NPT再検討会議延期に際する事務局長談話
新型コロナウイルス感染症の世界規模の拡大に際して、今年4月27日から開催が予定されていた「核拡散防止条約(NPT)再検討会議」が、延期される方向で調整されてることが明らかとなりました。原水禁は、NPT再検討会議の開催に合わせて、国際NGOとともに、現地ニューヨークにおいて様々なイベントや会議を計画してきましたが、開催には至りませんでした。結果として、原水禁派遣団の中止を決定せざるを得なかったことは残念でなりません。
昨年の8月に米ロ間のINF全廃条約が失効して後、今年2月4日、米国防省は、ロシアの小型戦術核の脅威に対抗する措置として、潜水艦発射型の小型核兵器を実戦配備したと発表しました。今後配備を拡大するとしている低出力の小型核は、「使用可能な核兵器」としてきわめて問題であり、米ロの核開発競争の再燃も懸念されています。2021年に期限を迎える米ロによる新戦略核兵器削減条約(新START)の交渉も、先の見えないものとなっています。核拡散防止条約は2020年3月で発効から50年を迎えました。1995年には無期限で延長され、5年ごとにその運用を見直す再検討会議が開催されてきました。1995年に「核兵器廃絶」を究極的な目標と位置づけ、2000年には「核廃絶の明確な約束」を盛り込んだ最終文書を採択しました。NPT再検討会議は、紆余曲折はあったものの、「核兵器廃絶」が人類にとって大きな目標であることを確認してきました。米ロや中国が軍事力を増強し、核軍縮の機運が後退している現在、NPT再検討会議の役割は、さらに重要性を増しています。
新型コロナウイルス感染症をめぐる状況からは、今回の開催延期の判断はやむを得ないものの、NPT再検討会議の役割や内容から、開催期間や規模の縮小があってはならないと考えます。また、NPT再検討会議においては、「核兵器禁止条約」をめぐっての核兵器保有国と非保有国の壁を除き、分断を乗り越えて、「核兵器廃絶」が人類の目標であることを再確認し、真摯な議論が展開されることを望みます。
原水禁は、世界の仲間とともにNPT再検討会議の成功に向けて、一層の努力を続けます。
2020年3月18日
原水爆禁止日本国民会議(原水禁)事務局長 藤本泰成