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【ご紹介】大阪平和人権センターからの書籍のご案内
2021年01月26日
【ご紹介】大阪平和人権センターからの書籍のご案内です。
稲岡宏蔵著「核被害の歴史 ヒロシマからフクシマまで」のご紹介
大阪平和人権センター加盟団体の「地球救出アクション 97」より、標記の本の寄贈を受け、紹介を依頼されましたので、皆様にご紹介いたします。
(本の内容については、添付の「目次」および「稲岡宏蔵著『核被害の歴史 ヒロシマからフクシマまで』について(紹介)」をご覧ください。)
定価3600円(税別)のところ、 大阪平和人権センターを通して購入を希望される場合は 1冊3000円となります。
稲岡宏蔵著『核被害の歴史 ヒロシマからフクシマまで』について(紹介)
現役時代からの知人である稲岡美奈子さんの連れ合いの稲岡宏蔵氏が標記の本を書かれたので、これを紹介したい。さて、著者の「稲岡宏蔵」氏はいわゆる「有名人」ではないので、まずはじめに彼を紹介する必要があるが、私自身この本に記されている以上のことは知らないので、この本の中から引用して紹介に代える。
「筆者は長崎へ原爆が投下される4年前、1941年に長崎市の爆心地から約2㎞の銭座町駅近くで生まれ、原爆投下前に現在の諫早市に疎開していた。父は勤務先の爆心地から約4.5㎞の造船所で被爆しその日のうちに長崎市を縦断し、急性障害に苦しんだ。祖母の実家は爆心地から500m、現在、長崎大学医学部のグラウンドになっているところにあり、全滅した。原爆の翌日にその地に入った祖父母、叔母は入市被爆し、祖父母は早く亡くなった。
筆者は直接原爆の被害を受けていないが、60年間、科学者、市民として反戦、反核、平和運動に参加する中で、自分も長崎原爆の生き残りの1人だと思うようになった。」
また、運動とのかかわりについては、次のように記述されている。
「筆者は1960年大阪大学理学部に入学した。入学時はちょうど安保闘争の高揚さなかであり、学生自治会のクラス委員から大阪府学連の役員となったのが筆者の政治活動の始まりだった。それから物理学の研究者になり、核実験反対、反核・平和、反原発、被爆に反対する運動が生涯の活動の中心になった。」
さて、この本の内容についてであるが、この本の内容は『核被害の歴史』というよりも『核廃絶運動の中での論点の考察』とでもいうべきものである。私が理解するところでは、問題のキーワードは「平和的生存権」ということにある。この「平和的生存権」は、日本国憲法前文の「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」に由来するものである。この「平和的生存権」の考え方については私も完全に同意する。稲岡氏は核廃絶運動の中での論争を考察して、この「平和的生存権」にたどり着いたのではないかと思われる。詳しい論点はこの本の中に記載されているので是非検討してほしい。
とはいえ、私から見れば、この「平和的生存権」というのは、「戦争(原爆)の惨禍を経験した日本国民の「二度と戦争はゴメンだ」という深い国民的心情を、「・・・権」と少々スマートに言い換えただけに過ぎないのではないか、とも思える。
それはそれとして、重要な問題点は、この「平和的生存権」が日本国憲法に「われらは、・・・確認する。」と、憲法理念の根幹として書かれてはいても、国際的にはまだ「基本的権利」として承認されていないことにあるのではないだろうか。どうすればこの「平和的生存権】が基本的権利として認知されるようになるのだろうか。そこに国民運動の課題があるのではないだろうか。さらに、今なお疑問に感じるのは、平和運動・反核運動の側が、どうして長らくこの「平和的生存権」の意義に気づかなかったのだろうか、ということである。もっと早く運動の総意として確認されていたら、いろんな局面での運動展開も違っていたのではないか。
この本によって私の疑問が完全に解消されたわけではないが、この本を機に、稲岡宏蔵氏の考察から学び、さらに認識を深めたいと思う。
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大阪平和人権センター事務局次長 太田保
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