声明申し入れ

日本政府の「福島原発事故収束宣言」に対する抗議声明

2011年12月19日

2011年12月19日

日本政府の「福島原発事故収束宣言」に対する抗議声明

原水爆禁止日本国民会議
議長 川野浩一

 12月16日、政府は原子力災害対策本部を開き、東京電力福島第一原発の原子炉が「冷温停止状態」になったとして、「事故そのものは収束に至った」と宣言し、今後は除染、健康管理、賠償に全力を挙げる考えを示しました。事故発生から9カ月あまり、避難を余儀なくされている福島県民の帰還もままならない中での事故の収束宣言は、あまりにも拙速といわざるを得ません。国内外の多くの専門家やマスメディアそして地元福島の自治体首長や住民らからも批判が大きくあがる中、あまりにも明白な政治的パフォーマンスであり、かえって国民の不安を高め、政府への不信を強めるものです。

 そもそも「冷温停止」と言う言葉は、正常にコントロールされている原子炉の状態で使うものであり、今回のように完全にコントロールを喪失し、放射性物質を閉じ込めることもできない状態で、「冷温停止」とすること自体に問題があります。
 現在も福島第一原発では、破壊された原子炉内部の状況がまったく把握できていません。溶融した核燃料がどこにあるのか、どのような状態にあるのかさえもわかっていません。放射性物質の放出も当初に比べ減ったとはいえ、通常の状態というレベルではありません。汚染水の海への流出も度々起こり、地下水が大量流入する中でその増加が懸念されています。保管場所も来春には満杯になり、対策の見通しが立たないのが現状です。

 原子炉冷却の循環注水冷却システムも度々故障し、その不安定性も危惧される中、廃炉まで長期間にわたって冷却していく必要があります。また、溶融した燃料を取り出すにはその技術開発も必要とされています。まだまだ際どい状況が続く中にあるのが福島第一原発の現実です。「収束宣言」はそのような状況を覆い隠すもので、国民に誤解をあたえるものでしかありません。今後予想される最大余震への対策も十分とは言えません。科学的根拠を示すことなく、あいまいな定義を持ち出し、国民を安心させようとするのは、あらたな「安全神話」をつくり出すことにつながります。
 事故収束へのロードマップのステップ2がやっと完了した段階であり、むしろ本格的な収束作業はこれからと言わざるを得ません。

 私たちは、事故の本質を見失わせるこのような安易な「事故収束宣言」に対して、強く抗議するものです。原水禁は、福島第一原発の現状に関する正確な情報提供を求めるとともに、安易に収束宣言を発出することなく、予想される余震への徹底した安全対策と放射性物質の完全な隔離及び早期の廃炉に向けて、万全の努力を関係機関に対し強く要請するものです。

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