2018年10月アーカイブ

   米・トランプ大統領は、10月20日、1987年に米国と旧ソ連が締結した中距離核戦力(INF)全廃条約について、条約を引き継いだロシアが条約に違反して中距離巡航ミサイルの開発・実験・配備を続けていると批判し、INF条約から離脱する方針を示しました。加えて、中国の中距離ミサイル開発にも言及し、米国のみが条約を遵守しているとの不満を表明しています。トランプ大統領は、今後、米国や同盟国の安全保障を確保するために、通常弾頭型の中距離ミサイルの研究開発を含めた対抗措置を進めるとの意向を示しています。
 ロシア側は、「米国は条約に違反しているという根拠のない非難を続けている。」と反論しています。このような状況では、世界は再び冷戦に逆戻りし、軍拡競争が激化する恐れも懸念されます。トランプ大統領の発言は、世界の政治状況をより不安定なものにしようとするもので、断じて許すことはできません。
 米国の条約離脱によってロシアが条約を順守する可能性が高まるわけではありません。むしろ米国が指摘している中距離ミサイル(9M729)開発の制約も消滅して、生産や配備の増強も懸念されます。
 さらに離脱に当たって条約当事国でもない中国の動きにも言及していますが、本来ならば米中での真摯な議論を促すことこそ求められているにも関わらず、そのような努力を放棄し、自らの核兵器開発の再開を正当化することは許せません。
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核兵器開発の中止を求める一方で、自国の核開発、核軍拡を正当化することのダブルスタンダードは、朝鮮半島に対する非核化の要求に説得性を持ちえないものです。
軍事的対抗より平和外交を重視し、対話と協調によって国際世論に広く訴え、核軍縮を前進させることがなによりも求められているはずです。核兵器禁止条約が国際社会に提起されている中で、米国の離脱はこの動きに大きく水を差すもので、「核なき世界」の実現はさらに遠のくものです。
 唯一の戦争被爆国である日本(政府)は、このような動きに毅然とした立場をとり、条約の継続と実効ある取り組みを強めていかなくてはなりません。米国がオバマ前大統領の示した「核なき世界」を求めて、核兵器を使用した唯一の国としてその道義的責任を全うすること、日本が核兵器禁止条約を批准し唯一の戦争被爆国としての責任を果たすことが、核兵器廃絶と世界平和への道筋であると考えます。
 原水禁は、核軍縮の動きに逆行する今回のINF条約からの米国の離脱に、強く抗議するとともに、核軍縮に向け、取り組みの一層の強化を確認します。

2018年10月22日
原水爆禁止日本国民会議
議  長  川野 浩一

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