2024年声明申し入れ

第7次エネルギー基本計画(原案)に対する原水禁声明

2024年12月18日

12月17日に政府が「第7次エネルギー基本計画(原案)」を公表しました。原発の「最大限の活用」をかかげる計画案に対し、原水禁として声明を発表しました。

 

第7次エネルギー基本計画(原案)に対する原水禁声明

政府・経済産業省は、中長期的なエネルギー政策の指針を示す第7次エネルギー基本計画に向けた原案を12月17日に示した。2050年の「カーボンニュートラル」の実現、ウクライナや中東情勢をめぐる「エネルギー分野におけるインフレーション」、DXやGXの進展にともなう今後のエネルギー需要の増大を理由に、2040年度の電源構成の見通しについて原子力を「2割程度」とし、既設の原子炉を「最大限活用する」としてこの間の原発の再稼働を正当化し、次世代革新炉の研究開発を進めると宣言している。福島第1原子力発電所における事故を踏まえる形で「可能な限り依存度を低減する」としていた2014年度以降の基本計画からの重大な方針転換である。
2023年2月に決定された「グリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けた基本方針」では同一の敷地内としていた廃炉後の原子炉の建て替えについても、「同一事業者の原発の敷地内」であれば建て替えを認める方向へと条件が緩和されている。現実には、この間の各地の原発の新規建設計画はいっこうに進んでおらず、「最大限の活用」は老朽原発のさらなる延命を前提とする無謀な計画と言わざるを得ない。そもそも、既存の各原発内における使用済み核燃料の貯蔵容量が限界に近付き、最終処分の見通しも立たないなかでは、原発の運転の停止こそが現実的な方針である。
地球温暖化対策が喫緊の課題とされるなか、2021年の第6次基本計画では、再生エネルギーを「温室効果ガスを排出しない脱炭素エネルギー」と位置づけて主電源化に取り組むとして2030年度の電源構成で「36~38パーセント」に引き上げる方針が示されていた。ところが、今回公表された第7次基本計画の原案では「再生エネルギーに最優先でとりくむ」という文言が削除されたうえ、2040年における「4~5割程度」という比率も2050年の「カーボンニュートラル」実現という方針をきわめて疑わしいものとしている。
2023年度の日本国内における発電実績は、再生エネルギーが22.9パーセント、原子力は8.5パーセントに過ぎず、68.6パーセントを火力に依存している。火力の約半分がCO2排出量の多い石炭火力であり、2023年の発電実績で再生エネルギーの比率が4割以上を実現した国々があるEUや、加盟国の3割が「脱石炭」を達成しているOECD諸国に比べると、日本における温暖化対策の遅れがますます明確になっている。今回の原案では、二酸化炭素の出ない水素やアンモニアの活用により火力発電の脱炭素化を進めるとされているが、石炭火力については「安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源」として「非効率な石炭火力を中心に発電量を減らしていく」という表現にとどまっている。ウクライナや中東の情勢を受けた「エネルギー分野のインフレーション」を問題にしつつ、実際には火力への依存を継続する無策をさらけ出すものであり、今のままでは国内での電力供給そのものに深刻な危機がもたらされかねない。
脱原発、脱炭素社会の実現こそが気候危機に対する唯一の解決策であり、エネルギー政策の転換が必要である。原水禁は、問題を先送りする女川原発、島根原発をはじめとする原発の再稼働に反対し、第7次エネルギー基本計画において、再生可能エネルギーの活用を中心としたエネルギー計画、電源構成を示すことを日本政府に求める。

2024年12月18日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野 浩一
金子 哲夫
染  裕之

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