11月, 2025 - 原水禁

原水禁声明「信を問う」とは何か 柏崎刈羽原発の再稼働は県民からは認められてはいない

2025年11月26日

11月26日、東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働容認表明を受けて、原水禁は以下の声明を発表しました。

 

原水禁声明 「信を問う」とは何か 柏崎刈羽原発の再稼働は県民からは認められてはいない

 

11月21日、「信を問う」と繰り返し発言してきた新潟県・花角英世知事が、東京電力(東電)柏崎刈羽原発の再稼働の容認を正式表明した。東電福島第一原発事故の原因究明も、原発事故被害者への補償も十分には進まず事故の収束さえ見通せない中で、知事が再稼働を認めたことに私たちは強い危機感と深い憤りを覚える。「信を問う」手段は、県議会で信任を仰ぐことではなく、県民投票や知事選挙ではないのか。

原発推進政策に舵を切った政府は、避難道路整備の全額国費負担や、柏崎刈羽原発周辺自治体への財政支援拡大など、「地元の理解」を得るための施策を次々と打ち出してきた。こうした「支援」を背景に、知事が再稼働容認へ傾いたとされるが、県民意識調査では賛否が拮抗しており、再稼働への理解が得られているとは言えない。知事が新潟県議会を『信を問う』方法として選んだ理由として、「投票という形を取ると分断が深まる」と述べている。しかし、住民の分断を招く可能性を認識しながら再稼働を容認すること自体が矛盾している。

柏崎刈羽原発では、テロ対策の秘密文書を社員が無断でコピーするなど管理不備が今年6月に複数見つかっていたことが明らかになっている。2021年にもテロ対策をめぐる不備が相次ぎ、原子力規制委員会が「事実上の運転禁止命令」を出していた。この命令は解除されたとはいえ、東電の安全への意識改革が徹底したとは感じられない。原発事故を起こした当事者でありながら、基本的な安全管理もできず、欠陥を露呈し続ける東電に原発の運転を任せることはできない。

2026年3月で東電福島第一原発事故から15年を迎えようとする今も、事故による避難を強いられ、故郷に戻れない人々は各自治体の発表を合計すると5万人以上にのぼる。東電が事故を起こした責任をいまだ果たし切れていない中で再稼働に進むことは、原発事故被害者を切り捨てることにもつながる行為である。

柏崎刈羽原発は2007年の中越沖地震で被災している。日本のどこであっても巨大地震が発生し、海岸線に津波が押し寄せる可能性を考慮しないわけにはいかない。それこそが東電福島第一原発事故の教訓ではないか。能登半島地震でも示されたように、災害時の避難は容易ではなく、港湾や道路が利用できなくなる複合災害は免れない。

原子力政策は行き詰まり、経済面でも環境面でも利点はない。さらに再稼働によって「核のごみ」が増え続けると、いまだ解決の目途が立たない「高レベル放射性廃棄物処分場」の問題はより一層深刻なものとなる。

私たちは、住民の不安と反対の声を十分に聞き入れない今回の知事の再稼働容認に断固反対する。
知事に対し、柏崎刈羽原発の再稼働容認を撤回するよう求めるとともに、県民投票や知事選挙などの手段によって住民に「信を問う」べきだ。日本政府に対しても、原発依存の政策から脱却し、地域分散型の再生可能エネルギーと省エネルギーへの転換へととりくみをすすめることを重ねて求める。
二度と原発事故を繰り返させないために。命と暮らしを守るために。
原水禁は、東電による柏崎刈羽原発の再稼働を決して容認することはできない。すべての原発を今すぐ停止し、廃炉に向けた具体的な道筋を描くことが必要であると訴える。

2025年11月26日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野浩一
金子哲夫
染 裕之

アメリカ・トランプ大統領の核実験再開指示に抗議し、核兵器のない社会の実現をめざす原水禁声明

2025年11月04日

10月30日にアメリカ・トランプ大統領が核実験の再開を指示したことに対し、原水禁は以下の声明を発表しました。

アメリカ・トランプ大統領の核実験再開指示に抗議し、
核兵器のない社会の実現をめざす原水禁声明

10月30日、アメリカのトランプ大統領が、中国の習近平国家主席との会談直前に、SNSで核実験再開を国防総省に指示した。翌日には、いくつかの実験を行うつもりであること、また地下核実験の実施も否定せず、ロシアや中国を念頭に対抗する姿勢を示した。一方、アメリカ国内の核戦力を担当するコレル海軍中将は、10月30日の上院公聴会において、「大統領の発言が核実験を意味すると決めつけるつもりはない。中国もロシアも爆発を伴う核実験を行っていない」と述べた。11月2日、アメリカ・エネルギー省のライト長官は、「核爆発を伴うものではなく臨界前核実験であり、システムテストだ」と述べた。議会調査局によれば、アメリカでは大統領の決定から36か月以内に地下核実験を実施する能力を維持することが義務づけられている。

アメリカでは1992年を最後に、爆発を伴う核実験を停止し、その後は臨界前核実験を行ってきた。もちろん、臨界前核実験の実施であれば許されるということでは決してないし、臨界前核実験についても原水禁はこれまで抗議声明を発出するなど、あらゆるかたちの核実験に反対してきた。その上で今回、私たちが決して看過できないのは、核実験実施を外交の交渉カード、いわゆる「ディール」の材料として用いようとするトランプ大統領の姿勢である。被爆から80年を迎えてもなお、原爆の被害に苦しむ多くの被爆者がいるという現実を直視することを強く求める。

アメリカをはじめロシア、中国も批准している核不拡散条約(NPT)では、第6条において締約国に、誠実に核軍縮に核軍縮交渉を行う義務を規定している。また、2021年に発効した核兵器禁止条約(TPNW)は核兵器に関するあらゆる活動を禁止している。国連への加盟資格のある197か国のうち過半数の99か国がこのTPNWに参加しており、核兵器廃絶に向けた歩みを進めることこそが、国際社会全体から求められていると言える。

今回のトランプ大統領の発言はこうした国際社会からの要請に背を向けたものと言わざるを得ず、私たちは決して許すことができない。2026年4月にはNPT再検討会議がアメリカ・ニューヨークで開催される予定だ。アメリカを含めた核保有国には、「誠実な核軍縮」に向け具体的な進展をはかることを、私たちは強く求めたい。そして2026年11月に開催予定のTPNW再検討会議に向けて、国際社会全体で核兵器廃絶の道筋を確立させていく必要があることを私たちは確認する。

高市首相が10月28日に行われた日米首脳会談の際、トランプ大統領を「ノーベル平和賞に推薦する」意向を示したとされるが、言語道断である。戦争被爆国の政府として、トランプ大統領の姿勢を厳しく批判し、改めるように求めるべきだ。また、会談のなかでさらなる「軍事費拡大」をはかることを約束したり、米軍横須賀基地の原子力空母の上で高市首相がスピーチするなどして、日米の軍事一体化をいっそうおし進めようとする日本政府の姿勢は、決して私たちの安全な暮らしにはつながらず、むしろアジアにおける軍事的緊張を高めることになる。「核抑止」論をのりこえた平和の構築こそが望まれている。

原水禁は、今回のトランプ大統領の核実験再開指示に抗議するとともに、これまで進めてきた核廃絶を求めてきた原水禁運動を、今後も着実に進めることを改めて決意する。「核と人類は共存できない」という揺るがない理念のもと、市民の力の結集によって、国際社会全体を動かしていくことをめざし、日々の原水禁運動にまい進していくことを確認する。

2025年11月4日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野浩一
金子哲夫
染 裕之

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