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【ニュースペーパー2011年2月号】原水禁関連記事

2011年02月01日

●脱原発への政策転換をめざして
 原子力政策決定の現場で論陣を張る

 原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸

●核問題、世界はどう動くのか
 不透明な状況が続く米中関係


脱原発への政策転換をめざして
原子力政策決定の現場で論陣を張る

原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸

原子力政策大綱の見直しを求める声
 「破綻したプルトニウム利用―政策転換への提言―」(緑風出版)を刊行したのは昨年6月でした。これは原水禁と原子力資料情報室でまとめて世に問うたものですが、この中で6項目の「核燃料サイクル政策の転換を提言」しました。その第1項目が「原子力政策大綱の改定」でした。原子力委員会は昨年7月から見直しの必要性について、有識者23人に対して意見聴取を行い、「ご意見を聴く会」を福井市、青森市、東京の3ヵ所で主催し、市民から意見募集を実施してきました。私は7月の第40回原子力委員会で意見陳述しましたが、その際、上記の本の提言を意見書に載せました。
 福井市では、原発反対福井県民会議の小木曽美和子さんが意見を述べました。また、一般からの意見募集では、1,205人から1,520件の意見が寄せられました。原水禁と原子力資料情報室も改定を求める意見の集中を呼びかけました。こうした声が功を奏して、昨年12月から改定作業が始まり、私は前回に続き、新大綱策定会議(新策定会議)の委員に選任されました。

原発推進は温暖化防止につながらないことを主張
 新策定会議は、議事録の作成までは会議の映像をホームページ上で速やかに公開する、配布資料は会議当日のうちに公開し、市民からの意見を常時受け付けて議論に反映させるという点が新しい試みです。
 読者のみなさんも、原子力委員会のホームページから意見をお寄せください。脱原発の立場は少数派ですから市民の意見は重要です。第1回会合から第2回会合(1月14日)までの間に11件の意見が寄せられましたが、すべて原発推進に反対する意見でした。私にとって勇気づけられる力強い支援となります。
 新策定会議で想定される推進基調は、①温暖化防止に原子力をいっそう活用する、②原子力輸出に官民挙げて積極的に取り組む、③核燃料サイクルでは使用済み燃料の中間貯蔵の推進、高速増殖炉開発の継続、④高レベル放射性廃棄物の処分場へ国からの申し入れへの道筋などだと推察しています。これらに対して、上記の提言に沿った論を展開していきたいと思います。
 特に、原発と核燃料サイクルに焦点を当てて書きます。経済産業省は昨年6月、「エネルギー基本計画」をまとめ、温暖化防止を口実に2030年までに14基の原発新増設をめざし、設備利用率を90%に高めると踏み込んでいます。これに対し、再生可能エネルギーは最大限の導入をめざすという抽象的な表現に留まります。
 原子力を中心に据えていてはCO2排出削減につながらないことを新策定会議で、かなり丁寧に主張しました。そして、原水禁エネルギープロジェクトがまとめた提言「持続可能で平和な社会をめざして」を委員に配布して、省エネルギーを基本に再生可能エネルギーを基幹とするように政策転換を進めるべきとのメッセージを発信しました。3月ごろまではエネルギーと原子力に関する話が続くので、この主張をさらに補強していくつもりです。

 

 

 

2006年出版の「原子力政策大綱批判」

核燃料サイクルからの撤退を訴えていく
 核燃料サイクルでは破たんの様相がいっそう明瞭になってきています。六ヶ所再処理工場は国産技術であるガラス固化処理でつまずいたまま数年が経過しています。日本原燃の対応は付け焼刃でしかなく、2012年10月の竣工は誰も真に受けていません。経年で施設の老朽化は進み、トラブルが増えると考えられます。
 高速増殖炉「もんじゅ」は改良工事入りしたとは言いながら、警報装置のトラブルが相次ぎ、かろうじて出力0%の炉心確認試験を済ませたものの、燃料交換に使う炉内中継装置の落下事故によって、次の段階の試験は半年以上延期されました。他方、もんじゅは一昨年、昨年と二度にわたって事業仕分けの対象となりました。
 核燃料サイクルの議論は3月ごろとなりますが、前述の書籍「破綻したプルトニウム利用」で行った提言に沿って、再処理、高速増殖炉、プルサーマルなどからの撤退を主張していきます。加えて、再処理の総合評価を現時点で再度行うことも求めていきたいと考えています。


核問題、世界はどう動くのか
不透明な状況が続く米中関係

2011年、核軍縮は膠着した状況で幕開け
 2010年が核軍縮への期待でスタートしたのに対し、今年は核兵器をめぐってどう展開するのか、不透明な幕開けとなりました。
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核問題はこじれたまま越年しましたが、今年に入って、北朝鮮は無条件で南北対話の早期再開を提案しました。しかし延坪島(ヨンビョンド)砲撃に責任ある措置を求めている韓国は、1月5日に訪韓した米国のボスワース北朝鮮担当特別代表らとの会談で、6ヵ国協議再開には南北関係の進展が必要だとしながらも「良い条件とタイミングが必要」として、簡単に応じる気配はありません。
 しかし、このまま膠着した状況が続けば、北朝鮮の核兵器開発が進むことは確実で、ゲーツ米国防長官も北朝鮮の核ミサイルは「5年以内に米国の直接の脅威になる」と危機感を表明しています。結局、朝鮮半島核問題を切り開く鍵は米国にあって、その米国がどう動くのか。1月18日~21日の胡錦濤・中国国家主席の訪米で、新しい展望が開けることを私たちは期待するものです。

米中協調の一方で新たな軍拡の動き
 現在の米国は極端な財政危機の中にあり、経済は中国に頼らざるを得ません。当然軍事的にも中国との協調が求められます。こうして今年1月、ゲーツ長官は3年ぶりに中国を訪問しました。しかし中国人民解放軍はゲーツ訪中に合わせて、次世代のステルス戦闘機「殲20」の試験飛行を行い、軍事力のさらなる進展を誇示しました。
 これに対する米国は、ゲーツ長官が訪中前の1月6日に記者会見を行い、2012年会計年度(11年10月~12年9月)から5年間の国防予算を780億ドル削減の発表とともに、部隊の統廃合、装備調達の効率化などで1千億ドルを捻出し、この費用で核兵器搭載可能な無人偵察機の開発やミサイル防衛など、優先順位の高い部門に集中的に投資すると語りました。
 米国が新しく開発する核搭載可能な無人長距離爆撃機は、昨年1月に米国が発表した「4年毎の国防見直し」(QDR)で強調された、「アンチ・アクセス環境下―接近攻撃できない状況での戦闘」に対応する、今後の米空軍の中心となると位置づけられています。
米中間では協調の一方で、熾烈な軍拡競争が始まりつつあると言えます。

核なき世界へ向けた取り組みは続く
 1月6日、一部マスコミで中国人民解放軍の戦略核ミサイルを扱う部隊「第2砲兵部隊」で、「核保有国との戦争で、国家存続の危機に置かれた場合、核兵器先制使用を検討する」との理論を部隊内で周知していると報じました。これは中国政府が、これまで「いかなる状況下でも、核の先制使用はしない」と発表してきた立場の変更ではないかと言われています。
 しかし中国の核先制使用論は、核ミサイル保有国から通常兵器で攻撃され、戦況が国家存続の危機に直面した場合と限定しています。これまで中国が言明してきた「いかなる状況下でも」核先制攻撃はしないという立場からは外れますが、米国を始め他の核保有国も、核保有国に対しては一度も核先制使用をしないと言ったことはありません。
 中国の洪磊(ホンレイ)外務省報道官は翌7日、「中国はいかなるとき、いかなる状況でも核先制使用はしないと厳粛に約束している」「報道は根拠がなく、他に魂胆があるものだ」と語っています。確かにマスコミ報道は昨年来の反中国路線に乗ったものと言えます。
 しかし、核ミサイルを保有する国は、核ミサイル配備のその日から、一部の戦術核を除いて、標的に照準を合わせて配備しているという現実があります。私たちは昨年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、最終文書が作成される課程で、多くの原案が核保有国の抵抗で訂正・削除されたことを思い起こすべきです。
 それでも最終文書の冒頭では「すべての国は『核兵器なき世界』を達成するという目標と完全に一致する政策を追求することを約束する」と述べています。これは私たちの希望です。私たちはこの目標に向かって、運動を広げていかなければなりません。そして日本では「核の傘」からの早期な離脱が求められています。
 しかし2011年を迎えて、日本は軍縮とは逆の方向へ向かいつつあります。1月5日にはアジア太平洋からインド洋に及ぶ安全保障問題を討議する「日米印戦略対話」創設を決定。1月10日には日韓防衛相会談がソウルで行われ、日米物品役務相互提供協定(ACSA)、軍事情報保全に関する規則を網羅的に定める軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結に向けた協議入りに合意しました。昨年12月に政府が閣議決定した「新防衛大綱」「中期防衛力整備計画」などに対する、私たちの運動はまだまだ続きます。
 

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