声明申し入れ

【鹿児島の取り組み】東日本大震災関連・九州電力への申し入れ

2011年06月07日

2011年6月7日

九州電力株式会社
代表取締役社長  眞部 利應 様

原水爆禁止九州ブロック連絡会議
議 長  明石 佳成

原発はもういらない九州ブロック連絡会議
議 長  重野 安正

玄海原発設置反対佐賀県民会議
議 長  柴田 久寛

川内原発増設反対鹿児島県共闘会議
議 長  荒川  譲

東日本大震災と玄海・川内原発に係る申し入れ書

 貴職におかれましては、日夜、安心・安全な市民生活を確保するためにご尽力をいただいていることに対し心より敬意を表します。
 さて、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震とそれによる津波は、2万数千人もの死者や行方不明者、十数万人もの避難者や数十万にのぼる被災者を生み出すとともに沿岸部の街に壊滅的な被害をもたらしています。特に、「多重防護」という「安全神話」が脆くも崩れ去った福島第一原発の苛酷事故は今なお収束の目途が立たず、日本のみならず地球規模で原子力発電所及びその放射能汚染に対する健康不安や危機感が広がっています。
 菅首相は5月18日の記者会見で、川内原発3号機など2030年までに原発を現状より14基以上増やすとした政府の「エネルギー基本計画」を白紙にして見直し、再生可能エネルギーを基幹エネルギーと位置付け、省エネルギー社会を構築するとともに、地域分散型の自然エネルギーに対応して電力会社の発電部門と送電部門の分離などエネルギー政策の転換を明らかにしました。さらに原子力安全委員会斑目委員長は、原発の安全設計審査指針や耐震設計審査指針などの見直しを5月19日に明らかにしています。南日本新聞社が鹿児島県民を対象にした4月の世論調査によれば、7割近くの県民が増設に反対し、8割近くが太陽光・風力などの自然エネルギーを将来のエネルギーの中心にするよう求めています。
 貴社自らの判断に基づいて、新たな被曝者を生み出さず、国民に多大な犠牲と負担を押し付けて経営基盤を根底から揺るがす原子力発電事業から直ちに撤退し、人々に信頼される安心安全な電力供給をおこなうよう求め、下記のとおり申入れます。

1 増設手続きを凍結している川内原発3号機増設計画を中止し、白紙撤回すること。

2 玄海原発3号機でのプルサーマル運転を中止するとともに、政府に「核燃料サイクル計画」を放棄し、トラブル続きの高速増殖原型炉「もんじゅ」・高速実験炉「常陽」、六ヶ所再処理工場を廃炉にするよう求めること。

3 玄海原発1・2・3・4号機と川内原発1・2号機を計画的に廃炉にすること。
なお、定期点検にはいっている原子炉の再稼動については、地元自治体・議会及び住民の了解なしには行なわないこと。

(1)玄海原発1号機の脆性遷移温度が2009年には98度と想定を越して劣化し、93度未満という新設原子炉の業界基準を上回っているので直ちに停止させること。

(2)九州電力は、2011年3月30日の経済産業大臣指示≪津波により三つの機能(①全交流電源、②海水冷却機能、③使用済み燃料貯蔵プールの冷却機能)を全て喪失しても、炉心損傷や使用済み燃料の損傷を防止し、放射性物質の放出を抑制しつつ冷却機能の回復を図ること≫を踏まえた緊急安全対策が5月6日に国に評価されたとしている。
 しかし、この「緊急安全対策」は3月末時点で判明している知見に基づくものにとどまっているため、福島原発第一事故が未だ収束せず、事故の本格的な原因究明が明らかにされていないだけに、抜本的な安全対策が構築されるまでは運転を再開しないこと。少なくとも、九電が冷却機能を失わないよう平成26年度初めまでに完了するとしている対策を終えるまで再開しないこと。

(3)地震や津波対策がなされていないモニタリングステーション及びモニタリングポスト、放水口ポストの地震・津波対策を早急に行ない、整備計画を明らかにすること。

(4)玄海原発と川内原発それぞれに「原発安全地域審議会」(仮称)を新設し、苛酷事故に対応した住民の安全確保のシミュレーションなどの検討を、九電と行政、防災関係団体のみならず、地域住民の参加や原子力発電に批判的な知見を有する学識経験者を含めておこなうよう関係機関に求めること。

4 九州電力は5月31日、①東海・東南海・南海地震が連動しM(マグニチュード)9、②南海・日向地震が連動しM9、③対馬南西沖断層群・宇久北西沖断層群が連動しM8.1の3ケースを試算し、想定した地震により発生する津波の高さは発電所敷地高さより低く、敷地へ影響を及ぼすものではないとし、振動も基準地震動(玄海540ガル、川内540ガル)を下回ったと公表したが、以下の点を明らかにすること。

(1)国や有識者による「試算」結果の検証をおこなうこと。
(2)東海・東南海・南海・日向地震が連動した試算をM9以上でおこなうこと。
(3)玄海原発の耐震安全性評価において敷地に最も影響を及ぼす「検討用地震」とした城山南断層と竹木場断層及び評価対象とした8断層などが連動し、M9の地震を起こした際の試算をおこなうこと。
(4)川内原発の耐震安全性評価において「検討用地震」とした五反田川断層とF‐A断層、F―C断層及び評価対象とした13の断層などが連動し、M9の地震を起こした際の試算をおこなうこと。

5 マスコミ報道に係る九電の見解などについて

(1)福島第一原発は沸騰水型炉、玄海原発や川内原発は加圧水型炉だが、加圧水型の安全性に係るアキレス腱と指摘されている蒸気発生器との関連も含め、福島第一原発が加圧水型炉だったら被害が生じなかったのか明らかにすること。

(2)玄海原発及び川内原発の「耐震安全性評価結果報告書」の「津波に対する安全性評価」での津波評価(玄海は上昇2.1㍍・下降2.6㍍、川内は上昇3.7㍍・下降3.7㍍)を見直すとともに見直し計画を明らかにすること。
また、福島第一原発の津波に係る耐震安全性評価結果における津波評価内容と2011年3月11日の津波の上昇・下降水位を明らかにすること。

(3)福島第一原発1号機が津波前の地震で圧力容器や配管が損傷して放射性物質が放出したのではとか、3号機のECCS(緊急炉心冷却システム)の高圧注水系の配管が地震で破損していた可能性が報じられている。地震による福島第一及び第二原発などの被害状況を明らかにするとともに、原発の安全設計審査指針や耐震設計審査指針などの見直しを国に要請するとともに独自の見直し作業に着手すること。

(4)玄海や川内の使用済み核燃料ピットは地下にあるため、タンクとの水位差により全電源喪失時でも動力源無しに冷却できるとしているが、福島第一原発の原子炉建屋(閉じ込めるための5重の壁の一つで厚さ約1㍍の鉄筋コンクリート製)と川内原発燃料取扱建屋の強度及び密封性能の違いを明らかにすること。
また、福島第一原発の使用済み核燃料プールが原子炉建屋外の建屋地下に貯蔵されていたら今回のような事態に至らなかったのか、その理由とともに明らかにすること。

6 「電気ご使用量のお知らせ」について
 九州電力の「電気ご使用量のお知らせ」に、「太陽光発電促進付加金」とともに、印字スペースや示し難いことなどを理由に拒否してきた「原子力発電の廃棄物処理費用」(大島堅一立命館大教授によれば世帯あたり月200円強)を明示し、原子力発電の放射性廃棄物処理費用に係る消費者負担額を知らせること。また、福島原発事故の損害賠償の支払い財源を確保するために増税が検討されている「電源開発促進税」(1,000kwhにつき375円、標準世帯で月120円程度)額を明示すること。

7 計画停電について
 北海道・北陸・関西・中国・四国電力は節電数値目標を掲げていない(2011年5月26日:南日本新聞)にも関わらず、九州電力は5月18日の記者会見で、火力発電所のLNG燃料の調達が難しい場合は7月から9月下旬頃まで15%程度の節電を要請する考えを明らかにした。しかし、九州電力の「平成23年度供給計画の概要」の最大電力需給バランスでは、需要1,669万kWに対し供給力1,978万kW、供給予備力309万kW、供給予備率18.5%と、供給余力が十分にあることを明らかにしている。定期検査中の玄海2・3号機と川内1号機及び劣化している玄海1号機を除き、玄海4号機118万kWと川内2号機89万kWの計207万kWに2009年度末の原発以外の最大出力(設備容量)1,476万kWと小丸川1号30万kW(2010年7月運用開始)及び小丸川2号30万kW(2011年7月運用開始)を足すと1,743万kWになり最大電力需要1,669万kWを上回る。しかも、太陽光などの買い取り電力や他社からの購入電力、さらには計画停止発電所を稼動させ、廃止発電所の廃止時期をずらせば、節電数値目標など出さずに省エネを進めれば供給力は十分にある。
 2011年6月5日、石油やLNGの確保を理由に「九電電力不足回避へ」(毎日新聞)、「九電節電要請大幅に圧縮へ」(朝日新聞)と報じられたが、根拠不明な「15%節電」要請により定期点検後の原発再稼動を煽ってきたことは責任重大で許されない。これまで九電が「経営上の理由」だとして公表を拒んできた電力供給力の積算根拠などの情報を開示し、以下の点について明らかにすること。

(1)原発を稼動しなくても電力供給設備が十分にあることについて
ア 「平成23年度供給計画の概要」の最大電力時の供給力の積算根拠及び15%節電要請をすることとなった裏づけの供給力の積算根拠を、以下の8項目の電源ごとに明らかにすること。また、「供給計画の概要」と「裏づけ供給力」が相違することになった理由を明らかにすること。
    九州電力所有発電所の電力[①原発、②水力、③石炭火力、④石油火力、⑤LNG火力、⑥地熱などその他]及び⑦太陽光などの買い取り電力、⑧他社からの購入電力。
イ 2009年度末の最大出力(設備容量)は193発電所、2,002万kW(電気事業連合会)とのことだが、2011年3月末の最大出力(設備容量)を明らかにすること。
ウ 計画停止中の唐津2・3号機計87.5万kWの稼働時期を明らかにすること。
エ 平成23年度に廃止計画のある苅田新2号37.5万kW及び平成24年度に廃止計画のある大分1・2号機計50万kWの廃止時期の見直しの検討状況を明らかにすること。廃止時期を延長する場合は、新たな廃止時期を明らかにすること。
オ 2001年3月に着工後、工事をストップし2023年度以降に運用開始予定の松浦2号100万kWの工事再開の検討状況を明らかにし、再開する場合はその時期と運用開始時期を明らかにすること。

(2)燃料確保について
石油元売り会社で構成する石油連盟会長が「全体では足りている」(5月28日付け毎日新聞)と記者会見しているなかで、節電の根拠として石油火力発電所の低硫黄石油などの調達が難しい(5月25日付け南日本新聞)ことなどが報じられている。低硫黄石油とLNG(液化天然ガス)、石炭のそれぞれについて、燃料不足・価格・その他の面から燃料調達の見通しについて具体的に明らかにすること。

(3)電気使用量の縮減策などについて
ア 政府は、東京電力と東北電力管内で電力使用制限令により、大口需要家を対象に一定期間の一定時間帯に4段階に分けた削減義務付けようとしている。九州電力による「15%節電実施計画」(もしくは見直し後の「節電計画」)の詳細な内容と、実施された際の供給予備力、供給予備率を明らかにすること。
イ 電力消費の拡大に繋がる「オール電化」に係る営業活動を自粛し、ガスなど他のエネルギー源の活用も図りながら社会全体の省エネを推進すること。

8 「原水禁エネルギー・プロジェクトからの提言/持続可能で平和な社会をめざして」(原水爆禁止日本国民会議)及び「社民党脱原発アクションプログラム」(社会民主党)を踏まえ、「エネルギー基本計画」を白紙に戻し、再生可能エネルギーを基幹エネルギーにして省エネ社会を構築するという原発中心のエネルギー政策を転換するという政府の方向性を後押しし、原子力発電事業から撤退して自然エネルギー・再生可能エネルギーを中心とした小規模・地域分散型電力供給体制を構築すること。

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