トルコおよびUAEとの原子力協力協定の承認に対する抗議声明
原水爆禁止日本国民会議
(原水禁)
議長 川野 浩一
4月4日、トルコとアラブ首長国連邦に原発を輸出できるようにする原子力協力協定承認案が、衆議院本会議において賛成多数で可決、参議院に送られました。国際条約・協定は、衆議院決議が優先するため今国会での成立は確実です。
原水禁は、福島第一原発での重大事故を踏まえ、国内原発の廃炉と原発輸出からの撤退を訴えてとりくんできました。国民の多数が「脱原発」を訴えている中での原発輸出推進策は許すことはできません。
安倍首相は、事故を起こした福島第一原発は「アンダーコントロール」と主張していますが、溶融した核燃料の取り出しは困難であり技術的にも先の見通しもたたず、福島第一原発の急ごしらえの冷却設備などが今後の地震に対応できるかも疑問です。独立した原子力規制委員会がつくる福島原発事故の知見に基づいた新しい規制基準により、日本の原発は世界一安全であるとも主張していますが、国会事故調の報告によっても事故原因が特定できず地震自体にあるのか津波にあるのかは明確ではありません。新しい規制基準はあくまでも現時点での知見によるものとしか言えません。
原発の過酷事故を起こした日本が、日本同様の地震大国であるトルコへ現時点で原発輸出に踏み切ることは、倫理的に許されるものではありません。万が一、トルコ国内で地震によって原発が事故を起こしたとき、私たちはどうトルコ国民に申し開きをするのでしょうか。経済優先の原発政策が、福島原発事故を引き起こしたことは、事故を「人災」とした国会事故調の報告に明らかです。トルコ政府内では、原子力の推進と規制が分離されていないと言われており、安全な原発運転にも大きな疑問がつきまといます。福島原発事故の状況を考えるとき誰が責任を担うことができるか、そのことだけでも原発輸出に踏み切るべきではありません。
一方で、トルコとの協定には再処理を可能にする条文が挿入されています。日本政府は、「日本が同意しなくてはできないので条文はないも同然」という趣旨の説明をしていますが、核兵器を持たないNPT加盟国で唯一再処理を行う日本が、トルコの再処理要求にどう対応するかは極めて大きな問題です。ハーグでの核セキュリティーサミットにおいても、プルトニウムの最小化が謳われ、日米共同声明でもそのことに触れられています。核拡散が、世界平和にとって極めて重要な課題となっている今日、再処理に道を開く可能性を残してはなりません。日本政府が、原発を売らんがために、自らのプルトニウム利用政策を見直すことなく他国のプルトニウム利用の道を開くことを、原水禁は決して許すことはできません。
被爆国日本として「核と人類は共存できない」と核廃絶にとりくんできた原水禁は、原発輸出を決して認めることなく広く市民と連帯して、日本政府が原発輸出を断念し脱原発の方針化とプルトニウム利用政策の放棄を決定するよう要求し、粘り強くとりくむことを決意します。