2013年5月アーカイブ

中国電力島根原発を抱える島根県松江市の松浦正敬市長は、原子力規制委員会に対し、新規制基準に東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえた安全対策を反映させることなどを求めて要請書。

高レベル放射性廃棄物の最終処分地に関し「放射性廃棄物の問題を孤立して考えるのではなく、まず原子力発電の位置付けの明確化が必要」-経産省放射性廃棄物小委で西川一誠福井県知事 

インドのシン首相と安倍首相の原子力協力協定締結への会談に対する声明

 インドのシン首相が来日、安倍首相と原子力協力協定締結への会談を行い、来年1月に向けて「早期妥結」も言われています。インドは核拡散防止条約(NPT)に加盟せず、核実験をし、核開発を進め、核武装をしました。パキスタンと核軍備競争を続け、包括的核実験禁止条約(CTBT)にも署名していない国です。1998年の核実験をした際には国際社会から非難を浴び、制裁をうけました。

 NPTに基づく核不拡散を主張し、CTBTの発効へ向けて努力を続けてきた日本が、NPTに背を向けるインドに核・原子力技術の協力をすることは外交上の大きな矛盾となります。インドを例外的な核保有国として認め、原子力輸出を進めることは、NPTから脱退宣言をして核開発を行った朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対しても、「核実験をして国際社会から非難を浴びても、何年かすれば例外的な核保有国として認められる」ともいうべき、外交メッセージを送ることになるでしょう。核不拡散の原則を崩せば、北朝鮮に限らず、多くの国が例外的・実質的な核保有を目指す事も考えられます。

 安倍政権は、トルコやアラブ首長国連邦(UAE)と相次いで原子力協定に署名してきました。さらに、核廃絶・核不拡散を主張してきた外交の原則を曲げ、経済的利益としても疑義のある原発輸出のために核拡散の扉を開ける国となることは、果たして被爆国日本の人々の望むところなのでしょうか?

 日本は、核兵器以外実質使い道のないプルトニウムを45トンも貯めこみ、国際社会から核武装への懸念も指摘され、核セキュリティー上も大きく問題視されています。さらに、NPTに加盟しないインドを含め多くの国に原子力技術を輸出などするようになれば、表向きの外交政策とは裏腹に、国際的には核拡散に加担する存在として認められるようになります。

 福島第一原発の事故究明や収束もままならないまま、安全性よりも原発メーカーの商機を優先させるような原発輸出は許されません。インドとの原子力協力協定締結よりも、核不拡散体制にインドを組み入れる方を優先させるべきです。少なくとも、インドが核兵器開発の凍結と、国際原子力機関(IAEA)による査察対象外の軍事用核分裂性物質の生産中止を宣言し、CTBTに署名するまでは、原子力協力協定を締結してはなりません。

2013年 5月27日
原水爆禁止日本国民会議
議長 川野 浩一

日本原子力発電敦賀原発で、東京電力福島第1原発事故と同規模の事故が発生した場合、岐阜県内では最大98万人が避難対象になりかねないことが市民グループの調査でわかった。

どうする核燃料サイクル
もんじゅもダメ! 再処理ももうダメだ!

もんじゅはもうダメだ
 5月15日、原子力規制委員会は、1万点近い機器の点検漏れが見つかった日本原子力研究開発機構機構(原子力機構)の高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)について、原子炉等規制法に基づき、再発防止に向けた安全管理体制が確立されるまで運転再開の準備作業を行わないよう命じること決定しました。命令は正式には5月末に出されますが、この対応は、大量の機器の点検漏れと原子力機構の安全に対する認識の甘さに対して厳しく対応したもので、事実上の運転禁止令となりました。これまで、もんじゅの年度内の再開を唱えていた原子力機構は、これでまた運転再開の目途が立たなくなりました。来年度予算にも響き、さらに運転再開は遠のくことになりました。さらにこのことを受けて原子力機構の鈴木篤之理事長は、辞任に追い込まれました。
核燃料サイクルの中心を担うと期待されている高速増殖炉は、原型炉もんじゅの段階で足踏みを続け、トラブル続きで施設も機器類も老朽化していく一方で、職員の原子力安全文化の意識も劣化している現状は、もうもんじゅを動かす資格もないといえます。このような体質の原子力機構にこれ以上危険なもんじゅを運転させてはなりません。さらに、現在進められている原子力規制委員会による新規制基準の策定の中で、この7月までに研究炉(高速増殖炉など)の規制基準が打ち出されようとしていますが、このような状況の中でその基準をクリアできるかどうかもこれからの課題です。また、もんじゅ特有の危険性も解決されていません。ナトリウム火災、活断層問題、緊急炉心冷却装置がないなど多くの問題点を抱えています。
 安全文化の欠如は、旧動燃時代のナトリウム漏えい事故の際、ビデオ隠しを行ったりした前科があり、根本的に企業体質に問題を残したままです。このような点はすぐに解決できるものではありません。そのような組織に安全は担保できません。

再処理工場の10月完工は絶対ムリ
 では六ヶ所再処理工場はどうでしょうか。六ヶ所再処理工場もすでに日本原燃社長は、当初今年10月完工をなんとしてでもやり遂げるとしていましたが、すでに完工は厳しいとの認識を示しています。実際にはもう困難です。
 原子力規制委員会は、今年12月までに再処理工場の新規制基準を示すとし、それ以前には完工前の最後の確認試験は受け付けないとしています。新規制基準の作成作業はまだ始まったばかりで、12月までに本当にできるかもまだこれからで、できても審査に数ヵ月は必ずかかり、来年初頭の完工は難しく、年度内さえムリかもしれません。これにより20回目の延期がほぼ確定的となっています。巨額の費用をこれまでつぎ込んでも六ヶ所再処理工場は本当に完成するのかは現在でも定かでありません。そうこうしている間に、六ヶ所再処理工場ももんじゅと同様、機器の劣化が始まっています。
 破たんしているにも等しい核燃料サイクル路線について、安倍晋三首相は、5月13日の参議院予算委員会でのこの間の答弁で、核燃料サイクルを「継続して進める」と言明し、茂木敏充経済産業大臣もテレビ番組で、核燃料サイクルに関しては、プルサーマルによるウラン資源の有効利用、廃棄物の減容などから、再処理の必要性を強調しました。相変わらずこの間の核燃料サイクル路線の破綻には目を向けず、具体的な計画も明らかにされていない中での決意表明でしょうが、具体的な施策をもって発言するならともかく、原発の再稼働も見えない中で、どのように核燃料サイクルを「経済性」や「安定性」、「安全性」さらに「将来展望」も含めて国民に示さずして、「継続」だけが至上命題のように押し出されることは、それはあまりにも「無責任」というものです。福島原発事故を起こした自公政権の原発推進路線への先祖返りであり、またもや国民を原子力災害の危険にさらすものです。私たちは、このような無責任な核燃料サイクル路線推進に強く反対します。

原発輸出をやめろ
 安倍政権は、インドやトルコ、UAEなどへの原発輸出を積極的に進めようとしています。経済成長戦略の一環として原発輸出をその柱としていますが、その経済効果も未知数である上、相手国の国内情勢の変化や国際情勢の変化によって大きく変わることも考えられます。ましてや福島原発事故の収束もできていない中で、海外に原発輸出することは、まさに「公害輸出」に他なりません。今度は、相手国民に対して加害国となってしまいます。さらにインドへの輸出は、これまでNPT(核不拡散条約)体制の中で、未加盟国へのインドへ核関連設備の輸出を禁じていました。それは核兵器開発を助長するということで、禁じられていたものですが、インドを例外扱いとして原子力機器の輸出を認めようと、今月27日にはインドのシン首相との会談が設定されています。しかし、核兵器開発に手を貸すことには変わりありません。問題だらけの原発輸出は即刻中止すべきです。
 国内の原発さえ、まともに動かせない状況の中で、ましてや使い道のないプルトニウムをつくり出す核燃料サイクルを進めることは、原発輸出とともに国際的な批判を招くだけです。安倍政権は、原発推進政策の旗を降ろすべきです。時代の変化をしっかり見つめてほしいと思います。
 

進まぬ放射能汚染物の処理と問題点

宮城県護憲平和センター 事務局次長 菅原 晃悦

汚染された稲わらや牧草などの扱いに苦慮
 生活環境への放射能の漏えいにより、被曝による「健康への悪影響」が心配され、漏れだした放射能を一刻も早く「生活環境から隔離」することが求められているが、事故から2年を経ても今だ、課題として残されたままである。
 全国的には、震災廃棄物(ガレキ)の広域処理が問題として論議されていたが、宮城県の中では、放射能で汚染された大量の「農林業系副産物(稲わら、牧草、ほだ木など)」の扱いに苦慮している。仮置き場の選定をめぐっては、行政と住民の対立、地域内での意見の違いなどがあり、なかなか決まらず、避けられるはずの「外部被曝」を受け続けている。
 今年に入り、県当局から「放射性物質汚染廃棄物等の保管状況及び処理の方向性」が示された。農林水産業系廃棄物に限って紹介すると、「稲わらについては、平均で8千ベクレル/Kgを超えており、指定廃棄物として国の責任で処分をしていただく」「牧草やほだ木については、8千ベクレル/Kg以下であり、『自治体の既存焼却炉』で、『一般廃棄物に混合して焼却』する」が主な内容である。農家などが保管に苦慮する放射能汚染物を、早期に生活環境から隔離するための苦肉の策と思われるが、少なくても、①「対策への不信」の増加、②放射能の「生活環境への拡散」、③放射能汚染物の「隔離に時間がかかる」などの問題がある。

行政への不信感がさらなる風評被害を招く
 ①の「対策への不信」については、「一般廃棄物と混焼し、焼却灰を8千ベクレル/Kg以下にする」という手法は、食べ物に例えれば、「規制値を超えた食材を、他の食材に少しずつ混合しクリアする」ということである。こうした処分方法を選択する宮城県への不信感は増し、さらなる風評被害を招く危険性もある。
 ②の「生活環境への拡散」については、いくら苦慮しようと、「拡散した放射能を濃縮して管理する」という基本は変わらない。混焼した焼却灰が8千ベクレル/Kg以下であっても、一般廃棄物と同様に「埋め立て処分」とするのは、生活環境から回収した放射能を、改めて「生活環境に拡散」するということである。原発内の焼却炉と同じような対策を施して、既存の「焼却炉」で焼却するとしても、一般廃棄物とは区分けして焼却し、放射能で汚染された焼却灰は「指定廃棄物」として国に責任を持って管理、処分させることが必要である。一般家庭で保管している焼却灰の管理の問題にも影響するのであり、指定廃棄物の管理、処分を国に急がせることが求められる。
 ③の「隔離に時間がかかる」については、牧草(4万1千トン)、ほだ木(2万9千トン)などの保管には、外部被曝の悪影響が看過できず一刻も早い処理が必要だ。しかし、「一般廃棄物との混焼」では、時間がかかりすぎる。国は、指定廃棄物については、「焼却できない場合、仮設焼却炉等を設置」としているが、放射能で汚染された「大量」の農林業系副産物にあっては8千ベクレル/Kg以下も含めて「指定廃棄物」とし、「焼却せずに管理、処理」をさせる。もしくは、健康管理を徹底した専門の事業者によって速やかに焼却処理をさせ、「焼却灰」を「指定廃棄物」として、国の責任で管理、処理させることが必要である。

国は汚染データや処理方法を隠すな
 こうした対策を求めていく上で障害となっているのが、「最終処分場問題」である。被曝を低減させる上で欠かせない最終処分場建設が、国の隠ぺい体質などが大きく影響し進んでいないからである。
 住民理解を得るために必要なのは、低線量でも「健康への悪影響はある」との啓蒙であり、「各種汚染物の詳細なデータ、処理を必要とする根拠や処理方法などの全体像を隠さずに公表」すること。そして、「全原発廃炉へ向けた工程を示す」ことだと考える。


オスロで「核兵器の人道的影響の国際会議」
高まる核廃絶への期待


NPO法人ピースデポ スタッフ 金 マリア

各国政府、国際機関、NGOが一堂に参加
 3月4日から5日にかけて、オスロでノルウェー政府主催による「核兵器の人道的影響に関する国際会議」が開催され、127ヵ国の政府代表と国連、赤十字国際委員会(ICRC)等の国際機関、各国のNGOが参加しました。開催の背景には、2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の「最終文書」以降、昨年の2015年再検討会議・第1回準備委員会や、国連総会第1委員会における議論を通して、国際的に核軍縮の人道的側面に対する関心が高まってきたという経過があります。
 筆者は市民社会代表団の一人として本会議に参加しました。第1セッションは、「核爆発による人間への直接的影響」、第2セッションは「より広範囲な、経済、発展及び環境への影響」、そして、第3セッションは「国家、国際機関、市民社会の準備体制」がテーマでした。開幕セッションで市民社会のメンバーが発表したビデオ声明は、約5分間場内を粛然とさせ、全員が会議に真剣に臨むことを促す役割を果たしました。
 第1セッションの発表が終わると、田中煕巳日本被団協事務局長が証言を行いました。時間はごく限られたものでしたが、田中さんの生の声が与える響きは長く感じました。第2セッションでは、旧ソ連のセミパラチンスクでの核実験による被曝二世のカリプベク・クユコフさんが発表し、歴史の経験にも関わらず核実験を続ける国々に向かって警鐘を鳴らしました。第3セッションでは、発表者が一様に「核爆発が起こった場合、どの国も十分な対応は不可能」という結論を示し、核廃絶の正当性を明確にしました。
 閉幕セッションでメキシコが「フォローアップ会議を主催する」と表明したとき、場内が驚きと喜びに沸きました。その後、主催国への感謝とメキシコによる次回会議の主催を歓迎するメッセージが続きました。

福島原発事故も教訓に討議
 3月2日と3日にはNGO参加者による「ICAN市民社会フォーラム」が開かれ、約70ヵ国から500人余りの活動家が集まりました。第1セッションは「ビックバン!」というタイトルで、核兵器の科学的な原理や特徴、核兵器全面禁止の必要性と可能性について講演を聞きました。最後に、ノルウェーのグライ・ラーセン外務副大臣が登壇し、4日からの国際会議の議長として、同会議の意義や可能性などについて説明しました。また、市民社会フォーラムの両日、12時から2時半まではロビーで「マーケット・プレイス」が開かれ、参加者がランチのサンドイッチを食べながら、様々な活動を楽しみました。

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閉会直後、成功を祝うノルウェーのアイデ外相(左から2人目)
と若い活動家たち(オスロ・3月5日)


 第2セッション「破滅的な影響」では、実際に核兵器が使用されたときの被害について学びました。グリーンピースの放射線専門家リアナ・トゥールさんが「社会的な影響」ついて講演。福島原発事故の写真を見せながら、「コミュニティが放射能に汚染されたことによって、若者も自らの健康はもちろん、就職や結婚について心配している。また、政府や東京電力、あるいは国際団体からの情報が錯綜し、何を信じれば良いか分からず不安も多い」と、深刻な状況を伝えました。
 第3セッション「条約の作成」では、核兵器禁止条約を作り出す方法を考えるために、クラスター爆弾禁止条約や対人地雷禁止条約、気候変動枠組み条約、そして武器貿易条約の交渉に関わった方々から学ぶ時間が持たれました。「実践!」というタイトルの第4セッションでは、新技術をキャンペーンに活用する方法などの新鮮なアイデアが提起されました。
 その後、世界各地から来た10名の活動家が地元の活動を紹介しました。最後の夜には、オスロのシティーホールで「果たしてこの瞬間を忘れることができるか?」と題したコンサートが行われ、体中に染みわたる核兵器の恐怖と死の影が深い余韻を残しました。
 今回のオスロ会議への期待は、当初は必ずしも高いものではありませんでした。しかし、127ヵ国の参加や、メキシコによる次回会議の主催表明など、予想を超える成果が得られました。市民社会と政府の緊密な協働、専門家の貢献、そして活動家の情熱が「人道」という正しい目的に基づいて一つになったとき、良い実が結ばれることが実感できた会議でした。


英国にプルトニウム処分委託?
原子力委員長代理の発言の背景


 3月26日の原子力委員会定例会議で、鈴木達治郎委員長代理は、プルトニウムの「供給ありきという考え方からの転換」を促し、在庫量削減のために英国への所有権移動も含む「柔軟な利用計画」をと訴えました。英国は現在、海外の再処理顧客の28トンを含め、約112トンの民生用分離済みプルトニウムを保管しています。既契約分の処理を終える2018年までには、英国分だけで約100トンに達します。この処分のために、ウランと混ぜて「混合酸化物(MOX)」燃料を作る工場を新設し、同じく、新設予定の軽水炉でこの燃料を燃やすというのが英国の計画です(2015年までに経済的実現性が示されなければ、プルトニウムを廃棄物などと混ぜて地下に埋設処分する道も検討されます)。英国は、2011年12月、日本のプルトニウム約17トンも、同様の処分をしても良いと発表しました。お金を払って処分してもらってはというのが委員長代理の提案です。
 英国政府は、2011年2月7日、プルトニウム処分計画の基本方針を発表し、5月10日までに得られた意見を集約して12月1日にほぼ同様の方針を発表しました。英国政府の発想を理解するため、2月の文書の一部を抜粋してみましょう。

 1305newspaper02.jpg英国プルトニウム管理計画予定表

高速増殖炉は予見できる将来には実現しない
 「1950年代には、プルトニウムの分離は、軍事目的で行われた。1960年代には、化石燃料が枯渇すると考えられており、このプルトニウムを高速炉用に提供できると考えられた。なぜなら、高速炉は、いずれ、エネルギー問題への解決策となり得ると考えられていたからである。このため、高速炉に十分なプルトニウムができるようにするため、分離済みプルトニウムの蓄積量が、使用済み燃料の再処理によって増やされた。
 しかし、最終的には、英国は1994年に高速増殖炉の研究のほとんどすべてを放棄した。予見できる将来に高速炉が商業的に実用可能となることはないことを理解したためである。我が国が蓄積したプルトニウムは、今も残っており、現在、高い安全・セキュリティー基準を充たすよう設計された施設で保管されている。しかし、今のところ、これを長期的にどう管理すべきかについての最終的計画は存在しない」

プルトニウムはセキュリティー・リスク
 「2010年5月に開かれた『2010年核不拡散条約(NPT)再検討会議』は、いくつもの勧告について合意した。国際社会がこのようなステートメントについて合意したのは10年ぶりのことだった。合意には、核分裂性物質の管理に関するものも含まれていた。
これらの具体的な勧告は、プルトニウムなどの核分裂性物質のセキュリティーと核不拡散上の機微性[軍事転用可能性]の重要性を認識・再確認しており、この物質に関する英国の長期的戦略を策定するためのアップデートされた有力な基盤を提供している」

MOX利用は商業的オペレーションではない
 「MOX燃料としてのプルトニウムの再利用は[埋設処分と比べ]ずっと成熟したオプションである。このため、米ロが『プルトニウム管理・処分協定』において、余剰兵器級プルトニウム管理用手段として採用しているのである。
~中略~MOX燃料は価値を持っている。プルトニウムをMOX燃料に転換するコストを相殺するのに、これを利用することができる。しかし、英国政府の現時点での予測は、現在のウラン価格においては、生み出される燃料の価値は、その製造にかかるコストより相当小さいだろうというものである。言い換えるなら、予見できる将来においては、MOXの製造は、主として、プルトニウムの在庫量を消費する道であって、それ自体が商業的なオペレーションではない」

論拠に挙げられた米国は計画を放棄
 英国はこう考えてMOX利用方針を採用しましたが、米国のオバマ政権は、今年10月からの2014年度予算でMOX工場建設予算を大幅削減、2015年度にはゼロとする方針を示しています。英国でのMOX工場建設計画に影響を与える可能性があります。新しく建設される原子炉が何基になるのか、MOX利用を引き受けるのか否かも不明です。他のプルトニウム処分方法の検討が必要です。(田窪 雅文:ウェブサイト核情報主宰)


【映画評】福島六ヶ所未来への伝言  2013年/日本/島田恵監督
 映画の予告編というのは、人々にその作品を観たいと思わせるための宣伝ツールであることは言うまでもない。しかし、短い予告編を観ただけで、その映像の力に圧倒されて、胸に熱いものがこみ上げるようなドキュメンタリー映画を、私の勉強不足もあるだろうが、多くは知らない。しかし、本作の予告編が短文投稿サイト「ツイッター」で紹介されているのを見つけ、真夜中にそれを再生したとき、私は眠い目をこすりながら、あふれるものを抑えることが出来なかった。
 本作は、東京から六ヶ所村に移住し、12年間を過ごしたフォトジャーナリスト、島田恵さんの初監督作品。ある制作スタッフの方は、核燃料サイクル問題にゆれる六ヶ所村をファインダー越しに見つめ続けてきた島田監督こそ、「絶対に六ヶ所村の映画を撮るべき」と常々思っていたとのこと。それをいつか伝えるつもりだったというその方。監督の方から「手伝ってほしい」と切り出されたとき、言わなくても気持ちが通じていたと、うれしくなったそうだ。
 制作中に東日本大震災・東京電力福島第一原発事故が発生。監督が六ヶ所村における核燃の問題を通じて訴え続けてきたことの一部が現実のものとなったとき、監督は完成に近づいていた本作の内容の変更を決断。予定より遅れて、今年2月に公開が始まった。
 本作は、六ヶ所村の人々は「交付金欲しさに危険な施設を受け入れた」という見方に、事はそう単純ではなく、反対運動が潰され、親や兄弟が対立するような状況の中、人々はヒリヒリするような葛藤に苛まれてきて現在があることを教えてくれる。六ヶ所村で漁業を営む家族が、基準値を上回るセシウムが検出された魚を海へ捨てる場面では、上関原発の新規建設にゆれる山口県祝島のことも心をよぎった。
オープニングとエンディングで流れる加藤登紀子さんの歌声が、映像と相まって観る者の心に、「忘れないでほしい、知っていてほしい」と念押しするかのように響いてくる。放射能という負債を未来へ残さざるを得ない私たちの責任とは。全国で上映会が開催されることで、多くの人に観ていただきたい作品である。(阿部 浩一)
 

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