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止めよう再処理!共同行動ニュース09/26号の記事から
2012年09月26日
再処理からの撤退は当然だ!
2030年代原発ゼロ?
9月14日、政府のエネルギー・環境会議は、「革新的エネルギー・環境戦略」を決定しました。原発の依存度を減らし、①40年廃炉を厳格に適用、②原子力規制委員会が安全確認を得た原発のみ再稼働認める、③原発の新増設は行わないとする三原則をあげた上で、「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指すとし、そのため「あらゆる政策資源を投入する」としました。
9月19日、この方針を政府は、「今後のエネルギー・環境政策については、『革新的エネルギー・環境戦略』を踏まえて、関係自治体や国際社会と責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ、柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」として、閣議決定をしました。しかし、方針としての閣議決定にとどめただけで、文書そのものを閣議決定とすることまではいきませんでした。政府の覚悟が疑われます。
「革新的エネルギー・環境戦略」では、使用済み核燃料の再処理問題は、見直されることなく、事業を引き続き進めるとし、高速増殖炉もんじゅは、年限を区切った研究を経て廃炉にするとされ、原発の廃炉や放射性廃棄物の最終処分について国が責任を持つことが示されただけで、具体的な施策は示されませんでした。核燃料サイクルそのものが破たんしているにもかかわらず、問題を先送りしたものとなっています。
さらに、この戦略発表後、島根原発3号機や大間原発、東通原発の計画続行を認めました。原発立地県への配慮が目立ち、「原発の新増設は行わない」との原則と大きく矛盾するものとなっています。「40年廃炉」となれば、それらの原発の廃炉は2050年代以降となるでしょう。「原発稼働ゼロ」に向け「あらゆる政策資源を投入する」とした政府の覚悟や具体的政策が見えません。選挙目当てと言われても仕方なく、政権が代われば、簡単に放棄されてしまうのではないでしょうか。
脱原発に向けた国民的な世論が高まる中で、このような中途半端な戦略では、結局2030年代に「原発稼働ゼロ」は絵に描いた餅でしかなく、いまこそ具体的な原発撤退戦略が求められています。
六ヶ所再処理工場はどうなる?
この「革新的エネルギー・環境戦略」に対して再処理工場の建設を進める日本原燃は、「2030年代に原子力稼動ゼロの方針となったことは極めて遺憾である。エネルギー政策は、5~10年経って失敗だったということは許されない。今後は、本戦略の中で示されたように、絶えず検証を行うとともに、不断の見直しが必要と考える。そして、わが国の将来の視点に立った冷静で現実的な判断をお願いしたい」と、自らの「失敗」を認めず、強引に核燃料サイクル路線を主張しています。
再処理工場そのものは、本来今年10月には竣工するはずでしたが、相次ぐトラブルでさらに1年延長され、来年10月と発表されました。前回の延期(2010年9月)に際し、日本原燃の川井吉彦社長は、「最後の延期。不退転の決意で臨む」と強調していましたが、今回、19回目の延期発表となりました。延期、延期を重ねていまだ完成していないのが六ヶ所再処理工場の実態です。1年先延ばしをしても、順調に事が進むとは限りません。新たに発足した原子力規制委員会がどのような完工前審査を行うのか、これまでトラブル続きだった
高レベルガラス固化施設が今後も順調に動き続けていくのか、これまでの事前確認試験の結果だけでは見えません。さらなる延期が待っているのではないでしょうか。
これまで何度も指摘しているように、作り出したプルトニウムの使い道がないのも問題です。現在、大飯原発が2基稼働しているだけで、残りの48基の原発は止まったままです。再稼働には新たに発足した原子力規制委員会が新基準で評価することになっています。その基準での評価は、来年夏以降となるようです。それ以降でしか再稼働はなく、新たに拡大した防災計画も自治体の対応がこれからという状況にあり、再稼働をめぐる状況は厳しいものがあります。その上プルトニウムを使うプルサーマル計画では、さらに周辺住民などの合意などハードルは高く、2015年までに16~18基の原発でプルサーマルを実施するという計画はすでに破たんしています。原発の再稼働さえ不透明な状況の中、六ヶ所再処理工場でプルトニウムをつくり出す意味はまったくありません。さらに2030年代に「原発稼働ゼロ」を目指すのであればなおさらです。再処理工場は40年間運転を前提にしていましたが、今回の「革新的エネルギー・環境戦略」議論ではその前提さえなくなるものです。
すでに2兆1000億円以上もの資金が六ヶ所再処理工場に投下されています。完成までさらに費用をかけ、その後何年稼働させるのか? 高くつく再処理工場は、本当に必要なのでしょうか。
六ヶ所再処理工場は「5~10年経って失敗だったということは許されない」ではなく、1984年の受け入れから28年経っても完成しないのにいまだ「失敗だった」と認めないことが問題です。プルトニウム利用政策の破たんを直視し、「冷静で現実的な判断」こそ、再処理事業に下されるべきです。
もんじゅは即刻廃炉しかない!
六ヶ所再処理工場とともに、核燃料サイクルの中核を担うとされている高速増殖炉は、もんじゅの開発段階で破たんを来しています。1995年にナトリウム漏洩火災事故を起こして以来17年間、まともに動いたことのない原子炉です。現在も2010年8月の炉内中継装置の落下事故で停止したままです。今後の再開の見通しさえ立っていません。
そして今回の「革新的エネルギー・環境戦略」の中では、もんじゅ開発は、「年限を区切って廃炉にする」となっています。その年限も5年と言われ、放射性廃棄物の減容に寄与する研究が無理矢理付けられて、なんとか研究開発は続行しようとしていますが、そこでの成果など期待できるものではありません。
すでにもんじゅ開発には、9600億円以上の資金が投入されてきました。それらは、すべて私たちの税金です。さらに東海再処理やMOX燃料加工、常陽などの高速増殖炉関連の開発では、さらに1兆7000億円もつぎ込んでいます。六ヶ所再処理工場の莫大な資金投下と合わせて、未完の核燃料サイクルに私たちの税金や電力料金が浪費されています。福島の事態の一刻も早い収束にむけた取り組みに、人やものや資金を全力で投入すべきであり、これ以上ムダな浪費を繰り返している場合ではありません。もんじゅを即刻廃炉にすることがまず先決です。
日本学術会議もNO!
これまでの核燃料サイクル路線は、原発から出てくる使用済み核燃料を全量再処理して出た、高レベル放射性廃棄物をガラス固化して数万年に渡って地中に廃棄処分する計画でした。現在その処分場の候補地さえ見つかっていません。この計画に対して、日本学術会議は見直しの「提言」を原子力委員会に提出しました。(9月11日)。その中で、日本では「万年単位で安定した地層を見つけるのは困難」と指摘しています。これまで「トイレなきマンション」と言われてきた原子力政策が、「トイレ」がないことがあらためて明らかにされました。六ヶ所再処理工場での高レベル放射性廃棄物の処分そのものがあらためて問われています。どこにも処分できるところがないまま、原発をさらに進めていくことは、大量の廃棄物をつくり出すだけで、後の世代に大量の負の遺産となるだけです。2030年代と言わず、一刻も早く脱原発に向けた政治選択と具体的取り組みを取るべきです。とりわけ再処理や高速増殖炉などの核燃料サイクル路線は即刻中止すべきです。