6月, 2023 - 原水禁

「被爆者問題議員懇談会」が被爆体験者問題をテーマに会合を開きました

2023年06月15日

超党派の国会議員による「被爆者問題議員懇談会」は、6月14日、会合を開きました。

今回、被爆体験者問題(※)をテーマにヒアリングが行われました。この問題にとりくんできた長崎市議会議員の池田章子さんがスライドを使って経緯や課題について説明したのち、多長被爆体験者協議会の山内武会長をはじめとした当事者が早期の解決を求める発言を行いました。

ここには厚生労働省の担当者も同席し、参加した国会議員から率直な質問や意見が交換されました。このなかで、長崎県・市が要望していた国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館所蔵の被爆体験記の調査分析に7月ごろから着手する予定があることが明らかにされました。国は広島の「黒い雨」訴訟での原告勝利判決後も、長崎で(放射性物質を含む)「黒い雨」が降った客観的証拠がないとして被爆者認定を拒んでおり、今後このような国の方針が変更される可能性があります。

原水禁は引き続き当事者の人びとと連携・協力し、被爆体験者問題の早期解決を実現するためにとりくんでいきます。

【参考記事】長崎原爆の体験記調査 来月にも着手 厚労省が方針 「黒い雨」で県と市が要望 被爆体験者の救済巡り
https://nordot.app/1041889297977639864

※被爆体験者…長崎では行政地域を基準に被爆者認定を行ったため、爆心地から半径12キロメートル圏内であっても国の指定する被爆地域外となり被爆者として認定されない人びとを「被爆体験者」としています。

 

【原水禁声明】岸田政権はフクシマを忘れたのか―GX法案成立に抗議する

2023年06月05日

原水禁は、6月5日付で以下の声明を発表しました。

岸田政権はフクシマを忘れたのか―GX法案成立に抗議する

岸田政権は脱炭素の加速化やエネルギー供給の安定化を理由に、福島第一原発事故以来「原発の依存度を低減」するとした、これまでの方針を転換し、原子力の最大限の活用、原発再稼働の推進と新増設、運転期間制限(現行原則40年、特別に60年まで)の撤廃、高速炉や小型原発、核融合炉の開発の推進などを打ち出した。これを受け、今国会でGX法案(「GX推進法」と「GX電源法」)を成立させた。

「GX電源法」は、原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の5つのエネルギー関連法の一括改正を図る「束ね法案」として提出され、審議・可決した。

原子力基本法は「原発の憲法」とも言われる重要な法となっている。その「改正」では原子力推進が「国の責務」であることが新たに加えられた。人材育成、産業基盤の維持・強化、事業環境の整備など、原子力事業者にかわり国が前面に出て原発復権を図ろうとするものだ。原発事故の影響を直接受けた福島県民の意見を聞くことなく、一方的に「改正」をおし進めるやり方には憤りを覚える。国の政策はどちらを向いて考えられているのか。生活者・市民の側ではく、後退する原子力産業界の救済にしか目が向けられていない。

さらに、原子炉等規制法と電気事業法では、原発の運転期間の上限規定を撤廃することで、60年超の運転も可能にした。60年超の老朽化した原発の運転は、危険以外の何物でもない。世界中どこを見渡しても60年超で運転している原発など存在しない。原子力規制委員の中でも反対の声があがった。地震大国日本にあって、老朽化した原発は何よりも危険だ。そもそも原発は60年を基にさえ設計されていない。「国策」の旗のもと、原発推進にひた走る経産省主導で老朽原発の延命が進み、原発周辺の住民の命が危険に晒される。避難計画を作成することが困難であるにも関わらず、安全が担保されない中で原発を動かすことなどあってはならない。

岸田政権の3.11以前の回帰は、「フクシマ」をなかったこと、終わったこととして忘れさることを意味する。いまだ原子力緊急事態宣言が続き、事故原発の廃炉も見通せない中での原発推進政策への転換は、被害者を侮辱するものだ。

法案を作り、いくら原発活用の旗を振っても、もはや原子力政策の破綻をとりつくろうことは不可能だ。26回も完工延期を繰り返し、実質破綻していると言わざるを得ない核燃料サイクル、日本全国各地どこでも困難な地層処分にこだわり続ける高レベル放射性廃棄物の行方、実効性のある避難計画を作成することもできないまま、推し進められようとしている原発再稼働など、原子力をめぐる課題の解決は不可能であり、環境は変わらない。原発を維持・推進するための資源があるのであれば、今すぐ再生可能エネルギーの研究開発・普及に使うべきだ。それがすでに生み出してしまった高レベル放射性廃棄物問題など、山積する課題を申し送ることになる次世代への償いであり、現世代の責任であると考える。

原発事故から12年。ドイツは脱原発を成し遂げた。日本は、原発を復権をさせ原発依存をさらに深めようとしている。どちらがフクシマの悲劇から教訓を真摯に学んだのか。私たちはGX法案の成立に抗議し、廃案と脱原発の実現をめざし、これまでの運動を揺らぎなく続けていく決意である。

2023年6月5日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野 浩一
金子 哲夫
藤本 泰成

「どうする?原発のごみ全国交流集会」で「高レベル放射性廃棄物に関する提言」を採択

2023年06月01日

原水禁は5月27・28日、北海道平和運動フォーラム原子力資料情報室とともに「どうする?原発のごみ全国交流集会」を札幌市で開催しました。のべ600人の参加者は4つの分散会と全体集会をつうじて活発に議論をかわしました。その内容を踏まえ、「高レベル放射性廃棄物に関する提言」と集会アピールを採択しましたので、ここに掲載します。

高レベル放射性廃棄物に関する提言

1.前提から誤った現在の政策の根本的問題点

日本の高レベル放射性廃棄物政策は、いくつもの誤った前提により推進されています。それは、現在までの政策の失敗の根本原因となっています。以下に、それを列挙します。

〇破綻した使用済み核燃料の全量再処理計画
第一に、使用済み核燃料の全量再処理への固執です。日本は原発の稼働によって生み出される使用済燃料を再処理し、ウランやプルトニウムを燃料として再利用しつつ、その過程で発生する高レベル放射性廃液をガラス固化した上で処分する核燃料サイクルの方針を堅持しています。しかし青森県・六ヶ所村にある再処理工場は、2022年9月に26回目の稼働延期が決定されました。もともと1997年に完成予定でしたが、25年間も延期を繰り返しており、稼働の見通しは立っていません。

さらに再処理によって取り出したプルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料を原料にする高速増殖炉「もんじゅ」は、2016年に廃炉が決定されました。MOX燃料を軽水炉で使用するプルサーマル発電で消費されるプルトニウム量は限られ、余剰プルトニウムを持つことが許されないことから、プルトニウム抽出という再処理をする目的自体が失われています。ガラス固化体は現在約3000本ありますが、使用済み核燃料をすべて再処理すれば、2万7000本相当になると政府は説明しています。このガラス固化体を4万本以上埋設できる最終処分場を建設することが計画されています。使用済み核燃料の全量再処理が実現不可能な以上、現在の最終処分場計画は机上の空論にすぎません。

〇原発推進と紐づいた最終処分事業の目的
第二に、最終処分事業の目的も誤っています。2000年に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(以下、最終処分法)によると「発電に関する原子力の適正な利用に資するため」に最終処分を計画的かつ確実に実施すると規定しています。つまりは原発の推進、原発の安定的で継続的な運転のために処分場を探すということです。

またこの目的は、最終処分に関する議論にも影響を与えています。つまり、原発推進の立場である経済産業省やNUMO(原子力発電環境整備機構)が、公論形成を担うといういびつな構造が生まれています。事実、高レベル放射性廃棄物に関する審議会は経産省の下に置かれており、最終処分法では、基本方針や基本計画も経産省が策定することになっています。これでは政策の批判的な検証ができません。

〇唯一の選択肢としての地層処分
第三に、最終処分の方法として、地層処分を採用していることです。世界的に多くの国が地層処分選択しているのは事実です。しかし、4つのプレートがぶつかり合う日本において、安定な地盤を探して地層処分することは困難と考えられます。それにもかかわらず、高レベル放射性廃棄物の管理・処分に関する技術的な研究・開発は地層処分に偏重しています。

〇首長主導による不透明な応募方式
第四に、地方自治体の首長が独断で応募できる意思決定の構造です。住民への十分な説明なしに首長が独断専行で応募できる現行の方式では、民主的な意思決定の担保が困難です。

〇交付金誘導による問題
第五に、交付金の誘導により応募させようとしている問題を指摘できます。現在の制度では、2年間の文献調査で20億円、4年間の概要調査で70億円の交付金が交付されることになっています。「金で釣る」と批判されてきた方式は、地域住民の不信を広げ、地域社会の混乱も助長するだけです。

〇地域の分断を伴う最終処分地調査
2020年11月に北海道寿都町と神恵内村で文献調査が開始されてから2年以上が経過しました。町長の独断専行により調査の是非を巡って寿都町は分断され、神恵内村では物言えない雰囲気が作られました。両町村の問題とその解決のための提言は最後の補遺にまとめています。
私たちは誤った政策による犠牲をこれ以上繰り返さないために、以下のような提言を行います。

2.脱原発による総量管理と長期保管

〇学術会議の提言
約84万人の科学者を代表する機関である日本学術会議は、原子力委員会からの求めに応じ2012年9月に提言をまとめています。提言は6つの内容からなっています。

①高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し
②科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保
③暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築
④負担の公平性に対する説得力ある政策決定手続きの必要性
⑤討論の場の設置による多段階合意形成の手続きの必要性
⑥問題解決には長期的な粘り強い取組みが必要であることへの認識

私たちはこの提言を、核のごみの処分について真剣に考え直していくための出発点にすべきと考えます。科学者自らが政策枠組み行き詰まりの第一の理由を「超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに当たっての現時点での科学的知見の限界」とする②を重く受け止めるべきです。

〇総量管理の必要性
③では、原子力政策に関する大局的方針についての国民的合意が欠如したまま最終処分地選定という個別的な問題に合意を得ることは無理であること、利害関係者が討論する前提条件として暫定保管と総量管理の2つを柱に政策枠組みを再構築することが提言されています。学術会議は、総量管理とは高レベル放射性廃棄物の総量に関心を向け、それを望ましい水準に保つこととしています。高レベル放射性廃棄物の総量に関心が向かえば、一刻も早く脱原発を達成して、総量を確定させる必要性に気づくはずです。脱原発を先延ばしにして高レベル放射性廃棄物を無尽蔵に増大させるのでは処分のあり方に合意が得られないことは明らかです。

NUMOによれば、現在、高レベル廃棄物はガラス固化体約27,000本分とされていますが、実際にあるガラス固化体は約3,000本で、大部分が使用済み核燃料のままです。また、取り出したプルトニウムを普通の原発で使用するプルサーマルの使用済み燃料は、六ケ所再処理工場では再処理できません。再処理してプルトニウムをさらに再利用する核燃料サイクルを商業的に回している国は世界にありません。ガラス固化体を前提とした地層処分は見直さざるを得ません。総量管理にあたっては、ガラス固化体の総量と使用済み核燃料の総量を区分して考える必要があります。

〇長期間の保管しか選択肢はない
いったん不十分な形で地層処分してしまえば取り返しのつかない放射能汚染が危惧されることから、今の段階では保管するしか選択肢がないと考えられます。日本学術会議は、2015年4月にフォローアップの提言を公表し、その中で「暫定保管の期間は原則50年とし、最初の30年までを目途に最終処分のための合意形成と適地選定、さらに立地候補地選定を行い、その後20年以内を目途に処分場の建設を行う。なお、天変地異など不測の事態が生じた場合は延長もあり得る。」としています。しかし、あらかじめ30年とか50年と区切りをつけても、その間に地層処分が安全に行えるようになるとの保証はありません。

地層処分場の建設を進めている北欧の国と違い、日本列島はプレートが沈み込み地震が多発する変動帯に位置しています。100万年単位で安全を考えなければならない高レベル廃棄物を地層処分できる安定した場所はないと考えなければなりません。

となれば期限を付さない長期的な保管を前提に代替案を考えるべきです。神社では数十年ごとに本殿を立て替えてご神体を移す遷宮を行っているところがあります。これと同じように、保管施設の耐用年数が来たら、保管施設を新たに作りやり直すしかないのではないでしょうか。

国などは、保管では戦争やテロのリスクがあると主張しますが、それならば一刻も早く原発を止め、高レベル廃棄物の発生を止めるべきです。もともとリスクの高い高レベル廃棄物はどのような処理処分をしようと、リスクをゼロにすることはできません。都合のいい時だけそのような主張をすることは許されません。

3.発生者責任、国の責任

〇排出者責任か国の責任か
長期的な保管を前提にすると、使用済み燃料は各電力会社、ガラス固化体は日本原燃が行っている現状の保管体制でいいのか検討が必要です。

環境問題では、汚染者負担の原則が国際的なルールです。放射性廃棄物でない家庭ごみや産業廃棄物の処理を規定した廃棄物処理法でも、処理処分は排出者の責任です。また、循環型社会形成推進基本法では、拡大生産者責任を盛り込んで、事業者に、製品、容器、原材料が廃棄物になった時まで含めた必要な措置を求めています。これらの考え方を援用すれば、これまで原発で電気を生産してきた電力会社に責任があることは言うまでもありません。

一方で、電力自由化など改革が行われてきた中で電力会社が今後も今のままの形で存続するのか分からず、10万年管理が必要とされる高レベル廃棄物を保管し続けることはできないとも考えられます。また、原子力は国策民営として進められていた経緯もあり、国の責任も免れません。日本も締結している「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」では、21条に「使用済燃料管理又は放射性廃棄物管理の安全のための主要な責任は関係する許可を受けた者が負う」とされている一方で、前文に「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全を確保する最終的な責任は国が負う」とも記されています。

〇放射性廃棄物管理機関の可能性
独自の政策提言を行う活動を続けている「原子力市民委員会」は、廃止をした原子力施設をイギリスの原子力廃止措置機関を参考に設立する「日本原子力廃止措置機関」に移管して廃止措置を進めることを提言しています。イギリスの廃止措置機関は、エネルギー法に基づいて2005年4月に公的機関として設立されており、国が責任を負う体制といえます。廃止措置機関は廃炉のための機関ですが、この考えにならうと公的機関として「放射性廃棄物管理機関」を設立し、そこが業務を行うという考え方が成立します。

しかし、もともとイギリスの原発は国有であったものを民営化した経過があり、国有時代に発生した原子力債務への積立てがされていなかったことや長期にわたって責任を果たす機関が必要であると判断されて廃止措置機関が設立された経過があり、日本とは事情が異なります。

日本でも廃炉時代の本格化に伴って廃止措置機関に関する議論は総合資源エネルギー調査会の廃炉等円滑化WGなどで行われてきましたが、廃炉は引き続き各電力会社の責任で行い、廃炉のための拠出金の管理や廃炉の総合調整を「使用済燃料再処理・廃炉推進機構」に負わせることになりました。原発60年超運転を可能にする原子炉等規制法改悪などとともに束ねられたGX脱炭素電源法で措置されています。すなわち国は当面、原子力廃止措置機関を設立する選択はとらなかったということです。

しかしながら、電力会社等の民間による高レベル放射性廃棄物の長期保管には限界があると考えられ、脱原発を達成した将来的には日本版廃止措置機関や放射性廃棄物管理機関の設立を検討すべきでしょう。

放射性廃棄物管理機関を設立する場合には、高レベル放射性廃棄物という厄介ものを国に押し付けたがっている電力会社の免責につながらないよう制度設計を行わなければ、納得感は得られません。しかし、これまで高レベル放射性廃棄物のために手当てしてきた資金を国に拠出させることは当然としても、どのようにすれば電力会社の免責につながらないかは悩ましいところです。

また、公的機関となる放射性廃棄物管理機関が国策として事業を行うとなると、民間事業でできなかった「強制代執行」のようなことができるようになるのかも議論しておく必要があります。民意や地域の意向を無視して事業を強行することなどないように民主的な監視機関も併せて設置することが必要と考えられます。

4.世代間倫理、地域の公平性に対する考え方

〇将来世代に対する責任の取り方
世代間倫理とは私たち現世代の人間が将来世代の人々の生存可能性に対して責任を持つべきであるとする考え方です。大量生産・大量消費による資源の枯渇問題や環境破壊、地球温暖化など、環境倫理の観点からも対策が求められているといえます。

政府は高レベル放射性廃棄物を人間環境から長期に隔離する地層処分することで対処するとしてきました。しかし、放射性廃棄物は人類の歴史を越える寿命の長さを持っているので、地層処分では、将来の世代に人間の生活環境に漏れ出して、何らかの影響を与えることが避けられません。

原子力を利用する時代は1950年代から始まりました。福島第一原発の大量放射能放出事故などいくつかの大事故を経験して、原子力利用時代は近い将来に終わりを迎えようとしています。したがって、原子力利用時代に作り出した大量の放射性廃棄物による環境への漏出・影響がその後に始まります。すなわち、原子力利用の負の側面(放射性廃棄物)だけが残り、将来世代に何らかの影響を与えることになります。このようなことは倫理に照らし合わせると許されないことになります。

私たちは放射性廃棄物をすでに作り出してしまっていますから、世代間倫理としては許されないことを行なっているのです。この場合の次善策は、これ以上放射性廃棄物を作り出さないことです。今の私たちにできるせめてものことです。

〇地域間の公平性には熟議しかない
作り出してしまった放射性廃棄物には何らかの対処が必要になってきます。長期保管するとしても、それらを積極的に受け入れる自治体・住民がいないのも現実です。例えば、青森県と六ケ所村は日本原燃と協定を結んでいて、貯蔵期間を受入日から30~50年とし管理期間終了後の搬出を約束させています。フランスからの最初のガラス固化体の搬入が1995年ですから遅くとも2045年にはその期限を迎えることになります。政府が処分地選定を急ぐ背景にはこの事情があると推察されます。しかし、拙速な処分地選定は帰って将来世代に負担を押し付けることになります。このまま保管を継続するか、他の保管場所を探すか、いずれにせよ難題です。

地元住民や周辺地域の合意のないままにどこかに決めてしまうと、保管地域とそうでない地域との間に不公平が生じてしまいます。政府はこの不公平に対して交付金で対応してきました。しかし、お金で不公平を解決することができるでしょうか。上記でふれた学術会議の報告書も「金銭的便益提供を中心的な政策手段とするのは適切でない」と明言しています。問題を解決するどころか、いっそう複雑にし、解決を困難にする結果を招いてしまいます。

廃棄物の保管地選びは、「押し付け合い」の側面があり、負担の公平性をいかに確保するのかは簡単に答えを出せないでしょう。地域間の公平性に対しては、納得感が得られるまで熟議を繰り返すしか、対処の仕方はないと考えられます。後述する研究機関と並行して、熟議の場を担う組織が必要です。

5.独立した組織の下での参加と熟議による意思決定の確立を

〇公論形成委員会の設置を
健全な公論に必要なのは、物事の様々な側面を思慮深く考察しながら、真摯に意思決定に参加し、規範的価値を重視した政策選択を行うことです。そのためには、原発の推進と最終処分政策の推進が一体化した現在の組織体系を改め、原子力の推進や研究に関わる省庁から独立した第三者的な性格を持った組織を設置することが必要です。この組織の名前を仮に「高レベル放射性廃棄物に関する公論形成委員会」(以下、公論形成委員会)とします。この組織の下、最終処分政策に真に必要な議論の場を運営することとします。

よりよい公論形成のためには、多様な専門家や市民の参加と熟議を基盤とした意思決定プロセスが求められます。したがって公論形成委員会の委員は、行政の意向に沿った専門家を選出する方法を改め、幅広い分野からの選出が必須です。1998年に採択されたオーフス条約では、環境に関する情報へのアクセスや意思決定への参画を、市民の権利として保障し、その権利行使のための支援が必要であると規定されています。日本はまだ未加盟ですが、グローバルスタンダードに沿って、市民の参加を保障することが必須です。

〇熟議を促す仕組みづくりも
また、熟議を促す仕組みも必要です。委員には、高レベル放射性廃棄物政策に関する様々な情報が公開され、十分に提供されるべきです。それには経済的、科学技術的、政治的、社会的、環境的、文化的な側面が、過不足なく考慮される必要があります。それにより、熟慮された価値判断や政策選択が可能になります、コンセンサス会議や討論型世論調査などの実践例を参考にしながら、熟議が実践できる仕組みを考案することが必要です。

公正に運営された公論形成委員会の下、高レベル放射性廃棄物の長期保管に伴う世代間倫理や地域間の負担の公平性、政府や電力会社の責任のあり方について、公論を形成する必要があります。委員会の決定には適正な権限が付与される一方、決定に対する検証作業を含めた多段階の意思決定を保障することも求められます。

6.長期保管のための新たな研究体制

〇地層処分を前提としない研究の必要性
3. で総量管理と長期保管が提言されました。長期保管する放射性廃棄物には以下のものが考えられます。再処理によるガラス固化体とTRU廃棄物(低発熱性長半減期廃棄物)、使用済み核燃料と使用済みMOX燃料、これらに加えて福島第一原発で発生した放射性廃棄物として、燃料デブリ・コリウム1 やALPSなどの汚染水処理によって生じた放射性廃棄物2 があります。

これら多種多様な廃棄物は貯蔵期間中、環境への影響が最小限に留まるように適切に管理されなければなりません。そのための研究が必要です。

例えば、上記のそれぞれの廃棄物について、地上での保管か、浅い地下での保管か、保管容器の形状や耐用期間をどう設計するか、など研究課題は多くあります。

さらに、これらの対処についての研究も並行して必要になります。それぞれの放射性廃棄物に対応した対処方法の選択肢を複数示すと共にその得失を示す必要があります。これまでの地層処分のための研究とは異なり、地層処分を前提としない幅広い研究が必要です。

1 溶融燃料とコンクリート構造物が反応して固まったもの
2 汚染水を処理するキュリオン・サリー・多核種除去設備(ALPS)などで使用したフィルターや吸着剤などで、形状から吸着塔と呼ばれている

 

〇ふさわしい研究体制の再構築を
研究機関も、地層処分を前提としない研究に相応しい主体でなければなりません。原子力発電環境整備機構(NUMO)は法律に基づき設立された高レベル放射性廃棄物の処分地選定と処分を実施する機関です。また、日本原子力研究開発機構(JAEA)も地層処分に関する研究を行なっています。

JAEAは北海道幌延町にある新地層研究所で地下深部の研究を行なっています。以前は岐阜県瑞浪町にもありました。どちらも20年程度の研究の後には埋め戻す約束でスタートしました。そして、瑞浪の超新地層研究所は埋め戻しました(22年1月15日に完了)。しかし幌延の研究所は約束を反故にし、研究を継続し、新たに500mの深さまで掘削しようとしています。研究とはいえ、政府や研究組織への不信の払拭を考えれば、当初の約束通り研究所を閉じることが必要です。

その上で、最終処分法の改正を行い、NUMOから処分地選定と処分実施の任務を削除し、JAEAの深地層研究部門を統合して、新たな研究組織を設置することを提言します。

7.欠陥だらけの「高レベル放射性廃棄物最終処分法」を廃止し、新たな法体系の整備を

これまで見てきたとおり、使用済燃料再処理後に残る高レベル放射性廃棄液をガラス固化したものを高レベル放射性廃棄物(特定放射性廃棄物)として地層処分することを目的とする現行法(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律)は欠陥だらけです。この法律の下では高レベル放射性廃棄物問題の解決はできません。そこでこの法律を廃止し、新たな法体系を整備することを提言します。

名称:「高レベル放射性廃棄物の長期管理に関する法律」とする。
法の目的:世代間倫理と脱原発に基づき、高レベル放射性廃棄物を長期保管し管理を行うことを目的とする。

定義:高レベル放射性廃棄物とは「使用済燃料および既に再処理が行われた残滓としてのガラス固化体およびそれらと同等の放射能濃度をもつ廃棄物(事故に伴う燃料デブリなどのことで、政令で具体的に定める)」とする。使用済燃料は再処理しないということです。既にある高レベル放射性廃液は固化するものとします。

基本方針:高レベル放射性廃棄物は、地上ないし半地下で長期保管する。再処理を前提とした中間貯蔵とは別の考えです。

長期保管を行う場所についての規定:民主的な議論により定める。1ヵ所あるいは複数ヵ所(各電力会社管内、本社所在地など)で集中保管する考えや、各原発所在地とする考えなどがありえます。輸送の問題がありますが、施設の改修時に持ち回りにするといった考えもあってよいのかもしれません。

長期保管地の選定方法:どのような手続きとするのがよいか、衆知を集めて定める。廃棄物の保管地選びは、「押し付け合い」の側面があり、負担の公平性をいかに確保するのかは簡単に答を出せません。

NUMO(原子力発電環境整備機構)に代わる管理機構:高レベル放射性廃棄物管理機構とし、その役割についても十分な検討によって定める。
公論形成委員会:上述の諸課題に衆知を活かす民主的議論のために「高レベル放射性廃棄物に関する公論形成委員会」を設ける。
新たな研究体制:長期保管を適切に行うために、新たな研究体制を整備する。

上記では高レベル放射性廃棄物のみを対象と考えた提案をしていますが、放射性廃棄物全体の総合的な対処政策と適切な法体系の整備が必要です。
本当の意味で責任が果たせる法体系のために熟慮し大いに議論をしましょう。

2023年5月28日
「どうする?原発のごみ全国交流集会」参加者一同
原水爆禁止日本国民会議 / 北海道平和運動フォーラム / 原子力資料情報室

補遺 寿都町と神恵内村での文献調査に関する検証

喫緊の課題として、寿都町と神恵内村での文献調査に関する検証の必要性が挙げられます。

文献調査が始まって2年以上が経過しましたが、経産省は「対話の場」のあり方に関する総括を行い、今後の対話・取組活動に活かすことを検討しています。また、経産省は文献調査の技術的な検証だけでなく、経済・社会的な観点からの検証を実施する予定です。いずれも、放射性廃棄物WGで、これらの作業を実施しようとしています。しかし、経産省が主導するため、公正さや批判的精神に欠いた検証内容になることが予想されます。

これに対抗すべく、私たち市民社会は、徹底的な総括を独自に行うことが求められます。それを実施する上では、以下の4点が重要であると考えられます。

第一に、調査応募における透明性と民主性です。文献調査応募の前に、2町村の地域住民の事前周知及び議論が不十分で、その結果、地域社会に十分な合意が得られず、混乱を招いた事態を究明する必要があります。民主的な意思決定の障害となった要因を発見し、法や制度のどこに問題があったのかを解明しながら、失敗の責任の所在を明らかにする必要があります。

第二に、対話の場の不公正な運営と熟議の欠如です。NUMOと役場が事務局となったことで起こった弊害、メンバーが文献調査賛成派に偏ってしまった原因と問題、不透明な運営体制などを十分に分析する必要があります。さらに、地層処分推進を前提とした議題の偏り、不十分でバランスに欠くNUMOによる一方的な情報提供、対話の場から排除されたり、対話の場に批判的な住民が意見を言う機会がほとんど保障されていない仕組みなど熟議の実現を妨げた要因を一つ一つ検証すべきです。

第三に、教育の場を利用したPR活動の問題です。高校生や大学生を対象に、偏った情報提供と政府に近い立場の専門家による説明ばかりの教育事業が展開されてきました。批判的な精神は育たず、現政策に対する安易な肯定や支持へと誘導されていないか検証が必要です。

第四に、文献調査実施によって発生した地域社会への悪影響です。具体的にはコミュニティ内の信頼感の喪失やそれに伴う経済的・精神的な被害です。その被害の実態の解明とともに、経産省とNUMOが地域社会の分断修復のための対策を講ずることが求められます。

集会アピール

岸田政権は、原子力基本法に原子力の活用を国の責務と明文化し、老朽原発の運転を60年を超えて可能にする法改悪を強行しました。福島原発事故の教訓をないがしろにして、斜陽産業化しつつある原子力に回帰することは、再生可能エネルギーの普及を阻害し、世界の潮流から日本が大きく取り残される結果を招くだけです。

原発回帰の条件整備として進められている原発のごみ対策も、問題だらけです。処分の実施主体「原子力発電環境整備機構」(以下「NUMO」)が文献調査を進めてきた北海道寿都町と神恵内村では、地域の分断が進みました。国は、最終処分法に基づく基本方針を改悪し、100以上の市町村への説得行脚、関心を有する首長との協議の場の新設、経済団体や議会など地元関係者へ様々なレベルでの段階的な申し入れなどを行うとしています。第3、第4の調査地点をめぐる動きはこれから本格化すると危惧されます。

混乱の原因は、高レベル放射性廃棄物をどうすればよいかという合意形成の議論を進めるのではなく、文献調査は処分場誘致に直結しないとして、交付金という金の力で、とりあえず調査を受け入れさせようとする国やNUMOの姿勢にあります。文献調査は処分場立地のための調査であり、仮に知事等の反対によって次の段階に進まなくても、文献調査結果という成果は残るのです。

私たちは全国から札幌の地に集い、現状の政策方針と技術では危険な高レベル放射性廃棄物を地下に埋め捨てにする地層処分を日本で行うことはできないと再確認しました。国の政策の転換を求めて、今後もさらに議論を深めるため、提言も公表しました。

公募の対象である全国すべての市町村に対し、募集に応じないよう改めてアピールします。

皆様に呼びかけます。危険な放射能汚染を引き起こす高レベル放射性廃棄物の地層処分を許さない闘いに取り組みましょう。北海道寿都町と神恵内村の調査が次の段階に進むことがないよう力を尽くしましょう。市町村や商工会などに国やNUMOのアプローチがないか、関心を払いましょう。そして、処分できない高レベル放射性廃棄物を産み出す原子力発電を一刻も早く止めて、原子力政策を根本から見直すことをともに求めていきましょう。

2023年5月28日
「どうする?原発のごみ全国交流集会」参加者一同

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