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止めよう再処理!共同行動ニュース3/23号記事から

2011年03月23日

巨大津波が福島原発を襲う!
日本の原発史上最悪の事態へ

日本を直撃した巨大地震
 3月11日、14時46分頃、三陸沖(北緯38.0度、東経142.9度、宮城県牡鹿半島東130km付近、深さ約24km)、マグニチュード9.0(M9.0)という巨大な東日本大震災が発生しました。その地震発生から今日(3月23日)で12日が経ちました。その間、震度5強以上の地震が30回近く発生し、東日本を中心に甚大な被害をもたらしました。交通・通信・医療・食料・居住などのライフラインが喪失し、その復旧も目途が立っていません。現地では被災者救援に全力が注がれていますが、被災者の要求にはいまだ届いていないのが現状です。
今回の震災により、死者9199人・行方不明者1万3786人、26万3915人が避難所生活(3月23日・東京新聞)を強いられていますが、この数字は、今後もさらに増えようとしています。私たちも含め、国民的な協力のもと全力を挙げて救援・復旧にむけて努力を重ねなければなりません。

福島第一原発で連鎖的事故
 東日本大震災は、地震時に運転中であった東京電力・福島第一原子力発電所、同第二発電所、東北電力・女川原子力発電所、日本原電・東海第二原子力発電所の計11基の原子炉が自動的に停止しました。しかし、地震による影響で外部電源が失われました。女川原発や六ヶ所再処理工場では非常用電源が稼働する事態となりましたが、福島第一原発では、津波により海水ポンプを水没させ、オイルタンクが流出し、非常用電源も津波により、6号機を除き使用不能となり(注1)、非常用炉心冷却装置が注水不能に陥りました。
事態はさらに進み、炉心の冷却不能に続き、使用済み核燃料のプールも電源喪失による冷却不能に陥り、核燃料の溶融を招きました。1・2・3号機では水素爆発による原子炉建屋や格納容器下部の圧力抑制室の破損を引き起こし放射能が環境に大量に流れ出ることとなりました。「5重の壁(注2)で原子力の安全が守れている」とする推進側の「安全神話」をことごとく崩壊させた、日本最大の事故となりました。今も原子炉を制御する各種の計器も故障し、現場は放射線も強く容易に原子炉に近づくこともできず、現在も、原子炉そのものを制御することができない非常事態を招いています。まさに危機的状況にあります。

注1.地下1階に2台並列に設置され、非常時にどちらも起動しない確率は100万分の1と言っていた!
注2.「燃料ペレット」、「燃料被覆管」、「原子炉圧力容器」、「原子炉格納容器」、「原子炉建屋」の5つ。

東京電力の地震・津波対策
 当初、東京電力は津波対策を軽くみていました。東電は、「津波が5~6mの高さであれば施設の安全性は保てる」としていました。東京電力ホームページを見れば、「原子力発電所では、敷地周辺で過去に発生した津波の記録を十分調査するとともに、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波シミュレーションによる評価をし、重要施設の安全性を確認しています。また、発電所敷地の高さに余裕をもたせるなどの様々な対策を講じています」とされて、津波が直接原子力施設を襲うことはないとしていました(図1)。国も「過酷事故(シビアアクシデント)」の中でもまったく考慮されていませんでした。
また、M8.0の地震による津波でも海水ポンプなどの機器に影響はないとしていました。ちなみに福島第一原発の防波堤は6mほどでした。福島原発周辺では、14m超の津波が観測されています。今回はそれを上回る津波が来たことになります。110323_0001.jpg

天災ではなく「人災」だ
 今回のM9.0は、想定した地震の30倍もの大きさでした。全ての予想を超えたものですが、原発を進めてきた者たちは予想外の「天災」として済まそうとしていますが、それで許される訳ではありません。過去のチェルノブイリ原発事故を見れば明らかなように、原発事故は、自国をはじめ世界的にも多くの被害をもたらすことが明らかであり、原発は絶対的な安全が求められています。予想外の「天災」ではなく、あくまでも推進側による「人災」です。
政府も東電の賠償責任について言及する中で、「今回の事故の原因が『異常に巨大な天災地変』には当たらないとして、東電も責任を免れないと判断している」と報道されています。(3月23日・読売新聞)。もちろん、これまで原発を認めてきた国の責任も当然あります。今後、事態が終息すれば、徹底した検証が必要です。

現在も続く非常事態
 福島第一原発での一連のトラブル(表1)によって、政府は原子力緊急事態宣言を発して関係者とともに懸命に事態収拾に動いています。特に3号機に対して自衛隊や消防庁などの協力を得て、空と陸からの放水で使用済み核燃料のプールを冷やそうとしています。しかし、現場は放射線量が高く、作業員も十分に動けない中での活動は、思うように成果があげられていません。今後もこの状況が続けば、さらに厳しい事態につながっていきます。この3号機は、本体にMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を12体内蔵しており、最悪の場合には、放射能毒性の大変強いプルトニウムが大量に環境に放出される可能性もあります。(注3)。
現在、政府は原発から半径20km圏内に避難を指示し、20~30km圏内は屋内退避としています。一方で、原子力事故での第一線で指揮をとるべきオフサイトセンターは、遙か後方の郡山まで退避し、自分たちは安全圏にいようとするこの矛盾は許せません。(注4)
事故の拡大が続く中、いつまでもこの範囲で良いとはとても思えません。
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この状況に対して、NGOや市民団体が中心となって緊急要請として、「妊産婦並びに乳幼児・児童・生徒などの避難について」を首相宛に提出し、関係国会議員にも要請しています。(原水禁HP「http://www.peace-forum.com/gensuikin/」参照)。放射能の影響を特に大きく受ける若い命を守らなければなりません。これは大人の責任です。
事態がより一層深刻化する中で、労働者の被曝の問題も深刻化しています。すでに現場で作業する人々の被曝線量が、緊急時被曝100ミリシーベルトを大きく超え、2.5倍の250ミリシーベルトまで引き上げられました。法令にも載っていない超法規的措置です。現場の労働者に、そこまで迫るほど現場は混乱し、事故が厳しいものであることを示しています。しかし、現在も労働者がどれくらい被曝しているのかは、一切わかっていません。
緊急時であっても、現場の労働者に不要な被曝をさせないこと、被曝作業を強制させないこと、被曝労働に国や企業が全責任を持って対処することを求めていかなければなりません。

注3.現在、茨城県産のホウレンソウと福島の原乳から食品衛生法の暫定規制値を超える放射性物質が検出されました。風評被害が心配です。
注4.ましてや、原子力安全・保安院の検査官が、事故発生後1週間も原発を離れるなど、住民を置いて自分たちだけさっさと逃げてしまうなど、本当に許しがたない行動を起こしています。こんな人々に日本の原発の安全を本当にまかせることができるのでしょうか。

今後の事態の推移
 厳しい状況が続く福島第一原発の今後の推移はどのようなものになるのでしょうか。3月17日、原子力資料情報室主催の院内集会「福島第一原発で何が起きているのか」が開かれました。元東芝の原子力技術者である後藤政志さんから報告がなされ(原子力資料情報室のHP「http://cnic.jp/」に動画がアップされています)、福島原発の原子炉格納容器の設計にも携わった経験から、このまま終息に向かうことが困難になれば、以下の3つのパターンの可能性が示されました。

今後予想される危険(1)
・原子炉の冷却ができないと炉心が溶融して原子炉の底に原子炉の底に溶融物(デブリ)が落ちる。
・さらに冷却ができないと原子炉容器の底が抜ける。
・溶融物が格納容器の床を突き抜けコンクリートと反応し大量の水素ガス等を出す。
・この段階で格納容器が破損するので外部に大量の放射性物質が放出される。
今後予想される危険(2)
・冷却に失敗すると、事故の進展にともない水素爆発、水蒸気爆発、あるいは再臨界が起こりうる。
・大規模な爆発現象をともなうと、大量に放射性物質が飛び出し、チェルノブイリのようになる。
・爆発を起こさない場合には、徐々にではあるが放射性物質が外部に出続ける可能性がある。
今後予想される危険(3)
・原子炉建屋の上部のプールに使用済み燃料が大量に貯蔵されている。
・冷却できなくなると、使用済み燃料が溶融し、同様に放射性物質が撒き散らされる可能性がある。

このような状況の中で、関係者の懸命な努力がなされています。私たちも一刻も早く事態の収拾がはかられることを切に願っています。しかし、政府や事業者、マスコミなどの発表や報道を冷静に見ればより厳しい事態が予想されます。安易な楽観論は国民の選択を大きく誤る恐れがあります。政府や東電などに、情報の速やかな公開を求めながら、今後の推移に注目していかなければなりません。

原子力政策の根本的転換を!
 今回の事態によって、社会・経済が大きなダメージを受け、混乱が続いています。これまで「日本の原発は絶対安全」として推進してきた自民党も、「原発推進は困難」と言うようになりました。国民も「88%が原発に不安」としています(3月19日、東京新聞)。今後、事故が長引けば長引くほど原発推進の声はますます小さくなるでしょう。今度こそ原子力政策の根本的転換が求められます。
今回の事態によって、電力は東電だけにまかせてはならない、という考えが拡がったと思います。企業や病院、福祉施設、そして一般家庭も含め東電離れが進み、自家発電などの傾向が一段と進むことになるはずです。そのことはより一層原発離れを生むことになるはずです。
また、プルトニウム利用政策の破たんが、より明らかなものとなりました。青森の六ヶ所再処理工場は、2012年10月の稼働予定は全く見通しが立たなくなりました。さらに、福井の高速増殖炉「もんじゅ」も、2012年の再開宣言を出していますが、先が見えない状況となりました。長期停止になるほど、1日5500万円の維持費が大きな問題となってきます。
プルサーマル計画も、東電・福島原発、関西電力・高浜原発で相次いで実施されましたが、今回の事故によって今後の実施は困難と言えます。
今まで「安全」だと思っていた人々にとっても、原発は「危険」なものになってしまいました。私たちは、大きく「脱原発」を訴えます。そのためには、まず事故の早期終息を願うばかりです。

■止めよう再処理!共同行動ニュース3/23号(PDF)

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