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止めよう再処理!共同行動ニュース9/25号の記事から

2013年09月25日

六ヶ所核燃料サイクル施設を核のゴミ捨て場にするな!
 
再処理工場19回目の竣工予定を延期
 日本原燃(株)は7月31日の定例社長記者懇談会で、六ヶ所再処理工場は竣工予定を19回延期し、本年10月の竣工をめざしてきたが、12月に施行される核燃料サイクル関連施設の新規制基準に基づいた審査が求められることから、20回目の竣工予定を10月までに明らかにするとした。
 8月26日、六ヶ所核燃サイクル施設の廃止を求める六ヶ所ピースサイクルの面々が六ヶ所村役場と日本原燃と交渉した際、次のようなやり取りが交わされた。六ヶ所村役場の担当課長からは、核燃料サイクル施設の新規制基準作りの過程で、例えば基準地震動がこれまでの450ガルより大きく違ったとしたら、「それによって竣工が延びてもやむなしで、安全にやってもらう」と答えていた。
 日本原燃は、原子力規制委員会の下北半島での活断層調査が来年の3月までかかることから、「その結果を受けてからでないと申請を出せない」との考えを示した。つまり、12月18日に核燃料サイクルの新規制基準の施行に合わせて申請を出すのではなく、来年3月までの調査報告が出て、活断層にどういう基準が課せられるかを見た上でないと対応し得ないと見ているということであった。
 これまでは比較的単純に、10月竣工延期は決定的だから、じゃあ1年後に延期とか、2年後に延期とか決めてきた。でもそれを打ち出すことが、安全審査の期間を限定してしまうことになり、審査する側が期間限定を不満に思うのを、どこかで気にかけている感じさえ受ける答弁であった。

 しかし8月30日、東奥日報は「原子力規制委員会の田中俊一委員長が29日、12月の核燃料サイクル関連施設の新規制基準施行後に始まる六ヶ所再処理工場の安全審査について、現状の審査チームで原発と並行審査せず、新たに編成する専門チームで対応する方針を明らかにした。審査期間は断層問題などを理由に『予測できない』とした」と伝えた。そして、「原子力規制委員会は29日、原子力施設が集中立地する下北半島の地質構造を3次元化して解析する調査研究費を2014年度の概算要求に盛り込んだと発表した」、「事業費の要求額は22億5千万円で、本年度実績の5億3千万円から大幅に増加した。規制委は各調査を比較検証し、断層活動性評価の手法確立をめざす」とも伝えた。
 この調査が行われると、2014年内には再処理工場の事業申請を出せる状況にはないことが予想される。まずは、原子力規制委員会が断層活動性評価の手法確立をめざし、その後に下北半島にある原子力施設ごとに断層活動性を評価する。その結果を受けてから、日本原燃が安全審査書を取りまとめて提出するというのである。
 これが額面通りなら、少なくても申請と審査に2、3年はかかるだろうし、場合によっては4、5年を要するかもしれない。

基準地震動の底上げと日米原子力協定の改定
 六ヶ所再処理工場は、耐震補強問題が焦点である。六ヶ所再処理工場は、基準地震動が450ガルとなっている。この450ガルは他県の原発よりも低いが、東通原発と大間原発も、この低い方に合わせているのが実状である。
 巨大地震や津波に襲われた場合を考慮して、新規制基準に反映させようとしているのであるから、原子力規制委員会が基準地震動の底上げを安全対策に求める可能性は高い。
そして、仮にその決定がなされれば、東通と大間の原発は耐震補強工事を容易に行えるが、再処理工場はそうはならない。なぜならば、再処理工場は既にアクティブ試験を行っており、配管の中にかなりの放射性物質をため込んでいる。アクティブ試験中に425トンの再処理を行ったが、全量が抽出されてはいない。実は、まだ抽出されない溶液が配管の中に詰まっている状況である。
 つまり、現在も地下に張り巡らせた約1300kmの配管の中に、核燃料物質や放射性廃液をため込んでいるということである。そういう状況の中で、耐震補強工事を行うとなれば、建物の周りを掘り下げ、配管のサポートを強くする必要がある。これには、作業者への放射線被ばくが伴うので、被ばく線量管理の上で多くの作業員を必要とするし、工事は難航を極める。このような工事のやり直しは、工事期間が長期化するだろうし、工事費の大幅な上昇につながる。
 原子力発電所の運転が止まっている中で、電力各社の多くは火力発電所に支払う燃料費の増額を理由に、電力料金の値上げに踏み切った。そのような中で、六ヶ所再処理工場の耐震補強工事費の追加を求められたら、電力会社自身の経営がさらに厳しい状況に追い込まれるのではないか。
 いずれにしろ、耐震補強工事が長期化する間に、日米原子力協定の改定時期、2018年7月17日を迎える可能性が高い。核兵器保有国でない国で、再処理を認められているのは日本だけだ。しかも、高速増殖炉の利用は到達点が見えないほど先送り状態で、プルトニウムを余分に持って、いまだに明確な使い道が示せない。その上で、再処理ができずにまごつく日本に、世界の目は厳しくなるのではないか。
 今年10月の竣工計画が19回目の延期であったが、その後の計画は様々な状況の変化を考慮すべきであり、20回目の竣工計画を10月までに示せるか否かは、微妙と言わざるを得ない。その場合、電気事業連合会が再処理工場の操業前に示すとしたプルトニウム需給計画の提示も相当に遅れることになるが、それを国際社会が容認するだろうか。
 今回再稼働を申請した12基の原子力発電所のうち、プルサーマルを申請したのが四国電力・伊方原発3号機、関西電力・高浜3、4号機の3つだった。すでに余剰として指摘されている約44トンのプルトニウムを、細々と利用する計画では、さらに年間4トン強のプルトニウムを抽出する六ヶ所再処理工場の操業を、世界が認めることは難しいのではないか。
 いずれにしろ再処理工場の操業延期が確実視されたので、この際、再処理工場を操業する前に、再処理工場の核のゴミがどうなるかを、改めて考えておく必要がある。そして、核のゴミの処理・処分方法が定まらないのであれば、再処理そのものを中止する選択をすることも、未来世代への責任ある行動の一つである。
(山田 清彦/核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団 事務局長)

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