2011年分科会報告原水禁大会原水禁大会 2011年

【66大会・報告】長崎第3分科会/平和と核軍縮1-学習編-「核兵器なき世界」への課題と展望

2011年08月08日

参加者数 76名  初参加者 20名

講師の川崎哲さん(ピースボート共同代表)、が分科会のメーンテーマである「核兵器のない世界」への課題と展望について提起を行った。この中で、核問題について「核兵器」と「原子力」に分けられるが、同じ核燃料サイクルの中で「核兵器」も「原子力」も造られるので根っこは同じであると説明し、福島第一原発の事故も核の問題を考える上では同一であることを明らかにした。

また、核拡散防止条約(NPT)でも核の役割を限定できず、原発ビジネスが拡大しており、日本も原子力を海外に売って国益をあげる政策をとっていると、NPTの現状や問題点を浮き彫りにした。そして、NPTを補完するためにも核兵器禁止条約というかたちで、全面禁止の運動を世界全体で進めて行くことが必要であり、この運動を推進するにあたっては日本の憲法9条の理念を活かすことが重要であると指摘した。

最後に、日本では核廃絶は主張するが、被曝国にもかかわらず米国の核の傘に守られており、原子力大国でもある。核兵器のない世界をつくるには、私たち一人ひとりの考え方を変えて、被爆国日本の体験を世界に発信していくことが大切だと訴えた。

韓国からゲストのス・ヨルさんは、米国の核政策は、核兵器の数を減らすのではなく、核テロ防止に力点が置かれていると説明した。また、「拡散に対する安全保障構想」(PSI)を韓国が米国、日本とともに朝鮮半島で展開したことによって、北朝鮮との緊張が高まり、東北アジア全体の平和を脅かすことになると警鐘を鳴らした。加えて、韓米原子力協定について、韓国政府が核兵器を製造できるウランを生成ができるように改定する思惑があることを指摘した。そして、核は一国のみでは決して止めることが出来ないので、全世界が一緒になって核廃絶の運動を行おうと呼びかけた。

米国のジム・ストッフェルズさんは、「生まれ育ったリッチモンドの町で長崎型原爆が造られた。核兵器をつかった国の国民として、原爆によって奪われた全ての命に、全ての人生に「ゴメンナサイ」と言いたい。そして、人類が想像できる最も忌まわしい兵器がまだ存在していることに申し訳ないと言いたい。二度とこのような事がないように。戦争はもうたくさんだ」。と声を震わせながら真摯な贖罪を述べた。

神奈川県平和運動センターの小原慎一さんは、原子力空母「ジョージ・ワシントン」配備後の横須賀について次のように報告した。「原子力空母は直接核兵器ではないが、動力は核であり、原発と同じである。横須賀は常に事故の危険にさらされているので、横須賀だけではなく日本国内への入港を阻止する運動を展開することが大事である。核密約が明らかになったことを受け、改めて母港化の撤回を求めていきたい」。

討論
Q:中東非核地帯会議は来年開催されることになっているが、中東情勢が不安定な中、実現できるか。
A:ご指摘の通り、開催は流動的だが、開催できなければNPTの存在意義が問われることになるので、日本政府も積極的に開催に向けて取り組むべきではないか。
Q:オバマ米大統領のプラハ演説には期待したが、中身は何もなかった。あのスピーチは一体何だったのか。核兵器禁止条約も保有5ヵ国の同意がなければ実現しないが、可能性はあるか。
A:オバマ大統領の基本政策はブッシュ前大統領と同様にテロから米国を守ることであり、その目的を達成するための手法の違いをアピールするためのプラハ演説だったのではないか。現在のオバマ大統領は様々な妥協を行ったことによって核のない世界は実現していない。NPTしかない世界は核の保有を認めることになるので、核兵器の保有はダメと規範しなければならない。そのためにも核兵器禁止条約は必要であり、昨年からヨーロッパを中心に賛成国が増えてきているので、実現の可能性はある。日本政府はまだ賛成を表明していないので、政府への働きかけを強めるべき。
IMGP3752_1.JPG

TOPに戻る