2023年、声明申し入れ
【原水禁声明】岸田政権はフクシマを忘れたのか―GX法案成立に抗議する
2023年06月05日
原水禁は、6月5日付で以下の声明を発表しました。
岸田政権はフクシマを忘れたのか―GX法案成立に抗議する
岸田政権は脱炭素の加速化やエネルギー供給の安定化を理由に、福島第一原発事故以来「原発の依存度を低減」するとした、これまでの方針を転換し、原子力の最大限の活用、原発再稼働の推進と新増設、運転期間制限(現行原則40年、特別に60年まで)の撤廃、高速炉や小型原発、核融合炉の開発の推進などを打ち出した。これを受け、今国会でGX法案(「GX推進法」と「GX電源法」)を成立させた。
「GX電源法」は、原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の5つのエネルギー関連法の一括改正を図る「束ね法案」として提出され、審議・可決した。
原子力基本法は「原発の憲法」とも言われる重要な法となっている。その「改正」では原子力推進が「国の責務」であることが新たに加えられた。人材育成、産業基盤の維持・強化、事業環境の整備など、原子力事業者にかわり国が前面に出て原発復権を図ろうとするものだ。原発事故の影響を直接受けた福島県民の意見を聞くことなく、一方的に「改正」をおし進めるやり方には憤りを覚える。国の政策はどちらを向いて考えられているのか。生活者・市民の側ではく、後退する原子力産業界の救済にしか目が向けられていない。
さらに、原子炉等規制法と電気事業法では、原発の運転期間の上限規定を撤廃することで、60年超の運転も可能にした。60年超の老朽化した原発の運転は、危険以外の何物でもない。世界中どこを見渡しても60年超で運転している原発など存在しない。原子力規制委員の中でも反対の声があがった。地震大国日本にあって、老朽化した原発は何よりも危険だ。そもそも原発は60年を基にさえ設計されていない。「国策」の旗のもと、原発推進にひた走る経産省主導で老朽原発の延命が進み、原発周辺の住民の命が危険に晒される。避難計画を作成することが困難であるにも関わらず、安全が担保されない中で原発を動かすことなどあってはならない。
岸田政権の3.11以前の回帰は、「フクシマ」をなかったこと、終わったこととして忘れさることを意味する。いまだ原子力緊急事態宣言が続き、事故原発の廃炉も見通せない中での原発推進政策への転換は、被害者を侮辱するものだ。
法案を作り、いくら原発活用の旗を振っても、もはや原子力政策の破綻をとりつくろうことは不可能だ。26回も完工延期を繰り返し、実質破綻していると言わざるを得ない核燃料サイクル、日本全国各地どこでも困難な地層処分にこだわり続ける高レベル放射性廃棄物の行方、実効性のある避難計画を作成することもできないまま、推し進められようとしている原発再稼働など、原子力をめぐる課題の解決は不可能であり、環境は変わらない。原発を維持・推進するための資源があるのであれば、今すぐ再生可能エネルギーの研究開発・普及に使うべきだ。それがすでに生み出してしまった高レベル放射性廃棄物問題など、山積する課題を申し送ることになる次世代への償いであり、現世代の責任であると考える。
原発事故から12年。ドイツは脱原発を成し遂げた。日本は、原発を復権をさせ原発依存をさらに深めようとしている。どちらがフクシマの悲劇から教訓を真摯に学んだのか。私たちはGX法案の成立に抗議し、廃案と脱原発の実現をめざし、これまでの運動を揺らぎなく続けていく決意である。
2023年6月5日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野 浩一
金子 哲夫
藤本 泰成