、新潟(柏崎刈羽原発)の再稼働をめぐる状況について報告があり、参加者全員で全国の原発の再稼働を許さないたたかいを原水禁に結集して闘う意思確認を行った。

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