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【ニュースペーパー2012年7月号】原水禁関連記事
2012年07月01日
みんなの笑顔を守るために、私たちは歌い続けます
「制服向上委員会」会長 橋本 美香さんに聞く
プルトニウム利用政策を断念せよ
核兵器廃絶に向けた今後の課題
7月16日は過去最大の参加をめざそう!
「さようなら原発10万人集会」の成功に向けて
みんなの笑顔を守るために、私たちは歌い続けます
「制服向上委員会」会長 橋本 美香さんに聞く
【プロフィール】
1980年生まれ。シンガーソングライター。95年「制服向上委員会」のメンバーとしてデビュー。グループ作品で多数のリードボーカルを務め、作詞作曲やディレクションも行う。98年より5代目リーダーに就任、4年にわたり務め、2002年から会長に。昨年9月19日のさようなら原発集会(東京・明治公園)をはじめ、さまざまな脱原発アクションに参加。
──制服向上委員会について教えてください。
制服向上委員会は、今年で結成20周年を迎える日本最長を誇る女子アイドルグループです。「清く正しく美しく」をモットーにライブとボランティア、社会活動を行ってきました。私自身はグループ結成から3年目の95年にメンバーになりました。加入当時は高校1年生の15歳で、初めて受けたオーディションで合格して、ずっとここで活動しています。いまはソロ活動と並行して、制服向上委員会の「会長」という立場で活動しています。リーダー(小川杏奈さん)がメンバーをまとめていて、私はグループとしての精神や楽曲を引き継いでいく中でアドバイスする役割となっています。
ライブ活動を中心に活動する制服向上委員会のレパートリーは約1,300曲あります。かわいいオリジナルソングもたくさんありますし、国内・海外アーティストのカバー曲、唱歌といった幅広いジャンルを歌う中で、常にその時代の社会問題をテーマにメッセージソングも歌ってきました。
去年の3.11東日本大震災以降、「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」や「原発さえなければ」を歌ってからは、そういったメッセージ性の強い曲に興味を持っていただいた方が多くなったようですね。
──「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を発表して、どのような反応がありましたか?
反響はとても大きかったです。ライブで初披露後、すぐにYouTube(インターネット動画サイト)で公開すると3日で3万アクセスとなりました。「これこそROCKだ!」「こんな過激なアイドルが日本にいたのか」「みんなで応援しよう!」など好意的なご意見もあれば、「意味もわかっていない子どもに歌わせるな」「大人に利用されているだけだ」と言った批判的なご意見もいただきました。また、イベント会場から「この歌は歌わないでください」と言われたこともあります。
ファンの方々も戸惑いがあったと思います。それでも応援してくださるファンのみなさんは本当に大切な存在です。今では「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」をきっかけに制服向上委員会が長年社会活動に取り組んできたことを知ったという方々が、様々な脱原発アクションやイベントに私たちを呼んでくださいます。
──社会問題に取り組むアイドルグループというのは珍しいと思いますが。
WORLD PEACE NOWというイラク戦争に反対する大きな運動が起きたときも、3万人以上の方々が集まった集会(2003年)で「World Peace Now」という歌を歌いました。99年に制服向上委員会はベトナムに行き、ベトナム戦争の枯れ葉剤被害、戦争の傷跡を見てきました。WORLD PEACE NOWでは、戦争の恐ろしさを訴える為にベトナムで撮ってきた写真をパネルにして披露したりもしましたね。
戦争が起きて、人々が何かを守ろうとして戦って、命を落とさなくてはいけないというのは、とても悲しいことだし、あってはならないことだと思います。ベトナムでは親たちの代に撒かれた枯葉剤の被害が、子どもたちを今も苦しめていて、まだ戦争は終わっていないのだと感じました。後の世代にも引き継がれていく被害の恐ろしさを目の当たりにして、戦争はあってはならないものだという思いを強くしました。
原発問題ですが、事故が起きるまで原子力発電については何も知りませんでした。3.11以降いろんな情報に触れる中で、学んだことや感じたことがあります。福島にはまだ自分の家に帰れない方たち、命を落とした動物たちがたくさんいるということ、そして原発事故を苦に自ら命を絶った方もいることを考えたときに、やはり原子力発電はあってはならないと強く思います。
3.11以降多くの方々に出会いました。今、一人一人のつながりがすごく大切だなって思っています。福島県飯舘村の酪農家の長谷川健一さんにお会いしたときに、村の高校生が「私は将来、どんなに好きな人ができても結婚しないほうがいいのかも」、「子どもは産まないほうがいいのかも」とおっしゃった話を伺いました。この悲しい現実を伺って、本当に悔しい気持ちになりました。私たちは「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」というCDシングルの売上げの一部を福島県の酪農家の方々へ寄付させて頂いています。これからも支援を続けていければと思います。
もはや安心した生活は奪われてしまいました。空気も大地も水も食べ物も、目に見えない放射能に覆われているようで安心して生活出来ません。こんなに恐ろしい原発は、もうやめるべきです。
──ライブだけではなく、ボランティアなど幅広い活動をされていますね。
「SKi基金」という制服向上委員会の独自の基金を運営しています。主に児童養護施設や知的障がい者の支援施設への支援や訪問などに取り組んでいます。一緒に歌ったり遊んだり楽しい時間を過ごし、クリスマスにはサンタさんになってケーキやプレゼントを届けたりもします。中には児童養護施設を卒園した後も連絡をとって仲良くしている子もいます。笑顔があふれる素敵な時間です。ボランティアとは言いますが、本当はこちらがエネルギーをもらっている気がします。
そういうボランティア活動の一方で、「戦争反対や脱原発を訴える、ちょっと過激に見られがちな社会活動にも取り組んでいることについて、どのようにお考えですか?」と聞かれることがあるのですが、17年間制服向上委員会で活動してきた中で、私はこの二つの活動を深く結ばれたものとして捉えています。それは「笑顔を守りたい」という「想い」です。施設訪問でみんなととても楽しい時間を過ごすということと、戦争や原発という笑顔を壊していくものに対して声を上げるということは、笑顔を守っていく上でどちらも大切な活動だと思うのです。
今年の3月に『脱がない、媚びない、NOと言えるアイドル』(ヤマハミュージックメディア刊)という本を出版しました。タイトル通りの姿勢を貫いて来た制服向上委員会の精神や、なぜ20年間続いて来たのか、社会活動やボランティア活動をするのか、といったことを17年在籍している私が書いています。制服向上委員会を最近知ったよ、という方にも、長年応援してくださる方にも読んでいただきたい本です。
──また原発を再稼動しようとする人たちもいますが、今の状況をどう思われますか?
「安全な原発」などもう誰も信じないと思います。そんな中、原発事故などなかったかのように再稼働させる政治に失望します。地元の方たちの生活もかかっているからこそ、原発に依存する体質や体制から変えなくてはならないのだと思います。あきらめてしまったら、そこで終わりだと思います。一人一人のあきらめないという思いが大きくなれば変えられるんだと信じて、がんばることが大切だと思います。私たちは「歌える場所があればどこへでも」の精神で脱原発を訴えていきたいと思います。
制服向上委員会は、世の中の問題に目を向け、自分で考えることの大切さを教えてくれるグループだと思っています。精力的に、自分にできることをやっていきたいと思っています。一緒にがんばりましょう!
〈インタビューを終えて〉
「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」も衝撃的だが、「脱がない、媚びない、NOと言えるアイドル」も衝撃的。売らんかなの風潮の中で、20年も活動を続けることの難しさ、脱帽です。反戦や脱原発を歌うアイドル、「笑顔を守りたい」との思い、平和で心豊かでないと笑顔は生まれないのか。彼女たちが「異色」と言われない社会へ、おじさんもがんばらねば!
(藤本 泰成)
プルトニウム利用政策を断念せよ
核兵器廃絶に向けた今後の課題
平和フォーラム・原水禁 事務局長 藤本 泰成
核兵器廃棄への一歩─―NATOの選択
2012年4月、北大西洋条約機構(NATO)の外相・国防相会議は、核兵器非保有国に対して核兵器を使用しない「消極的安全保障」の導入を決めました。このことは、米国の2010年の「核体制の見直し」の内容に沿ったものであり、核保有国を米・英・仏・ロ・中の5ヵ国に限るとする核不拡散条約(NPT)の不平等性に対する回答とも言えます。一方で、射程の短い戦術核の削減の用意があることも表明されています。
2009年4月、オバマ米大統領がプラハでの演説で表明した「核なき世界」への第一歩として、その現実的な対応として、大きく評価できるものでありその進展が待たれます。これにより、米国がドイツ・オランダなどに配置する150~240発程度の戦術核の撤廃と、米ロにおける核削減交渉を促進する要素になるものと思われます。しかし、「核兵器のある限りNATOは核の同盟」とする考えも示されており、通常兵器ではNATO諸国に劣るとされるロシアがどのように考え行動するか注目されます。
東アジア非核地帯化―─大きい日本の役割
NATOが、核実験を行い実質的にはNPTから離脱している北朝鮮や、NPTの枠内にとどまるが核開発疑惑から潜在的脅威と捉えられているイランなどに対して、今後どのような対応を図るかも重要な課題です。特に、独自の歩みを進める北朝鮮には、2国間協議や6ヵ国協議を積み上げ、核開発を放棄していくための条件整備を急がなくてはなりません。日本・韓国・北朝鮮が非核地帯を形成し、米・中・ロの3国が確認していく「東北アジア非核地帯構想」の実現が、世界の核廃絶にとっても重要なポイントとなるだろうと考えられます。
日本はオーストラリアと手を携え「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(ICNND)を組織し、核兵器廃絶の先頭に立って行動しようとしてきました。それならば、北朝鮮との2国間の問題に拘泥することなく、平和と核軍縮、国交回復への話し合いのテーブルに着く姿勢を示すべきであり、核兵器廃絶のポイントが東北アジアにもあることを見据えた行動が必要です。2015年のNPT再検討会議において、実りある議論ができるかどうか、日本の役割は大きいと言えます。
NPT条約の空洞化――日印原子力協力協定を許すな
このような核兵器廃絶の動きの一方で、インドをめぐってNPTを空洞化するような動きもあります。対立するインドとパキスタンは、NPT枠外において核兵器開発を行ってきました。そのNPTに加盟せず、核兵器を保有するインドと米国は、2008年8月、原子力協力協定を締結し、原子力の商業利用(平和利用)で米国がその技術を供与しようとしています。2010年6月には、日本も米国や産業界からの圧力の中で日印原子力協力協定の締結の交渉を始めています。
NPT条約は、前述したように不平等性はあるにしろ核不拡散のための重要な枠組みであり、そのことを基本に原子力の商業利用が図られてきました。原子力の軍事利用も商業利用も同じ技術の上に成り立つものであるからこそ、国際原子力機関(IAEA)の厳しい査察などを関係諸国に強いてきたわけです。NPTに加盟しない国への原子力技術の提供は、NPTの空洞化をもたらすものであり、被爆国としての日本のこれまでの政策と大きく矛盾するものです。核兵器廃絶の方向から許すことのできない政策と言えます。
核テロの現実性――厳しいプルトニウムの管理
今年3月、2回目の「核セキュリティーサミット」が、韓国のソウルで開催されました。核セキュリティーサミットが、核の商業利用を肯定しつつも、プルトニウムの拡散を不安視する米国の強いイニシアチブで開催されたことは大きな意味を持ちます。9.11同時多発テロ以降、米国はいたるところで厳しいセキュリティーチェックを行っています。世界貿易センタービルの崩壊という衝撃の中で、米国は分離されたプルトニウムがテロリストの手に渡り、例えばニューヨークの真ん中で小型核爆弾を爆発させたとしたら、というような現実的な不安が「核セキュリティーサミット」に結実していることを忘れてはなりません。
オバマ米大統領は、「核セキュリティーサミット」開催中に、韓国外国語大学で演説を行い、テロリストの手に渡ることを防ぐためにも「分離したプルトニウムを大量に増やし続けることは絶対にしてはならない」と述べました。発言の背景には、NPT加盟の非核保有国で唯一、プルトニウム利用に走る日本と、NPTから離脱して核開発を急ぐ北朝鮮を隣国とする韓国の、プルトニウム利用政策への強い要求があると考えられます。
世界には、原発由来のプルトニウムが約250トン存在します。核兵器にすると約3万発分です。核保有国が持つ核兵器は現在2万2千発といわれていますから、プルトニウムの量が想像できます。そのうち、日本の保有する分離済みプルトニウムは約45トンで、核兵器に直すと約5千発分を超えます。中国などが、日本は核保有国だと主張する理由がそこにあります。NPTは、商業利用(平和利用)目的以外でのプルトニウムの抽出、つまり使用済み核燃料の再処理を禁じています。日本が、軽水炉での混合酸化物燃料(MOX燃料)の使用を急いだ理由はそこにあります。
日本の核燃料サイクルに世界から批判
ウラン資源の乏しい日本が、原発推進へ向かうにあたって、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出し(再処理)、それを高速増殖炉(FBR)で使用することで、相当な将来にわたってエネルギー資源を確保できること(核燃料サイクル計画)を基本に据えています。しかし、商業炉としての高速増殖炉の夢は、冷却剤としてのナトリウムの制御の困難性から世界中で失敗しています。
現在、米英仏独などが放棄した中で研究を続けている日本の「もんじゅ」は、1995年12月のナトリウム漏出事故以来、2010年5月に14年ぶりに運転開始しましたが、結局、炉内中継装置の落下などの事故を重ねて本格的稼働に至りませんでした。六ヶ所村にある再処理工場も、日本の技術であるガラス固化体製造過程の失敗から18回に及ぶ稼働延期をくり返しています。再処理工場には、フランスの技術を導入しろとの声もありますが、使用しないプルトニウムを、理由なく抽出することへの世界からの批判があります。どちらにしろ、政府が「脱原発依存」を明確にした以上、高額な再処理を実施する意味はありません。
「非核三原則」を空洞化する原発政策
2011年8月に放送されたテレビ朝日「報道ステーション」などで、自民党内で“軍事通”とも言われる石破茂政調会長(当時)は、「核の潜在的抑止力」を持ち続けるためにも原発を停めるべきではないとの旨を主張しました。再処理の技術やプルトニウムの所有は、いつでも原発製造を可能にするものですから、原子炉技術や核燃料再処理技術は「潜在的な核抑止力」であると主張しているわけです。その意味では、プルトニウム利用政策は、核兵器を持たない、つくらない、持ち込まないとする「非核三原則」を空洞化するものです。
日本政府は、福島原発事故以来、ここまで来ても、使用済み核燃料は半分を直接処分、半分を再処理に回すとしています。このことは、「脱原発依存」そして「核不拡散」の観点からも、極めて問題が多いと言わざるを得ません。日本が、プルトニウム利用を断念することは、世界の核の現状を変えていくに違いありません。今、日本は被爆国としての責任を果たす極めて大きなチャンスを与えられているのです。
7月16日は過去最大の参加をめざそう!
「さようなら原発10万人集会」の成功に向けて
750万を超えた署名を提出
5月5日以来続いていた日本の全原発停止という状況が、6月15日の政府による関西電力・大飯原発(福井)の再稼働決定に伴い、新たな局面を迎えました。政府は夏の電力危機を声高に叫び、「停電」をもって国民を脅し、電力不安を煽りながら、国民の「安全・安心」よりも「経済」を優先させ、命や暮らしを後回しにしました。そして、伊方原発(愛媛)や泊原発(北海道)、川内原発(鹿児島)、志賀原発(石川)などの再稼働の動きも出てこようとしています。
「さようなら原発1000万人署名」は、昨年の呼びかけ以来、750万筆を超える署名が集まり、第一次提出として6月12日には衆参両院議長、15日には野田佳彦首相宛てに、合わせて7,514,066筆を提出してきました。その後も各地から署名が続々と届いています。3.11以降の国民の意識は大きく変化し、脱原発への願いが広く国民の間から沸き上がってきていることは明らかです。各種の世論調査でも、原発に否定的な意見が大半を占めるような状況です。国民世論は確実に草の根から変化しています。
また、福島第一原発事故も収束まで長期にわたると見られ、避難している方々が元の地に戻れる保証もありません。目に見えない放射能による健康不安や経済的損失など、事故が引き起こした様々な事態はより深刻になっています。いつ終わるともわからない放射能との闘いは今後も続いていきます。
再稼働でも原子力政策に方向性はない
原子力政策も、大飯原発の再稼働により弾みがつくものではありません。むしろ、原子力政策は方向性を見い出せてはいません。トラブル続きの六ヶ所再処理工場や高速増殖炉もんじゅなど、核燃料サイクル路線の破たんは明らかです。まして高レベル放射性廃棄物の最終処分場は見通しすら立っていません。政府の原子力政策大綱の議論も休止状態で、政府の方針も定まっていません。
政府は現在、エネルギー・環境会議の中で2030年までに原子力の依存度をどのようにするかを議論しています。選択肢として、「0%、15%、20~25%」を提示しようとしています。その際、これまで使用済み核燃料の全量再処理としてきた政策が焦点となり、全量直接処分という再処理しない選択肢と、今まで同様の全量再処理と直接処分併用の路線選択が提示されようとしています。なおも破たんしている核燃料サイクル路線に固執していますが、政策変更は避けられない状況にあり、政策議論のチャンスでもあります。
6月には「中間的整理」を取りまとめ、国民に対して選択案が提示され、国民的議論を経て国家的戦略として決定しようとしています。2ヵ月ほどの短期間で国民的議論が深まるのかは疑問の残るところです。さらにこの間、750万筆を超える署名に対して、提出に立ち会った呼びかけ人で作家の大江健三郎さんらに「会いたくない」として面会を拒否したことからも、野田佳彦首相の姿勢がわかろうというものです。
草の根から政策を変える運動を
夏から秋にかけて各省庁も予算の策定時期に入ります。また、原発の再稼働や原子力政策の議論そのものも俎上にあがる時期です。署名という形で寄せられた声と、10万人もの人々が首都東京に集まり、脱原発の声を上げることは、それらの動きに大きな影響を与えるはずです。
昨年の9月19日、6万人が集まった「さようなら原発集会」(東京・明治公園)は、朝日新聞の社説で「民主主義が動いた」と評価されました。草の根からの大衆的な盛り上がりで、政治を変え、政策を変える運動の広がりが私たちに求められています。
軍事情報保護協定の反対運動を
日本、韓国間での「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)と「物品・役務提供協定」(ACSA)締結の動きは、まず韓国内で強い反対の声が起こり、韓国国防相が来日を中止したことにより、とりあえず延期となりました。しかしこれまで米韓合同軍事演習に際して、日本軍の参加を求め続けてきたのは米軍であり、結果としてオブザーバー参加が実行されてきたのです。日韓両軍には一定の軍事的共有部分が存在している上での今回の協定締結の動きですから、今後もくり返し出てくるでしょう。
このGSOMIAは日米間では2007年に締結され、これによって多くの情報が国民に隠されてきています。もし日韓でGSOMIAが締結されれば、東アジアで何が起こっているのかさえ、十分知ることができなくなるでしょう。日韓の連帯した反対運動の広がりが求められています。
米、中、ロ、印、パが核軍事力を強める
昨年2月に米ロは新戦略兵器削減条約(新START)を発効させました。7年以内に双方の核弾頭数を550発、運搬手段(ミサイル、原潜、爆撃機)を800基(実戦配備は700基)に制限するとしましたが、①戦略爆撃機が積載する核爆弾は1機=1発と計算する、②配備から外した核弾頭は廃棄する義務はない、という二つの問題が存在していました。
米ロは今年4月段階で、大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル、爆撃機などを、米国は812基・機に戦略核弾頭1,737発を配備、ロシアは494基・機に1,492発の戦略核弾頭を配備しました。さらに未配備の運搬手段を含めると米国が1,040基・機、ロシアは881基・機になるとしています(両国政府発表)。
一方、下図は米国科学者連合(FAS)ホ-ムページに掲載された5月2日付の、世界核戦力の状況です。各国の核兵器は国家機密ですが、公に入手可能な情報と、時折のリークによって最良の数字が把握できました。また米ロの爆撃機搭載の核弾頭数も計算したと記されており、全て推定値と記しているものの、ほぼ米ロ両国が配備する核弾頭の実数に近いと考えます。
昨年4月13日付のFASの世界核戦力状況では、米国が1,800、ロシアが1,950の核戦略弾頭を配備していると紹介しています(2011年の原水禁世界大会討議資料参照)。米ロ両国は、削減する一方で、戦略爆撃機積載の核弾頭数を増やすなどの方法を取っているのでしょうか。
米空軍は戦略爆撃機としてB-52HやステルスのB-2Aなどを保有していますが、B-52Hは最近では空母艦載機としても利用されていて、配備の詳細は明らかでありません。一方、ロシアはTU-95戦略爆撃機などの大幅拡充計画を、昨年3月に明らかにしていますが、機数については明らかでありません。米ロ両国が大量の核兵器を、いつでも攻撃に使えるように配備している状況は、両国だけでなく世界に大きな緊張を強いる結果となっています。
このような状況下で、他の核兵器保有国に削減を求めても、説得できないのは明らかです。中国の核兵器は抑制的だとFASは述べていますが、中国に対抗的なインドは、4月に中国全土を射程内に収めるミサイル・アグニ5の発射実験に成功しています。
パキスタンはインドに対抗して、核兵器、ミサイル開発を進めてきて、インド全土を攻撃する核ミサイルを実戦配備しています。そこへ新たに北朝鮮が核武装の道を進もうとしています。しかしこれらの国々の状況を見れば、核兵器によって平和が保たれていないことは明らかです。