「共謀罪」の廃案を求める団体共同声明
呼びかけ
さようなら原発1000万人アクション実行委員会
核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団
原子力資料情報室
1.原子力反対運動は市民の権利
原子力施設の事故は、戦争と並んで、人間の生存と営みを脅かす現代社会における最悪の人災であり、最大の人権侵害である。
このことは、2011年の福島第一原発事故が明白に証明している。
原子力に頼らない社会を作ろう、危険な原子力施設の立地、稼働をやめさせようという願いは、今や市民の大多数の合意に支えられている。
ところが、原子力政策は国策と位置付けられていることから、これに反対する運動は必然的に政治色を帯びざるをえず、集会、デモ、抗議活動などの反対運動は常に警察の監視下に置かれているのが現状である。
しかし、上記の反対運動は、憲法が保障する幸福追求権(13条)、生存権(25条)、集会・結社・表現(言論)の自由(21条)に由来するものであり、国家権力とりわけ警察権力によって、万が一にもその権利が侵害されてはならない。
原子力基本法(2条)は、原子力情報の公開を義務付けている。原子力施設の安全性は情報公開によって担保されるからである。従って、住民、市民及び報道機関の知る権利は最大限に保証されなければならない。
2.「共謀罪」の乱用を許さない
政府は、組織的犯罪処罰法を一部「改正」する形で「共謀罪」を国会上程した。「改正」の目的は、東京オリンピックを控えテロ対策の必要性があると強調する。
しかし、共謀罪の対象はあまりにも広範であり、処罰条件はあまりにもあいまいである。従って、捜査機関の恣意的拡大解釈による人権侵害の恐れが極めて大きい。
まず第一に、「テロリズム集団」は例示にすぎず、「その他」の集団も広く犯罪主体となりうるし、対象となる罪条は277の多くを数え、テロとは全く無関係な法律が多数混在する。
また、処罰条件は、「計画+準備行為」となっているが、保護法益の現実的侵害(既遂)若しくは危険性(未遂)があって初めて罪に問うという近代刑法体系から大幅に逸脱している。
「計画」は、計画を黙認しただけで成立し、一堂に会して話し合わなくても順次の共謀で足りる。「準備行為」として「資金、物品の手配、関係場所の下見」などが例示されているが、預金の払戻し、航空券の予約、スーパーでの買物など普段の市民の日常生活に密接した行動も準備行為に該当する場合があることから、捜査権の乱用による不当拘束のおそれが危惧される。
例えば、集会で原発建設、稼働阻止のアピールを決議して、現地集合のビラづくり、製作費用の預金払い戻しだけで威力業務妨害罪や往来妨害罪の嫌疑をかけられるし、使用済燃料やプルトニウム輸送に反対して、輸送経路を調査したりすることは、実際現場へ足を運ばなくても処罰されかねない。起訴されなかったり、無罪になっても、不当逮捕による被害は容易に回復されない。
また、原子力情報を聞き出そうとして取材、面会をするために相手方の住所を調査することも強要罪の共謀とされかねない。
共謀罪は、反核運動や基地反対闘争のみならず、市民社会全体を暗黒の警察国家に組み込み、監視社会の弊害を生む。
3.共謀罪は廃案しかない
私たちは、スリーマイル、チェルノブイリを経験し、福島第一原発事故の悲惨な体験を共有している。同じ過ちを繰り返さないために、私たちは脱原発、反核燃の運動を継続していかなければならない。今回の「共謀罪」の新設は、原発被害の救済と再発防止を阻害し、ひいては憲法が市民に保障した人権をないがしろにするものである。
よって、私たちは、本法案に強く反対し、廃案を要求する。
(脱原発団体など131団体が賛同しました)