2013年3月アーカイブ

川内原発30キロ圏内自治体に、防災に関する要請行動実施

≪県への要請行動≫

 
 2012年10月31日、原子力規制委員会は、国、地方公共団体、事業者などが原子力災害の際、実施すべき行動を定めた「原子力災害対策指針」を公表し、翌年2013年2月27日に「指針」の改訂案を公表。この指針にそって内閣府と消防庁は、「マニュアル」を策定し、原発から概ね5キロ以下(PAZ)、概ね30キロ以下(UPZ)圏内の関係各自治体に「原子力地域防災計画」の策定を3月18日までに策定するよう求めました。

川内原発30キロ圏内の9自治体(7市2町)に申入れ
 そこで川内原発増設反対鹿児島県共闘会議(荒川譲議長)と社民党県連は、各自治体が計画策定前に、詳細な項目に従い要請行動を実施しました。
 まず、2月25日(月)13時30分から鹿児島県知事に要請行動をし、その後、3月7日(木)川内原発立地市の薩摩川内市を皮切りに、長島町・阿久根市、同月11日(月)いちき串木野市・さつま町・出水市、同月18日(月)鹿児島市・姶良市、同月21日(木)日置市の9自治体(7市2町)に申入れ行動を実施しました。

防災計画について、約17項目申入れ
 申入れ項目は①原子力地域防災計画策定について(13項目)、②原子力安全協定について、③川内原発3号機増設計画白紙撤回及び川内原発1・2号機の計画的廃炉について(3項目)の約17項目について申し入れました。
 要請を受けた各自治体は策定期限の3月18日までに計画策定は難しい。県の具体的な計画が出されないと出来ない。「避難経路」は、県を通じて調整してもらわないと出来ない。など、5月頃まで遅れる可能性があることが出されました。今後も脱原発に向けた要請行動を強化していきます。

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県庁包囲行動を成功させよう!と き:2013年6月2日(日)
 集合場所:鹿児島市「真砂本町公園」【旧】南国交通車庫横  13時~15時
     川内原発1・2号機再稼働反対!   県庁を人間の手で包囲しよう!
 
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3.11東日本大震災・福島第一原発事故から2年、
被災者支援と「原発ゼロ」を目指そう!

  
 
脱原発を求め、2,500人が結集!
 3.11東日本大震災から2年を迎えようとする2013年3月10日、「3.10さよなら原発!鹿児島パレード」がJR鹿児島中央駅前『ひろば』で2,500人を集めて開催されました。午前の集まりに引き続き、14時から市民と諸団体を含む『さよなら原発集会』が行われ、終了後の15時から『No Nukes Parade』と題し、市民の脱原発への思いをこめたパレードが中央駅から天文館を経て朝日通りまでの約4㎞を往復して行われました。

安倍政権の原発再稼働を許すな!
 14時の集会では最初に、集会代表の橋爪健郎さんから「このような催しを継続して開催し、私たちの脱原発への思いをつなげていきましょう」と挨拶があり、続いて共同代表の川内原発反対連絡協議会の鳥原良子さんから「安倍政権になって、再び原発が推進されようとしています。先日知人から「友人のご主人は川内原発で働いているが、もう川内原発は再稼働の準備をすすめている、と連絡がありました。みなさんの脱原発の意志を近くの人に伝え続けてください」と挨拶、続いて保育園の園児と先生から脱原発への思いを込めた歌が披露されました。
 原発なくそう!九州川内訴訟団の森雅美団長からは「鹿児島の原告はまだまだ数が足りません、ぜひ原告のお一人になって下さい」と参加のお願いがあり、九州川内訴訟原告団の森永明子さんからは「原告募集中です、ともにがんばりましょう」とアピールがありました。熊本と宮崎から連帯のエールの紹介、有機農業を営まれる橋口創也さんからは「鹿児島市の川上町で農業を営んでいます。妻は一週間後に出産を控えています。知り合いの方が言うには、世界を買える種、というのは日々蒔かれ、僕らの日常の生活でも蒔かれているということです。日々の生活が世界を変え、原発のない社会を作れるんだよと。今日の行動をその種にしたいと思って参加しています」と農業にたとえて語られました。また、地元の高校生からは「これまで電気がどうやって作られているか考えたこともありませんでしたが、3.11の事故以降、原発の恐ろしさを知りました。わたしたちと原発は共存できません」と力強く主張、続けて、高レベル放射性廃棄物処理場の問題を抱えた、「南大隅の自然を守る会」の小岩さんからは「放射能汚染土の問題で県議会に請願書を提出したところ、採択されました。しかし今の町長が水面下で工作をしているようで、このままではなにも変わらないと思い、会長の肥後たかしさんが南大隅町長選挙に立候補することになりました。皆様のご支援をお願いします」と町長選挙に向けての決意が語られました。
 
福島から鹿児島に避難の西さんが支援を訴えた!
 避難者支援団体の井上まきさんが避難者への募金を呼びかけたあと、最後に福島県から鹿児島に避難された西さんから「原発がどれくらい 『おっかない』か、なんて全然知りませんでした。今は霧島に住んでいますが川内は『おっかない』から住みたくないというのが本音です。避難をしても支援のない方もいます。いまは「原発ゼロ」を訴えるしかないと思います」と脱原発と被災者支援を訴えました。
 集会終了後の『ノーニュークス・パレード』は中央駅から天文館・朝日通までを往復しました。信号で足止めされ、意外に長い道のりでしたが、市民の参加者、トラクターやヤギ、サウンドパレードなどでにぎやかに鹿児島市民へ「原発ゼロ」を訴えました。
 

核燃料サイクル路線は破たんしている

プルトニウム利用計画描けず
 電気事業連合会(電事連)は、六ヶ所再処理工場で2013年度に取り出す核分裂性プルトニウム約0.6トンの使い道を示す「プルトニウム利用計画」の作成を断念したと報道されました。核兵器の材料になるプルトニウムの透明性を確保するために、日本政府はこれまで国際公約として「余剰プルトニウムを持たない」としてきました。そのため、2003年8月に原子力委員会が、プルトニウムを取り出す前に、「プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的」(利用量、利用場所、利用開始時期、利用期間など)の予定を毎年度、電力会社に明らかにするよう求めているものです。その上で、原子力規制委員会がその妥当性について確認することになっています。
 しかし、福島原発事故以降、原子力政策そのものの破たんがいっそう明らかになる中で、これまでのプルトニウム利用計画も破たんした状況にあります。だからこそ、計画そのものを描くこともできない状況に追いつめられたといえます。電事連が2013年度のプルトニウム利用計画の作成を断念したことは、当然、六ヶ所再処理工場の運転や、存在理由そのものにも影響を与えます。
 これまで日本原燃は、六ヶ所再処理工場の竣工を今年10月と発表し、1月31日には2013年度下期には運転を始めるとして「再処理施設の使用計画」を原子力規制委員会に提出しました。現在、それに合わせて試験や工事を進めています。
 私たちはこれまで、プルトニウム利用計画は破たんしており、提出した計画は「絵に描いた餅」でしかないと指摘してきましたが、いよいよその通りの状況になってきました。10月の竣工にこぎつけたとしても、つくり出されたプルトニウムをどのように使うのか、明らかにできないことが、今回の電事連の計画断念ではっきりしました。
 さらに、原子力規制委員会が、核燃料サイクル関連施設の新安全基準を発表するのが12月だといわれています。竣工しても新基準のチェックがあり、まともに動かすことすらできないはずです。基準づくりが遅れれば、さらに中途半端な状態に置かれることになります。
 さらに計画が立てられない状況は、MOX加工工場の建設にも影響します。これも利用計画の見通しが立たない中で、このまま強引に建設を進めれば、早晩行き詰まることは明らかです。作られたMOX燃料も、海外から返還されるMOX燃料の使用が優先され、国内のMOX燃料が、いつ、どの原発で使用できるのかも示されていません。むしろできないといったほうが正確で、使うあてのないMOX燃料をつくり続ける状況になりそうです。

フランスからMOX燃料が日本へ
 その海外からのMOX燃料が、フランスからこの4月に日本へ向けて輸送されようとしています。時期は明確にされていませんが、4月上旬から中旬にかけて日本へ向けて送り出されると言われ、輸送ルートも明らかにされていません。おそらく喜望峰回りで、インド洋から太平洋に出て、フィリピンや韓国沖を走るのではないかと言われています。通過ルートの沿岸諸国にとっては、ハタ迷惑な輸送でしかありません。ルートも日時も公表されず、事故の危険性だけが押しつけられ、沿岸諸国からも抗議の声が上がっています。
 輸送されるMOX燃料の輸送先は、関西電力の高浜原発3号機とも言われています。関電は、新安全基準にしたがって3号機の再稼働をめざすとしていますが、その際、MOX燃料の装荷については「現時点では判断していない」としています。原発の再稼働そのものが、地元や周辺自治体で大きな問題となっている中で、さらに原発の危険性を高めるMOX燃料の使用は、原発推進の側から見てさえ、再稼働の「ハードルを高める」だけです。使うあてのないMOX燃料輸送が再開され、ますます原子力政策を混乱させるだけです。

混乱する核燃料サイクル政策に終止符を
 これまでも繰り返し訴えているように、核燃料サイクル路線は破たんしています。すみやかに幕引きが必要です。ムダな資金を、六ヶ所再処理工場やMOX燃料加工工場、その他付随する施設に投入するべきではありません。大切な電力料金や税金を完成するあてのない核燃料サイクルに期待し、投入する愚行はこれ以上やめて、政策の破たんを認めて、撤退すべきです。今からでも遅くはありません。

原発のない福島を!県民大集会/集会宣言

集   会   宣   言

   歴史的な地震・津波・原発事故の大災害から、早や2年の月日が流れました。地震と津波による2万に近い犠牲者の御霊(みたま)に、あらためて哀悼の意をささげます。
   一方、世界史に残る原発事故が引き起こした大規模な被害は、福島県にとどまらず東日本の広い範囲に及んだことが明らかになっています。そして計り知れない犠牲と損失を生んでいるこの災害は、今もなお進行中であり、いつ終息するとも知れない深刻な状況が続いています。
   原発事故がまだ終わっていないということは、私たち福島県民にとっては疑いようのない現実です。けれども国民一般の意識の中で、福島原発災害はすでに過去の出来事になりつつあるのではないがとの懸念を、私たちは抱かざるを得ません。
   「放射能では誰も死んでいない」というのは、正しくありません。避難の途中で、あるいは避難生活の中で命を落とした人は、自殺した人を含め、きわめて多数にのぼっています。福島県の「震災関連死」の数が突出して多く、1,300人にも及んでいるのは、紛れもなく、放射能による避難やストレスが原因です。
   県民の多くは依然として低線量放射線被ばくへの不安から解放されていません。政府の指示によって避難を余儀なくされた人、および自主的に避難した人の数は県内外に合計16万人。この数字はなかなか減る気配がありません。2年に及ぶ避難生活は、肉体的にも精神的にも多くの人々を追いつめています。帰還の見通しが立たず移住という選択をせざるをえない人、あるいは故郷に帰る希望をもちつつも、それがいつになるか分からない状態の中で悩み、苦しんでいる人が何万人もいます。賠償金に依存した生活が長引くことによる弊害も出始めています。避難者と、避難先の住民の間で生まれている心理的な摩擦も無視できません。
   現在、膨大な国家予算を投入して復興に向けた事業が行われています。しかしこの2年間で、福島県は復興の足元を固め、再生の道を確実に歩み始めたかといえば、必ずしもそうは言えません。放射能汚染という現実が、どうしても復興の前途に立ちはだかります。生活の安全と産業再生のためには放射能の除染が必須ですが、その除染作業への信頼が揺らいでいます。除染廃棄物の中間貯蔵施設の立地選定も緒についたばかりです。
   しかしながら、前代未聞の諸困難に直面しつつも、福島県内の多くの個人、組織、団体は、懸命になって事態打開のために努力しています。被災した町村はそれぞれの復興計画を練り上げています。福島県と農協はコメの全量全袋検査を実施するなど、県内産農産物の信頼回復に全力を挙げています。至難と言われる森林の除染、そして林業の再生のため、森林組合は懸命な努力を重ねています。県内の漁業はいまだに操業自粛が続いていますが、試験操業をしながら再開の道を探っています。風評被害に苦しんでいる観光業もNHK大河ドラマを機に起死回生を図っています。生協は「子ども保養プロジェクト」で放射線被ばくからのストレスを軽減するため活動しています。また被災し避難している住民自身やボランティアも頑張っています。ばらばらになった住民が相互に支えあい、仕事を起こし、コミュニティの絆を維持する活動が各地で立ち上がっています。
   福島県内のこうした困難な現状、そして県民の苦闘に対し、国の行政は、果たして真剣に目を向けていると言えるでしょうか。東京電力は賠償請求に真摯に対応し、加害責任者としての義務を果たしていると言えるでしょうか。また国の政治は、このような災害を招いた原子力事故を二度と起こさないという、使命感と決意に燃えていると言えるでしょうか。
   いま目の前にある生活上の苦境をどう乗り越えるがということもさることながら、いまここにある原発をどうするが、これこそ、私たち県民が考えずにおれない重大問題です。事故を起こし破壊に至った4基の原子炉は、今後起こりうる大地震に果たして耐えうるのか、いつ本当に安全な状態に落ち着くのか、それさえまだ分かっていません。事故現場ではきょうのこの日も、高い放射線を被ばくしながら、多くの労働者が作業に従事していることを、私たちは忘れてはなりません。
   そして問題は第一原発5・6号機、および第二原発の1~4号機の扱いです。県知事と県議会はともに、県内10基の原発すべての廃炉を求めています。これは多くの県民の気持ちを率直に反映したものです。しかし東京電力はこれを受け入れていないどころか、再稼働を当然の前提としているかのように、6基の原発の保守管理をすすめています。
   総選挙の結果、「原発いらない」の声は、国政には届きにくくなりました。けれども福島県民は、断じて「福島県の生き方」を譲るわけにはいきません。福島県と地元自治体は確かにかつて原発を誘致した経緯があります。原発の立地と運転による経済的利益があったのも事実です。しかし取り返しのつかない今回の大災害の中で、原発を抱え込むことのリスクが途方もなく巨大であり、金銭的利益と天秤にかけることなど到底できないことを身をもって知りました。原発を誘致したのは間違いだったと、私たちは今はっきりと断言することができます。また全国に向けてそう声を上げることこそ、被災県としての使命ではないでしょうか。
   「原発のない福島を!」「安心して暮らせる福島を!」これは福島県民の願いであり、心の叫びです。世界史の中で特別な位置におかれたというべき福島が、しっかりと再生に向けた道を歩むために、原発依存からの脱却=原発との訣別はまさに出発点であり、大前提でなければなりません。
   県内外に避難している県民のみなさん、避難せず踏みとどまっている県民のみなさん、役場ごと避難、あるいは避難者を受け入れている自治体の首長やスタッフのみなさん、さまざまな分野で悪戦苦闘している産業界のみなさん、ばらばらになった生徒たちの教育の行く末を案じている教育界のみなさん、そして子どもたちの健康被害や社会的差別を心配せずにおれないお父さんやお母さんたち、本当に「原発のない福島を」実現するために、お互いに支えあい、心を一つにして、頑張りましょう。

 2013年3月23日

原発のない福島を!県民大集会
 

1DSC02734.jpg 3月23日、福島市「あづま総合体育館」を会場に、福島県内の団体や個人で構成される大会実行委員会の主催で「原発のない福島を!県民大集会」が開催され、約7000人が参加しました。

 始めに、呼びかけ人で曹洞宗 円通寺住職の吉岡棟憲さんが、国と東京電力に対し、「心底から謝罪することもなく、ウソと隠ぺい。許すことはできません」と開会のあいさつを行いました。続いて、実行委員長で福島県平和フォーラム代表の五十嵐史郎さんが「2年が経ったが、様々な努力があっても県民は成果が実感できない。この集会を福島に希望が持てるものにしたい」と力強く発言しました。

 また、福島大学教授で呼びかけ人代表の清水修二さんは、被害は停電と放射能だけではないとして、避難先での摩擦に苦しみ、被害者同士が避難する、避難しないで二つに引き裂かれている現状を訴えました。
連帯のあいさつでは、体調を崩し欠席となった作家の大江健三郎さんに代わって、ルポライターの鎌田慧さんが発言しました。続くさまざまな立場からの県民の訴えはどれも胸を打つものでした。

 集会では前段にアトラクションがあって、サブアリーナ等では地元の物産品などの出店もありました。
 
集会宣言

(写真:今井明) 

MOX燃料輸送・再処理工場運転への申し入れ

 関西電力は321日、高浜3号機用MOX燃料をフランスから輸送すると発表しました。まだ新安全基準も出来ず原発再稼働のめども立っていないのに、核兵器物質プルトニウムを含んだMOX燃料をリスクの高い海上輸送をしようとしています。これまで、輸送ルートに当たる世界各地から反対の声もあがっています。

現在日本は、約44トンのプルトニウムを保有し、年間約8トンのプルトニウムを分離できる六ヶ所再処理工場を始めとする核燃サイクル政策を進めており、使い道のない核兵器物質がたまり続けています。

  このような事態は、核拡散、核セキュリティーの観点からも許されることではありません。原水爆禁止日本国民会議(原水禁)として、MOX輸送の中止と、再処理政策を改め分離プルトニウムを増やさないよう、内閣総理大臣はじめ、原子力委員会委員長、原子力規制委員会委員長、国土交通大臣、経済産業大臣あてに本日、以下の申し入れをいたしました。

 


 

 

 

2013322

内閣総理大臣 安倍晋三様

原子力委員会委員長 近藤駿介様

原子力規制委員会委員長 田中俊一様

国土交通大臣 太田昭宏様

経済産業大臣 茂木敏充様

原水爆禁止国民会議(原水禁)事務局長 藤本泰成

101-0062 東京都千代田区神田駿河台3--11連合会館1F

 

日本原燃による六ヶ所再処理工場運転開始計画及び

フランスからのMOX燃料輸送計画についての申し入れ

 

 日頃のご活躍に敬意を表します。

核拡散、核セキュリティにとって重要な意味を持つ日本原燃による六ヶ所再処理工場運転開始計画及びフランスからのMOX燃料輸送計画について以下の通り申し入れをしますので、御回答よろしくお願いします。

 

1.201310月の六ヶ所再処理工場竣工を目指している日本原燃は、131日、2013年度下半期に工場の運転を始めるとの計画を原子力規制委員会に届け出ました。日本は、2011年末現在、英仏に約35トン、国内に約9トンのプルトニウムを保有しています。米国のオバマ大統領は、20123月 に核セキュリティ・サミットでソウルを訪れた際、韓国外国語大学校での演説で「プルトニウムのような我々がテロリストの手に渡らぬようにしようと努力して いるまさにその物質を大量に増やし続けることは、絶対にしてはならない」と述べています。原子力規制委員会が核燃料サイクル関連施設の新安全基準の検討を 始めてもいないことからすると、届け通り再処理が始まることにはならないでしょうが、原子力発電所の再稼働の時期の予測も立たない現状で、プルトニウムを さらに分離する計画を出すことは、国際的な懸念を招きます。

 原子力委員会は、20038月 の決定において、核拡散防止面での懸念に応えるためとして、六ヶ所再処理工場でのプルトニウムの分離について次のように定めています。「電気事業者はプル トニウム利用計画を毎年度プルトニウムの分離前に公表」し「原子力委員会は、その利用目的の妥当性について確認」する。「電気事業者は、プルトニウムの所 有者、所有量及び利用目的(利用量、利用場所、利用開始時期、利用に要する期間のめど)を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表す る。」

しかし、電気事業連合会は、2010年以来、六ヶ所再処理工場で分離される予定のプルトニウムの利用計画を更新しておらず、福島事故後の状況を反映した計画が出されていません。

 そもそも、電気事業者がこれまで発表した利用計画は、六ヶ所村で建設中のMOX工場が完成したらMOX燃料を製造し、原子炉で利用するつもりであるとの意志表明に過ぎません。本来、1991年の原子力委員会核燃料専門部会報告書「我が国における核燃料リサイクルについて」にある「必要な量以上のプルトニウムを持たないようにすることを原則とする」との考え方に従うなら、英仏にある35トンのプルトニウムの消費計画が立たない状態で、さらにプルトニウムを分離すべきではありません。

 

2.3月初めの報道によると、フランスのアレバ社は、2011年春に予定されながら福島第一原子力発電所事故を受けて延期されていたMOX燃料の輸送準備について、日本の関係当局と協議しているとのことです。グリーンピース・フランスは、シェルブール港出港時期を4月上旬から中旬としています。2011年の輸送計画は、中部電力浜岡4号炉及び関西電力高浜3号炉用のものでした。関西電力は今年7月に高浜3号炉及び4号炉を再稼働すること想定しており、輸送先は高浜3号と予想されていましたが、関西電力が輸送計画を公表しないため、受け入れ手や輸送日時・ルートの明確でない輸送計画が報道される事態となっていました。同社は、3月21日になってやっと輸送計画が高浜3号炉用だと発表しましたが、輸送の時期及びルートは明らかにしていません。

現在、海外から運び込まれたMOX燃料が次の5つの原子炉で保管されています。柏崎刈羽3号(28205kg)、浜岡4号(28 213kg)、高浜4号(4 184kg)、伊方3号(5 198kg)、玄海3号(4161kg)。柏崎刈羽の場合は、20013月以来、12年間も置かれたままになっています。これらのMOX燃料に含まれるプルトニウムの量は約1トンに達します。利用の目処の立たないMOX輸送は、国際的な懸念を招くとともに、不必要に輸送中及び原子力発電所での核セキュリティ上の問題を増大させることになります。

 

 以上のことから、次のように申し入れます。

 

1. 政府は、これ以上分離済みプルトニウムを増やさぬよう再処理政策を改めること。原子力委員会は、少なくとも、早急に電気事業者に「利用計画」を出させると ともに、英仏にあるプルトニウムを考慮し、「利用目的の妥当性について確認」する際の厳密な基準を明確にすること。また、原子力規制委員会は、六ヶ所再処 理工場他のセキュリティ体制の強化を図るとともに、プルトニウムをこれ以上分離することについて、核セキュリティ上の問題を検討して規制方針を明らかにす ること。

 

2.原子力規制委員会及び国土交通省は、少なくとも、透明性確保のため、 警備計画の概要を明らかにすること。そして、原子力規制委員会は、上記の保管中のMOX燃料のセキュリティ体制の強化を図るとともに、不必要なリスクを伴うMOX輸送を中止させること。

 

 

 3月11日、東京・品川区立総合区民会館「きゅりあん」を会場に、「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」が開催され、約1200人が参加しました。 

  最初に、司会を務めた元東京都国立市長の上原公子(ひろこ)さんが、「また今日の日がやってきました。この日を沈黙の日にするのか。原発はいらないと決意をする日にしたいと思っております」とあいさつしました。黙とうの後、開会あいさつに立った鎌田慧さんが「1000万人署名は現在約820万筆。まだ署名は続いています。1000万筆を達成して首相官邸にたたきつける」と訴えました。

上原公子さん

鎌田慧さん

 講演ではまず内橋克人さんが「大変衝撃を受けた言葉」として、詩人のアーサー・ビナードさんの、「炉というのは人々が憩う囲炉裏端、暖炉(の炉)。日本人はなぜ、『核分裂反応装置』に原子『炉』という言葉を使うのか」という発言を紹介しました。 鎌田さんから、今日は戦争と憲法と原発について講演してほしいと依頼されたという澤地久枝さんは、「(持ち時間内では話しきれないので)早口になってごめんなさい」と前置きして、「今日みたいにこんなにたくさん集まると、政府も恐いだろうと思います」と発言しました。

内橋克人さん

澤地久枝さん

 坂本龍一さんと人気バンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」の後藤正文さんによる対談では、「脱原発って、ミュージシャンが偽善でやっているんでしょ?」と言われることがあるという後藤さんに対して、坂本さんが「偽善でやるのにこんな苦労はしたくないよね」と発言し、会場から拍手や笑いが起こりました。

後藤正文さん(左)と坂本龍一さん(右)

 休憩をはさんで後半は、福島大学教授で、福島県民大集会の呼びかけ人代表を務める清水修二さんが登壇。「首都圏の人たちが原発の電気を使いたくないといえば、福島の原発を動かす理由はないのです」と呼びかけました。 大江健三郎さんは、「反原発が達成されて、将来にわたって人間が生き得る場所をつくることが、次の世代への贈り物。それが私たちのすべきことであるし、現に今ここで私たちはやっています」と力強く訴えました。九州大学教授で副学長の吉岡斉さんは専門家の立場から、「原発事故に対して、今の体制を変えないというのは情けないなと思います。法律のレベルで根こそぎ変えていかなくてはなりません」と提起しました。

※清水修二さんの肩書きを「福島県民大集会の実行委員長」と掲載しておりましたが、「福島県民大集会の呼びかけ人代表」の誤りでした。「実行委員長」は福島県平和フォーラム代表の五十嵐史郎さんです。お詫びして訂正いたします。

 

清水修二さん

大江健三郎さん

吉岡斉さん

 最後に、落合恵子さんが「私にとってここにいることは居心地のいいことです。だって、同じ考えの方がこんなにおられることを確認し、どこかでうなずき合えることができるからです」とやさしく力強い言葉で締めくくりました。

落合恵子さん

3月9日に東京・明治公園で開かれた「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」の全発言者の発言ダイジェストとパレード行進の様子をビデオにまとめました(約10分)

 

 

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 2011年3月11日の東日本大震災・東京電力福島第1原発事故から2周年を前に、3月9日、東京・明治公園で「さようなら原発1千万署名市民の会」主催で、「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」が開かれ、全国から1万5千人が参加しました。
 集会は二部形式で開かれ、第1部は日本音楽協議会のオープニングライブを皮切りに、脱原発に取り組む各団体や各地からリレートークが行われました。福島県葛尾村から避難している小島力さんは村民による集団訴訟の取り組みを、国際環境NGOFoE Japanの満田夏花さんは「原発ゼロの後退を許すな」と訴え、原子力資料情報室の伴英幸さんも「原発再稼働をさせてなならない」と述べ、毎週金曜日に官邸前デモをするMisao Redwolfさんは「選挙結果はあっても脱原発は国民の声だ」と語気を強めました。日本消費者連盟の富山洋子さんは「安心できる社会を次代へ」と語り、元山口県祝島島民の花田恵美代さんは「海の埋め立てを許さない」との祝島島民のメッセージを代読しました。
 沖縄出身の金城吉春さんとアシビナーズの歌と三線演奏をはさみ、各地からの訴えでは、茨城・東海原発(大石光伸さん)、静岡・浜岡原発(伊藤実さん)、青森・六カ所村再処理工場(山田清彦さん)、北海道・泊原発(小野有五さん)について、それぞれの現状と取り組み報告が行なわれました。福島からは、双葉町の井戸川克隆・前町長と浪江町から避難している柴口正武さんが避難者の立場から「事故は全く収束していない」などと東京電力と政府の対応を強く批判しました。

 第二部は女優の木内みどりさんの司会で進められ、最初に全員で黙とうを行った後、呼びかけ人から4人が発言。鎌田慧さんは「原発事故より経済が大事だという政治の動きがあるが、私たちはそれを許さない」と指摘。大江健三郎さんも「福島原発事故をなかったことにしようとする勢力と闘い、原発の再稼働はさせない」と語り「今日のデモは最後まで歩く」と決意を表明しました。落合恵子さんは「原発を推進してきた自民党が政権を取ったが、くじけずに行こう」と呼びかけ、澤地久枝さんは「福島で被曝した人達は全て国の責任で補償させよう」と訴えました(写真左は大江健三郎さんの訴え)。
 早くから原発問題を訴えてきた作家の広瀬隆さんは、地震発生や子どもたちの健康、生態系のの異変など、原発事故による恐怖の実態を指摘した後「原発を稼働させる方が多大な金がかかるということをマスコミはきちんと報道してほしい」と訴えました。また、集会参加のために来日した韓国の環境団体「韓国環境運動」の共同代表で「核なき世界のための共同行動」のチェ・ヨル代表が、国際的に連帯して脱原発をめざそうと呼びかけました。
 最後に福島から京都に避難している斎藤夕香さんが「事態の深刻さを知らずに避難をしていない人も多い。多くの人に伝えていきたい」と述べ、「私たちのことを忘れないで、繋がってほしい」と訴えました。
 集会後に、二つのコースに分かれて、「原発はいらない」「政府は責任を取れ」「エネルギー政策の転換を」「再稼働を許すな」などとシュプレヒコールを行い、横断幕やプラカードを持ち、沿道の人達に呼びかけながら行進をしました(写真右は行進の先頭を行く呼びかけ人の皆さん)。
  

 2月28日、静岡県男女共同参画センターあざれあ(静岡市)を会場に、「被災59周年 3.1ビキニ・デー全国集会」が開催され、全国から約250人が参加しました。

 はじめに、川野浩一原水禁議長が「今日の原水禁運動の起源は、第五福竜丸事件に端を発して東京都杉並区のお母さんたちが始めた核実験禁止の署名運動から。もしその署名が無かったら、地球はどうなっていたでしょうか。考えただけでもぞっとします」とあいさつしました。
130228_01.jpg 静岡県平和・国民運動センター会長の原科臣孝さんの地元からの歓迎あいさつに続いて、静岡福祉大学名誉教授で、「ビキニ市民ネット焼津」代表の加藤一夫さんによる講演・提起「ビキニから見えるもの」では、「政治運動に限らず、『楽しい』社会運動をつくっていくことも、これからは大切」と訴え、福島第一原発事故を経た現在においても、第五福竜丸事件が決して、過去のものではないことが指摘されました。

 特別報告として、福島から福島県平和フォーラム代表の五十嵐史郎さんが、「原発事故から2年が経過し、全国の方から『収束したのでしょう?』などと言われるが、県民の思いとしてはまったく状況は変わっていない」と、事故が風化していくことでの苦悩を訴えました。

 焼津市長と牧之原市長からのメッセージが読み上げられた後、第15代平和大使で、静岡県立清水東高校1年の鈴木七海さんが、「私たち高校生は、まだまだ学ばなければいけないことがたくさんありますが、皆さんの思いを引き継いでいきたいです」と発言しました。

 最後に静岡県平和・国民運動センター副会長の加藤保さんが、集会アピールを読み上げ、参加者の拍手を以って承認されました。

 27日には、浜岡原発周辺30km圏の11市町と県や中部電力へ浜岡原発の廃炉を求める要請を行いました。また、3月1日は焼津市で久保山愛吉さん墓前祭がとりおこなわれ、広島や長崎、JCO臨界事故を経験した茨城、柏崎刈羽原発を抱える新潟などからの参加がありました。
 

「県民大集会」を成功させよう!
さらなる困難な状況に直面する福島


日本の再処理・プルトニウム抽出が国際問題化
六ヶ所は世界終末時計を進めてしまうのか?


米原子力規制委員会(NRC)
攻撃部隊を使った原発警備演習



「県民大集会」を成功させよう!
さらなる困難な状況に直面する福島

福島県平和フォーラム 代表 五十嵐 史郎


長期化する不安や苦悩
 福島第一原発事故から2年、県民の不安や苦悩は長期化する中で更なる困難な状況も出てきている。今も福島県民16万人が避難生活を余儀なくされ、県外に約6万人が避難していたものの、最近徐々に県内へ戻りつつある。しかし、これは状況が改善されたのではなく、避難による二重・三重の生活、長距離通勤など経済的負担に耐えられず、やむなく戻ってきているのだ。
 原発自体も、メルトスルーした核燃料の状況はまったく把握できず、4号機の使用済み核燃料プールは補強したといえ、次の地震で倒壊する危険性を払拭することはできない。そして今も放射能を出し続けている。
 外部被曝、内部被曝の検査も実施をしているが、事故当時どれだけ被曝したのか、今となってはまったく把握できない。したがって、将来の健康を保障するものは何もなく、県民はただデータだけを取られ、実験材料とされているのではないかとさえ思える。甲状腺検査でも十分な説明がなく、検査への不信が募るだけで、不安の解消にはなっていない。
 最近、県内では復興を前面に押し出し、避難者をどうやって地元に戻すかという方向に動いているように思える。そのために、放射線による健康被害を過小評価し、「不安」を個人の価値観にすり替える風潮が出てきている。原発推進をもくろむ原子力ムラの人々は、原発事故の風化を待ち、いつか原発を再稼動させようとしている。残った県内6基の原発について、県も県議会も廃炉を求めているにもかかわらず、国と東京電力は廃炉を決めていない。

健康被害や人権侵害への取り組みが必要
 放射能による差別・人権侵害の問題もある。昨年、日本生態系協会の池谷奉文会長が「福島ばかりでなく、栃木、埼玉、東京、神奈川あたりにいた方々は、極力結婚しないほうがいい」「奇形発生率がドーンと高まる」といった発言をした。また、県内の高校生がインターハイの大会に出場した際の宿舎で、福島の高校生が風呂に入った後、お湯を全部取り替えてほしいとの要請があったという話を聞いた。福島県民としていたたまれない思いがする。
 爆発直後、県外に避難した子どもがいじめられたとか、福島ナンバーの車がいたずらされたなどの露骨な差別は聞かなくなったが、広島・長崎の被爆にみられるような差別・人権侵害の問題は、今後も続くことが予想される。そうならないための定期的な健康診断・医療体制、健康手帳の配布、人権教育などの取り組みも進めていく必要を感じる。
 県内では、除染作業を進め、学校や公共施設などが一通り終わり、一般家庭の除染も始まった。しかし、削った表土や、放射性廃棄物の行き場がない状況だ。除染に従事する人もなかなか集まらず、中間貯蔵施設、仮置き場も決まらない中、除染も思うように進まない。

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「風化させるな原発震災!脱原発福島県民集会」でのデモ行進
(いわき市・2012年11月25日)


事故を風化させず脱原発をめざそう
 核廃棄物は事故がなくても溜まる。核廃棄物の処理方法がないままに原発を始めた無責任さに改めて怒りが込み上げる。国や電力会社の責任は当然だが、私たち国民に責任はないのか。電源交付金をあてに立地を進めた人たち、他県の原発で作られた電気を惜しげもなく使ってきた人たち、原発に反対をしながらも結果として止められず許してきた私たち。これからは原発を動かさない、核廃棄物を絶対作らせないとしても、今ある核廃棄物、使用済み核燃料の処分について、今の社会をつくってきた私たちは、その責任から逃れられない。他人に犠牲を押し付けるのではなく、自分もその責任を担うことを考えれば、自分の住む県・地域に最終処分場が来ることも覚悟しなければならない。核廃棄物の問題は、今すぐにでも何とかしなければならない切迫した問題だ。
 原発事故の風化をさせず、脱原発をめざし、3月23日に開催される「原発のない福島を!県民大集会」成功に向けて、全国の皆さんの賛同協力を要請したい。

●原発のない福島を!県民大集会
日時:3月23日(土)10:00開場
内容:11:00~第1部「アトラクション」
13:00~第2部「県民大集会」
会場:福島市・あづま総合体育館
主催:「原発のない福島を!県民大集会実行委員会」
問い合わせ:実行委員会事務局(024-522-6101)



日本の再処理・プルトニウム抽出が国際問題化
六ヶ所は世界終末時計を進めてしまうのか?

オバマ大統領に示された日本の再処理問題への懸念

 世界の終末までの残り時間を「0時まであと何分」というかたちで象徴的に示す世界的に有名な「世界終末時計」を表紙に掲載している「ブリティン・オブ・アトミックサイエンティスト」誌は、2013年は0時5分前のまま針を動かさないことを発表しました。
核問題の世界的な権威である、同誌の科学安全保障委員会は、「2012年は全地球的な問題の数々が針を押し進めた一方、数多くの市民たちが引き戻した」とし、同時に発表したオバマ米大統領への公開書簡の中で、新START批准や世界的な核セキュリティー体制の構築への賛辞を送るとともに、再生可能エネルギー源への支援やエネルギー効率向上への取り組みにも言及、記録的な干ばつや超大型ハリケーンは、温暖化予測に基づく気候変動の影響によるところと指摘しています。
日本については、「2012年は福島事故後、日本がとるべき膨大なコストと長い時間を必要とする回復への道のりへの最も初期の段階でもある」と指摘するにとどまらず、六ヶ所再処理工場について、オバマ大統領に対して具体的な要請をしています。少し長くなりますが、核分裂性物質に関する節の関連部分を引用します。
「2009年に大統領に就任後数ヵ月のとき、4年以内に世界各地すべての脆弱な核物質のセキュリティーを確保するという目標を発表されました。すべての核分裂性物質は、分離する目的が核兵器用か民生用かにかかわらず相当な核拡散リスクをもたらすということ──これは、非常に重要な公表された確認事項です。2013年には核分裂性材料の議題を活性化し、拡めるべきです。……大統領の韓国外国語大学での昨年の演説を引用すれば、『我々がテロリストの手に渡らぬようにしようと試みているまさにその物質──分離済みプルトニウム──を大量に増やし続けることは、絶対にしてはならない』のです。
大統領、我々は、直ちに民生用および軍事用の核分裂性物質──高濃縮ウランと同様にプルトニウム──の備蓄への包括的アプローチを始動することを呼びかけます。独立した調査機関の評価は、高濃縮ウランの1440トンと分離プルトニウムの500トンの世界的備蓄の存在を示しています。 これは理論的には核兵器の数十万発に十分な量です。
1970年代以降、米国は民間の使用済み核燃料や核分裂性物質の分離の再処理をしていません。2013年には、米国として、日本の六ヶ所再処理工場の試運転を思いとどまらせるべきであり、また韓国の再処理計画を再考するよう奨励するべきです」。

 

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世界の終末までの残り時間を象徴的に示す「世界終末時計」


国連軍縮会議でも議論される
 もはや、日本の再処理工場が世界の核セキュリティー上の問題になっていることは隠しようのない事実でしょう。1月末に静岡市で開催された第24回国連軍縮会議の議論でも、モントレー国際研究所のマイルス・ポンパー上席研究員は日本の核燃料サイクル政策について「『プルトニウムを使う核兵器を持たない』のに、核燃料サイクルをめざしているのは日本だけ」と指摘。安倍政権が核燃料サイクルを維持する立場であることに対して「延期すべきだ。プルトニウムが使い切れず大量に余れば、近隣諸国の不安が拡大する」と懸念を表明。使用済み核燃料について「処理をどうするかは世界の政治的課題」と話しました。
 このような世界的懸念に対して、核不拡散を所掌する原子力規制委員会は、「余剰プルトニウム問題は原子力委員会の所掌である」としています。一方の原子力委員会は「余剰プルトニウムを持たないという政府の方針は変わっていない」としながらも、そのための有効な手立てを示していません。45トンもの使い道のないプルトニウムをかかえながら今年10月を予定して六ヶ所再処理工場を稼働し、プルトニウムを増産するなど全く国際理解を得られるものではありません。世界の核セキュリティーの面からも、核燃料サイクルは止める必要があります。


米原子力規制委員会(NRC)
攻撃部隊を使った原発警備演習

 米国の原子力発電所では、民間会社の警備員は武装しています。そして、安全性とセキュリティーに責任を持つ原子力規制委員会(NRC)が、1991年以来、各原子力発電所の警備体制を調べる査察の一環として、「武力対抗演習」(FOF)を実施しています。原子力施設の防護が必要なのは、①攻撃された施設が放射能汚染をもたらす、②核物質・放射性廃棄物が盗み出され兵器として使われる可能性があるためです。

実戦さながらの演習――同時多発テロ後さらに強化
 演習は、2~3ヵ月前に予告して3週間にわたって行われますが、机上演習の他に、NRCの指揮下の模擬攻撃部隊が原子炉と使用済み燃料の安全システムに攻撃を掛け、警備員部隊が迎え撃つというFOFが実施されます。実際の武器の代わりにレーザーとレーザー受光器が使われ、3日間で3度の攻撃が仕掛けられます。演習は2001年の同時多発テロ後強化され、2004年秋以降は、すべての原発で3年に1回の割合で実施されています。例えば、2009年には22の発電所で23回のFOFが実施されました。ターゲットすべての損傷または破壊が達成されるケースが3回ありました。2011年は、この完全な防護失敗は0回でした。
 真剣さに驚かされますが、演習の実施方法や敵のレベルの想定(人数・兵器)の問題が指摘されています。まず、攻撃側部隊を提供するのが、米国の多くの原発の警備に当たっているワッケンハット社(G4S社に吸収)である点についての批判があります。NRCは、米軍特殊作戦部隊の現役隊員の助言も得ているし、攻撃の作戦を作成するのはNRCであり、攻撃側部隊に加わる社員が、査察をする原子力発電所とは別の地域から来ることなどを強調しています。また、攻撃側の人数が5人ほどと推測されることも批判されています。

日本の原発警備に不安を持つ米国
 日本の原子力発電所の警備に当たっている警備会社は、言うまでもなく武装していません。同時多発テロ以後は、警察や海上保安庁が武装警備を提供しています。詳細は不明ですが、米国のような本格的FOFは実施していないようです。2011年5月6日にウィキリークスが公開した一連の米国の外交公電によって、日本の防護体制に対する米国側の懸念が明らかになりました。例えば、2006年1月17日の公電は、国民保護法に基づいて前年11月27日に関西電力美浜原子力発電所で行われた日本で初めての核テロ訓練について触れています。訓練のシナリオは次のようでした。午前7時頃美浜原発が国籍不明のテロリストよる攻撃を受け、原子炉は自動停止するが、偶発的な故障が重なり、冷却機能が喪失。炉心損傷の可能性があり、昼頃住民避難の指示、午後3時前全ての住民が避難所に到着。
 この演習に臨席した米大使館スタッフは、次のように述べています。「台本通りで少し完璧すぎる」「訓練が、主として住民の避難と緊急対応システムの強化に焦点を合わせたものであるため、得られる情報は全て、FOFに当たる訓練が組み込まれていなかったことを示している」。形式的で効果がないということです。

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米国原子力規制委員会(NRC)の武力対抗演習(NRC提供)


核兵器物質保管施設の警備の甘さも
 2007年2月26日付の公電によると、「プルトニウムの主要貯蔵施設のひとつである東海村施設に武装警備員が配置されていない点についての質問に対する文部科学省の答えは、現地の必要性とリソースに関して検討したところ、このサイトでの武装警官の配置を正当化するに足る脅威は存在しないとの結果が得られたというものだった」そうです。昨年3月の「核セキュリティー・シンポジウム」(ソウル)で、米「憂慮する科学者同盟」(UCS)のエドウィン・ライマン博士がFOFの重要性を指摘した際、内藤香原子力委員会原子力防護専門部会長が、銃が簡単に手に入る米国と日本は事情が違うと述べたのは同様の発想でしょう。
 警察は来年度、原子力関連22施設の警備用の機関銃や防弾車両を大幅増強する予定(NHK:1月30日)ですが、武装していない事業者側警備員・警察・規制当局の連携は、脅威の想定も含め複雑です。導入が予定される従業員の信頼性確認制度と人権問題の関係も複雑です。原子力安全と核セキュリティーの両方の責任を持つ日本原子力規制委員会の今後の方針が注目されます。(田窪 雅文:ウェブサイト核情報主宰)
 

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