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【ニュースペーパー2013年4月号】原水禁関連記事

2013年04月01日

4月6日は「反核燃の日全国集会」へ
六ヶ所再処理工場は運転前に停止を

「つながろうフクシマ!」を合い言葉に
3月9日~11日、各地で脱原発の集会

問われる日本の国際的責任
MOX燃料輸送と再処理開始




4月6日は「反核燃の日全国集会」へ
六ヶ所再処理工場は運転前に停止を

核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団
事務局長 山田 清彦


取り出しても使い道のないプルトニウム
 一基の原子力発電所を1年間運転した際、環境中に放出される放射能を、1日で放出すると言われているのが青森県の六ヶ所再処理工場である。本格稼働すれば、年間800トンの使用済み核燃料を再処理する計画で、4トン強のプルトニウムを抽出する。
 建設が始まった20年前なら、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して、高速増殖炉で燃焼するという「可能性」があった。しかしそれが頓挫して、50年後にも実現が見通せない。だから、ウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料を一般の原子炉で燃やすプルサーマル計画を言い出したものの、福島原発事故を経て、計画通りに進められるかどうか疑問だ。今でも約44トンのプルトニウムを保有している日本が、使い道の定まらない、核兵器の原料であるプルトニウムを増やすことに、世界が警戒感を強めるのは間違いない。
 これまでアクティブ試験を行い、425トンを再処理して、ウランとMOX原料と核のゴミに分類した。これをもって、「工場としては完成した」と日本原燃は言ってきた。しかし高レベル放射性廃液をガラス固化体にする過程でのトラブルによって、19回も稼動時期を延期。今年10月の竣工予定と言うが、着工から20年経ち工場全体が劣化している可能性も高い。
 ガラス固化施設が順調に動かないと、再処理工場が完成したことにはならない。そこで、日本原燃は2007年11月頃に発生した不具合から、ガラス固化施設の修復に努めてきた。その結果、2経路あるA系統の修復を先送りして、B系統でガラス固化試験を実施。ガラス固化体を製造するうえで障害となる白金族が滞留して目詰まりすれば、鉄棒でかき混ぜたり、下からドリルを突き刺したりするという、かなり原始的な方法で乗り切ることにした。こんな技術しかない日本原燃に、プルトニウムを扱わせていいのだろうか。

国は再処理工場の原子力防災範囲を拡大すべき
 国は原子力防災範囲を原発で半径30キロメートルまで拡大したが、再処理工場は相変わらず半径5キロメートルにしている。扱う放射能量が多いので、本来であれば半径60キロメートルまで拡大すべきではないか。ここまで範囲を拡大すると、青森市と八戸市も入るので、80万人くらいの人々が原子力防災対象者ということになる。
 地震や津波、航空機が墜落するなどの事故が起これば、自分たちが生活圏から弾き出されることになる。再処理工場の運転開始は、まるで地雷原の上に住むかのような怖さだ。そのことが共有されれば、多くの人々が再処理工場を止めようという意識に変わるだろう。そうなっては困るということで、原子力防災範囲を拡大しないとすればそれは犯罪に等しい。
 六ヶ所再処理工場には、高レベル放射性廃液が現時点で202立方メートル貯蔵されている。全電源喪失が起きれば、高レベル廃液の冷却が維持されず廃液が沸騰し、爆発すると言われている。この一部が環境中に漏れただけでも、東北地方は壊滅状態となるだろう。また、東海村再処理工場には394立方メートルの廃液が貯蔵されている。爆発すれば、恐らく日本中どこにも人が住めないような、放射能汚染地帯となるだろう。
 なお、下北半島では大間町にフルMOX原発を建設中で、むつ市にはリサイクル貯蔵施設も建設中だ。東北電力東通原発の建設計画もある。そんな中、東通原発1号機の下に活断層がある疑いが浮上している。

再処理がなければ電気料金値上げを圧縮
 最近になって、再処理工場が稼動することに対して、「本当に大丈夫なのか」という声が多く聞かれるようになったと感じる。経営危機から電力会社は、電気料金の値上げを申請しているが、再処理工場に支払う分を減額すれば、値上げ幅を圧縮できるはずだ。私たちが、再処理費用を支払わなくなれば、電力会社は日本原燃を支えきれなくなる。それが原発と再処理をやめる方向へ舵を切らせることにもつながる。
 青森県では、核燃施設の受け入れについては、県民投票条例を制定して決すべきだという運動が提起されていたにもかかわらず、1985年4月9日、当時の北村正哉知事が県議会全員協議会で、核燃施設の受け入れを容認した。それに怒った県民が開催したことから始まった反核燃の日集会が、今年も行われる。28回目となる集会へ、全国の皆さんの参加をお願いしたい。

第28回「4.9反核燃の日全国集会」
日時:4月6日(土)14:00~16:00
会場:青森市「青い森公園」
   (青森県庁となり/JR「青森駅」7分)
内容:屋外集会
    市内デモ行進(青い森公園→柳町通り→新町通り→協働社付近で流れ解散)
主催:核燃とめよう!全国実行委員会
    原水禁国民会議(03-5289-8224)、原子力資料情報室、青森県反核実行委員会ほか



「つながろうフクシマ!」を合い言葉に
3月9日~11日、各地で脱原発の集会

 2011年3月11日の東日本大震災及び福島原発事故から2年を迎えました。被災地は復興に向けて動き出していますが、一方で福島原発事故による放射能の被害が広範囲に渡り、大きな妨げとなっています。いまでも福島県内では16万人もの人々が、故郷を奪われ、生活や健康、就労などに多くの不安を抱えています。
事故の収束も見えない中で、総選挙後に政権交代しましたが、政府の事故対応は進んでいません。一方で、原発の再稼働の話だけが突出しようとしています。被災者への援護が優先されるべきはずが、企業や業界の生き残りが優先されようとしているのです。

「反原発以外、21世紀に日本が尊敬される道はない」
 そのような中で、作家の大江健三郎さんら9人の呼びかけ人でつくる「『さようなら原発一千万署名』市民の会」が、3月9日~11日の3日間を「つながろうフクシマ!さようなら原発大行動」と位置付けて、様々なアクションの展開を国内外に呼びかけました。フクシマを忘れず、風化させず、脱原発社会をめざして企画されたものです。
 東京では、3月9日に明治公園で「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」として開催され、春の暖かい日差しの中、1万5千人が集まりました。集会は二部構成で行われ、呼びかけ人から大江さんの他、鎌田慧さん、落合恵子さん、澤地久枝さん、そして作家の広瀬隆さん、福島からの避難者である斎藤夕香さんらが発言しました。海外からは、韓国の環境団体「韓国環境運動」の共同代表で「核なき世界のための共同行動」代表のチェ・ヨルさんが駆けつけて、メッセージを披露しました。また、11日には品川区の「きゅりあん・大ホール」において、「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」が開催され、1200人が参加しました。
9日の集会で大江さんは、「私のいま現在の決意は3つです。広島、長崎、そして福島をナカッタコトにしようとする連中と闘う。もう一基の原子炉も再稼働させぬ、そのために働く。そして、このデモコースを完歩することです。しっかり歩きましょう!」として決意を語り、デモコースを先頭で歩き通しました。
翌々日の講演会では、「反原発に向けてがんばっていく以外に、日本が21世紀に尊敬される道はない」と訴えました。また、呼びかけ人から内橋克人さん、澤地さん、鎌田さん、落合さん、ゲストとして福島大学教授の清水修二さん、九州大学教授で副学長の吉岡斉さんの講演が行われました。呼びかけ人の坂本龍一さんはミュージシャンの後藤正文さんと対談を行いました。

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3月11日の「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」(品川区)


各地でもたくさんの集会やデモなどが開催される
 9日~11日には、わかっているだけでも全国で150ヵ所以上の地域で、集会やデモなどが取り組まれました。全国でフクシマを想い、フクシマを忘れない行動が取り組まれたことは、脱原発の世論が「沈静化した」という声に対する反証になったと思います。
札幌では暴風雪のため屋外集会が中止となりましたが、屋内集会には600名が集まり、新潟でも600名、京都では3500名、福岡は2000名など、各地でたくさんの人々が声を挙げています。この声は広く海外にも伝わり、韓国ではソウルや釜山など各地で連帯する集会が開かれ、日本と同じく地震国でもある台湾でも10万人の集会が開催されています。ヨーロッパでは、フランス、イギリス、ドイツなどでもフクシマに連帯する集会が行われ、メッセージも寄せられています。詳しくは「さようなら原発1000万人アクション」HPを。

フクシマを「核時代の終わり」の始めに
 国内外の草の根の動きを、さらに大きなものにしていかなければなりません。安倍自公政権の原発推進への「先祖返り」を許さないためにも、今後もフクシマを風化させない取り組みの強化が求められています。
 同時に被災者の直面する様々な問題に寄り添い、具体的解決をはからなければなりません。その上で脱原発を実現する道筋をつくりあげることが「つながろうフクシマ!」になるのだろうと思います。
 それぞれの場で全国とつながる運動が引き続き大切になります。原水禁・平和フォーラムでは、「フクシマを『核時代の終わり』の始め」にするための取り組みを、今後も拡大していきます。




問われる日本の国際的責任
MOX燃料輸送と再処理開始

 50基の発電用原子炉のうち、大飯原子力発電所の2基を除く48基は、7月に発表される原子力規制委員会の新安全基準を満足させられるまで再稼働はあり得ません。そして再稼働となったとしても、MOX燃料の使用が自治体によって認められるか否かは不明です。それにも拘わらず、フランスからのMOX燃料の輸送や六ヶ所再処理工場の操業開始が計画されています。

引き受け先不明のMOX燃料輸送計画
 グリーンピース・フランスは、2月26日、2011年春に予定されながら福島第一原子力発電所事故を受けて延期されていたMOX燃料の輸送が、4月に計画されていると発表しました。その後の報道によると、フランスの原子力産業複合企業アレバ社はMOX燃料の輸送準備について日本の関係当局と協議していると認めたとのことですが、輸送時期は明らかにしていません。グリーンピースの最新の連絡では、シェルブール港出港時期は4月上旬から中旬と予測されるとのことです。
 一昨年の輸送計画は、中部電力浜岡4号機及び関西電力高浜3号機用のものでした。関西電力が7月に高浜3及び4号機の再稼働することを想定しているため、輸送先は高浜3号機との見方が有力でした。計画について言葉を濁していた関西電力は3月21日になってやっと高浜3号機用の輸送を計画していると発表しましたが、輸送の時期・ルートは明らかにしていません。
 現在、約960kgのプルトニウムを含むMOX燃料が5つの原子力発電所で保管されたままになっています。柏崎刈羽原子力発電所の場合は、この状態が2001年3月以来、12年間も続いています。利用のめどの立たないMOX燃料輸送は、不必要に輸送中や原子力発電所での核セキュリティ上の問題を増大させます。核セキュリティに責任を持つ原子力規制委員会は、受け入れ先を明確にするとともに輸送停止を命じるべきです。

2013年度後半に再処理開始と発表の日本原燃
 2013年10月の六ヶ所再処理工場竣工をめざしている日本原燃は、1月31日、2013年度下半期に工場の運転を始めるとの計画を原子力規制委員会に届け出ました。日本は、2011年末現在、英仏に約35トン、国内に約9トン、合計約44トンのプルトニウムを保有しています。8kgで長崎型原爆一発分との国際原子力機関(IAEA)の基準を使えば、5500発分に達します。
 米国のオバマ大統領は、2012年3月に核セキュリティ・サミットでソウルを訪れた際、韓国外国語大学校での演説で「プルトニウムのようなわれわれがテロリストの手に渡らぬようにしようと努力しているまさにその物質を大量に増やし続けることは、絶対にしてはならない」と述べています。原子力規制委員会が核燃料サイクル関連施設の新安全基準を発表するのは12月になると見られていますから、届け通り再処理が始まることにはならないでしょうが、原子力発電所の再稼働のめども立たない現状で、プルトニウムをさらに分離する計画を出すことは、国際的な懸念を招きます。

P9Japan's Pu1993-w-G2_1.jpg 原子力委員会は、2003年8月の決定において、核拡散防止面での懸念に応えるためとして、六ヶ所再処理工場でのプルトニウムの分離について次のように定めています。「電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的(利用量、利用場所、利用開始時期、利用に要する期間のめど)を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表」し、「原子力委員会は、その利用目的の妥当性について確認」する。しかし、電気事業連合会は、福島事故後、プルトニウムの利用計画を更新していません。
 そもそも、電気事業者がこれまで発表した利用計画は、六ヶ所村で建設中のMOX工場が完成したらそこでMOX燃料を製造し、原子炉で利用するつもりだとの意思表明に過ぎません。1991年の原子力委員会核燃料専門部会報告書「我が国における核燃料リサイクルについて」にある「必要な量以上のプルトニウムを持たないようにする」との「原則」に従うなら、英仏にある35トンのプルトニウムの消費の見通しが立たない状態で、これ以上のプルトニウムの分離を認めるべきではありません。原子力委員会は、早急に電気事業者に「利用計画」を出させるとともに、「利用目的の妥当性について確認」する際には英仏にあるプルトニウムを考慮すると明記した明確な基準を定めるべきです。

(田窪 雅文:ウェブサイト核情報主宰)
 

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