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【ニュースペーパー2013年3月号】原水禁関連記事

2013年03月01日

「県民大集会」を成功させよう!
さらなる困難な状況に直面する福島

日本の再処理・プルトニウム抽出が国際問題化
六ヶ所は世界終末時計を進めてしまうのか?

米原子力規制委員会(NRC)
攻撃部隊を使った原発警備演習


「県民大集会」を成功させよう!
さらなる困難な状況に直面する福島

福島県平和フォーラム 代表 五十嵐 史郎

 

長期化する不安や苦悩
 福島第一原発事故から2年、県民の不安や苦悩は長期化する中で更なる困難な状況も出てきている。今も福島県民16万人が避難生活を余儀なくされ、県外に約6万人が避難していたものの、最近徐々に県内へ戻りつつある。しかし、これは状況が改善されたのではなく、避難による二重・三重の生活、長距離通勤など経済的負担に耐えられず、やむなく戻ってきているのだ。
原発自体も、メルトスルーした核燃料の状況はまったく把握できず、4号機の使用済み核燃料プールは補強したといえ、次の地震で倒壊する危険性を払拭することはできない。そして今も放射能を出し続けている。
外部被曝、内部被曝の検査も実施をしているが、事故当時どれだけ被曝したのか、今となってはまったく把握できない。したがって、将来の健康を保障するものは何もなく、県民はただデータだけを取られ、実験材料とされているのではないかとさえ思える。甲状腺検査でも十分な説明がなく、検査への不信が募るだけで、不安の解消にはなっていない。
最近、県内では復興を前面に押し出し、避難者をどうやって地元に戻すかという方向に動いているように思える。そのために、放射線による健康被害を過小評価し、「不安」を個人の価値観にすり替える風潮が出てきている。原発推進をもくろむ原子力ムラの人々は、原発事故の風化を待ち、いつか原発を再稼動させようとしている。残った県内6基の原発について、県も県議会も廃炉を求めているにもかかわらず、国と東京電力は廃炉を決めていない。

健康被害や人権侵害への取り組みが必要
 放射能による差別・人権侵害の問題もある。昨年、日本生態系協会の池谷奉文会長が「福島ばかりでなく、栃木、埼玉、東京、神奈川あたりにいた方々は、極力結婚しないほうがいい」「奇形発生率がドーンと高まる」といった発言をした。また、県内の高校生がインターハイの大会に出場した際の宿舎で、福島の高校生が風呂に入った後、お湯を全部取り替えてほしいとの要請があったという話を聞いた。福島県民としていたたまれない思いがする。
爆発直後、県外に避難した子どもがいじめられたとか、福島ナンバーの車がいたずらされたなどの露骨な差別は聞かなくなったが、広島・長崎の被爆にみられるような差別・人権侵害の問題は、今後も続くことが予想される。そうならないための定期的な健康診断・医療体制、健康手帳の配布、人権教育などの取り組みも進めていく必要を感じる。
県内では、除染作業を進め、学校や公共施設などが一通り終わり、一般家庭の除染も始まった。しかし、削った表土や、放射性廃棄物の行き場がない状況だ。除染に従事する人もなかなか集まらず、中間貯蔵施設、仮置き場も決まらない中、除染も思うように進まない。

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「風化させるな原発震災!脱原発福島県民集会」でのデモ行進
(いわき市・2012年11月25日)

事故を風化させず脱原発をめざそう
核廃棄物は事故がなくても溜まる。核廃棄物の処理方法がないままに原発を始めた無責任さに改めて怒りが込み上げる。国や電力会社の責任は当然だが、私たち国民に責任はないのか。電源交付金をあてに立地を進めた人たち、他県の原発で作られた電気を惜しげもなく使ってきた人たち、原発に反対をしながらも結果として止められず許してきた私たち。これからは原発を動かさない、核廃棄物を絶対作らせないとしても、今ある核廃棄物、使用済み核燃料の処分について、今の社会をつくってきた私たちは、その責任から逃れられない。他人に犠牲を押し付けるのではなく、自分もその責任を担うことを考えれば、自分の住む県・地域に最終処分場が来ることも覚悟しなければならない。核廃棄物の問題は、今すぐにでも何とかしなければならない切迫した問題だ。
原発事故の風化をさせず、脱原発をめざし、3月23日に開催される「原発のない福島を!県民大集会」成功に向けて、全国の皆さんの賛同協力を要請したい。

●原発のない福島を!県民大集会
日時:3月23日(土)10:00開場
内容:11:00~第1部「アトラクション」
13:00~第2部「県民大集会」
会場:福島市・あづま総合体育館
主催:「原発のない福島を!県民大集会実行委員会」
問い合わせ:実行委員会事務局(024-522-6101)


日本の再処理・プルトニウム抽出が国際問題化
六ヶ所は世界終末時計を進めてしまうのか?

オバマ大統領に示された日本の再処理問題への懸念
世界の終末までの残り時間を「0時まであと何分」というかたちで象徴的に示す世界的に有名な「世界終末時計」を表紙に掲載している「ブリティン・オブ・アトミックサイエンティスト」誌は、2013年は0時5分前のまま針を動かさないことを発表しました。
核問題の世界的な権威である、同誌の科学安全保障委員会は、「2012年は全地球的な問題の数々が針を押し進めた一方、数多くの市民たちが引き戻した」とし、同時に発表したオバマ米大統領への公開書簡の中で、新START批准や世界的な核セキュリティー体制の構築への賛辞を送るとともに、再生可能エネルギー源への支援やエネルギー効率向上への取り組みにも言及、記録的な干ばつや超大型ハリケーンは、温暖化予測に基づく気候変動の影響によるところと指摘しています。
日本については、「2012年は福島事故後、日本がとるべき膨大なコストと長い時間を必要とする回復への道のりへの最も初期の段階でもある」と指摘するにとどまらず、六ヶ所再処理工場について、オバマ大統領に対して具体的な要請をしています。少し長くなりますが、核分裂性物質に関する節の関連部分を引用します。
「2009年に大統領に就任後数ヵ月のとき、4年以内に世界各地すべての脆弱な核物質のセキュリティーを確保するという目標を発表されました。すべての核分裂性物質は、分離する目的が核兵器用か民生用かにかかわらず相当な核拡散リスクをもたらすということ──これは、非常に重要な公表された確認事項です。2013年には核分裂性材料の議題を活性化し、拡めるべきです。……大統領の韓国外国語大学での昨年の演説を引用すれば、『我々がテロリストの手に渡らぬようにしようと試みているまさにその物質──分離済みプルトニウム──を大量に増やし続けることは、絶対にしてはならない』のです。
大統領、我々は、直ちに民生用および軍事用の核分裂性物質──高濃縮ウランと同様にプルトニウム──の備蓄への包括的アプローチを始動することを呼びかけます。独立した調査機関の評価は、高濃縮ウランの1440トンと分離プルトニウムの500トンの世界的備蓄の存在を示しています。 これは理論的には核兵器の数十万発に十分な量です。
1970年代以降、米国は民間の使用済み核燃料や核分裂性物質の分離の再処理をしていません。2013年には、米国として、日本の六ヶ所再処理工場の試運転を思いとどまらせるべきであり、また韓国の再処理計画を再考するよう奨励するべきです」。

 

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世界の終末までの残り時間を象徴的に示す「世界終末時計」

国連軍縮会議でも議論される
もはや、日本の再処理工場が世界の核セキュリティー上の問題になっていることは隠しようのない事実でしょう。1月末に静岡市で開催された第24回国連軍縮会議の議論でも、モントレー国際研究所のマイルス・ポンパー上席研究員は日本の核燃料サイクル政策について「『プルトニウムを使う核兵器を持たない』のに、核燃料サイクルをめざしているのは日本だけ」と指摘。安倍政権が核燃料サイクルを維持する立場であることに対して「延期すべきだ。プルトニウムが使い切れず大量に余れば、近隣諸国の不安が拡大する」と懸念を表明。使用済み核燃料について「処理をどうするかは世界の政治的課題」と話しました。
このような世界的懸念に対して、核不拡散を所掌する原子力規制委員会は、「余剰プルトニウム問題は原子力委員会の所掌である」としています。一方の原子力委員会は「余剰プルトニウムを持たないという政府の方針は変わっていない」としながらも、そのための有効な手立てを示していません。45トンもの使い道のないプルトニウムをかかえながら今年10月を予定して六ヶ所再処理工場を稼働し、プルトニウムを増産するなど全く国際理解を得られるものではありません。世界の核セキュリティーの面からも、核燃料サイクルは止める必要があります。


米原子力規制委員会(NRC)
攻撃部隊を使った原発警備演習

米国の原子力発電所では、民間会社の警備員は武装しています。そして、安全性とセキュリティーに責任を持つ原子力規制委員会(NRC)が、1991年以来、各原子力発電所の警備体制を調べる査察の一環として、「武力対抗演習」(FOF)を実施しています。原子力施設の防護が必要なのは、①攻撃された施設が放射能汚染をもたらす、②核物質・放射性廃棄物が盗み出され兵器として使われる可能性があるためです。

実戦さながらの演習――同時多発テロ後さらに強化
演習は、2~3ヵ月前に予告して3週間にわたって行われますが、机上演習の他に、NRCの指揮下の模擬攻撃部隊が原子炉と使用済み燃料の安全システムに攻撃を掛け、警備員部隊が迎え撃つというFOFが実施されます。実際の武器の代わりにレーザーとレーザー受光器が使われ、3日間で3度の攻撃が仕掛けられます。演習は2001年の同時多発テロ後強化され、2004年秋以降は、すべての原発で3年に1回の割合で実施されています。例えば、2009年には22の発電所で23回のFOFが実施されました。ターゲットすべての損傷または破壊が達成されるケースが3回ありました。2011年は、この完全な防護失敗は0回でした。
真剣さに驚かされますが、演習の実施方法や敵のレベルの想定(人数・兵器)の問題が指摘されています。まず、攻撃側部隊を提供するのが、米国の多くの原発の警備に当たっているワッケンハット社(G4S社に吸収)である点についての批判があります。NRCは、米軍特殊作戦部隊の現役隊員の助言も得ているし、攻撃の作戦を作成するのはNRCであり、攻撃側部隊に加わる社員が、査察をする原子力発電所とは別の地域から来ることなどを強調しています。また、攻撃側の人数が5人ほどと推測されることも批判されています。

日本の原発警備に不安を持つ米国
日本の原子力発電所の警備に当たっている警備会社は、言うまでもなく武装していません。同時多発テロ以後は、警察や海上保安庁が武装警備を提供しています。詳細は不明ですが、米国のような本格的FOFは実施していないようです。2011年5月6日にウィキリークスが公開した一連の米国の外交公電によって、日本の防護体制に対する米国側の懸念が明らかになりました。例えば、2006年1月17日の公電は、国民保護法に基づいて前年11月27日に関西電力美浜原子力発電所で行われた日本で初めての核テロ訓練について触れています。訓練のシナリオは次のようでした。午前7時頃美浜原発が国籍不明のテロリストよる攻撃を受け、原子炉は自動停止するが、偶発的な故障が重なり、冷却機能が喪失。炉心損傷の可能性があり、昼頃住民避難の指示、午後3時前全ての住民が避難所に到着。
この演習に臨席した米大使館スタッフは、次のように述べています。「台本通りで少し完璧すぎる」「訓練が、主として住民の避難と緊急対応システムの強化に焦点を合わせたものであるため、得られる情報は全て、FOFに当たる訓練が組み込まれていなかったことを示している」。形式的で効果がないということです。

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米国原子力規制委員会(NRC)の武力対抗演習(NRC提供)

核兵器物質保管施設の警備の甘さも
2007年2月26日付の公電によると、「プルトニウムの主要貯蔵施設のひとつである東海村施設に武装警備員が配置されていない点についての質問に対する文部科学省の答えは、現地の必要性とリソースに関して検討したところ、このサイトでの武装警官の配置を正当化するに足る脅威は存在しないとの結果が得られたというものだった」そうです。昨年3月の「核セキュリティー・シンポジウム」(ソウル)で、米「憂慮する科学者同盟」(UCS)のエドウィン・ライマン博士がFOFの重要性を指摘した際、内藤香原子力委員会原子力防護専門部会長が、銃が簡単に手に入る米国と日本は事情が違うと述べたのは同様の発想でしょう。
警察は来年度、原子力関連22施設の警備用の機関銃や防弾車両を大幅増強する予定(NHK:1月30日)ですが、武装していない事業者側警備員・警察・規制当局の連携は、脅威の想定も含め複雑です。導入が予定される従業員の信頼性確認制度と人権問題の関係も複雑です。原子力安全と核セキュリティーの両方の責任を持つ日本原子力規制委員会の今後の方針が注目されます。(田窪 雅文:ウェブサイト核情報主宰)

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