能登半島地震 - 原水禁

志賀原発と被災地を訪ねて 志賀原発視察レポート

2024年05月10日

井上年弘(原水禁専門委員)

■志賀原発への視察

3月22日、社会民主党の志賀原発視察団とともに、今年1月の能登半島地震後の志賀原発構内に入りました。自民党、マスコミ関係者に続く3番目となる構内視察となりました。

構内での視察は、北陸電力が「見せたいところを見せる」というもので、あまり被災の跡が見られませんでした。とはいうものの、これまで北陸電力が公表していた敷地内での地震による破損部分11ヵ所以外にも、10センチほどの段差がある場所や建屋と地面との隆起らしきところがあるのが見られました。まだまだ敷地内にこのような段差や亀裂などが存在しているのではないかと思われます。原発周辺の道路や港湾などで地割れや亀裂、隆起が数多く見られましたが、妙に原発だけが軽微だったように見えました。

志賀原発が、2011年3月の東日本大震災以降稼働しておらず、大事故にならずに済みましたが、それでも外部から電気を受ける2号機の変圧器や、配管などが壊れ、1万9800リットルもの油が流出し、一部海にも流出するなど、敷地内の機器に被害が出ています。その変圧器も、この時点では事故の様子はわかりませんでした。しかし復旧したとはいえ今も1系統2回線が使えないままだといいます。

一方で、今の構内での電力は他の系統で賄っているということでしたが、全て元のようになるにはいまのところ目途がたっていないとのことでした。

また、1号機の原子炉建屋の地下2階で震度5強相当の揺れを観測したとしていますが、構内44ヵ所に設置された地震計のデータは公開されていません。調査団は、1月1日の生データの開示を求めました。

核燃料プールも見学しましたが、地震の揺れによって、プールを囲む高さ1メートルほどのフェンスから水が溢れだしたことが説明されました。溢れだした水は、人の手でふき取ったとのことです。放射能を含んだ水だけに、人や機器への被曝も心配ですが、もし万が一水が漏れ、水位が大きく減るようなことがあれば、核燃料を冷やす機能が失われ、さらに大きな事故につながりかねません。

視察では十分に構内の被災の実態をつかめたとはいえませんが、今後、北陸電力が情報をさらに公開することを求めていきます。

■町中の被災を見て

志賀原発視察前に、志賀町の被災の実態を見てきました。

倒壊した家屋が町中のいたるところで見受けられ、かろうじて立っている家でも「要注意」の張り紙が張ってありました。原子力災害時の一時避難所の「志賀町文化ホール」でも、「建物の一部損壊により危険なため避難所を閉鎖します」と張り出され、原子力災害が起こった時に機能しないことがわかりました。道路のいたるところでも隆起や陥没、亀裂などが走り、港でも地割れや隆起などが見てとれました。

震災から2カ月以上が過ぎた時点でも、被災の状況がいたるところで見ることができました。もし、このような状態で地震・津波そして原発事故が重なる複合災害が起きれば、避難は困難を極めることが想像できます。国の指針では、全面緊急事態(原発過酷事故)に至った場合、放射性物質が通過する時に屋外にいることで、かえって被曝することを回避するために、UPZ圏内(5キロ圏内)の住民は屋内退避となっています。家が倒壊し、原子力避難施設も使えない状況ではどこに逃げればいいのか、あらためて考えさせられました。また、道路の寸断などで、逃げること自体も困難を極めることは明らかです。

港では隆起によって船が接岸できないところもあり、海からの避難や支援もできない場所がありました。原発による複合災害による避難は、抜本的見直しをする必要があります。地震と原発震災が加われば、避難そのものが厳しくなるとともに、冬季の大雪などが加わればさらにその困難さは増すばかりです。あらためて全国の原発立地地域で、避難の実効性を見直す必要があります。

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