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【ニュースペーパー10月号】福島県でプルサーマル受け入れを表明―老朽原発で初の実施に不安高まる

2010年10月01日

福島県平和フォーラム事務局長 原 利正

「2回目の受け入れ」とアリバイ的三条件
 8月6日、福島県の佐藤雄平知事は、福島第1原発3号機におけるプルサーマル計画の実施受け入れを表明しました。東京電力(東電)は現在、10月に営業運転を開始する準備を進めています。実施されれば、佐賀の玄海と愛媛の伊方原発に次いで、全国で3番目となります。
 実は、福島県において知事が了解したのは、今回が2回目です。1998年に当時の佐藤栄佐久知事が全国で初めて事前了解を行った経緯があります。しかしその後、各地で明らかになった原発の燃料データ捏造、トラブル隠し、茨城県東海村のJCO臨界事故、関西電力のMOX燃料データ改ざん等の影響で、2002年に白紙撤回に至りました。
 ところが、昨年2月に原発をかかえる自治体(大熊町、双葉町など)が、県と県議会に対し議論再開を要請、また東電からも要請があったことから、7月に県は、エネルギー政策検討会を、また県議会では、エネルギー政策議員協議会を再開し議論を開始しました。
 県は検討会で、国や事業者、専門家の意見を聴くなどして検証作業を行ってきました。そして今年2月16日、県議会において佐藤雄平知事は、(1)第1原発3号機の高経年化対策、(2)同機の耐震安全性、(3)MOX燃料の健全性について、安全性が確認されれば、正式に受け入れると表明しました。

劣化が進んだ古いMOX燃料を使用
 3条件について、東電や経済産業省の原子力安全・保安院の結論は、実施について問題なしとするものでした。しかも保安院は、耐震安全性の評価をこれまで行ってきた通常の期間よりも大幅に短縮するという異例の措置もとっています。これらの背景には、東電が6月から9月にかけて行う予定の、第1原発3号機の定期検査に合わせてプルサーマルを実施しようとの計画があり、まさに「プルサーマル導入ありき」ではないかと指摘されているところです。
 元々、知事の示した3条件は、福島県の特別な事情を背景としています。実施予定の第1原発3号機は、76年運転開始という老朽炉で、また福島県沖は地震の巣であり、陸側にも断層が走っています。さらに、福島原発用のMOX燃料は11年前の99年に搬入されており、劣化が進んでいる上、不十分な検査体制でつくられた品質保証に問題があると言われています。
 また、県が求めてきた保安院の経産省からの分離は実現しておらず、核燃料サイクルが確立していない中で使用済み燃料の処分の目途も立たず、行き場のない使用済みMOX燃料が原発内に蓄積され続けることも大きな問題です。

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反プルサーマル福島県民集会でのデモ行進(2010年5月30日)

地元での闘いをさらに強化して
 今回の知事の了解後、東電は、8月21日にMOX燃料装荷を実施したのに続き、9月17日には原子炉起動(実際には、トラブルによって18日)、22日に試運転(発電)を開始することとしており、10月26日には国の総合負荷性能検査を受けて営業運転を開始する予定とされています。これが行われれば、高経年化対策が施されている沸騰水型軽水炉で、しかも長期保管のMOX燃料による、初めてのプルサーマル実施になります。
 しかし第1原発3号炉は、保安院の「保安活動総合評価」によれば「重要な課題あり」と判定されています。このまま、プルサーマルを実施すれば、将来に重大な禍根を残し、県民の安全を根底からゆるがすことになります。
 このような動きに対して、福島県平和フォーラムは、昨年5月に、社民党県連合及び地元の「プルサーマルに反対する双葉住民会議」の三者で脱原発県民会議を結成して、実施反対の取り組みを進め、5月に続いて9月19日にも大熊町で反対集会を開きました。今後もこれを軸に運動を強化していきます。

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