広島・長崎の原子爆弾による惨劇から72年が経過しようとしています。第2次世界大戦直後に生まれた国連憲章は、「寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に平和に生活し、国際の平和および安全を維持するためにわれらの力を合わせ」と述べています。しかし、世界各地で紛争は絶えず、多くのいのちが失われ、人権が蹂躙されています。戦地から逃れる難民は世界各国に散らばり、そのことがまた問題を引き起こしています。被爆から20年目の節目に行われた原水爆禁止日本国民会議(原水禁)の結成大会では、「私たちは“あらゆる国の核実験に反対する”立場を堅持し、原水爆の完全禁止と、完全軍縮への目的達成を追求する」と宣言しました。しかし、被爆70年を超えたいまでも、約15000発もの核兵器が存在し、世界平和への脅威となっています。
混迷を深める世界情勢は、米国第一主義を唱える米トランプ政権や欧州各国での移民排斥などを主張する極右政党の台頭を許しています。日本においては、戦前への回帰を主張する日本会議に属する安倍首相が、きわめて反動的政策を展開し、これまで憲法9条に反するとされていた集団的自衛権行使を容認し、安全保障関連法いわゆる戦争法を強行成立させ、米軍と一体となった軍事行動を可能としました。また、米国の核の傘に依存し核の抑止力を容認する日本政府は、非核保有国が求める「核兵器禁止条約」の交渉会議への不参加を決定しています。これまでの被爆者の核廃絶の訴えと運動を否定する被爆国としてあり得ない判断は、決して許されるものではありません。米国は、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定へと主張する朝鮮民主主義人民共和国の要請を無視し、その核開発に対して米韓日の軍事同盟の強化によって対抗しようとしています。米国の核の傘に頼る日本は、朝鮮半島をめぐる東アジアの平和への役割を果たすことができないでいます。原水禁の主張してきた、日本のプルトニウム利用政策の放棄と東北アジア非核地帯構想へのとりくみの強化が求められています。
福島第一原発事故から6年を経過しました。事故の収束の目途は立っていません。しかし、安倍政権は、年間被曝量20mSvを切ったとする被災地への住民帰還を強制し、事故をなかったものにしようとしています。また、新規制基準を満たすための原発の補強工事に多額の費用を投下し、事故後停止を余儀なくされた原発の再稼働を進めています。日本の市民社会は、事故後一貫して「脱原発」を主張してきました。民意を無視した、経済効率のみを追求する日本政府の姿勢を許すことはできません。株式会社東芝は、米国原発メーカーウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーを買収し、多額の負債を抱えました。原発建設が、市場経済の中で成立しない状況が現出しています。脱原発が日本の未来を描くことは確実です。
ヒロシマ・ナガサキを含め海外に散らばる被爆者の課題の解決も急がれています。高齢化する被爆者に残された時間は少なく、「国家補償」や「原爆症認定」「在外被爆者」などの課題の解決は急を要しています。また「被爆体験者」や「被爆2世3世」の課題は、法廷へと場所を移しています。課題解決へ向けたとりくみの強化が求められています。
「核と人類は共存出来ない」とする原水禁の理念と行動が、多くの場面で強く求められています。平和と民主主義を守り、核をめぐる多くの課題の解決に向けて、福島市(7月30日)、広島市(8月4日-6日)、長崎市(8月7日-9日)において「被爆72周年原水爆禁止世界大会」を開催します。日本の核廃絶への深い思いを表明し、多くの議論を重ね、今後のとりくみを確認する場として、多くの皆さんの参加と賛同をお願いいたします。
原水禁世界大会に結集し、「核と戦争もない21世紀」を共につくり上げましょう。
2017年4月21日
被爆72周年原水爆禁止世界大会実行委員会
実行委員長 川野 浩一