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止めよう再処理!共同行動ニュース01/25号記事から
2012年01月25日
六ヶ所再処理工場の試験再開反対!
プルトニウム利用政策推進に大義はない
見直される原子力政策
日本原燃(株)は、2008年12月に事故を起こして以来中断していた六ヶ所再処理工場の高レベル放射性廃棄物ガラス固化施設に係わるアクティブ試験再開に向けて、1月4日、ガラス溶融炉の熱上げ作業を開始しました。1月下旬には試験が再開されようとしています。さらにMOX燃料工場の建設も今春から再開する意向を表明しました。このような動きに対して枝野幸男・経済産業大臣は、「国が承認する、しないという段階ではない」として、試験再開になんら注文をつけることなく、事実上黙認しています。
しかし福島原発事故によって、エネルギー環境会議や新原子力政策大綱策定会議などで原子力政策そのものが見直されようとする中で、六ヶ所再処理工場を含めた核燃料サイクル路線の見直しも議論されています。(後述)。核燃料サイクルの中核を担う高速増殖炉の原型炉である「もんじゅ」の予算も大幅に減額され、次年度での試験再開はできなくなり、高速増殖炉開発そのものが実質的に困難となりつつあります。その中で六ヶ所再処理工場は存在意義そのものが問われています。今回の試験再開は、既成事実の積み上げをはかることによって、プルトニウム利用政策の見直し議論の広がりを抑えようとするものです。
そもそも、これまで失敗し続けた高レベル放射性廃棄物のガラス固化ができるのかどうかも問題です。溶融炉の底に「白金族」がたまり、何度も失敗を重ねてきました。安定的に作動することも重要ですが、これまでの実績を見れば、甚だ疑問です。「万全の対策」をとって臨んだこれまでの試験で、ことごとく失敗を繰り返しています。
破たんするプルトニウム利用政策
六ヶ所再処理工場が停止していた3年の間に、原子力をめぐる状況は大きく変わりました。昨年3月11日に発生した東日本大震災を受けて、福島第一原発では、水素爆発や大量の放射能を放出するなど、日本の原発事故史上の最悪の事故を引き起こしました。さらに地震により女川原発、東海原発、六ヶ所再処理工場なども緊急停止や電源喪失など「あわや」という状態を招いていました。各地の原発も津波や耐震の見直し、避難区域の拡大など、これまでにない情勢の変化がありました。
さらに核燃料サイクルを巡っては、もんじゅの研究開発の見通しがさらに悪化し、頼みのプルサーマル計画も「2015年までに16基~18基の原発で実施」という計画は、もはや「幻の計画」となっています。プルトニウム利用計画そのものが「破たん」しています。その現実をしっかり直視する必要があります。
再処理からの撤退を
六ヶ所再処理工場を動かすことによって、これ以上プルトニウムを生産し続けることに何の意味があるというのでしょうか。国際公約として余剰プルトニウムを持たないというこれまでの立場との矛盾が拡大するばかりです。国民に納得できる説明もないまま見切り発車することは、ますます日本の原子力政策に対する不信を高めるものです。そして、日本原燃の川井吉彦社長の「国の議論と試験は別問題」との発言には、原子力推進派の傲慢さが表れていますし、今回の枝野経済産業大臣の傍観者的な態度も問題です。
さらに六ヶ所再処理工場を支えている最大のスポンサーは、福島第一原発事故を起こした東京電力です。全体の4割とも言われています。その最大のスポンサーは、いま福島第一原発事故の賠償さえままならない状態で、「東電解体」とまでいわれています。今後も安定して六ヶ所再処理工場を支えていけるかどうかもまったくもって不透明です。不安定な経営状況を抱えて六ヶ所再処理工場が今後も「商業工場」としてやっていけるのか。その答えは明らかです。
現在、原子力委員会の中の「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討委員会」(鈴木達治郎座長)の中でも核燃料サイクルの将来の方向性に関する検討を開始しました。(1月11日)。その中で、第1ステップで意義や目的、第2ステップで原子力の依存度を下げた場合の影響、第3ステップで方向性をめぐる議論がなされます。明らかに、現状ではこれまでの方向性が修正、ないしは転換されようとしています。
六ヶ所再処理工場をめぐる状況の変化を見れば、再処理再開の大義などありません。むしろ国民的合意なき再処理政策を押し進めるための試験再開は許せません。
1997年に完成する予定だった再処理工場は、15年経った今でも完成していない欠陥工場です。これ以上「ムリ・ムダ・キケン」な再処理工場の建設に、貴重な私たちの電力料金をつぎ込んではなりません。六ヶ所再処理工場の建設中止を、今後も強く求めていきましょう。