東京電力株式会社
社長 小早川 智明 様
被爆72周年原水爆禁止世界大会実行委員会
実行委員長 川野 浩一
2011年3月11日の東京電力福島第一原発事故は、暮らしと文化、そして夢までも奪い去り、世代を超えた健康影響に対する不安を与えました。こうした事態を招いた責任は厳しく問われなければなりません。事故から6年半が過ぎようとしていますが、事故の収束はいまだ先が見えない状況にあります。先日、ロボットを投入して、3号機の一部デブリの画像撮影に成功したことが発表されましたが。それで炉内の全体像がつかめた訳でもなく、高線量の中にある燃料デブリの取り出しにはさらに大きな困難が待っています。
また、廃炉費用は、21.5兆円との試算が発表(2017年)されましたが、当初見積もり11兆円(2013年)の倍となり、さらに今後2倍、3倍と膨れあがっていく懸念があります。さらに21.5兆円のうち貴社負担分は16.5兆円となります。試算を前提に向こう30年間でこれを負担すると、毎年5千億円の負担となり、毎年これ以上の利益をださなければ負担できない金額です。2015年3月の純利益は4550億円、2016年3月は1407億円たなっており、すでに貴社での負担は不意可能のようにも映ります。このような状態で本当に廃炉作業が貴社で責任を持って取り組めるのでしょうか。事故のツケは、被災者を含め私たちに押しつけられるのでしょうか。
それでも貴社は、「原発のない福島」を求める県民の強い要求にもかかわらず、福島第二原発の廃炉に応じずいます。原発再稼働に固執する姿から福島原発事故に対する真摯に責任を取ろうする姿勢を感じることはできません。さらに溜まり続ける汚染水を海洋への放出をしようとする意向が報道されましたが、風評被害に苦しむ生産者・漁業者にとって追い打ちをかける動きです。被災者にとっては、これ以上環境を汚染することは耐えられるものではありません。責任を持った対応を強く求めます。
現在、貴社は、事故の収束に向けて作業を進めていますが、高い放射線が収束作業を阻み、トラブルも相次いでいます。トラブルの原因の多くは、予算削減、設計簡素化、工期短縮、行き当たりばったりの対応・対策などコストを優先した対応、とも言われています。いま必要なことは、原発の再稼働よりも一日も早く事故を収束させ安心・安全な福島にもどすことです。そのためにはコストを度外視してでも、事故の収束に全力をあげるべきです。
さらに長期にわたる事故の収束には、作業員の確保が欠かせません。現在の多重下請け構造、ピンハネ構造、そして不安定雇用の下では、安定した作業員の確保と育成は難しくなるばかりです。さらに各地で原発再稼働、定期点検などが始まれば、専門の作業員さえ確保することが難しくなるはずです。待遇改善と多重下請け構造の解消を強く求めます。
8万人近くの県民がいまだに避難生活を余儀なくされています。長期に渡る避難生活は、被災者の暮らしや健康、就労など、多くの不安と負担を与え続けています。さらに事故によって被災者の基本的人権も様々な形で侵害されています。一方で、「除染作業」終了とともに避難指示解除準備地域および居住制限区域について順次避難指示を解除しようとしています。すでに「自力(自主)避難者」への住宅の無償提供、商工業者への営業損害補償などは今年3月に打ち切られています。私たちは、福島原発事故の被害が終わったかのような意図的な原発事故の幕引きを許すことはできません。貴社に対し誠意ある対応を強く求めます。
さらに労働者の被曝線量の大幅引き上げ(100mSvから250mSvへ)がなされました。それに準じ貴社も緊急時被曝線量を引き上げ、下請け労働者に大量の被曝を強いることは許せません。「命」よりも「経済」を優先し、被曝を前提とした原発再稼働など論外でしかありません。フクシマを繰り返さないためにも、被爆72周年原水爆禁止世界大会・福島大会参加者の総意として、以下の点を申し入れ、誠意ある回答をお願いいたします。
記
2.福島第二原発及び柏崎刈羽原発の再稼働をやめ、速やかに廃炉にしてください。
3.被災者への補償の打ち切りをやめてください。
4.汚染水の海洋放出をやめてください。
5.健康被害に真摯に対応してください。
6.多重下請け構造とピンハネ構造の改善を図り、労働者全体の待遇改善や被曝線量の低減を図ってください。
7.事故の収束及び放射性廃棄物の処理・処分計画のロードマップを明らかにしてください。