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止めよう再処理!共同行動ニュース8/28号の記事から

2013年08月28日

福島原発事故の収束に全力をあげろ!
破たんした核燃料サイクルや再稼働にしがみついている場合ではない

 
もう東電の対応だけではムリな福島原発事故
 2011年3月11日の東京電力・福島第一原発事故から2年半近くたった今でも、事故の収束の展望が立たない中で、国際評価尺度でさえレベル3となる汚染水貯蔵タンクから高濃度の汚染水が約300トンも海に流出した事故が発生しました。さらに最初に確認されたタンクの地点とは反対側からも高い放射線量が計測されるなど、東電側も言うように「汚染が拡大している可能性が高い」という状況にまできています。その上、汚染水の問題では、絶えず山側から流れて来る地下水が汚染され、海に流出している問題も未解決なままです。
 事故の「収束宣言」をしても、いまだ被害が深刻化しているのが現状で、様々なトラブルに対して東電の対応は後手に回っています。誰の目にも、東電にまかせておいては、もうどうにもならない事態になっていることは明らかで、マスコミの論調でも政府がもっと前面に出ることが必要というものになっています。
 その肝心の安倍政権は、この事態に有効な手立てを示すことなく、ただ闇雲に原発の再稼働に前のめりになり、実現の可能性のない核燃料サイクル路線を維持しようとやっきになっています。
 一方、同じ政権与党の中でも現在の原子力推進政策に疑問を投げかけている議員や元議員もいます。小泉純一郎元首相は「原発ゼロ」は首相の決断さえあればできると言い放ち、「そもそも(使用済み核燃料の)捨て場所がない。原発はゼロしかない」と述べています。自民党の河野太郎衆議院議員は、再処理工場の建設に反対の立場を以前から明確にしています。
 現実をしっかり見れば、原子力政策の行き詰まりは明らかで、与党が完全に原子力積極推進かといえば、そうでもないことは様々な場面で出てきています。現在、各種世論調査でも脱原発を望む声はいまだ60~70%とあり、原発積極推進の政権と世論との間にねじれがあります。
 福島原発事故は、今後も様々なトラブルに見舞われるでしょう。タンク一つとっても耐用年数が5年といわれる急造施設ですが、その5年後はどのように対応していくかという方針さえ出されていません。泥縄的に進められる対応ではもう追いつかない状況にきています。福島原発事故は、国内にとどまらず国際的にも大きな問題となっています。放射能の海洋流失は国際問題ともなっており、今後も長く事故の問題は尾を引いていきます。
 いま福島原発事故の収束が最優先されるべきで、原発の再稼働や六ヶ所再処理工場の建設などの破たんしている核燃料サイクル路線を進めることではなく、人・モノ・金、そして知恵など、あらゆる資源を政府や電力会社全体で、全力を上げて投入し、事態の収拾にかかるべきです。このことは日本の将来に関わる重要なことです。自公政権は、特にこれまで原子力政策を大々的に進め、今回の事故にも大きな責任があり、その後始末にも重い責任があるはずです。

存在問われる六ヶ所再処理工場
 東電まかせでは追いつけない福島原発事故の収束作業は、当然、東電そのものあり方も問われています。東電をめぐる経営状況が悪化している中で、原発再稼働への展望はまったく見えないにもかかわらず、未だ原発推進を放棄していないことは問題です。それは六ヶ所再処理工場にも波及しています。地元も廃炉を求めている福島第二原発への対応が問われて、さらに新潟県の泉田裕彦知事も再稼働に否定的な、柏崎刈羽原発も同じです。
 六ヶ所再処理工場は民間施設として建設されています。その再処理工場の費用の約4割とも言われる資金は東電が負担していると言われています。今後、東電の経営が厳しくなれば、これまでと同じように資金を出せるのか疑問です。大きなトラブルでも起きれば、そこへの臨時の資金投入などさらに困難になるのではないでしょうか。
 六ヶ所再処理工場は、7月31日に「工場の竣工(完成)を延ばさざるを得ない」と発表しました。今年10月に完成予定としていましたが、これで延期は20回目となります。今年12月に、原子力規制委員会が新規制基準を策定し、再処理工場の適合を確認し、その後、国により使用前検査が行われることになっています。そのため、さらに1年近くは延びることになりそうですが、いまだ完工時期さえ明確にならない状況にあります。
 延期を繰り返す間、原子力をめぐる状況は大きく変化しました。3.11以降は特に核燃料サイクルをめぐる状況が一段と混迷を深めています。再処理で取り出されるプルトニウムの使い道は、高速増殖炉開発が頓挫している中で、MOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料として各原発でのプルサーマル計画として使う予定になっています。さらに青森県大間町に建設予定のフルMOXの大間原発での使用に大きな期待がかかっていました。
 しかし各原発でのプルサーマル計画は、これまでの計画では、2015年までに16~18基の原発で実施することになっていますが、いまや原発の再稼働そのものや、たとえ再稼働しても原発でプルサーマルを進めるかどうかも明らかでありません。数基の原発で実施しても、それで六ヶ所再処理工場がまともに動くことはできません。さらに「期待」の大間原発は、規制委員会の田中俊一委員長からもフルMOXは世界に前例がないとして、3分の1のMOX利用となるようで、ここでのプルトニウム利用も限定的となります。そもそも大間原発がスムーズに建設されるどうかもまだこれからです。再処理の存在意義が問われています。
 核燃料サイクル路線はますます混迷を深めています。安倍政権が12月に発表しようとする新たな原子力政策で、いくら計画を文章化しても現実がそれを次々壊して行くはずです。原子力政策の破たんは明らかであり、まさに小泉元首相の言う「決断」が求められています。しかし、現在の再稼働への前のめりの姿勢では、とてもムリな注文か……。

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