声明申し入れ
日米原子力協定の自動延長にともなう原水禁事務局長見解
2018年07月17日
1988年に発効した日米原子力協定は、2018年7月16日に30年の期限を迎え、自動延長された。88年当時、日本では33基の原発が稼働していた。その後、2011年の福島原発事故までに54基が稼働し、3基が廃炉、3基が建設中だった。しかし、福島原発事故以降、15基の廃炉が決定し、新規制基準に対応して再稼働している原発は5原発8基にとどまっている。原子力発電をめぐる状況は大きく変化した。
一方で、原子力開発の初期段階から、使用済み核燃料の再処理によって生み出すプルトニウムを利用する核燃料サイクル計画の確立のために研究開発が進められてきた。88年段階で、すでに高速増殖炉実験炉もんじゅの本体工事が進められ、93年には六ヶ所再処理工場の建設が始まった。まさに国家プロジェクトとして事業は、そのスタートを迎えていた。しかし、もんじゅは95年のナトリウム漏洩事故以来、様々な問題を抱えて2016年12月に廃炉が決定した。六ヶ所再処理工場は23回の完工延期を繰り返し、先の見通しは立っていない。国家プロジェクトは破綻したと言っていい。
日本は、使用済核燃料の再処理をフランスやイギリスと契約するなどして、現在47トン(原爆約6000発分)ものプルトニウムを保有している。核拡散防止条約(NPT)加盟の非核保有国で再処理を行っているのは唯一日本のみだ。プルトニウムは核爆弾の原料であり、使用目的の明確でない余剰プルトニウム持つことは許されない。米国も具体的な削減計画を示すよう迫っていると伝えられている。
日本政府は、第5次エネルギー基本計画に「プルトニウム保有量の削減に取り組む」との記述を加え、保有量の上限を示すとしている。しかし、核燃料サイクル計画を放棄したわけではない。六ヶ所の再処理工場が稼働すると年間8トンものプルトニウムが分離される。MOX燃料工場を建設し軽水炉によって消費するとしているが、再稼働9基(MOX燃料を使用するプルサーマル炉は4基)という現状が示す通り、今後も順調に再稼働が進むとは思われず、プルサーマルも順調に進むとは考えられない。電力自由化が進みコストの削減が厳しく求められる中で、ウラン燃料の十数倍ものコストがかかることはこの流れに逆行し、MOX燃料は市場価値がないと言わざるを得ない。
いまや、コストの面からも、安全性の面からも、プルトニウムを利用する合理性はまったくないと言っていい。その中で、核燃料サイクル計画・プルトニウム利用に拘泥することは、「潜在的核戦力」保有という視点から周辺諸国の脅威とも言える。朝鮮半島の非核化の議論が始まっている中にあって、日本のこのような立場は、周辺諸国から納得を得るとは思えない。
日米原子力協定の自動延長にともない、今後は一方の通告で協定は終了できる。米国は、日本の原子力政策、特に核燃料サイクル政策により強く意向を反映させることができることとなり、エネルギー安全保障の観点に立てば、核燃料サイクル政策を進めれば進めるだけ、危うい状況を作り出すことになる。日本は、エネルギー問題の視点から、核戦力の視点から「核燃料サイクル計画」を放棄し、プルトニウム利用の政策を改めるべきだ。
原水爆禁止日本国民会議
事務局長 藤本泰成