2022年、声明申し入れ
【原水禁声明】大阪地裁の老朽原発の運転延長を認めた司法判断に強く抗議する
2022年12月22日
原水禁は、12月21日付で以下の声明を発表しました。
大阪地裁の老朽原発の運転延長を認めた司法判断に強く抗議する
11月20日、大阪地裁(井上直哉裁判長)は、関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)の周辺住民による運転差し止めを求めた仮処分申し立てを却下した。1976年に運転を開始した美浜原発3号機は、運転期間が40年を超える原発で、最長60年の運転延長が可能となった初めてのケースとして、2021年6月に再稼働した。
住民側は、美浜原発3号機の原子炉建屋直下に存在する9本の「破砕帯」(活断層)や東側約1キロを走る活断層「白木-丹生断層」の危険性を指摘し、「地震発生時に重大事故が起りうる危険性がある」と訴えた。さらに原子炉や土台のコンクリートといった重要な設備は構造上交換することができないことから、長期間に渡る強度の放射線暴露による脆性破壊などの事故、事故による被曝の危険性を指摘した。
裁判官は、関西電力の「安全性は確保できている」との主張を全面的に受け入れて、住民側の訴えを棄却した。老朽原発の危険性を軽視し、その延命に手を貸した責任は大きい。 2004年8月、美浜原発3号機は、経年劣化によって復水配管(2次系配管)が破損する事故を起こしている。原発の老朽化は思わぬ事故を起こすという典型ではないか。老朽化した原発が各地で動き出すことで、事故のリスクがより一層増すことは明白だ。経営と利益を優先して住民の安全をないがしろにする判断は決して許されない。
避難の問題も未解決なままであり、住民の不安が払拭されているとは言えない。毎年のように、日本海側では大量の降雪によって交通機関やインフラが機能しなくなる状況が起きている原発事故は天候を選ばない。そのような時に原発事故が起きたならば、安全で速やかな避難など到底不可能だ。可能性のある様々なリスクを無視してまで原発を運転する理由はない。
岸田政権は、安保三文書の改定を急ぎ、周辺諸国からのミサイル攻撃を想定した敵基地攻撃力(反撃能力)の保有をすすめている。ロシアのウクライナ侵攻から学ぶことは、原発が攻撃目標となれば、核兵器と同様の大きな脅威となるということだ。攻撃による原発の破壊は、放射能の放出・拡散の大きなリスクを呼ぶ。原発の運転期間の延長は、様々なリスクの長期化をもたらすこととなる。
国内では、美浜原発3号機のほか、関西電力の高浜原発1号機・2号機(福井県)、日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)の合わせて4基が審査に合格し、最長60年までの運転が認められている。また、運転開始からの期間が40年に迫っている高浜原発3号機・4号機と、鹿児島県にある九州電力の川内原発1号機・2号機も、原子力規制委員会に20年の延長を申請している。岸田政権は、60年を超える運転をも認めようとしている。あの福島第一原発事故の悲惨な状況に鑑み、「原発の依存度を減らす」とした政府の見解は何処へ行ったのか。政府の原発政策にしがみつく姿勢が、結局再生可能エネルギーの進捗を阻んでいる。
私たちは、新たな「安全神話」と「原子力推進政策」に強く反対し、再生可能エネルギーを中心とした持続可能な社会をめざし、今後も脱原発の運動を強化していく。
2022年12月21日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野 浩一
金子 哲夫
藤本 泰成