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【鹿児島の取り組み】東日本大震災と川内原発に係る申し入れ 九電回答要旨

2011年05月16日

Ⅰ 概要

2011年3月11日の東日本大震災の地震と津波によって生じた福島第一原発などの原発震災を受け、川内原発増設反対鹿児島県共闘会議が3月25日に九州電力の眞部利應社長に申し入れたことへの回答が以下のとおりおこなわれました。
文責は、 川内原発増設反対鹿児島県共闘会議にあります。

(1)と き  2011年5月16日(月)10時~11時10分
(2)ところ  鹿児島市・九州電力鹿児島支店
(3)要請団:川内原発増設反対鹿児島県共闘会議……荒川譲議長、南徹郎社民党県連合代表、北森孝男社民党県連合幹事長・鹿児島市議、福司山宣介県議会議員、山崎博事務局長、牟田実事務局次長、吉海祐作社民党県連合、三園敏則川内原発建設反対連絡協議会代表世話人、佃昌樹薩摩川内市議
(4)回答者:九州電力鹿児島支店……尾形聖一広報グループ長、中山正輝広報グループ副長、桑木課長

Ⅱ 回答要旨
1 東日本大震災による福島第一原子力発電所などの損壊要因(地震、津波、もしくは複合要因など)と実態の解明を踏まえたうえで、川内原子力発電所1・2号機及び3号機の安全確保策について、数値を含めた詳細な情報を、特に以下の5項目について明らかにすること。

(1)川内原発の原子炉格納施設(原子炉建屋)の多重防護策[①止める(自動緊急停止装置)、②冷やす(非常用炉心冷却装置(ECCS):蓄圧注入系タンク3基・高圧注入系ポンプ3台・低圧注入系ポンプ2台、化学体積制御設備、余熱除去設備、原子炉補機冷却水設備、アニュラス空気再循環設備、原子炉格納容器スプレイ設備など)、③閉じ込める(五重の壁―燃料ペレット・燃料被覆管・原子炉圧力容器・原子炉格納容器・原子炉建屋)]及び原子炉補助建屋、燃料取扱建屋、タービン建屋などの多重防護策。
 

【九電】福島の状況が日々新しいことが分かっているので、今後、回答内容が変わることもあることについては理解していただきたい。
 原発の安全性確保を目的に、異常の発生や拡大、事故発生の防止、周辺環境への放射性物質の放出防止をおこなうために、原子炉格納容器・原子炉建屋が閉じ込める役割を担い、原子炉周辺建屋や原子炉補助建屋、燃料取扱建屋、タービン建屋などは重要な機器を設置するための建屋で閉じ込める役割を果たしていません。

質問≫原子炉格納容器・原子炉建屋以外の建屋は閉じ込める機能を持っていないということですね。
注:川内原発の使用済み燃料プールが設置されている燃料取扱い建屋には閉じ込める機能がない。
福島第一原発の使用済み燃料プールは閉じ込める機能を有する原子炉建屋内に設置。

【九電】そうです。

(2)使用済み燃料プール[燃料取扱建屋1階~地下2階、全炉心燃料の1,190%相当分の貯蔵能力]の貯蔵可能燃料本数と貯蔵本数、電源喪失時の冷却システム[ホウ酸水補給設備、使用済燃料ピット水浄化冷却設備]。

【九電】川内1号機は1,868本の貯蔵能力があり2011年2月末現在1,084本貯蔵し、2号機は1,356本の貯蔵能力で774本貯蔵している。冷却システムは全交流電源及び海水冷却機能が喪失した場合、ピット水の温度が上昇し蒸発するが、タンクと使用済み燃料の水頭差により冷却可能となる。高さの違いということ。

質問≫タンクとは?

【九電】屋外の地表面に設置している燃料取替用水タンクなど。

質問≫地震や津波があっても屋外のタンクは大丈夫で、破損しないという根拠は?

【九電】タンクの周りに、頂上部近くまでの高さの防護壁を作ることにしている。タンクの高さは今後検討します。
また、使用済み燃料ピットへ所内の様々の水源や宮山池(展示館横)からの水を送り込むため、仮設ポンプを配備するなどの対策をおこなっている。

(3)非常用電源設備(受電系統500kV2回線・220kV1回線、ディーゼル発電機2台、蓄電池2組)の電源喪失時の電源確保策(蒸気利用のポンプ駆動による原子炉の熱除去システム・300~500KW電源車2台)。
九電】全交流電源喪失時の緊急安全対策として、一次系設備を冷却する際に必要な中央制御室の監視系などに電気を供給する500KVAの高圧発電機車を配備した。
〈注:九電は、海水を利用して原子炉や使用済み燃料プールを冷却するためのポンプなどの電源を確保するために大容量発電機車を平成24年度初めまでに配備する計画を明らかにしている。〉 

(4)津波による海面の上昇・低下対策。

【九電】最新の知見による津波影響調査をおこない、津波の予想最高水位は海抜3.7㍍だが、原子炉建屋などの主要設備が設置されている敷地高さは13.0㍍なので津波による被害を受ける恐れはない。津波による水位の低下は、最低水位になっても原子炉の冷却に必要な海水の取水に問題は生じず、原子炉の安全性に影響はない。

質問≫バックチェックをおこなった際の評価を変えていないということですね。

【九電】現在の評価であって、福島で新しい知見が明らかになれば必要な対策を行っていく。

質問≫現時点では変える必要がないというのが九電の認識か?

【九電】現在おこなっている津波による全交流電源喪失に対応した緊急安全対策をしていけば原発の安全性は確保され、福島のような事態にはならない。

質問≫福島第一原発のバックチェックの津波の上昇・下降の想定水位は?

【九電】バックチェックの数字ではないが、設計時は5.7㍍と想定。

質問≫九電は、3.7㍍の想定津波に対応する地震の強さは6.9という回答をしていた。地震の規模想定は見直さないのか?

【九電】長崎半島の先の長崎開脚断層でマグニチュード8.1の地震が起こった時に川内原発に最も高い津波が来ると想定している。津波に係る対策について答えている。
注:九電の川内原発耐震安全性評価結果報告書(2008年12月22日)の津波に対する安全性評価では、上昇側水位3.7㍍で敷地高さ13.0㍍、下降側水位-3.7㍍で取水口敷高-6.0㍍とし、「良」と評価している。
  なお、東日本大震災での福島第一原発の津波の高さは14~15㍍、震度は6強、最大加速度値は550ガル。(東京電力「東日本大震災における原子力発電所の影響と現在の状況について」)

(5)格納容器の蒸気外部放出(ベント)など原発敷地外への液体・気体放出放射能量。

【九電】放出される放射能の量は事故の要因などによって変わる。事故の想定ができないので回答できない。

質問≫今回の福島第一原発事故と同じ想定をした場合を聞いている。

【九電】福島第一原発の事故状況もまだ分かっていないことが多く、回答できない。

(6)モニタリングステーション(県1、九電2)及びモニタリングポスト(県21、九電5)、放水口ポストなどの地震・津波対策。

【九電】地震や津波の対策は行なわれていない。不具合が生じたら修理し取り替える。

質問≫SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を直ちに機能させるために万全の地震・津波対策が必要では。地震・津波対策の必要がないということか。

【九電】現時点の回答。
注:ERSS(緊急時対策支援システム)やSPEEDIの基礎データとなるモニタリングポストからの放射線データが提供されなければ精度が落ちる。福島第一原発事故では8箇所のモニタリングポストが地震と津波でほぼ壊滅状況に陥った。

2 東北地方太平洋沖地震と同規模の地震が川内原発周辺で同じ日時に起こったと想定した際の川内原発1・2号機及び3号機(完成後・稼働中想定)の被害シミュレーションをおこない、その結果を直ちに県民に公開するとともに改善すべき課題を明らかにすること。
2項と3項、4項の前段を一括して回答

【九電】地震は地域により発生様式、規模などが異なり、地震に伴い発生する津波についても震源の深さや海底の地形による地域差がある。耐震安全評価で、津波は最大3.7m(東京湾標準を基準に)としており、敷地高さが13mなので津波は到達しないと評価している。
 ただし福島第一原発事故の詳細がわかっていないため、今後原因が明らかになれば、適切にとりくみを進める。

質問≫満潮時や引き潮時でも3.7mなのか

【九電】大潮満潮時で3.7m。そうでない場合はもっと低い高さだと評価している。引き潮の場合も同じように最大時でも-3.7mと評価している。

3 貴社は、発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(新指針)の改定に伴い2008年12月に「川内原子力発電所1・2号機の耐震安全性評価結果報告書」を経済産業省へ提出しましたが、「津波に対する安全性評価」で「川内原発周辺海域において想定される地震に伴う津波の数値シミュレーションを実施した結果、その中で最も大きい津波を想定しても、敷地高さを上回ることがなく、安全性に問題がないことを確認しました。また、津波により水位が低下した場合についても、原子炉補機冷却海水設備へ取水ができ、安全性に問題がないことを確認しました。」とし、別表(上昇側水位は東京湾平均海面の+3.7m程度に対し敷地高さ+13.0m、下降側水位-3.7mに対し取水口敷高-6.0m)を示しています。
福島第一原発の津波に係る耐震安全性評価結果と今回の震災による津波の実態を明らかにし、川内原発の「評価」について見直すこと。
なお、耐震安全性に係る指針の見直しを国に要請すること。

〈2項の回答参照〉

4 九州電力は、3月18日の薩摩川内市での住民説明会で、「川内原発は海抜13mの高台にあり津波は及ばない」、「電源を喪失しても蒸気を駆動源に炉心を冷却できる」、「使用済み核燃料は原子炉建屋とは別の建物で地下に貯蔵しているので福島のようなことは起こりえない」と回答したと報じられているが、その根拠を明らかにすること。

【九電】全交流電源喪失時に蒸気を駆動源にして動くタービン動の給水ポンプを用いて蒸気発生器の給水をおこない、蒸気発生器において一次冷却材との熱交換の結果、発生した蒸気を放出することにより蒸気発生器を介して原子炉の冷却をおこなう。
使用済み燃料ピットの冷却水の補給は、発電所の敷地の高さに設置されたタンクからおこなう。使用済み燃料ピットはその高さよりも低く設置されているので、水の輸送はポンプなどの原動機によらず、タンクの水面とピットの水面との水位差により補給が可能となっている。

質問≫同じような設備が福島にあったがうまく機能しなかった。川内の場合は機能する理由は何か?

【九電】福島は、最終的にはサスペッション(圧力抑制)プールの水を使って冷却をする。100℃を超えると冷却できなくなる。(川内の場合は)加圧水型のタービン動補助給水ポンプの機能を使えば、一次系の高温高圧水を二次系で冷却できるため、二次側から蒸気発生器へ水の給水が確保されれば、蒸気発生器を通じた放射性物質を含んでいない水を使っての長期にわたる冷却が可能。 

質問≫大地震でも蒸気発生器や配管などが破断せずに機能していることを前提にしている。損傷すると一次系も二次系もなくなり、福島の二の舞ではないか。

【九電】地震の影響についてはマグニチュード6.8とか6.9とかで評価している。
福島(の沸騰水型)は原子炉で発生した蒸気でタービンを動かし、蒸気を冷却した水は外に出さずに原子炉に戻さないといけない。また、正式に発表されたことではないが福島で決定的だったことは、バッテリーの電源がなくなったため原子炉の水位や圧力が監視出来なくなったとか、冷却に使うタンクの水がなくなったとか様々な要因が報じられている。
(川内の加圧水型は)蒸気発生器に冷たい水を送り、蒸気発生器で発生する放射能を含まない蒸気を主蒸気逃し弁から放出し原子炉を冷やす。

質問≫(川内の)加圧水型の短所は何か?

【九電】(福島の)沸騰水型にはない、蒸気発生器の中の細管に傷が生じることがアキレス腱だといわれている。

質問≫福島の使用済み燃料ピットは原子炉建屋内にある。川内は防護機能のない燃料建屋にある。福島のほうが安全なのではないか?

【九電】川内は使用済み燃料の冷却水の補給が自然の水位差でできる。福島は高いところにあるので注水に苦労したと聞いている。

5 3月18日の「地震に対する対応状況」にとどまらず、川内原発1・2号機の安全性確保策構築に全力をあげるとともに、3号機増設を断念し、増設に係る作業を直ちに停止すること。
さらに、電気事業者としてエネルギーの低消費化と自然エネルギーの利用拡大を進め、脱原発・脱化石燃料を進めるエネルギー政策に転換するよう国に求めること。

【九電】 原発は、燃料調達の長期安定性、運転時にCO2を排出しない、経済性など総合的に優れているので、安全安定運転を最優先に電源の中核としてその重要性は変わっていない。川内3号機の本格的な安全審査がこれから実施される予定であり、今回の事故原因などを踏まえた審査が行なわれると考えている。国の安全審査指針類の見直しが行なわれれば、それを取り入れた設計変更をおこなっていく。川内1・2号機は緊急安全対策を講じている。

質問≫原子力安全基盤機構が平成22年12月と平成19年4月にだした、地震に係る確率論的安全評価手法の改良に関する報告書を踏まえた対応をしているか?

【九電】報告書を知らない。

質問≫九電はこれまで津波対策だけしかしていない。耐震問題には手をつけていない。

【九電】独自で外部点検や復旧訓練などをしてきた。

質問≫東電も従来の指針に基づいてやってきた。しかし現実にはもろくも崩れ、現行安全指針が間違っていたことが明らかになった。国からいわれた対応策だけにとどまっていては東京電力の二の舞になるのではないか。

【九電】耐震設計などは基準や指針が見直されないと動けない。しかし、我々も国が指針を出す前でも電源車の配備や訓練など対応してきた。緊急安全対策を実施することにより、原発を安全に止める、冷やす、閉じ込めることはできると評価している。

質問≫これだけ大きなリスクを抱えている原発から撤退し、安心・安全な新たなエネルギーに転換するべきではないか。

【九電】今回の件を教訓に、原発をより安全なものにしていく。地元のみなさんのご理解を得ながら、今の段階では原発は引き続き推進していく。

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