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「日印原子力協定」に対する議会決議の取り組みについて
2010年11月05日
日印原子力協定について原水禁では、核不拡散条約(NPT)体制を骨抜きにするものとしてその締結に異議を唱えてきました。現在、その日印原子力協定の交渉が進んでいます。10月24日~26日にかけて来日した、インドのマンモハン・シン首相は、日本政府関係者と会談しました。その中で、「協定交渉を加速することで一致した」といいます。しかし、日本側が求めている核実験などの核開発に対する歯止めについては、「インドは核実験のモラトリアムを自主的に表明しており、公約を変えるつもりはない」とし、あくまでインドの自主的な判断の上に立つ事を表明しています。さらにNPT体制には、依然として入ることさえ検討されていません。実質的な歯止めの担保もないまま、原子力技術や機器を渡すことは、NPT体制に例外をつくり出し、結果的にインドの核体制を助けることにつながり問題です。
原水禁では、このような動きに対して地方議会から問題を指摘する決議をあげていただく、議会決議の取り組みを提起しています。
■鹿児島県西之表市議会決議(意見書)(PDF)
■日印原子力協定締結を許すな(ニュースペーパー8月号)
■締結に反対する「被爆65周年原水爆禁止世界大会広島大会特別決議」
核拡散と核軍拡の危機に際し、インドに対する原子力協定交渉での
日本政府に明確な対応を求める意見書(案)
国際社会が「核のない世界」を求める様々な動きを進める一方で、南アジアでは核拡散と核軍拡の危機的状況が続いている。中国は2基の原子力発電所をパキスタンへ提供する計画をすすめ、インドへは、2008年から原子力供給国グループ(NSG)のガイドラインが改訂され、米国を始めフランス、ロシアなど各国が協定を結び、原子力協力を始めた。
6月28日、日本政府とインドとの原子力協定の締結に向けた交渉が開始された。非核三原則と核廃絶を国是とする被爆国日本が、核拡散と核軍拡につながる動きに断固として反対し、明確な外交政策をとるべきである。
1998年、日本も共同提案国となり、全会一致で決議された国連安保理決議1172では、インド及びパキスタンに対し、「核兵器開発計画の中止」、「核兵器用の核分裂性物質の生産中止」を求め、「すべての国に対し、インド及びパキスタンの核兵器計画に何らかの形で資する可能性のある設備、物質及び関連技術の輸出の禁止」を求めている。今年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書でも、「すべての加盟国に対して、核関連輸出が直接的にせよ間接的にせよ、核兵器のまたその他の核爆発装置の開発を支援してはならない」ことを確認している。
また、インドは包括的核実験禁止条約(CTBT)にも署名していない。日本政府が促進をしているCTBTの発効要件国のうち未署名国は、インド、パキスタン、北朝鮮だけである。インドとの交渉では、少なくともCTBTへの署名・批准、インド国内の全ての核施設を査察の対象として、核兵器開発をやめさせることが前提となるべきである。そうでなければ、日本自ら提案した国連決議に反して、核兵器計画に資する可能性のある設備、物質及び関連技術の輸出につながる協定を結ぶことは許されない。
2008年の米印原子力協定締結は、核拡散防止と核廃絶の努力を積み重ねてきた国際社会の歩みに全く逆行するものであり大きな問題である。NPTを無視し続けるインドがこのような形で容認されるならば、核不拡散体制は完全に骨抜きとなり、パキスタンとの核軍拡競争の再燃など、世界は再び核の脅威にさらされることになりかねない。
先にインドとの原子力協定を結んでいる米国やフランスから日本の協力への圧力がある背景は、原子炉圧力容器の生産など日本企業が独占的に持つ原子炉関連技術であると言われる。こうした有利な交渉材料を手に、NPT加盟、CTBTへの署名・批准などを大前提として、核軍縮に向けた原則を掲げて、核実験、保障措置、核燃料の転用防止、再処理・濃縮のような機微技術、核物質生産モラトリアムなど多くの点で軍縮・不拡散への実質的な成果を挙げるべきである。
以下、
A案~非核自治体宣言を行ない,米印原子力協定に係る意見書を採択した自治体~
○○市(町)は「非核平和宣言」を行なうとともに、「米印原子力協力協定に関し、原子力供給国グループ(NSG)での慎重な議論を求める」趣旨の意見書を採択しており、その意味からも、インドに対する原子力協定交渉で日本政府に明確な対応を求めるよう要請するのは当然の義務と考える。
B案~非核自治体宣言を行なった自治体~
○○市(町)は「非核平和宣言」を行なっており、その意味からも、インドに対する原子力協定交渉で日本政府に明確な対応を求めるよう要請するのは当然の義務と考える。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
○○議会議長
提出先 内閣総理大臣、外務大臣 あて