声明申し入れ

新規制基準決定に対する共同声明

2013年06月20日

2013年6月20日
原水爆禁止日本国民会議
原子力資料情報室

新規制基準決定に対する共同声明

 6月19日、原子力規制委員会は、原発に関わる新規制基準を決定した。この決定と同時に実質上同基準が政令等として公布され、7月8日には施行する予定となっている。
 原子力規制委員会はこの新規制基準づくりにあたり、「あくまで科学的判断を基とする」と述べてきた。しかし決定された新基準が、2011年3月の東電福島第一原発事故の究明に立脚し、科学的、技術的に純化した新基準たりえているかと言えば、不十分な基準だと断じざるをえない。
 原発そのものが危険な存在であり、過酷事故の想定は無限にあるとする認識に立つなら、科学的、技術的見地の規制によって、そのリスクを補えるのかという前提に私たちは疑問をもつ。しかし、もしかりに、新規制基準がこの疑問に応えるものであるなら、それ相応に科学的、技術的規制でなければならないが、原発推進勢力の隠然たる圧力の中、規制基準は薄められ、原発の再稼働に道を開く方便となるものなら、許されるものではない。
 新基準には、いくつかの点で誤りがある。
 原発の立地条件の適否を問う立地審査指針で集団線量の考え方を退けていること。
 福島第一原発事故で応急対策の柱とされてきた常設直流電源設備(第3系統目)、第二制御室など「特定重 大事故等対処設備」に係る基準に5年間の猶予を与えること。
 単一故障の仮定に立って構築され、外部電源以外の共通要因が考慮されていないこと。
 原発の40年制限に例外を与え、明らかな規制基準の後退を裏付けるもの――などである。
 また、原子力規制基準と原子力災害対策は一対をなすべきであり、「再稼働」の是非は、規制基準と同等に当該施設自治体および周辺自治体の原子力災害対策が確立されることを条件とされねばならないが、原発の基準と防災対策は切り離されている。
 そして、今回の新基準の策定過程で大きな疑問となるのは、5月10日まで行われたパブリックコメントへの応募意見について、充分な審議がなされなかったことだ。
 また、新基準を運用する規制行政の態勢の問題がある。
検査体制、人員など、総合的な観点からの対応が重要だが、「再稼働」に関わる審査は、安全規制管理官および安全規制調整官らによって行われると思われる。BWR(沸騰水型)担当の管理官は前原子力安全・保安院原子力発電検査課長、PWR(加圧水型)担当の管理官は前原子力安全・保安院原子力安全基盤課長ではないか。調整官らの多くも、原子力安全・保安院で審査や検査に当たってきた。「規制の虜」になってきたかれらが正しく審査を行えるのか疑問でならない。
 いずれにしても、新規制基準の法制化によって、不十分な新基準によって審査され、手続きとして原発の再稼働の扉を開くこととなる。
 これでは原発事故の再発を防げない恐れが高く、だからこそ、原水禁と原子力資料情報室は、拙速な新基準の施行をするべきでなく、パブリックコメントへの対応含めて、改めて新規制基準を問い直すことを求める。その上で、再稼働審査にあたっては、新基準と防災対策を一体のものとして関連付けたうえで厳正な審査をするべきと考える。
 

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