2011年9月アーカイブ

鹿児島県護憲平和フォーラム/鹿児島原水禁が「鹿児島県護憲平和フォーラム情報 No.5」(PDFファイル)を発行しました。「さようなら原発1000万人アクション」の取り組みなど、原発関連情報が盛りだくさんです。

原発シンポジウムが「やらせ」を要請した問題で経産省設置の第三者委員会が、女川原発、泊原発、玄海、伊方、浜岡などで経産省の原子力安全・保安院などが各電力会社に要請していたとする報告書を経産相に提出。

 東京高裁が元毎日新聞記者西山太吉さんら25人が、沖縄返還をめぐる密約関連文書の開示を国に求めた訴訟の控訴審で、密約の存在と文書保有を認定し、文書の開示と一人10万円の損害賠償を命じた東京地裁判決を取り消し、原告の請求を退ける判決。原告ら最高裁に上告。

さようなら原発集会に6万人
脱原発にむけて大きなうねりに

これまでの脱原発運動の中で最大規模
 9月19日、東京・明治公園で開催された「さようなら原発5万人集会」に予想を超える6万人が集まり、これまでの脱原発運動の中では、最大規模となりました。この集会は、作家の大江健三郎さん、鎌田慧さんら9名の著名な方々の呼びかけて行われたもので、市民団体・NGO、労働組合、生協・共同購入会、市民など北は北海道から南は沖縄まで、全国各地から参加者が集まり、被災地・福島からも1,000名近い参加者がありました。
  
福島の「苦渋の思い」語られる
 集会の中で、大江健三郎さんが、自分の先生であった仏文学者の渡辺一夫さんの文章を引いて、「狂気なしでは偉大な事業は決して成し遂げられない、と言う人々もいるが、それはうそだ。狂気によってなされた事業は、必ず荒廃と犠牲を伴う」。これはいま、「原発の電気エネルギーなしでは偉大な事業は成し遂げられない、と言う人々もいるが、それはうそだ。原子力によるエネルギーは、必ず荒廃と犠牲を伴う」と発言しました。
 福島からは、「ハイロアクション福島原発40年実行委員会」の武藤類子さんが、「毎日、毎日、否応なく迫られる決断。逃げる、逃げない。子どもにマスクをさせる、させない。洗濯物を外に干す、干さない。何かもの申す、黙る」この間の苦渋の思いを語りました。その他にも呼びかけ人の落合恵子さん、内橋克人さん、澤地久枝さん、鎌田慧さんが発言し、ドイツから環境団体・FoEドイツ代表のフーベルト・ヴァイガーさんと俳優の山本太郎さんが、脱原発を訴えました。
 
時代の流れは脱原発へ
 集会後、渋谷や原宿、新宿にむけてデモ行進を行い、沿道の市民からも応援の声や拍手、クラクションがあちらこちらで沸き上がりました。
 今回の6万人の人々の後ろには、参加できなかった人たちが多くいます。その数は10倍や100倍にものぼるでしょう。いま多くの人々が、原発からの脱却を求めています。これまで原発を推進してきた政府や政治家、事業者、官僚、学者などは、この6万人をはじめとする多くの超えに真摯に耳を傾けることを強く訴えます。時代の流れを間違いなく読んで欲しいものです。

●詳しくはこちらから
「さようなら原発1000万人アクションホームページ」http://sayonara-nukes.org/


武藤類子さん(ハイロアクション福島原発40周年実行委員会)の発言要旨

 皆さん、こんにちは。福島からまいりました。きょうは福島県内から、また避難先から、何台もバスを連ねて、たくさんの仲間と一緒に、やってまいりました。初めて集会やデモに参加する人も、たくさんいます。それでも福島原発で起きた悲しみを伝えよう、私たちこそが「原発いらない」の声をあげようと、誘いあってやってきました。
 初めに申し上げたいことがあります。三・一一からの大変な毎日を、命を守るために、あらゆることに取り組んできた皆さん一人一人を、深く尊敬いたします。それから、福島県民に温かい手を差し伸べ、つながり、様ざまな支援をしてくださった方々にお礼を申し上げます。ありがとうございます。そして、この事故によって、大きな荷物を背負わせることになってしまった、子どもたち、若い人たちに、このような現実を作ってしまった世代として、心から謝りたいと思います。本当にごめんなさい。

 さて、皆さん。福島はとても美しいところです。東に紺碧の太平洋を望む浜通り。モモ・梨・リンゴと果物の宝庫の中通り。猪苗代湖と磐梯山の周りに黄金色の稲穂が垂れる会津平野。その向こうを、深い山々が縁取っています。山は青く、水は清らかな、私たちの故郷です。

 3.11原発事故を境に、その風景に、目には見えない放射能が降り注ぎ、私たちは被ばく者となりました。大混乱の中で、私たちには様々なことが起こりました。すばやく張り巡らされた安全キャンペーンと不安の狭間で、引き裂かれていく人とのつながり。地域、職場、学校で、家庭の中で、どれだけの人が悩み、悲しんだことでしょう。

 毎日、毎日、否応なく迫られる決断。逃げる、逃げない。食べる、食べない。子どもにマスクをさせる、させない。洗濯物を外に干す、干さない。畑を耕す、耕さない。何かにもの申す、黙る。様々な苦渋の選択がありました。

 そしていま、半年という月日の中で、次第に鮮明になってきたことは、事実は隠されるのだ、国は国民を守らないのだ、事故は未だに終わらないのだ、福島県民は核の実験材料にされるのだ、莫大な放射能のゴミは残るのだ、大きな犠牲の上になお原発を推進しようとする勢力があるのだ、私たちは捨てられたのだ――。私たちは疲れと、やりきれない悲しみに、深いため息をつきます。

 でも口をついてくる言葉は、私たちを馬鹿にするな、私たちの命を奪うな、です。福島県民は今、怒りと悲しみの中から、静かに立ち上がっています。子どもたちを守ろうと、母親、父親、おじいちゃん、おばあちゃんが。自分たちの未来を奪われまいと若い世代が。大量の被爆に晒されながら事故処理に携わる原発従事者を助けようと、労働者たちが。土地を汚された絶望の中から、農民が。放射能による新たな差別と分断を生むまいと、障がいを持った人々が。市民が、国と東電の責任を問い続けています。そして、原発はもういらないと、声を上げています。

 私たちは静かに怒りを燃やす、東北の鬼です。福島県民は、故郷を離れる者も、福島の土地に留まり生きる者も、苦悩と責任と希望を分かち合い、支え合って生きていこうと思っています。私たちとつながってください。私たちのアクションに、注目してください。政府交渉、疎開、裁判、避難、保養、除染、測定、原発と放射能についての学び。そしてどこにでも出かけて、福島を語ります。今日は、遠くニューヨークでスピーチをしている仲間もいます。思いつく限り、あらゆることに取り組んでいます。私たちを助けてください。福島を忘れないでください。

 もう一つ、お話したいことがあります。それは、私たち自身の生き方、暮らし方です。私たちは何気なく差し込むコンセントの向こう側を想像しなければなりません。差別と犠牲の上に成り立っていることに、思いをはせなければなりません。原発は、その向こうにあるのです。

 人類は、地球に生きる、ただ一種類の生き物にすぎません。自らの種族の未来を奪う生き物が、他にいるでしょうか。私は、この地球という美しい星と調和した、まっとうな生き物として生きたいです。ささやかでも、エネルギーを大事に使い、工夫に満ちた、豊かで創造的な暮らしを紡いでいきたいです。どうしたら原発と対極にある新しい世界を作っていけるのか。だれにも明確な答えは分かりません。でき得ることは、誰かが決めたことに従うのではなく、一人一人が、本当に、本当に、本気で、自分の頭で考え、確かに目を見開き、自分ができることを決断し、行動することだと思うのです。一人一人に、その力があることを思い出しましょう。

 私たちは誰でも、変わる勇気を持っています。奪われてきた自信を取り戻しましょう。原発をなお進めようとする力が垂直にそびえる壁ならば、限りなく横に広がりつながり続けていくことが、私たちの力です。たったいま、隣にいる人と、そっと手をつないでみてください。見つめ合い、お互いの辛さを聞きあいましょう。涙と怒りを許しあいましょう。いまつないでいる、その手の温もりを、日本中に、世界中に広げていきましょう。

 私たち一人一人の、背負っていかなければならない荷物が、途方もなく重く、道のりがどんなに過酷であっても、目をそらさずに支えあり、軽やかに、朗らかに、生き延びていきましょう。ありがとうございました。

5mSv以上の区域を除染する場合、土壌猟は2879万立方メートル、東京ドーム3杯分。面積も福島県の17.5%、2419平方キロメートルに上る。

山口県上関町長選で現職の町長が3選。

 中国電力・上関原子力発電所の建設問題を抱える山口県上関町の町長選挙で、原発建設推進派の現職、柏原重海町長が原発建設反対派の山戸貞夫候補を破り3選。

 投票率は過去最低の87.55%、柏原町長1868票、山戸候補905票。

北朝鮮を監視する日本の偵察衛星打ち上げ。

米国務省のキャンベル次官補が、オバマ政権が保有しているF16戦闘機145機の部品など計56億5千万ドル分の武器を台湾に売却する方針を議会に正式通告したと記者会見で明らかにした。これに対し、中国は強く抗議。

9.19「さようなら原発集会」に約6万人が参加

110919_1.jpg9月19日、東京・明治公園を会場に「さようなら原発5万人集会」が開催され、約6万人の人々が参加しました。 集会には、呼びかけ人から内橋克人さん、大江健三郎さん、落合恵子さん、鎌田慧さん、澤地久枝さんが参加し、俳優の山本太郎さん、ドイツの環境団体FoEドイツ代表のフーベルト・ヴァイガーさん、「ハイロアクション福島原発40年実行委員会」の武藤類子さんが発言し、脱原発を訴えました。 集会後は、3コースに分かれてデモ行進に出発しました。1時間程度の集会でしたが、すべての隊列が出発するまでに2時間以上かかるほど大きなデモとなりました。

 

■9・19「さよなら原発 5万人集会」―登壇者の発言要旨

■9・19「さようなら原発5万人集会」テレビや新聞の報道から

■さようなら原発集会・デモ 報道リンク(さようなら原発1000万人アクション)

■【動画】9.19「さようなら原発集会」(さようなら原発1000万人アクション)

■脱原発デモに6万人が参加(Ourplanet-tv)

■9・19「さようなら原発集会」~6万人が参加

■9.19さようなら原発集会・パレード

 

 細野豪志・原子力行政担当相がウィーンで開幕した国際原子力機関(IAEA)年次総会で福島第一原発事故収束の目安となる冷温停止について、「年内を目途に達成すべく取り組む」と決意を述べる。

環境省が東北、関東を中心に16都県の産業廃棄物焼却施設約650ヵ所のうち計110ヵ所をサンプル調査。岩手、福島、千葉三県の計6ヵ所で焼却灰や煤塵から1キログラム当たり8000ベクレルを超すセシウムを検出したと発表。
岩手1ヵ所(2万3千ベクレル)、福島4ヵ所(1万800~14万4200ベクレル)、
千葉1ヵ所(1万1500ベクレル)さらに1千ベクレル超8千ベクレル以下の施設が27ヵ所、100ベクレル以下が33ヵ所と発表。

日本の原発の使用済み核燃料を英国で再処理し、発生した高レベル放射性廃棄物のガラス固化体76本を積んだ輸送船が青森県六ヶ所村に到着。むつ小川原港で陸揚げされ、10キロ離れた貯蔵施設に運搬。市民団体が抗議行動。返還は昨年に続き2回目。英国からは10年で約900本が返還される予定。

 日本地球化学会で中央電力研究所の青山道夫主任研究チームが「海に流れたセシウム137は3500テラベクレル(テラは1兆)」「大気中に放出された後海に落ちた量が1万テラベクレル」と試算。過去の核実験で来た太平洋に残留している量の10数%に当たると報告。

エネルギー政策に関する慎重な議論の下、原発行政の明確な方向性を政府が示すよう求める。

米国のミサイル防衛(MD)施設をルーマニア南部デベセルの旧空軍基地に建設する合意文書に署名。ロシアは非難声明発表。

「核燃サイクル政策をゼロベースで検証するが、立地地域が苦労している現状を踏まえて検討する。使用済み核燃料が大量に存在するという現実を踏まえて方向性を出していきたい」との趣旨を発言していたと、三村知事が語る。

爆発は先週故障した溶融炉から金属片を除去中に発生。仏社会党、ヨーロッパ・エコロジー・緑の党などで脱原発発言強まる。

事故原子炉の安定的な冷却はなお数ヵ月の時間を要する状況とした。6月に続き二度目。

「死の街」発言で経産相が辞任。

 鉢呂吉雄経産相が8日に東京電力・福島第一原発周辺を視察した後、記者団に「残念ながら周辺市町村の市街地は人っ子一人いない死の街だった」述べたことなどで辞任。後任に枝野幸男前官房長官が就任。

 定検中の国内原発30基の内13基(北海道電力・泊1、2号機、東北電力・東通1号機、北陸電力・志賀2号機、関西電力・美浜1、3号機、大飯1、3号機、高浜1号機、四国電力・伊方3号機、九州電力・玄海2号機、川内1号機)で酸化銅の前提となる1次評価始まる。

鹿児島県護憲平和フォーラムが「鹿児島県護憲平和フォーラム情報No.3」を発行しましたのでご覧ください。

 細野豪志・環境相兼原発行政担当相が、共同通信などのインタビューで、野田首相が運転中の原発を廃炉にする際の前提に挙げた原発の寿命について、「電力会社の経営を横目に延ばしてはならず、科学的に判断できる状況を作らなければならない」と語り、新設する原子力安全庁が大きく関わる見通しを示唆。

 イランが核弾頭搭載用のミサイル開発を行なっていることに懸念と強調し、イランに警告。

●「さようなら原発1000万人アクション」へ力を示そう
 政策転換へ! 組織の総力を挙げて

 平和フォーラム・原水禁 事務局長 藤本 泰成

●被爆66周年原水禁世界大会・国際会議 「脱原発」へ熱い討論

●福島から広島、長崎、そして沖縄へ――原水禁世界大会開かれる
 福島原発事故から「核社会」を問う


「さようなら原発1000万人アクション」へ力を示そう
政策転換へ! 組織の総力を挙げて

平和フォーラム・原水禁 事務局長 藤本 泰成

国の犯罪、原子力推進
 8月18日付の毎日新聞では、昨年の新潟県柏崎市、刈羽村で行われた防災訓練で、「地震と原発事故が同時に発生した」との県の想定を、原子力安全・保安院が「原発事故が地震で起きるとの不安や誤解を与える」として、「豪雪と原発事故」へ変更させていたと報道されました。2007年に発生した中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原発は放射能漏れも含めて極めて甚大な事故を起こし、すべての原子炉が停止しました。未だ3基の原発は再稼働できない状況にあります。原発震災が現実のものであると教えた重大な事故でした。そのような現実があったにもかかわらず、県の防災訓練において地震と原発事故を切り離そうとする国の安全行政の姿勢は許されません。
 加えて問題なのは、同じく原子力安全・保安院が、各地でプルサーマル計画推進の賛成意見を引き出す「やらせ依頼」をしていたということです。原子力政策は、国民の中で賛否が分かれています。それを、規制の側から推進の結論を導く役目を買って出るということは、まさに犯罪です。

地方自治体も住民の声を聞かない
 さらに絶望的なのは、地域住民の安全を守るはずの地方自治体も、古川康佐賀県知事の疑惑にあるとおり、同様のやらせに手を貸していたということです。北海道電力泊原発は東日本大震災以降、調整運転を続けてきました。8月17日、福島第一原発事故の原因究明の結論を見ない上に、泊原発に近い黒松内低地断層帯や沖合海底の活断層に新しい知見が見られている中で、原子力安全・保安院から言われるままに、高橋はるみ北海道知事は、営業運転再開を容認する立場を明確にしました。
 古川知事も、高橋知事も電力会社からの献金を受け取っている立場です。国の言いなりでしかない、電力会社の立場にしか立たない地方自治とはいったい何なのでしょうか。地方分権、地方主権という声は、全く実態のない絵空事です。国から地方へ、政治は全く住民の声に耳を貸さず、福島の現実を見ようともしていません。
 8月17日に、福島の子どもたちが国へ思いをぶつける集会が衆議院第一議員会館で開かれました。外に出ることもできず、友だちと別れて転校を余儀なくされた子どもたちの声を、行政はどのような思いで聞いたのでしょうか。

生活者が主人公の新しい社会へ
 今年の原水禁世界大会は、フクシマからヒロシマ・ナガサキを経て、オキナワまでをつないで開催されました。戦争や基地、原発という、合意なき国策によって多くの命が犠牲となってきた政治の、そして社会のあり方を見つめ直し、一人ひとりの命に寄り添う政治、社会をつくろうではないかと提起してきました。脱原発はそれだけにとどまりません。私たち生活者が主人公の、新しい社会のあり方が、そこから見えてくるのです。
 そのためにも9月19日、「さようなら原発全国集会」を圧倒的な力で成功させようではありませんか。明治公園をいっぱいにしようではありませんか。そして、「さようなら原発1000万人署名」をやり遂げようではありませんか。
 日本に住む私たちは、「我慢」と「自己犠牲」によって戦後の復興を勝ち取りました。そして、東日本大震災からも必ずや立ち上がるに違いありません。しかし、それでは政治の、社会のあり方を変えることはできません。私たちは、腹の底に貯めてきた「我慢」のエネルギーを、爆発させなくてはなりません。平和フォーラム・原水禁の組織をあげて、圧倒的な力を示そうではありませんか。

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福島県民集会には雨の中、約1,700人が参加(福島市・7月31日)


被爆66周年原水禁世界大会・国際会議
「脱原発」へ熱い討論

 今年の原水禁世界大会・国際会議は8月5日、広島市のYMCA国際文化ホールを会場に約160人を集めて開催されました。
 今年の特徴は、3月11日に発生した東京電力・福島第一原発の事故を受け、「脱原発法」を制定したドイツの運動と一層連携を密にするとともに、事故後も原発輸出を実現しようとしている日本、そして韓国の動きを止めさせ、原発輸出の対象となっているアジアの人々による運動と連帯すること。さらに、脱原発の運動を世界に広げることを大きな目標として掲げたことです。
 このため国際会議の主催も「原水禁世界大会実行委員会」と「ノーニュークス・アジアフォーラム」、「日韓反核市民社会フォーラム」の3団体主催となり、アジア各国の反原発活動家も多数参加する会合となりました。また、これまで核兵器廃絶での共同行動をとってきた世界最大の原発大国・アメリカからも、反原発の活動家が参加しました。

110901n_2.JPG長時間にもかかわらず充実した討論が展開(8月5日・広島市)

収束の見えない福島第一原発事故を語る
 国際会議の「キーノート・スピーチ」(原水禁HP参照)を、藤本泰成・原水禁大会事務局長が行った後、福島第一原発事故についての報告が行われました。
 まず、福島県平和フォーラム事務局長の原利正さんが、福島第一原発事故後の県民の状況、とくに子どもたちの被曝線量が、政府によって年間1ミリシーベルトとするこれまでの基準が確約されていない不安を語りました。続いて、原子力資料情報室の上澤千尋さんから、福島第一原発事故の状況がいかに凄まじいものであったかについて話がありました。さらに上澤さんから、収束の見通しも立たない現状についても報告があり、医師でヒバク反対キャンペーンの振津かつみさんが、チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故での放射能汚染を比較しながら、汚染の深刻さを語り、改めて子どもの年間被曝線量1ミリシーベルトを守ることの必要性が訴えられました。
 この後、韓国・参与連帯のパク・チャンウンさん、米・ピースアクションのニューヨーク州事務局長のアリシア・ゴッズバーグさんらが、福島第一原発事故がどれほど衝撃的であったか、福島や周辺の人々のことを心配するとともに、韓国や米国での反原発運動について語りました。

欧米やアジア各国で進む運動
 第2部では、深刻な福島第一原発事故の収束も見られない中で、日本や韓国が原発を海外、とくにアジアへ輸出しようとしていることの問題を、原子力資料情報室・共同代表の伴英幸さんと、韓国のエネルギー正義・行動からイ・ホンソクさんが訴えました。第1部、第2部ともアジア各国から参加した人たちからの質問も多く、活発な討論となりました。
 午後からは「脱原発に向けて」というテーマで、日本から原子力資料情報室・共同代表の西尾漠さん、台湾から環境保護連盟元会長のリン・ビーヤオさん、ドイツ緑の党副代表で連邦議会議員のベーベル・ヘーンさん、そして先述のアリシア・ゴッズバーグさんがそれぞれ訴えました。
 ヘーンさんは、「ドイツでは2002年に原子力法を改正して、2001年から23年にかけて全ての原発の運転停止を決定していました。しかし、09年の総選挙で勝利した保守連立政権が10年12月に原子力法を改正し、脱原発期限をそれぞれ12年間延長したのですが、福島第一原発事故を受け、ドイツ連邦議会は再び2022年までに全原発の運転停止を決定しました。この再改正には国民の行動が政府に大きな影響を与えました」と語りました。
 ゴッズバーグさんは、「ピースアクションは核軍縮を運動の柱としていたが、今後は脱原発運動も積極的に進める。まず、自分の住んでいるニューヨークの『インディアンポイント原発』の廃炉の運動に取り組む」と語りました。
 なお、国際会議の進行役は原子力資料情報室の澤井正子さん、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の竹村英明さんが務めました。報告も討論も充実したものでした。ぜひ、これから発行される記録集を読んでください。


福島から広島、長崎、そして沖縄へ――原水禁世界大会開かれる
福島原発事故から「核社会」を問う

「被爆66周年原水爆禁止世界大会」は、3月11日の東京電力・福島第一原発事故を受け、初めて福島市で大会をスタートし、広島、長崎、そして沖縄へとつなげていきました。
 福島第一原発事故は、原子力開発史上最悪の事故として国内外に大きな衝撃を与え、ドイツやスイス、イタリアなどの国々が脱原発政策を選択しました。今回の事故は21世紀を画する世界的・歴史的な出来事であると捉え、核の軍事利用も商業利用も含め、それを支える「核社会」そのもののあり方を問う大会としました。
 さらに、沖縄大会を含めることによって基地も原発も合意なき「国策」の結果、「命」が軽視され、そこに暮らす人々に大きな負担を強いていることを訴えました。弱い立場にある地域や、そこで暮らす人々の負担の上に、「繁栄」が築かれてきたことなど、これまで私たちの社会が抱えてきた「核」や「基地」に対する問題を提起しました。

110901n_3.JPG会場いっぱいの850人が参加した福島大会(7月31日)

被災地福島から脱原発をめざす
「福島から声を上げ、大きな行動に結びつけていこう!」――「被爆66周年原水爆禁止世界大会」は、7月31日に福島市で開催されました。大会に先立ち、市内では県民集会が行われ、約1,700人の参加者が「原発はいらない」「放射能のない福島を返せ」と訴え、原水禁福島大会に合流しました。大会には県内外から約850人が参加し、「フクシマ」をスタートに、脱原発の実現をめざすことを確認しました。
 主催者を代表し、川野浩一大会実行委員長(原水禁議長)は「私たちはこれまで『核と人類は共存できない』と、原発にも反対して長く運動をしてきたが、今日の事態を招いたのは、その力が及ばなかったからで、残念でならない」とし、「広島・長崎の被爆者は66年間闘ってきたが、それがこの福島でも始まる。ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ、そして『ノーモア・フクシマ』の声をあげていこう」と呼びかけました。
 地元の福島県実行委員長の竹中柳一さん(福島県平和フォーラム代表)は、「原発から40㎞も離れた飯舘村では食べ物を生産できない大地が広がっている。これ以上、ヒバクのある世界をつくってはならない」と訴えました。さらに双葉地方原発反対同盟の石丸小四郎さんからは、「県民は病み苦しんでいる。学校の校庭では高い線量の放射能があり、子どもたち達に押しつけている。農業者などの自殺者も増加している」と、切実な実態を語りました。
 ルポライターの鎌田慧さんからは、「どうして福島に東京電力の原発がつくられたのか。中央が東北へ押しつけたからだ。これまで原発が作られたところは、反対運動が負けてきたところだ。原発は巨大な利権でできている。しかし、その危険性と、何万年もかかる廃棄物処理を考えると、コストは膨大だ。もう世界は脱原発に転換している。私や大江健三郎さんなどが呼びかけている『さようなら原発1000万人アクション』の署名や9月19日に東京で開催される全国集会に参加してほしい」と呼びかけました。

「核兵器」「ヒバクシャ」も討議された広島と長崎
 広島大会は8月4日~6日、長崎大会は8月7日~9日にかけて行われ、国際会議は8月5日、広島で開催されました。それぞれ参加者は、約6,800人(平和ヒロシマ大会)、約4,500人(平和ナガサキ大会)、約160人(国際会議)でした。大会では「脱原発」、「核兵器廃絶」、「ヒバクシャ援護・連帯」の三つの柱で分科会やひろば、フィールドワークが取り組まれました。
「脱原発」課題では、福島第一原発事故の現地の現状について、地元福島の関係者から多くの分科会で報告がなされ、今も放射能に曝され、故郷を奪われた人たちの苦しみが語られました。その上で今後の運動課題として、とくに脱原発に向けた、日本のエネルギー政策について議論を深めました。再生可能エネルギーの拡大に向けた展開について、「日本は水力、バイオマス、地熱など豊富な自然エネルギーを持っている」(藤井石根・明治大学名誉教授)ことなどが指摘されました。
「核兵器廃絶」の課題では、昨年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議以降の動き、それに対する日本政府の姿勢とともに、東北アジアの平和と安全保障の問題を取り上げ、議論を深めました。先のNPT再検討会議で確認された中東非核化会議の開催(2012年)が中東の政変で危ぶまれていること、米ロの核兵器削減条約(新START)以外に進まぬ核保有国の核軍縮の足踏み状態を是正させるために、日本政府への働きかけや国際的な連帯行動の重要性が指摘されました。
 日本をめぐる状況では、米軍再編や、「新防衛計画大綱」による中国や北朝鮮への「軍事的脅威」をつくることによる緊張政策に対し、どう対抗していくべきか議論されました。また、沖縄の基地の闘い(普天間基地移設、高江ヘリパッド建設、辺野古新基地建設など)に学び、連帯することが確認されました。その上で、日本の核の傘からの離脱、東北アジア非核地帯構想の実現に向けた提起がなされました。
「ヒバクシャ」の課題でも、福島原発事故による大量の放射能の放出による被曝が大きな問題として、討論が行われました。事故の収束のめども立たない中で、常に放射能に曝される現地の苦しみは、「二度とヒバクシャをつくらない」として運動を進めてきた私たちに重い課題を残しています。避難や除染、そして補償などさまざまな課題が事故をめぐって出されました。子どもたちの「命」や「未来」をどのように守るのか、私たちに問われました。
 さらに、原爆による被爆者が高齢化する中で、残された課題が山積していることも確認されました。行政区域の違いによって切り捨てられた長崎の「被爆体験者」や、援護法の平等の適用から排除されている「在外被爆者」、援護法からも除外されている「被爆二世・三世」などの課題解決が求められることが報告されました。また、今年はチェルノブイリ原発事故から25年目に当たり、現地からゲストを招き、現在のチェルノブイリ周辺の状況や自身の経験が語られました。

原発輸出やエネルギー政策を討論・国際会議
 国際会議は、「ノーニュークス・アジアフォーラム」と「日韓反核市民社会フォーラム」との共催で行われ、アジアを中心に韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、タイ、インド、イラク、ドイツ、アメリカなどから多彩な顔ぶれが参加しました。会議は、「福島原発事故を考える」「原発の海外輸出を考える」「エネルギー政策の転換にむけて」の三つのセッションに分けて報告と討論がなされました。福島原発事故を受けて、海外代表の間では「安全な原発はないこと。核の平和利用というものがどれほど反平和的であるかがわかった」(韓国・参与連帯)などの発言に代表されるような認識が共通していました。

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国際会議で福島の現状を報告する原利正・福島県平和フォーラム事務局長(広島市・8月5日)

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長崎大会のまとめ集会の様子(長崎市・8月9日)

原発も基地も押し付けられた国策・沖縄大会
 8月11日、原水禁世界大会の最後となる沖縄大会が宜野湾市内で、約320人が参加して開催されました。講師を務めた元琉球新報論説委員長で沖縄国際大学教授の前泊博盛さんは、原発の推進と、沖縄での基地の問題は、「命の危険を地域に押し付けて、国策の名の下に政策が進められる点では同じ」とした上で、これまで地域社会の発展が、基地経済や原発経済に依存して進められてきたことを指摘しました。しかし沖縄では、基地経済が果たしてきた経済効果の実態は、言われているよりも小さく、基地経済からの脱却が必要であるとも語りました。
 今、あらためて「脱基地」、「脱原発」が求められていることを確認し、福島からスタートした原水禁世界大会を閉幕しました。

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