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「玄海・川内原発の廃炉等に係る申し入れ」 九電回答概要(九州ブロック・2012.08.29)
2012年10月09日
「玄海・川内原発の廃炉等に係る申し入れ」 九電回答概要
(文責は川内原発増設反対鹿児島県共闘会議)
1 玄海原発1・2・3・4号機と川内原発1・2号機を計画的に廃炉にすること。
2 増設手続きを凍結している川内原発3号機増設計画を中止し、白紙撤回すること。
3 電力の安定供給について
4 エネルギー政策の転換と経営姿勢について
Ⅰ 概要
原水爆禁止九州ブロック連絡会議(川原重信議長)、原発はいらない九州ブロック連絡会議(重野安正議長)、玄海原発設置反対佐賀県民会議(柴田久寛議長)、川内原発増設反対鹿児島県共闘会議(荒川譲議長)が 2012年7月18日に九州電力社長に申入れた回答交渉が以下のとおりおこなわれました。
(1)と き 2012年8月29日(火)11時~13時
(2)ところ 福岡市・九州電力本社
(3)要請団 玄海原発設置反対佐賀県民会議の柴田久寛議長など8県から22人。
(4)回答者 九州電力地域共生本部エネルギー広報グループの藤本グループ長と大河内課長、井上課長、柿塚副長、電力輸送本部の和仁副部長、原子力発電本部環境広報グループの館林副長の6人
Ⅱ 回答のポイント
1 玄海原発1・2・3・4号機と川内原発1・2号機を計画的に廃炉にすること。
(1)玄海原発1号機の監視試験片の脆性遷移温度が、2009年には98度と予測値を大きく超え劣化が進んでいると見込まれるので、「原子炉圧力容器の中性子照射脆化について(素案)」(2012.6.20、第17回高経年化技術評価に関する意見聴取会)にいう「現行脆化予測法の信頼性改善検討」や「原子炉圧力容器の構造健全性評価手法の改訂検討」を待つまでもなく、玄海原発1号機を直ちに廃炉にすること。
九電≫玄海1号機の原子炉容器については、中性子照射による脆化はあらかじめ分かっているので、健全性を確認するために法令に基づいて原子炉容器内に監視試験片を設置して試験評価をしている。平成21(2009)年の4回目の監視試験片の取り出しの結果、60年の運転を想定しても原子炉容器の健全性は確保されると評価している。
平成21(2009)年7月の国の高経年化技術評価に関する意見聴取会でも、原子力安全保安院より蓄積された中性子の量が1号機の原子炉格納容器の内面に換算して運転開始後58年は十分健全であると評価された。今現在、玄海1号機を直ちに廃炉することは考えていない。
交渉団≫意見聴取会で井野委員から詳細調査をすべきだと意見があったし、劣化が進んでいるのではないかとの不安を住民は抱いているだけに、九電独自で住民の不安解消のための検査をする考えはないか。
九電≫4回目の試験片は平成21年に取りだした。試験片は6個入れたので2つ残っているが、それを取り出してということだろうが、4回目の試験片取り出しから時間が近いので中性子量はほとんど変わらないと思われる。4回目の試験片のミクロ観察したものを意見聴取会に提出しているので更に深堀して調査していただくとか、先生方の質問に丁寧に回答するなどの対応をしたい。
九電独自で何かをするということは考えていない。
(2)玄海原発2・3・4号機と川内原発1・2号機の定期点検後の稼動については、原子炉容器内など原発設備への立ち入り調査などによる福島原発事故の原因が全面的に明らかにされ、事故原因を踏まえた国の原子力発電所に係る立地や安全、設計などに係る審査指針などが改定され、指針を踏まえた抜本的な安全策を講じるとともに、原発事故時に被害が想定される自治体・議会及び住民の了解なしには稼動させないこと。
九電≫福島の事故を踏まえて緊急安定対策を行ない、津波による三つの機能(①全交流電源、②海水冷却、③使用済み燃料ピットの冷却)を失っても、原子炉容器内の燃料や使用済み燃料プール内の使用済み燃料の損傷防止対策をとり、国に防止対策の確認をとっている。
全ての号機でストレステストという原子力発電所の体力や緊急安全対策などの追加対策を国に提出している。今、国の意見聴取会の中で審査を受けている。原子力発電所の信頼性確保と安全性の向上をめざし、福島原発第一事故の技術的知見が意見聴取会で出されているので継続的に対応策を進めている。今後、さまざまな機会をとらえて説明したい。
交渉団≫原発の再稼働については9月に発足予定の規制委員会という新しいステージで検討されることになる。九電は、再稼働は問題ないと認識しているのか。
九電】九電が国から指示されて行なったとりくみについては評価していただいている。福島の技術的事故の知見を踏まえて色々な対策を講じている。ストレステストの意見聴取会の中で色々ご指摘を受けている。それを受けてとりくみを進めており、今すぐ再稼働ということではない。
原子力規制委員会や規制庁発足後、ストレステストや再稼働に向けた手続きなどが不透明なので、再稼働について申し上げることはできないが、今やっている対策を丁寧に説明したい。
交渉団≫民間や国会、政府の事故調査委員会が報告書を出しているが、地震との因果関係を含めて引き続き事故原因の調査が必要だと指摘している。電力業界や政府は地震の影響はなかったとして津波対策だけを行なっている。配管の破裂などが、地震によるものか津波によるものか複合的なものなのか、格納容器内を含めた現地調査を踏まえて事故原因が実証されるべきだ。
九電≫事故調査が進んでいく中で出てくる色々な知見を踏まえて安全対策を行なっている。今後も事故調査が進む中で新しい知見が出てくるだろうから適切に対応したい。事故調査が終わりだとは思っていない。
地震が起こった時に原子炉は止まった。所内の安全系の電源であるディーゼル発電機が動いて所内電源は確保された。その後、何十分後かに津波が来て全ての交流電源を失った。たしかに一次系の配管などは中に入らないと分からない面もあるだろうが、今のところのデータなどでは地震の時点では一気に壊れた状況ではなかったと考えている。
交渉団≫少なくとも30㌔ないし50㌔圏内の自治体の議会や首長、住民の了解なしでも再稼働をする考えなのか。
九電≫再起動については、国による地元への説明などがなされ、最終的に国が再起動を判断するもので、九電が判断するものではない。九電としては地元の皆様に安心していただくことが何よりも重要だと考えている。引き続き安全対策と安全性・信頼性向上のためのとりくみを進め、様々な機会をとらえて説明したい。
交渉団≫福島原発事故を重大に受け止めると言いながら、原発は重要だと言っている。原発についての考え方、姿勢は変わっていないのか。
九電≫今すぐ再稼働ということではないが、福島原発事故の知見を踏まえて安全対策を進めている。原子力発電所のリスクをゼロにすることは出来ないと思っており、安全対策を引き続きやっていかないといけないと思っている。そのうえで、自国のエネルギー源の少ないわが国においては、原子力発電を当面やっていく考え。
原子力だけだはなく、風力や太陽光、バイオマス、地熱などの再生エネルギーについても積極的に開発・導入をしている。風力や太陽光については、一昨年度の計画から50万kW増やして平成32(2020)年度までに設備量で300万kW導入の計画をしている。グループ会社でも再生可能エネルギーの積極的な開発や導入を検討している。
交渉団≫最大電力需要が予測よりも100万kW以上減少≪2012年夏の時間最大電力を1,634万kWと予測していたが、実績は1,521万kW(2012年9月7日:九州電力≫した中で、なぜ再稼働をしようとしているのか、福島をどう受け止めているのかを含め、その理由を明らかに。
交渉団≫福島では5年も10年も住んでいたところに帰れない地域がある、自ら命を絶った人々もいるにもかかわらず、原発が重要だ、再稼働したいという理由を明らかに。
交渉団≫再稼働すれば使用済み核燃料が溜まり続け、運び出すところもなくなっている。中間貯蔵施設も最終処分地も決まっていない。九州電力は使用済み核燃料をどうするつもりなのか。
九電≫国が基本的なエネルギー計画を決めるまでの短期的には、今ある発電所を動かさなければ、節電など皆様にご迷惑をかける状態になっているので、今ある原子力発電所を動かしたい。原発が動いていないのでセーフティネットとしての計画停電など九電として手を打っている。
長期的には、3E(環境、経済、エネルギーセキュリティ)の面を重視している。福島事故を非常に重く受け止めているから原子力発電所を全部止め、国が動かしていいよというまでは動かせない。日本がどのように進んでいくかということとエネルギー問題は密接につながっている。今、足りているとか足りていないとかではなく、国内で議論され、近く政府が出す日本の進むべき道に従って、エネルギー事業者として設備開発や電源利用を進めていきたい。
これまで国が出してきたエネルギー政策が間違っているとは思っていない。ただし、福島事故を受けて国民的議論をして決めた日本の進むべき道に逆らって原子力を進めることは考えていない。国が結論を出せばそれに従う。
交渉団≫パブリックコメントや討論型世論調査、意見交換会などで、国民の多数が「原発ゼロ」を望んでいることが明らかになった。「原発ゼロ」の方向が国民の声だという認識を持っているか。
九電≫国が国民的議論の評価結果の結論を出していないので、今、議論されているという認識。正式に出されれば受け止める。基本的には、国民の声を踏まえた国、政府の方針に従う。「ゼロ」というロードマップが国から示されればそれに沿ってやっていく。≪「戦略策定に向けて~国民的議論が指し示すもの~」(2012年9月4日、国家戦略担当大臣)は、「大きな方向性として、少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる。」
交渉団≫大人もだが、福島の子供たちの被ばくによる健康被害をどのように考えているのか。
九電≫(回答なし)
交渉団≫九電は再稼動ありきで進めている。止まっている原発の維持管理費はどの程度か。再稼動で使用済み核燃料が増えるが、処理方法も明らかにしないまま、再稼動すれば経営が安定するかのようにいうのは納得できない。
九電≫使用済み燃料を含めた核燃料サイクルについては国策で行われてきた。福島原発事故後、国のエネルギー政策が見直されており、使用済み燃料を含めたバックエンド対策についても議論されているので国の議論の動向を見守っている。
止まっている原発で何人働いているかは出せるが、維持管理費などの算定は難しい。
交渉団≫九電が検討している廃炉についての額や費用負担、工程を明らかに。
九電≫特定の原発について廃炉に係る検討はしておらず、廃炉費用に係る試算などはない。先行している中部電力や東海などの状況を担当部門が把握しているものと思う。経済産業省の一般的事業供給約款の中にバックエンド費用も織り込まれている。その経費は法令に基き、モデル家庭(30Aで300kWh使用)で月100円程度、電気料金として皆様に支払っていただいている。
(3)玄海原発と川内原発の全ての原子炉を廃炉にし、廃炉に至る行程表を明らかにすること。
九電≫原子力発電はエネルギーセキュリティー及び地球温暖化対策の面から安全性を大前提に今後もその重要性は変わらない。
国レベルのエネルギー政策の見直しに対しては、原子力を含むエネルギーのベストミックスのあり方の議論が行われているので、新たなエネルギー政策を踏まえて対応を検討していく。
2 増設手続きを凍結している川内原発3号機増設計画を中止し、白紙撤回すること。
鹿児島県知事が在任中(2016年7月まで)は3号機増設に係る手続きを凍結することを鹿児島県議会で表明したことなどを踏まえ、2011年1月に国に提出した川内原発3号機増設に係る設置許可変更届を取り下げること。併せて、貴社の供給計画の「電源開発計画」から「川内原子力3号」を削除すること。
九電≫原子力発電はエネルギーセキュリティー及び地球温暖化対策の面から安全性を大前提に今後もその重要性は変わらない。川内原発3号機の必要性についても変わらない。ただし、今後の開発についは国のエネルギー政策を踏まえて検討し、地域のみなさまのご理解を得ながら適切に対応したい。
交渉団≫鹿児島県知事は任期中の4年間は川内原発増設手続きを凍結するといっている。6月県議会で(一番新しい泊原発が稼動後10年なので「原発廃炉40年原則」なら)30年後には原発はゼロになっているだろうと語り、言外に増設はないことを示唆している。増設計画を取り下げる検討を九電はすべきだ。
九電】県が出す色々な許認可があり、知事が凍結だと言えば九電がそれを振り切ってすることは出来ない。川内原発3号機は重要な電源と考えているので、供給計画から外すには至っていない。
3 電力の安定供給について
(1)貴社の企業責任について
貴社は2012年夏の10%節電と計画停電を求めているが、福島原発事故後、全ての原発が停止する事態を想定できていたにも関わらず、電力の安定供給確保策を怠ってきた。電力の安定供給に不安を与えていることについて電力需要者に心から謝罪するとともに、供給力確保へ向けた施策を直ちにおこなうことを明らかにすること。
なお、計画停電の周知に要した経費(全世帯へのハガキ作成代と郵送費、計画停電打消しCMなど)を明らかにすること。
九電≫電力の安定供給に不安を与えたことついて、お客様に大変なご心配とご迷惑をおかけしたことに対し心よりお詫びする。
今夏の供給力の確保については、火力発電所等の補修時期の調整、他電力からの応援融通の受電、長い間止めていた苅田新2号(九州電力の供給計画によれば、大分1・2号は平成14年度から計画停止し平成24年度廃止、唐津2・3号は平成16年度から33年度まで計画停止とされ、苅田新2号は平成22年3月の供給計画で平成23年度廃止)の運転再開、小型ディーゼル発電の緊急開発などにとりくんだ。
計画停電の周知に要したCMなどの費用については、委託先との個別の契約に関わる内容なので回答は控える。
交渉団≫鹿児島県知事選真っ只中に、計画停電のはがきを全戸に送付したのは意図的で、脅迫されたように思えた。燃料費高騰を理由にして電気料金値上げを匂わせている。しかし、電気料金に含まれている広報費だが、福島原発事故以降も広報をかなりしている。一社独占なのだから広報の必要性は少なく、広報費をまず削減すべきでは。
九電≫知事選の関係はなく、九州は梅雨明け後に需給が厳しくなるので7月2日からお願いしていた節電に間に合わせるため、計画停電のハガキを6月22日にプレス発表して送付した。
(2)最大電力需要について
① 貴社が最大電力需要の推計を委託している日本電力調査委員会は、表で明らかなとおり計画策定時の推計値が実績値に比べて過大に見込み続けてきた。日本電力調査委員会に責任を転嫁せず、貴社みずから過去の推計値と実績値が乖離した理由及び2012年夏の推計値の妥当性を検証して公表すること。
なお貴社は、最大電力需要実績を、2010年度は1,730万kW、2011年度は1,537万kW(2012.5.18、「今夏の電力需給見通しと節電へのご協力のお願いについて」)とする資料も明らかにしている。「供給計画」は送電端の最大3日平均値、「お願い」の「実績」は発電端の最大3日平均値、「今夏想定」は送電端の時間最大値と、異なった根拠による数値の公表は、人々を惑わすものである。最大電力需要実績を異なった根拠により公表している理由を明らかにすること。
表 九州電力供給計画に見る最大需要電力の過大見積り【見通しと実績の乖離】
注)2010・2011年度実績は「平成24年度供給計画の変更届出について」(2012.6.19、九州電力)
九電≫最大電力の需要想定は、日本電力調査委員会の想定予測にのっとって、10年先を見通して毎年おこなっている。日本電力調査委員会は、客観的、中立な審議を経て予測している。10年後という長期需要想定なので、将来の気温状況や予測しえない社会・経済の情勢変化などによって差異が発生している。
1994年以降は実績が想定値を上回っていたが、平成14(2002)年度以降は実績が想定値を下回っている。(平成14年度以降は実績が想定値を下回っているという回答は事実誤認の間違いでは≫気温の変動や省エネの進展、夜間電力の低料金化等の料金メニューの拡充などの結果、夜間の需要が減った結果だと考えている。≪最大需要電力に夜間の電力需要減は無関係)。
「発電端」による数値は、日々の電力のリアルタイムの運用について発電機の出力を運転監視し、お客様へのお願いについても使用している。日々の電力の使用状況については発電端を使用している。
「送電端」による数値は、発電所の運用計画のみならず送電線の建設にも利用する供給計画について使用している。
「最大3日平均」による数値は、過剰な設備計画にならないように気象などの特異な要因を除いた平均的な数値として供給力策定計画に使用している。
「時間最大」による数値は、日々の実際の運用においてはいかなる電力需要者に対しても必要な供給量を確保しなければならないので、今回の需給見通しの際に使用している。
交渉団≫公表される電力量については、「発電端」か「送電端」、「最大3日平均」か「時間最大」か、どちらかに統一すべき。数10万kW単位で異なった数値が独り歩きして混乱を招くので、指標の一本化について今後整理をして欲しい。
② 2011年の発電端1,537 (送電端1,495)万kWの最大電力需要(最大3日平均)が、2012年夏は発電端1,600万kWと63万kW増える理由に気温影響(58万kW)と景気影響等(5万kW)をあげている。最大電力需要時の気温影響と景気影響等に係る2010年と2011年、2012年の(実績と推計)積算根拠を明らかにすること。
さらに、最大電力需要を「最大3日平均」と「時間最大」の差を理由に、最大電力需要1,600万kWを平年並み気温の場合1,613万kW、2010年並み猛暑の場合1,634万kWと推計している。最大電力需要の「最大3日平均」電力(送電端)と「時間最大」電力(発電端)は数十万kWも異なる(2011年は49万kW・103.3%、2010年は74万kW・104.4%、2009年は64万kW・104.0%、2008年は73万kW・104.3%、時間最大が多い)。これまで最大電力需要は「最大3日平均」によっていたが、今後は「時間最大」によるのか明らかにすること。なお、「時間最大」による場合、7~8%以上(瞬間的な需要変動対応3%、計画外の電源脱落・気温上昇対応4~5%)としてきた「望ましい供給予備率」(2012.4.23、第1回需給検証委員会)の数値を見直すのかも明らかにすること。
九電≫2011年の最大需要電力実績1,537万kWは、2010年の1,730万kWに比べ193万kW減少している。減少理由は、気温が下がった影響の80万kWと節電などで123万kW減り、景気の影響で10万kW増えたと分析している。
この2012年夏の需要を1,600万kWと想定したのは、昨年夏と比較して63万kW増えると見積もったからだ。昨年は気温が低かったので今年は平年並みとして58万kW増え、景気等の影響はGDPの対前年比見通しで5万kW増えると見込んだ。節電については直前の2011・12年冬の実績や節電のとりくみに関するアンケートなどにより昨年と同じくらいだと算定した。景気と気温と節電が大きなファクターである。
過剰な設備とならないように気象などの特異な実績の影響を除いた平均的な最大電力である「最大3日平均」電力を使用している。実際の運用についてはいかなる状況の変化に対しても必要な供給量を確保しなければならないので「時間最大」電力を用いている。
供給予備力については、電源の計画外停止や渇水による供給力減少、気温の上昇などの予想外の需要の変動に対応するため、8~10%の供給予備率を確保する必要がある。
③ 最大電力需要時における需要減少対策である、「需要の見える化とピークに合わせた需要家による自発的な節電」(2012.5.2、第3回需給検証委員会)について、貴社は「ホームページでの使用量照会」(2012.5.10、第5回需給検証委員会)などを報告しているが、貴社管内での具体的な施策を明らかにすること。
九電≫ホームページやメディアを通じたお願いとお客さまのご家庭にお配りした節電のとりくみ事例や効果のPR、法人のお客さまには訪問してご協力をお願いした。また、需要抑制を目的とした料金メニューをとりいれてきた。さらに、自治体にも昨年の冬から協力していただき、節電関係の記事の掲載をお願いしてきた。
④ 節電や計画停電を求めながら、電力消費の増大につながる「オール電化」を推進することは許されない。貴社みずから「オール電化」推進施策を自粛するとともに、関係業界へその趣旨を徹底すること。
九電≫九州電力はイベントや広告などによりオール電化を進めてきたが、今、推進活動は一切とりやめている。オール電化関連商品の販売については、各事業者の経営に係る問題でもあり、言及することではないと考えている。
(3)最大電力需要時に対応した供給力について
① 水力発電の供給力は、過去30年間のうち出水が低かった下位5日の平均値で算出し、発電設備容量173万kWの63.6%の110万kWとしている。2007年から2011年の最大電力需要時の水力発電の設備容量と供給実績を明らかにするとともに、過去の設備容量と供給実績の比率で算出した場合の2012年夏の供給力予測値を明らかにすること。
また、「今夏の出水量が十分に見込まれるようになれば、供給力の見通しは上方修正される」(2012.5.12、需給検証委員会報告書)ことを踏まえ、今夏の出水量を予測して上方修正の見通しを早急に明らかにすること。
九電≫2007-2011年の最大電力需要時の水力発電の設備容量に対する供給実績は平均62.9%であった。水力発電の供給力を算定するにあたっては、渇水時を想定して安定的に見込める出力を評価するために、過去30年の下位5日の平均の出水量を用いて算出している。
水力発電については直近の出水状況によって決まるので、たくさん雨が降れば供給力を上方修正している。今夏は雨がたくさん降っているので、日々の電気予報の中でお知らせしている。
交渉団≫聞きたかったのは、この夏、計画停電まで求めないといけないほど需給がひっ迫しているのであればこそ、雨が多いこの夏の実状を踏まえた水力発電のフル稼働時の供給力だ。この夏、最大電力需要が発生した7月26日の水力発電の供給実績を明らかにして欲しい。
九電≫夏場の最大電力需要時の水力発電は、河川がカラカラになって供給力が低いことが多いので、計画段階では渇水を前提にしている。7月26日15時の供給力は計画より26万kW多い136万kWだった。
② 揚水発電の供給力は、「昼間放水時間が約12時間と通常よりも長い時間を前提としているため」(2012.5.7、第4回需給検証委員会)発電設備容量230万kWの65.2%の150万kWとしているが、限られた最大電力需要時に対応して高温が予測される前日の昼間放水時間を短縮するとか、下部調整池から上部調整池への水量を増大させる対策を講じることにより供給力を増やす手立てを確保すること。
九電≫申入れの趣旨どおり最大限やっている。夜間に最大限汲み上げるなどしている。揚水発電は元々ピークに対応するためと考えており、運転時間を6~7時間見込んで設備容量の230万kW発電できるとしている。今、昼間のピーク時が長いため揚水を用いる時間が長く、だいたい12時間程度の運転が必要になっている。そのため、夜間溜めている水を近辺に落としている状況なので、フルパワーの230万kWではなく150万kWでカウントしている。
交渉団≫最大電力需要が想定よりも100万kW下回っているので、昼間放水時間は12時間より短いと見込まれる。となれば、最大電力需要時の揚水発電も想定以上の供給力を確保できていたのではないか。供給力が当初想定よりも増加していることを随時公表すべきなのに怠っているのは問題。電力の供給力不足を煽りすぎている。
九電≫(回答なし)
(4)電力の安定供給体制確立について
① 長期計画停止中の唐津火力2号(37.5万kW)・3号(50万kW)は、必要な復旧期間が「2年程度必要」(2012.4.23、第1回需給検証委員会)としているが、電力の安定供給確保のため、唐津2号・3号機の早急な稼動再開を図ること。
なお、休止中の大分1号(25万kW)・2号(25万kW)1・2号機について、復旧期間が「2年以上必要」だが「平成24年度廃止予定」としているのは、2012年夏以降は供給力確保に自信があり、節電や計画停電を求めないからだということを公表すること。
九電≫唐津2・3号は停止期間が8年間であり設備の劣化が進んでいる。当面の需給対策には間に合わないため、現時点では運転再開は考えていない。
新大分1・2号は10年間停止しており、設備の劣化も非常に著しいため、平成24年度に廃止する計画にしている。
交渉団≫新大分を廃止するということは、来年以降の計画停電はないと理解してよいか。
九電≫今夏の最大電力需要発生日である7月26日の時間最大電力実績1,521万kWに対し、供給力は新小倉火力のトラブルなどにより計画は1,574万kWだったが1,514万kWだった。不足分≪7万kW≫は、他電力からの融通でやりくりした。九電の設備を全部使っても不足するのが実態。来年の夏、新しい発電所を作ろうと思っても間に合わないので、電力需給は厳しい。
交渉団≫福島原発事故後直ちに唐津2・3号の復旧作業に入っていれば2年で供給力に換算できる。来年の夏には間に合っていた。今からでも唐津2・3号の復旧作業に直ちに着手すべき。原発を動かせないことを見通して供給力確保に万全を期すべきだ。
九電≫今の供給計画は今年の4月に出したが≪2012年3月28日提出、6月19日変更≫、前提となる長期エネルギーの見通しや3.11福島以降の長期的な見通しはこれから示される。今までのエネルギー政策を前提にして供給計画をつくっている。ベースとなるエネルギー政策の見通しが出てから、長期設備投資をすることになる。来年4月の供給計画にどう反映するかが今後の課題。
交渉団≫6月19日の供給計画の変更届出で、今後10年間、電力需要は0.4%増加するとしている。予測に比べて実績が減っているのは省エネが大きく進んでいるからといいながら、何で増加するのか。日本電力調査委員会は客観的、中立的な存在ではなく、身内で構成している「原子力村」ではないのか。
九電≫日本電力調査委員会は電力会社だけでなく競争関係にある新電力の会社なども入って電力需要を想定している。身内だけで決めているのではなく、電気事業者がどうやって電力を安定的に提供していくかという観点で策定している。
② 九州電力は、長崎県の松浦火力2号機(100万kW、石炭ガス化複合発電)を2001年3月に着工し、4年4ヶ月後の2005年7月に運用開始(2001.3、九州電力平成13年度供給計画の概要)としていたが、2004年に中断(松浦市ホームページ)している。松浦市(2011.9.29、西日本新聞)や隣接の佐世保市(2012.5.1、市議会だより)は工事再開の期待を表明しており、電力の安定供給確保のために早急に工事を再開すること。
九電≫松浦2号機を含めた電源開発計画は、電力の需要動向のみならず、発電形式に対するエネルギーセキュリティー面、地球温暖化対策面など総合的に勘案して策定している。現在、国レベルでエネルギーの考え方について大きな議論がされている。また火力発電については、経済産業省が設置した電気料金運用の見直しに係る有識者会議で、電力会社が火力発電を新規に投入する場合は、原則、入札を実施するとの方針も出ており、入札制度の詳細も検討されることになっている。こういった議論の方向性を踏まえながら電源開発計画を検討する予定にしている。
③ 東京電力は福島原発事故後、発電量の不足を補うためガスタービン発電を10基前後、260万kW分新設(2011.3.25、日本経済新聞)して供給力不足を緊急に補ったようだが、電力の安定供給確保のために工期が短く発電効率の高いガスコンバインドサイクル発電建設をおこなうこと。
九電≫コンバインドサイクル火力は開発までに長期間を要する。原子力発電が止まっている間に対応するための当面の需給対策としては考えていない。しかし、効率性の高いコンバインドサイクルなので、新大分火力の3号系列4軸を平成28年度に開発することにしている。
4 エネルギー政策の転換と経営姿勢について
(1)脱原発を明確にした「経営方針」の策定について
政府のエネルギー・環境会議は、2012年6月29日に「エネルギー・環境に関する選択肢」を明らかにした。「核燃料サイクル政策」と「エネルギーミックス」、「温暖化対策」についての国民的議論を7月におこない、8月に「革新的エネルギー・環境戦略」を決定することにしている。
2030年のエネルギーミックスについて貴社みずから「ゼロシナリオ」(原発0%、使用済み燃料の直接処分、六ヶ所再処理工場の廃止、高速増殖炉「もんじゅ」中止)を選択し、「国民的議論」に参加すること。そして、「九州電力グループ経営の基本的な考え方」の「環境にやさしいエネルギー事業」とは、原発事故による放射能汚染の不安のないエネルギー事業であることを明確にし、原子力の推進を謳う「長期経営ビジョン」を見直し、脱原発を明確にした「中期経営方針」を策定すること。
九電≫原子力発電は、エネルギーセキュリティー面及び地球温暖化対策面から原子力の安全性を大前提に今後もその重要性は変わらない、と考えている。現在、エネルギー政策の全般について議論が国でされているので、中長期的な経営の方向性について、国の新たなエネルギー政策の方向性などを踏まえて対応を検討していくことにしている。
(2)経営姿勢について
貴社は昨年、福島原発事故と長期の避難を強いられている住民の現状や国民の不安、原発に依存しない社会を求める国民世論に対して真摯に向き合うことなく、企業利益を優先させて玄海原発の再稼働に狂奔し、「やらせメール」問題を引き起こし、さらに過去にも仕込み質問や企業動員などをしていたこと、行政との不透明なゆ着などが明らかになった。責任の所在もあいまいなままで、利用者・消費者の貴社に対する不信は今なお解消されていない。したがって、以下の点について明らかにすること。
① 福島原発事故と不安なくらしを強いられている住民の現状や想いについてどのように認識しているか。(受けとめているか。)
② 原発に偏重したこれまでの電力供給のあり方についてどのように反省し、今後に生かすのか。
③ 利用者・消費者目線に立っての経営姿勢を鮮明にし、不信感を解消するための具体的な施策をどのように進めるのか。
九電≫福島第一原子力発電所事故を、当初から大変重く受け止めている。様々なとりくみをしている。
近くまとめられる国の新たなエネルギー政策の方向性を踏まえ、対応を検討していく。
信頼の再構築へ向け、企業活動の透明化、企業風土の改善などを全社でとりくみ、お客さまとのコミュニケーションを図ることで構築されると考えている。直接の対話とホームページ、訪問活動などあらゆる機会を通じて地道な活動をしていきたい。
交渉団≫九電は「お客様の意見を聞く会」を各地で開催しているが、佐賀市会場へは佐賀県平和運動センターに出席を求めたが、鹿児島会場へは鹿児島県護憲平和フォーラムに声をかけず、反対派以外のみなさんにお集まりいただいたと報じられた。対応の違いがなぜ生じたのか。
九電≫九州電力の8支社それぞれが選定した各界各層のお客様に声をかけ、原子力や当社の信頼再構築についてご意見を伺い、今後の経営に生かす、支社の独自色を出した「お客様の声を聞く会」を開催した。原発に賛成、反対ということではなく、ご意見そのものを受け止めさせていただいた。
交渉団≫九電はお客さま第一といい、節電をお願いしている。九電は社員に5%節電を要請しているが佐賀支社長は達成できなかったとの回答だったが、それで良いのか。
九電≫九州電力として全社を上げて節電のとりくみをしている。社員も自宅で節電をとりくむようにしている。とりくむべき立場の社員がとりくまないのは申し訳ない。九電は昨年の8月から6月までの10か月で17、4%節電、社員の家庭では一昨年の同月比で昨年の7月から10月までの4か月間9.4%節電した。