2011年5月アーカイブ
アフガニスタンのカルザイ大統領が28日に国際治安支援部隊(ISAF)の誤爆で子どもら14人が死亡した問題で、ISAFや米国に対する最後の警告だとして、市民が犠牲になるような空爆を止めるよう求める
5月27日18時から、東京都千代田区の日比谷公園野外音楽堂で、「福島の子どもたちを放射能から守ろう! 原発も再処理もいらない! 5・27集会」が行われました。主催は、「原発とめよう!東京ネットワーク」と、「再処理止めたい!首都圏市民のつどい」の2つのネットワークです。3月11日の東日本大地震と福島第一原発事故以来、初めての平日夜間の集会となりましたが、個人参加の方、市民運動団体、労働組合など約1500人の人々が参加しました。
東京電力が3月11日に福島第1原発への海水注入について、首相判断の遅れで中断されたとされ、自民党が国会で菅直人首相を追及したが、東電は海水注入を中断しておらず、情報把握の不十分さ、隠蔽体質一層浮き彫りになる。
核燃料サイクル路線の放棄と「人・物・金」すべての力を福島へ
福島第一原発の事態収拾にむけて全力を
出口の見えない福島原発事故
3月11日に発生した東日本大地震によって、福島第一原発では世界の原子力史上最悪の事態が発生しました。現在1号機では炉心溶融が起こり、原子炉圧力容器底部に核燃料の大半が溶融し、落下して溜まっていることが発表されています。2号機、3号機も同じように、地震発生後の早い段階で炉心溶融が起こったこととされています。そのことは、早い段階で東京電力などでは認識されていたようです。
現在1号機では、落下した核燃料は水没し、一部は露出していると推定されています。「今後、大規模な放射性物質の放出につながるような事象の進展はない」としていますが、あくまで推定した中での希望的観測でしかありません。事態はいまも厳しい状態であることには変わりません。この炉心溶融に事態を受けて、これまでの事態収束に向けた工程表(ロードマップ)も大幅に見直さざるをえなくなりましたが、なぜか収束期間の変更はなされないまま、来年1月頃の冷温停止状態(ステップ2)の目標を掲げています。
しかし、毎日報道される福島原発の状況を見るたびに、工程表はあくまで努力目標であって、国民に期待感をもたらすだけで、実際の現場での作業との間での乖離が著しいように思われます。六ヶ所再処理工場の完工時期について18回も延期された例(それでも今も完成していない!)を見るまでもなく、これまでの原子力関連の工程がまともに進んだ試しがありません。妙な期待感を抱かせるだけで、国民の期待を裏切る結果が待っており、ますます原子力に対する信頼感を悪化させるだけです。あらためて政府や東電は事態の深刻さを国民に丁寧に説明すべきです。
深刻さを増す収束作業―増加する汚染水
炉心溶融という事態を迎え、1号機で予定していた「水棺」作業は中止となり、新たな対応が迫られています。圧力容器内の溶融した核燃料に対して引き続き冷却水注入をしなければなりませんが、大量に発生している放射能に汚染された水の問題が大きくクローズアップされています。汚染した滞留水は増加傾向にあり、処理施設の建設が早急に求められています。
それから、汚染した水を循環させて原子炉を冷却させようとする「循環注水冷却」の早期確立が求められていますが、それらの作業は順調にはすすんでいません。汚染水の増加と地下水への汚染拡大が心配されています。さらに、海洋への汚染も懸念されています。拡大する汚染水の問題の解決は後手後手に回っています。
深刻さを増す収集作業―労働者の問題
それらの作業をする作業員についても大きな問題が山積しています。直接原子炉の内容を知る作業員は限られています。その方たちは、この間の事故処理で活躍されていますが、被曝線量が増え続けています。事故処理は長期戦になります。年間の作業者の被曝線量を50ミリシーベルトから100ミリシーベルトに引き上げましたが、それでも作業員の線量は蓄積され、限度を越えていく人たちが多くなっています。限度を超えれば仕事に従事できなくなり、一番心配されるのは現場で指揮できる人たちがいなくなることです。高放射線の中での作業は、短時間でしかなく、十分な作業を確保できるかどうかも心配です。
さらに、健康問題も心配されます。これから夏を迎え、ますます高温多湿の中での作業は、多大な心身の消耗を招き、見えない放射能の恐怖とも戦わなければならず、労働者に多大な負担をかけるものです。また、労働者がよりよい仕事を遂行してもらうためにも、労働環境をよりよいものにすべきところ、いまだ食事やトイレ、風呂、睡眠といった基本的な労働環境の整備すら大きく遅れています。現場での放射能だけでなく、劣悪な労働環境の問題も早急に解決することを私たちは強く求めます。
労働環境だけでなく、いま現場で働いている人々の多くは下請け労働者です。2次下請け、3次・・・6次、7次の労働者が現場に入っています。このような事態になってもまだピンハネが行われ、低賃金で被曝労働を行うことが要求させられる人がいるのです。被曝線量一杯に働かされ、線量を超えたら使い捨てされる方がいることを忘れてはなりません。彼らの人としての権利、労働者としての権利を守ることが重要です。被曝後の健康管理や就業保障など、国や東電がしっかり最後まで面倒をみることを強く求めます。彼らがいなければ、事態の収束はありません。だからこそ万全の態勢で臨んで欲しいと思います。
深刻さを増す作業環境
夏を迎え、暑さや台風といったことも心配です。暑さは、さらに労働者に大きな負担を背負わせますが、台風は、放射能の拡散や汚染水の増加に拍車をかけます。汚染ガレキの撤去もままならない中で、台風の到来は、放射能を広範囲にまき散らします。夏から秋にかけての農産物への被害の拡大、海洋への汚染水の流出などによる漁業などへの打撃が心配されます。さらに20~30キロ圏外への汚染の拡大など食環境や住環境に大きな被害を発生することが考えられます。早期に対策を立てることが重要です。
すべての力を福島へ
上記のほかにも、原発の再臨界や水素爆発など多くの問題を抱えています。それらを踏まえ、いま福島の事態の収束に全力を挙げることです。六ヶ所再処理工場や高速増殖炉もんじゅなど、いまでも原子力開発に多額な費用が投入されています。もんじゅはいまも維持費に1日5500万円もの税金が投入されています。
今回の事故で、猛毒物質であるプルトニウムを使う核燃料サイクル計画が破たんしたものであることが、より鮮明になりました。破たんしたものに、これ以上資金の投入はムダでしかありません。いま必要なことは、福島原発事故の収束に向けて、あらゆる原子力予算を福島原発に投入することです。福島に「人・物・金」のすべてを投入し、国難といえるこの原発事故を乗り越えることが急務となっています。先のない原子力開発にこれ以上を関わることではなく、緊急事態の福島原発事故の収束に全力をあげることです。私たちはあらためて、政府や東電、そしてその他の電気事業者にそのことを特に強く求めるものです。
核燃料サイクル―見直しは当然!
5月16日、菅直人首相は、衆院予算委員会で、原発にとどまっている使用済み核燃料の保管や取り扱いに関し、「サイクルに乗る形が取れていないことも含めて検討しなければならない」と述べました。菅首相の「核燃料サイクル見直し」は、国会や地元、電力業者などに波紋を投げかけ、地元の関係者は、「『見直し』とはどういう意味か」と戸惑いを隠せずにいる、との報道がなされました。
しかし、冷静に考えれば、福島原発の事態を見れば、どこにいま核燃料サイクルを推進する声が上がっているのでしょうか。浜岡原発も全号機停止となり、新規原発予定地の上関原発(山口県)も県知事が埋め立て認可を白紙にすると発言、危険なMOX燃料を使う大間原発(青森県)も、東日本大震災後に本体工事が中断し工事再開について「もうしばらく時間がかかる」として現時点で見通しが立っていないことが明らかになっています。全体的に原発の新増設にブレーキがかかり、既存の原発でも耐震見直しなど全体的に原発そのものあり方について見直されようとする中で、核燃料サイクルの実施はあまりにも説得力に欠けるものです。白紙・見直しは当然で、冷静な議論が必要です。
資源小国という「ドグマ」に、あまりにも縛られてきた私たちは、福島の事態を見ればわかりますが、原発や原子力施設には「絶対安全」が求められています。過酷事故は絶対起こしてはならないのです。しかし「安全神話」が崩壊したいま、「絶対」などありえません。特にプルトニウムを大量に抱える六ヶ所再処理工場は、どんな事故でも起こしてはいけないのです。しかし、神でない人間の技術に「絶対」はありません。いま英断が求められています。
ソフトバンクの孫正義社長と神奈川など14道府県知事らが東京都内で記者会見し、休耕田や耕作放棄地などを利用した大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を進める「自然エネルギー協議会」設立を発表。同協議会への参加は北海道、秋田、埼玉、神奈川、福井、山梨、長野、静岡、愛知、三重、岡山、広島、香川、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎。
国際原子力機関(IAEA)が2007年の専門家による訪日調査で日本の原子力安全規制は責任分担が不明瞭として、原子力安全委員会と原子力安全・保安院の「役割を明確化すべきだ」と日本政府に勧告していたことが明らかに。
1967年、茨城県利根町で発生した強盗殺人事件「布川事件」で、無期懲役が確定、服役して1996年に仮釈放された男性2人に、水戸地裁が無罪判決。2009年に再審が開始されていた。
福井県の西川一誠知事が、高経年化原発の運転再開は福島第1原発事故の知見を反映させた新たな安全基準を国が明示し、それを電力会社がクリアすることがなければ認められないと語る。
オバマ米大統領は、中東政策に関する演説で、イスラエルとパレスチナの共存のため、イスラエルが占領地を拡大した1967年の、第3次中東戦争前の境界線に基づくべきだと明言。イスラエルの占領地撤退が必要との考えを示す。
大量の汚染水を浄化後、原子炉で再利用する循環冷却の方式で取り組むことを盛り込んだ、新・行程表を発表。
国連安保理・北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが作成した最終報告書で、北朝鮮のウラン濃縮施設が低濃縮から軍事利用が可能な高濃縮用に比較的短期間で容易に転換可能であると深刻な懸念を示していることが明らかに。
Ⅰ 概要
2011年3月11日の東日本大震災の地震と津波によって生じた福島第一原発などの原発震災を受け、川内原発増設反対鹿児島県共闘会議が3月25日に九州電力の眞部利應社長に申し入れたことへの回答が以下のとおりおこなわれました。
文責は、 川内原発増設反対鹿児島県共闘会議にあります。
(1)と き 2011年5月16日(月)10時~11時10分
(2)ところ 鹿児島市・九州電力鹿児島支店
(3)要請団:川内原発増設反対鹿児島県共闘会議……荒川譲議長、南徹郎社民党県連合代表、北森孝男社民党県連合幹事長・鹿児島市議、福司山宣介県議会議員、山崎博事務局長、牟田実事務局次長、吉海祐作社民党県連合、三園敏則川内原発建設反対連絡協議会代表世話人、佃昌樹薩摩川内市議
(4)回答者:九州電力鹿児島支店……尾形聖一広報グループ長、中山正輝広報グループ副長、桑木課長
Ⅱ 回答要旨
1 東日本大震災による福島第一原子力発電所などの損壊要因(地震、津波、もしくは複合要因など)と実態の解明を踏まえたうえで、川内原子力発電所1・2号機及び3号機の安全確保策について、数値を含めた詳細な情報を、特に以下の5項目について明らかにすること。
(1)川内原発の原子炉格納施設(原子炉建屋)の多重防護策[①止める(自動緊急停止装置)、②冷やす(非常用炉心冷却装置(ECCS):蓄圧注入系タンク3基・高圧注入系ポンプ3台・低圧注入系ポンプ2台、化学体積制御設備、余熱除去設備、原子炉補機冷却水設備、アニュラス空気再循環設備、原子炉格納容器スプレイ設備など)、③閉じ込める(五重の壁―燃料ペレット・燃料被覆管・原子炉圧力容器・原子炉格納容器・原子炉建屋)]及び原子炉補助建屋、燃料取扱建屋、タービン建屋などの多重防護策。
【九電】福島の状況が日々新しいことが分かっているので、今後、回答内容が変わることもあることについては理解していただきたい。
原発の安全性確保を目的に、異常の発生や拡大、事故発生の防止、周辺環境への放射性物質の放出防止をおこなうために、原子炉格納容器・原子炉建屋が閉じ込める役割を担い、原子炉周辺建屋や原子炉補助建屋、燃料取扱建屋、タービン建屋などは重要な機器を設置するための建屋で閉じ込める役割を果たしていません。
質問≫原子炉格納容器・原子炉建屋以外の建屋は閉じ込める機能を持っていないということですね。
注:川内原発の使用済み燃料プールが設置されている燃料取扱い建屋には閉じ込める機能がない。
福島第一原発の使用済み燃料プールは閉じ込める機能を有する原子炉建屋内に設置。
【九電】そうです。
(2)使用済み燃料プール[燃料取扱建屋1階~地下2階、全炉心燃料の1,190%相当分の貯蔵能力]の貯蔵可能燃料本数と貯蔵本数、電源喪失時の冷却システム[ホウ酸水補給設備、使用済燃料ピット水浄化冷却設備]。
【九電】川内1号機は1,868本の貯蔵能力があり2011年2月末現在1,084本貯蔵し、2号機は1,356本の貯蔵能力で774本貯蔵している。冷却システムは全交流電源及び海水冷却機能が喪失した場合、ピット水の温度が上昇し蒸発するが、タンクと使用済み燃料の水頭差により冷却可能となる。高さの違いということ。
質問≫タンクとは?
【九電】屋外の地表面に設置している燃料取替用水タンクなど。
質問≫地震や津波があっても屋外のタンクは大丈夫で、破損しないという根拠は?
【九電】タンクの周りに、頂上部近くまでの高さの防護壁を作ることにしている。タンクの高さは今後検討します。
また、使用済み燃料ピットへ所内の様々の水源や宮山池(展示館横)からの水を送り込むため、仮設ポンプを配備するなどの対策をおこなっている。
(3)非常用電源設備(受電系統500kV2回線・220kV1回線、ディーゼル発電機2台、蓄電池2組)の電源喪失時の電源確保策(蒸気利用のポンプ駆動による原子炉の熱除去システム・300~500KW電源車2台)。
九電】全交流電源喪失時の緊急安全対策として、一次系設備を冷却する際に必要な中央制御室の監視系などに電気を供給する500KVAの高圧発電機車を配備した。
〈注:九電は、海水を利用して原子炉や使用済み燃料プールを冷却するためのポンプなどの電源を確保するために大容量発電機車を平成24年度初めまでに配備する計画を明らかにしている。〉
(4)津波による海面の上昇・低下対策。
【九電】最新の知見による津波影響調査をおこない、津波の予想最高水位は海抜3.7㍍だが、原子炉建屋などの主要設備が設置されている敷地高さは13.0㍍なので津波による被害を受ける恐れはない。津波による水位の低下は、最低水位になっても原子炉の冷却に必要な海水の取水に問題は生じず、原子炉の安全性に影響はない。
質問≫バックチェックをおこなった際の評価を変えていないということですね。
【九電】現在の評価であって、福島で新しい知見が明らかになれば必要な対策を行っていく。
質問≫現時点では変える必要がないというのが九電の認識か?
【九電】現在おこなっている津波による全交流電源喪失に対応した緊急安全対策をしていけば原発の安全性は確保され、福島のような事態にはならない。
質問≫福島第一原発のバックチェックの津波の上昇・下降の想定水位は?
【九電】バックチェックの数字ではないが、設計時は5.7㍍と想定。
質問≫九電は、3.7㍍の想定津波に対応する地震の強さは6.9という回答をしていた。地震の規模想定は見直さないのか?
【九電】長崎半島の先の長崎開脚断層でマグニチュード8.1の地震が起こった時に川内原発に最も高い津波が来ると想定している。津波に係る対策について答えている。
注:九電の川内原発耐震安全性評価結果報告書(2008年12月22日)の津波に対する安全性評価では、上昇側水位3.7㍍で敷地高さ13.0㍍、下降側水位-3.7㍍で取水口敷高-6.0㍍とし、「良」と評価している。
なお、東日本大震災での福島第一原発の津波の高さは14~15㍍、震度は6強、最大加速度値は550ガル。(東京電力「東日本大震災における原子力発電所の影響と現在の状況について」)
(5)格納容器の蒸気外部放出(ベント)など原発敷地外への液体・気体放出放射能量。
【九電】放出される放射能の量は事故の要因などによって変わる。事故の想定ができないので回答できない。
質問≫今回の福島第一原発事故と同じ想定をした場合を聞いている。
【九電】福島第一原発の事故状況もまだ分かっていないことが多く、回答できない。
(6)モニタリングステーション(県1、九電2)及びモニタリングポスト(県21、九電5)、放水口ポストなどの地震・津波対策。
【九電】地震や津波の対策は行なわれていない。不具合が生じたら修理し取り替える。
質問≫SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を直ちに機能させるために万全の地震・津波対策が必要では。地震・津波対策の必要がないということか。
【九電】現時点の回答。
注:ERSS(緊急時対策支援システム)やSPEEDIの基礎データとなるモニタリングポストからの放射線データが提供されなければ精度が落ちる。福島第一原発事故では8箇所のモニタリングポストが地震と津波でほぼ壊滅状況に陥った。
2 東北地方太平洋沖地震と同規模の地震が川内原発周辺で同じ日時に起こったと想定した際の川内原発1・2号機及び3号機(完成後・稼働中想定)の被害シミュレーションをおこない、その結果を直ちに県民に公開するとともに改善すべき課題を明らかにすること。
2項と3項、4項の前段を一括して回答
【九電】地震は地域により発生様式、規模などが異なり、地震に伴い発生する津波についても震源の深さや海底の地形による地域差がある。耐震安全評価で、津波は最大3.7m(東京湾標準を基準に)としており、敷地高さが13mなので津波は到達しないと評価している。
ただし福島第一原発事故の詳細がわかっていないため、今後原因が明らかになれば、適切にとりくみを進める。
質問≫満潮時や引き潮時でも3.7mなのか
【九電】大潮満潮時で3.7m。そうでない場合はもっと低い高さだと評価している。引き潮の場合も同じように最大時でも-3.7mと評価している。
3 貴社は、発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(新指針)の改定に伴い2008年12月に「川内原子力発電所1・2号機の耐震安全性評価結果報告書」を経済産業省へ提出しましたが、「津波に対する安全性評価」で「川内原発周辺海域において想定される地震に伴う津波の数値シミュレーションを実施した結果、その中で最も大きい津波を想定しても、敷地高さを上回ることがなく、安全性に問題がないことを確認しました。また、津波により水位が低下した場合についても、原子炉補機冷却海水設備へ取水ができ、安全性に問題がないことを確認しました。」とし、別表(上昇側水位は東京湾平均海面の+3.7m程度に対し敷地高さ+13.0m、下降側水位-3.7mに対し取水口敷高-6.0m)を示しています。
福島第一原発の津波に係る耐震安全性評価結果と今回の震災による津波の実態を明らかにし、川内原発の「評価」について見直すこと。
なお、耐震安全性に係る指針の見直しを国に要請すること。
〈2項の回答参照〉
4 九州電力は、3月18日の薩摩川内市での住民説明会で、「川内原発は海抜13mの高台にあり津波は及ばない」、「電源を喪失しても蒸気を駆動源に炉心を冷却できる」、「使用済み核燃料は原子炉建屋とは別の建物で地下に貯蔵しているので福島のようなことは起こりえない」と回答したと報じられているが、その根拠を明らかにすること。
【九電】全交流電源喪失時に蒸気を駆動源にして動くタービン動の給水ポンプを用いて蒸気発生器の給水をおこない、蒸気発生器において一次冷却材との熱交換の結果、発生した蒸気を放出することにより蒸気発生器を介して原子炉の冷却をおこなう。
使用済み燃料ピットの冷却水の補給は、発電所の敷地の高さに設置されたタンクからおこなう。使用済み燃料ピットはその高さよりも低く設置されているので、水の輸送はポンプなどの原動機によらず、タンクの水面とピットの水面との水位差により補給が可能となっている。
質問≫同じような設備が福島にあったがうまく機能しなかった。川内の場合は機能する理由は何か?
【九電】福島は、最終的にはサスペッション(圧力抑制)プールの水を使って冷却をする。100℃を超えると冷却できなくなる。(川内の場合は)加圧水型のタービン動補助給水ポンプの機能を使えば、一次系の高温高圧水を二次系で冷却できるため、二次側から蒸気発生器へ水の給水が確保されれば、蒸気発生器を通じた放射性物質を含んでいない水を使っての長期にわたる冷却が可能。
質問≫大地震でも蒸気発生器や配管などが破断せずに機能していることを前提にしている。損傷すると一次系も二次系もなくなり、福島の二の舞ではないか。
【九電】地震の影響についてはマグニチュード6.8とか6.9とかで評価している。
福島(の沸騰水型)は原子炉で発生した蒸気でタービンを動かし、蒸気を冷却した水は外に出さずに原子炉に戻さないといけない。また、正式に発表されたことではないが福島で決定的だったことは、バッテリーの電源がなくなったため原子炉の水位や圧力が監視出来なくなったとか、冷却に使うタンクの水がなくなったとか様々な要因が報じられている。
(川内の加圧水型は)蒸気発生器に冷たい水を送り、蒸気発生器で発生する放射能を含まない蒸気を主蒸気逃し弁から放出し原子炉を冷やす。
質問≫(川内の)加圧水型の短所は何か?
【九電】(福島の)沸騰水型にはない、蒸気発生器の中の細管に傷が生じることがアキレス腱だといわれている。
質問≫福島の使用済み燃料ピットは原子炉建屋内にある。川内は防護機能のない燃料建屋にある。福島のほうが安全なのではないか?
【九電】川内は使用済み燃料の冷却水の補給が自然の水位差でできる。福島は高いところにあるので注水に苦労したと聞いている。
5 3月18日の「地震に対する対応状況」にとどまらず、川内原発1・2号機の安全性確保策構築に全力をあげるとともに、3号機増設を断念し、増設に係る作業を直ちに停止すること。
さらに、電気事業者としてエネルギーの低消費化と自然エネルギーの利用拡大を進め、脱原発・脱化石燃料を進めるエネルギー政策に転換するよう国に求めること。
【九電】 原発は、燃料調達の長期安定性、運転時にCO2を排出しない、経済性など総合的に優れているので、安全安定運転を最優先に電源の中核としてその重要性は変わっていない。川内3号機の本格的な安全審査がこれから実施される予定であり、今回の事故原因などを踏まえた審査が行なわれると考えている。国の安全審査指針類の見直しが行なわれれば、それを取り入れた設計変更をおこなっていく。川内1・2号機は緊急安全対策を講じている。
質問≫原子力安全基盤機構が平成22年12月と平成19年4月にだした、地震に係る確率論的安全評価手法の改良に関する報告書を踏まえた対応をしているか?
【九電】報告書を知らない。
質問≫九電はこれまで津波対策だけしかしていない。耐震問題には手をつけていない。
【九電】独自で外部点検や復旧訓練などをしてきた。
質問≫東電も従来の指針に基づいてやってきた。しかし現実にはもろくも崩れ、現行安全指針が間違っていたことが明らかになった。国からいわれた対応策だけにとどまっていては東京電力の二の舞になるのではないか。
【九電】耐震設計などは基準や指針が見直されないと動けない。しかし、我々も国が指針を出す前でも電源車の配備や訓練など対応してきた。緊急安全対策を実施することにより、原発を安全に止める、冷やす、閉じ込めることはできると評価している。
質問≫これだけ大きなリスクを抱えている原発から撤退し、安心・安全な新たなエネルギーに転換するべきではないか。
【九電】今回の件を教訓に、原発をより安全なものにしていく。地元のみなさんのご理解を得ながら、今の段階では原発は引き続き推進していく。
オバマ大統領が和平交渉の前提として、1967年の第3次中東和平の占領地からの撤退を求めたが、ネタニヤフ首相は拒否。
東京電力が地震から約5時間後に燃料の損傷が始まり、16時間後の12日午前6時50分頃には大部分の燃料が圧力容器の底に溶け落ちていたとの暫定評価を発表。
細野豪志首相補佐官が1号機の冠水冷却は断念と表明。行程表は維持すると語る。
高線量の放射性物質漏出は地震による損傷と推定。
14日未明に米軍の単独作戦を非難し、政府に対テロ作戦での米国との協力関係を見直すよう求める決議を採択。
「パキスタン・タリバン運動」(TTP)が、ビンラディン容疑者殺害への報復としている。
東海地震の震源域の真上に建つ中部電力の浜岡原子力発電所の全面停止が5月10日に決まりました。かねてから浜岡原発の危険性を指摘してきた私たちとして、この決定を歓迎すると同時に、「停止」から一歩踏み込んで「廃炉」とすることを強く求め、声明を出しました。
浜岡原発全面停止に関する原水禁国民会議の声明
巨大地震が懸念される「東海地震」の震源域の真上に立地する浜岡原子力発電所の全ての原子炉の全面停止を5月6日に菅直人首相は中部電力に要請しました。それを受けて中部電力は5月10日にその要請を受諾しました。「30年以内にマグニチュード8程度の東海地震が発生する可能性が87%」(文部科学省・地震調査研究推進本部)と言われているだけに、国民の「安心・安全」の側に立った決断として今回の首相の決断は歓迎するものです。これまでの政権では考えられない政治主導の決断でした。
東日本大震災による福島第一原発事故が現在も収束していない状況の中で、東海地震による原発震災を招くようなことが起きれば、もはや日本の社会、経済は壊滅的な打撃を被り、日本そのものの存亡にかかわります。今回の決断に対して原発推進派からの強烈な巻き返しや批判が上がりはじめていますが、ぶれずに押し通して欲しいものです。しかし、今回の要請はあくまで「停止」であり、「東海地震対策の完成まで」としており、「廃炉」ではないことは問題です。
今後行われる対策で本当に万全となるのかは、大きな疑問です。今回の東日本大震災によって導きだされた教訓は、原発は「絶対安全」でなければならないということです。万が一、過酷事故を起こせば取り返しのつかないものになることは、現在も収束の見通しのたっていない福島第一原発の惨状を見ればあきらかです。東海地震の予測をマグニチュード8程度設定しています。それに対応した対策であれば、マグニチュード9を経験したいまでは、それでは国民の「安心・安全」に応えたことにはなりません。震源域の真上に立つからこそ、今度は直下型地震も心配しなければなりません。その上、東日本大地震でさえ予測できなかった経緯をみれば、今回の予測を上回ることも十分視野にいれるべきです。その上に立って評価するべきですが、そもそもそのような巨大地震が起こりうるようなところに原発を建てる事自体が問題です。
さらに、福島第一原発の事故や東日本一帯を原発・原子力施設を襲った今回の地震による各施設の被害の検証がいまだなされていません。どのような原因で事故や被害が起こったのか、検証されなければこの地震から教訓を得ることはできません。その検証さえない中でどのような震災対策をしようとするのでしょうか。中部電力の対策がその理にかなっているのかさえ分かりません。検証がなされた後で本格的な対応が求められています。そのことがなされない限り「安心・安全」もないはずです。
また、今回、地震と原発の問題は、浜岡だけではありません。各地の原子力施設の立地地域でも問題となっています。あらためて徹底した見直しと検証が必要です。
上記を踏まえ、私たちは、今回の「停止」ではなく「廃炉」を強く求めるものです。浜岡原発で事故が起これば、これはもう「人災」でしかありません。
2011年5月12日
原水爆禁止日本国民会議
議長 川野 浩一
平和フォーラム・原水禁は、「福島第一原発事故に関する要請書」(第2次要請)を内閣府と文部科学省に対して提出しました。
2011年5月12日
内閣総理大臣 菅直人様
文部科学大臣 高木義明様
原子力安全委員会 委員長 斑目春樹様
原子力安全・保安院 院長 寺坂信昭様
フォーラム平和・人権・環境
原水爆禁止日本国民会議
事務局長 藤本泰成
福島第一原発事故に関する要請書(第2次要請)
今回の未曾有の災害や福島第1原発事故の復旧作業に対する、貴職の昼夜違わぬご奮闘に、心から敬意を表します。
福島第一原発事故の復旧作業は、困難を極める中、冷温停止へ向けて血のにじむような努力がなされています。現場で復旧作業に従事している方々に対して感謝を申し上げます。
5月6日、菅直人首相が浜岡原発の現状での運転停止を要請しました。平和フォーラム・原水禁も前回の要請書で浜岡原発の運転停止をお願いしました。市民の安全・安心の視点に立った決断に対して、敬意を表したいと思います。
現在、原発事故への対応に関しても、放出される放射線量が減少傾向にあるなど一定の成果を上げつつありますが、まだ予断を許せない状況にあります。収束への行程は不明確ですが、速やかに冷温停止へ進んでいくことを望んでいます。
このような情勢の中で、平和フォーラム・原水禁は、今後のエネルギー政策や原発の安全対策のために、また作業員や子どもたちの健康のために、以下の通り要請いたします。政府および関係諸機関が、市民の目線に立って対応していただきますよう心からお願いいたします。
記
1.福島原発事故の発生時からの全情報の公開を求めます。
福島原発の事故以降も、原発が稼働しています。稼働中の原発については安全性の再検証が必要であると考えますが、そのためにも、福島原発事故の詳細な事故情報の公開が必要です。地震の規模、制御棒の挿入状況、地震による被害の有無、津波による被害の内容、海水注入の判断までの経過、水素爆発の原因、格納容器の状況、その他、色々な情報は今後の安全性の検証に極めて重要です。これまでの情報を政府機関が独占すべきではなく、速やかな公開を通じて国民的議論に伏すべきと考えます。
2.福島原発事故の原因究明に関する独立した外部委員会の設置を求めます。
これまでの原発の安全確保に関しては、安全行政の立場と推進の立場とが、原子力利用への考え方や人的な面においても一体となり、批判的な研究者が政府の政策や監督行政から排除される傾向にありました。今回の事故の規模に鑑みて、推進・反対を問わずしっかりとした原因究明を行うことが必要であり、今後の原発の安全性確保の側面から極めて重要な課題と考えます。これまでの安全行政への批判などから考えると、事故の原因究明は、原子力安全委員会や原子力安全・保安院の中に設置するのではなく、利害関係者から独立した機関において行うことが、国民の理解を得る唯一の方法と考えます。
3.原発事故の復旧作業に従事してきた作業従事者の作業工程や被曝量などの情報公開を求めます。さらに、作業従事者の労働環境の改善をはかることを求めます。
この間、復旧作業にあたった作業員(自衛官、消防署員、東電社員、関連・協力会社員)に関しては、被爆量が短期間で許容量を超えることから、作業から撤退せざる得ない状況になっていると聞いています。作業によって年間被曝量の許容量を超えた方については、その健康診断等を継続していくなど、追跡調査と検診等の保障措置が必要と考えます。そのためにも、作業従事者の作業工程や被曝量の情報公開を求めます。さらに、この間、作業従事者の衣食住に関する作業環境は、劣悪な状況に置かれています。よりよい仕事を遂行するためにも労働者を取り巻く環境の改善は喫緊の課題です。
4.子どもの被曝許容量(年間20mSV)の再考を求めます。
幼稚園・保育所、学校で学ぶ子どもたちの被曝許容量が、労働安全衛生法上で規定れされた放射線管理区域内の労働現場での年間平均被曝許容量である20mSvと言う数字と同じであることは国民的理解を得られません。この数字が、保護者の不安を増幅させている一因になっています。この間、作業従事者の年間許容量も100mSvから250mSvに引き上げられていますが、事故が現実のものとなってから法定の被曝許容量を変更し現実に適合させることは、理解が得られるものではありません。決められていた数字にどのような意味があったのかを問われるものです。特に、放射線被害に弱い成長期の子どもたちに対しては、より厳重な被曝量管理が求められます。子どもたちの健康問題の所管省庁である文部科学省は、国民的理解を得るための説明責任があると考えます。成長期にある子どもたちにとって、放射線の影響は計り知れないものがあります。より慎重な検討を重ね、現状で取り得る最大限の努力の下での被曝許容量の設定を求めます。
5.福島県内の公園、保育所や幼稚園、学校の敷地など、幼児、児童生徒の活動範囲における放射線濃度の高い汚染土壌の速やかな廃棄を求めます。行き場のない汚染土壌については政府の責任で、放射線被害をおよぼすことのないよう、管理の徹底を求めます。
放射線量は、空中よりも土壌の方が高いのがこの間計測されています。そのことは、成人に比べより地面に近い児童・生徒の活動は、大きな影響を受けるものです。中には、グランドや砂場を転げ回るなどし、口から砂が入る場合も日常的に想定され、体内被曝も成人より高いと予測されます。以上から考えますと、子どもたちの被曝の影響は成人より極めて高くなることも予想されます。汚染土壌の廃棄は必須と考えます。
6.幼稚園・保育所、学校などの教育現場に対して、正確な計測が出来る放射線測定器の十分な配布を行い、放射線量に対するきめ細かな対応を行うこと。
放射線量は、天候や風向、事故状況の変化に対応して刻々と変化します。また、グランド、側溝の中、水のたまりやすい場所などによって大きく変化します。子どもたちの被曝量を最小限に留めるためには、きめ細かな測定が必要です。測定値が上昇した場合には、即時の屋内待避措置も重要です。そのためにも福島県内の各校に複数の放射線測定器を配置することが必要と考えます。
以上
米上院軍事委員会のレビン委員長とマケイン筆頭委員が、米軍普天間飛行場の移設に関する日米両政府の現行計画は、非現実的であり、米銀嘉手納基地に統合を中心とする新たな移設案の検討を国防総省に求めたとの声明発表。
東京電力・福島第1原発3号機で海水取水口近くのコンクリート製ピット(穴)に、高濃度のセシュウム134、137などの放射性物質を含む水が流れ込み、海に流出したと発表。
平和フォーラムは5月3日に、東京都千代田区の日本教育会館で、「施行64周年憲法記念日集会」を開催しました。集会の第1部はシンポジウムで、「安全に生きる権利」をテーマに議論を行いました。コーディネーターは江橋崇さん(平和フォーラム代表・法政大学教授)で、パネリストは石丸小四郎さん(福島県双葉地区原発反対同盟代表)、満田夏花さん(国際NGO FoE Japan)、山浦康明さん(日本消費者連盟事務局長)の3人です。東日本大震災や福島第1原発の事故の直後であることから、各パネリストの発言は、憲法の定める生存権の視点から震災の問題を捉え返すものとなりました。
シンポジウム終了後、石丸小四郎さんがインタビューに応じてくださいました。
原発事故を遠隔地から分析し、放射性物質の放出などを予測する国の「緊急時対策支援システム(ERSS)」が福島第1原発事故直後から電源喪失のため使用できなくなっていたことが分かる。
5月2日、原水禁国民会議は、原子力資料情報室、双葉地方反原発同盟、反原子力茨城共同行動、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、ヒバク反対キャンペーンとともに、要請書を政府へ提出しました。特に文部科学省においては、現在問題になっている子どもの年20ミリシーベルトの高線量被曝を容認する「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」の基準(屋外で3.8マイクロシーベルト毎時)を撤回するよう求め、さらに福島の学校などに放射線測定器の配備を早急に行うこと、学校現場での放射線の観測強化などを申し入れました。
要 請 書
内閣総理大臣 菅 直人 様
厚生労働大臣 細川律夫 様
文部科学大臣 高木義明 様
2011年5月2日
チェルノブイリ事故によっても原発を推進し続けた国と電力会社は、フクシマ事故によって広大な土地と海洋を放射能で汚染し、多数の住民、原発被曝労働者を始め事故終息をめざす作業に従事している多数の作業者が日々放射線を大量に被曝するという最悪の事態を引き起こしました。周辺住民は生活の場を破壊され、着の身着のまま避難を余儀なくされています。
政府は稼働中の原発を止め、原発依存から再生可能なエネルギーへの政策転換を行うべきです。
原発労働者の緊急時被曝線量の基準を現行法の100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げたことに抗議します。事故後福島原発内で、①労働者に線量計を持たせず作業に当たらせたこと、②放射線管理者が立ち会うことなく労働者に緊急時作業を行わせたこと、③女性作業員の被曝を1ヶ月近くも放置し、女性労働者の基準3ヶ月5ミリシーベルトを超える被曝をさせたこと 等、事故現場における東電の杜撰な被曝管理は許し難いものです。東電に対し是正、指導すらしなかった厚労省の現行法を無視した態度に抗議します。
労働者の安全や健康を無視し、現行法の基準を変更し、大量被曝を労働者に押しつけようとする厚労省、こどもの健康をおびやかす高線量被曝を容認する文科省に対し強く抗議します。
労働者と住民の安全と健康を守り、生じた被害については補償するために、以下のことを速やかに実施するよう以下に要求します。
1)早急に被曝労働者の緊急時被曝基準250ミリシーベルトを撤廃すること。
2)緊急時作業で平常時の線量限度を超えた労働者については、下請け、孫請け労働者も含めて放射線作業以外の就業を補償すること。
5年間100ミリシーベルトのみならず、年50ミリシーベルトを超えた労働者についても放射線業務以外の就業を補償すること。
3)線量計を持たずに緊急作業に従事した人の総数を明確にし、その人達の被曝量を内部被曝線量も含め正確に調査し、放射線管理手帳に明記すると共に本人に早急に知らせること。
原発被曝労働者以外のすべての現場作業者についても、厳格な放射線管理を行うこと。
4)全ての原発労働者に健康管理手帳を早急に交付し、健康管理を行うこと。
福島事故現場の労働者に対しては、精神的ケアを含めた健康管理を行うこと。
5)劣悪な状況で事故処理に当たっている労働者の労働環境を改善すること。
6)子供の年20ミリシーベルトの高線量被曝を容認する「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」の基準(屋外で3.8マイクロシーベルト毎時)を撤回し、公衆の被曝限度を尊重し、基準を大幅に引き下げること。
汚染された校庭、公園の表土の取り替え(除染)は国が責任を持って行うこと。
7)福島原発事故被災住民に健康手帳を発行し、国の責任で健康管理を行うこと。
健康被害を補償すること。
双葉地方反原発同盟、 原水爆禁止日本国民会議、 反原子力茨城共同行動、
原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、 原子力資料情報室、 ヒバク反対キャンペーン
連絡先 渡辺美紀子(原子力資料情報室) Tel 03-3357-3800
建部暹 (ヒバク反対キャンペーン) Tel 0790-66-3084
●緊急対談…福島原発は今どうなっているのか
どんな技術も原子力「安全神話」の裏付けにはならない
後藤政志さん 西尾漠さん
●懸念される原発事故による放射能の影響
被災地・宮城と福島を訪問して
●これが本当に一時中断と言えるのか
上関原発準備工事の再開とその後の経過
原水爆禁止山口県民会議 事務局長 大久保 弘史
●新たなヒバクシャを生みだしている福島原発事故
被曝労災の認定疾病の抜本的拡大を
ヒバク反対キャンペーン 建部 暹
◎緊急対談…福島原発は今どうなっているのか
どんな技術も原子力「安全神話」の裏付けにはならない
3月11日に発生した東日本大震災によって、福島第一原発が大きな被害を受けました。現在も予断を許さない状態が続いており、収束の目途は立っていません。今号では、元原子力プラント設計技術者・後藤政志さんと原子力資料情報室共同代表・西尾漠さんに福島原発事故の問題点と今後について緊急対談をお願いしました(4月6日・司会は藤岡一昭平和フォーラム・原水禁副事務局長)。
福島第一原発の状況を分析する後藤さん(右)と西尾さん
【プロフィール】
後藤政志さん:博士(工学)。元東芝・原子力プラント設計技術者。福島第一原発事故以来、技術者の立場から事故の分析を行っている。國學院大学などで非常勤講師を務めている。
西尾漠さん:原子力資料情報室共同代表。「新版 原発を考える50話」(岩波ジュニア新書)、「エネルギーと環境の話をしよう」(七つ森書館)など著書多数。原水禁副議長も務めている。
苛酷事故「想定外」は無責任〈後藤〉
司会 4月6日のニュースで2号機のピット付近から海に流失していた高濃度汚染水が止まったということで「一安心」といった報道が見られますが、格納容器や使用済み燃料プールの深刻な状態について報道されていません。
後藤 私も肝心なところが報道されていないと思っています。放射性物質が見つかるという状態は、原子炉から漏れたのに間違いないわけです。つまり原子炉格納容器が壊れているのは当たり前であって、問題は汚染水が流れ出た経路がどこかということにあります。
高濃度に汚染された水が海に出るのはとんでもないことですが、その経路からさらに水が入る可能性があります。海への流出をせき止めれば、常識的には他に逃げるわけで、数千トンの規模で散水している水が、全部蒸発するなんて考えられません。止まったけれど、決して安心できない。それはまさにその通りで、問題は原子炉そのものの問題が解決されていないことにあります。
司会 11日の地震の後、翌日未明に1号機の格納容器圧力が急激に上昇しましたが、それは何を意味するのでしょうか?
後藤 私もそれが心配でした。あの段階で1号機はヒートアップが始まっているわけです。つまり、圧力容器が冷却機能を失い、格納容器も設計上耐えられる条件を超えているのです。私は最初にその情報を知ったとき、これはダメだと思いました。だからそれ以降、皆さんの前で話すようになりました。
具体的には、格納容器の圧力が設計条件より超えるということは、すでに炉心の核燃料が溶けている場合が多いのです。溶けてなくても、何か異常があって、圧力容器の熱が格納容器側に伝わっているということで、本当に異常事態だと見ていました。
どこまで溶けて壊れているかですが、水位計が怪しいので何とも言えませんが、ほとんど水がないとすれば大変なことになります。圧力容器の中の燃料が露出している時間が問題です。最悪なのは冷やせずに圧力容器の底が溶けて抜けること。これがいちばん怖い状態です。
現在、圧力容器外側の温度を見ると、そこまでには至っていません。しかし、圧力容器の中はあまり冷えているとは言えないのです。金属ですからそんなに温度差があるわけではないですが、それでも温度差はあります。さらに、そこに水があるのか。燃料がどうなっているのか。相当冷却機能が小さいと同時に、冷却した汚染水がどこかへ漏れている可能性があります。
また、燃料がきちっと並んで立っているという状況はイメージできません。被覆管という周りの金属が溶けている状態があり得ます。米国のスリーマイル島原発事故(1979年)であったような溶融状態ができて、それがある程度水があって、半分冷やしながらそういう状態になっているかもしれません。原子力の専門家、燃料や熱の専門家なら、データからわかるはずです。今の段階でどの程度の損傷で、何が予測されるのかということを言えるはずなのです。そういうことがなぜ言えないのか、公表しないのか、非常におかしいと思います。
司会 今最も大事な情報で公開すべきデータは何でしょうか?
後藤 一番大切なデータは炉心の温度、そして冷却する水がどうなっているのか、それから原子炉内の圧力など、どこからどこまでが正しいかは、他のデータと付き合わせしなければわからないということが一番肝心なことです。もし隠しているとしたら本当に許しがたいことです。温度計が振り切れたとか、センサーが壊れたなど、データを取り込むことが難しいなら、何らかの方法で取る努力をしなければならないのですが。
西尾 それは地震で壊れたということもかなりあるのですか?
後藤 地震が絡んでいる可能性はありますが、むしろヒートアップの結果、計測器が壊れているということではないかと思います。しかし、事故のときこうなるのは当たり前なのです。そのことを組み込んでいない設計がおかしいのです。原子力プラントの設計のときに、こうした「苛酷事故」の可能性がほとんど想定されていません。
スリーマイル島事故のとき、大きい格納容器の中に水素が出て、水素爆発の恐怖にずっと怯えていたわけです。今回もそれはあり得るわけで、希望的観測ではいけないと思います。今の状態で収束できる可能性も高いけれど、爆発するとまずいから対策を行うことが必要で、そういうことをきちんと説明すればいいのです。再臨界もそうです。専門家に言わせると、それが起こる可能性は少ないと言うけれど、起こったら終わりなのです。苛酷事故については本来、原子力の世界では故障の仕方、事故のあり方がわかっているもので、確率が低いからと切り捨てておいて「想定外でした」というのは全く許しがたいことです。
事故状況の説明もなく自主避難とは〈西尾〉
西尾 各電力会社が、原子力安全委員会から言われて苛酷事故対策を出していますが、それを読むと「安全のため」ではなく「安心のため」と書いてあります。つまりそんな事故は起きないだろうという中でつくられているわけで、それが福島で現実のものとなりました。だけど、実際にはスリーマイル島原発事故も起きているわけですし、どうしてそこで「起きない事故の安心対策」といった中味になるのかわかりませんね。
後藤 私もそう思います。極端なことを言えば、格納容器は閉じ込める機能がきちんとしていれば、事故が起こってもプラントの中の問題であって、外には影響しないわけです。格納容器はそういう設計になっているはずなのにダメになるということは、それは破たんしているということです。私は、格納容器の研究を専門でやってきましたから、非常に心配しています。苛酷事故と言うことを本気で考えたら、法的規制に入れればいいのに、民間が自主的に対策を行えということで終わりにしています。放射能を含んだものを出していいなんて、民間側の東京電力が決めることではありません。原子力の本質的なところを、規制する行政側も電力会社側も全て無責任にしています。それに私はいちばん怒っています。
司会 そこがまさに人災ということの本質ですね。今、私たちはこの問題をどう考えればいいでしょうか。
後藤 事故が起こるということは、今回のように設計の条件を大幅に超える自然環境の問題があります。そして、機械ですから劣化もあるし故障もあります。それから、人のミスもあります。だいたい事故に至るには、この中の二つ以上の組み合わせになります。地震がなくても、機器の損傷と人的エラーが重なれば苛酷事故になってしまうわけです。事故というものは、可能性がものすごく多様なものです。原子力特有の性質から考えると、事故が起きて相当広範囲に逃げなくてはならないということは最悪の事態です。明白に危険が迫っていればそう言うでしょう。しかし、「その兆候が見えないから安全だ」と宣伝しています。私も安全だと思いたいですが、かなり綱渡り的なことになっています。
最初に汚染シミュレーションをしなければならないのに、それができなかったと言われています。しかし、やっていて出さなかったというふうに感じます。どこでどれだけの放射線があるかということや、拡散のシミュレーションが判断材料になるわけです。それを隠したということならば、非常に罪は重いと思います。
西尾 政府側も20㎞、30㎞圏内の避難勧告を決めるときに何も根拠がなく決めているはずはないわけで、それなりの想定をして決めているわけです。それをどういうことで決めたのかということをきちんと示さなければいけません。もちろん一方で、危険度の説明も必要ですが、どこへどうやって逃がすかという具体的な問題もあります。それなしにただ距離だけを言うわけにはいきません。なぜ避難するのかというきちんとした説明がされていないことが一番大きな問題だろうと思います。今にしてみれば距離の問題ではないです。実際に出てきている数字を見ていると、高いところ、低いところとあるわけです。具体的にどうやって逃がすか、避難させるかということをやらなくてはいけません。その意味でも自主的に避難してくださいというのはとんでもない話だと思います。
30㎞内に閉じ込められた人たちが避難できるようにと、直接的・間接的に政府に働きかけましたが、その結果が自主避難というのはあんまりですよね。いたずらに範囲を拡大せよというのは、逃げにくい人たちを置き去りにしてしまうということもあって、私たちはそういう言い方をしてきませんでしたが、結局自主避難というような形になってしまいました。ただ、今からでも遅くありません。
福島第一原発と同型の原子炉格納容器(後藤さん講演資料より)
「核のコントロール」なんて非現実的〈後藤〉
後藤 核問題の危機管理、非常事態にどうするかという基本的な考え方があまりにもなさすぎます。何か、希望的観測の上に乗って説明している感じがします。「これ以上言うと、みんなが心配になるからやめよう」というような発想は、危機管理とは全く対極にある考え方です。マスコミで気になっているのは、煽らないように危ない話はしないという発想で、極めて問題だと思います。「実際に起こっていること、起こりうることをきちんと説明した上で対応しているから、慌てることはない」とはっきり言うべきです。
原子炉は止まったけれど、冷やすことと閉じ込めることには失敗している。けれど、こんな方法を取っている、その見通しはどうであるという説明があるべきです。それが、今冷やしているから大丈夫、何とか拡散を最小限に防ぎ人体に影響はないといった言い方をしていますが、これは詭弁以外の何物でもありません。
全く汚染されていない地域の作物まで食べない、というのは問題ですのでそういうことに対しては、われわれは配慮する必要があります。だからといって、汚染がとどまるはずはなく、どこかにホットスポットがあったり、放射性物質が地下水から出てきたりということは自明のことだと思います。私は放射線の専門家ではないので、細かいことに関しては説明できませんが、物事の不確定性や安全性という観点から、説明や報道はいかがなものかと申し上げているわけです。
格納容器は「閉じ込める」という機能が求められます。これは先端技術ではなく、昔からある技術なのですが、実はそう簡単ではないのです。例えば、スペースシャトルの爆発もガスケットからの燃料漏れが原因です。つまり、「漏れない容器はつくれない」ということなんです。私はそこに関しては悲観的になるのですが、人間はそれだけの技術は持っていないと思ったほうがいい。「沈まない船はつくれない」「落ちない飛行機はつくれない」。「安全神話」などなくて、技術というものにもっと謙虚になるべきです。
司会 これまで原子力発電は「安全神話」で進められてきました。今、後藤さんから「神話を裏付ける技術は無い」という意味の話がありましたが、これは巧みな世論操作で、原子力を必要とする「エネルギー枯渇神話」、そしてどこまでもエネルギーを求める「成長神話」とつながっていると思います。私たちはこの三つの「神話」を根本的に見直したいと考えています。
西尾 そもそも初めから経済性が先行していますね。原子力安全委員長だった内田秀雄さん(故人)という方が、「当初は安全性など何も考えていませんでした」と、平気で発言しています。全く考えていないということはないでしょうが、要するに原子力は安いというところからスタートしています。地震や津波にしても、大きなものが起こり得るということはわかっているわけです。でも、それに合わせてつくっていたら、経済的に成り立たないから経済性の範囲内で収めてきたということです。
後藤 安全という前提がないと安心はありませんね。つまり、安心を強調するのは砂上の楼閣で、安心ということだけ考えると原子力は成立しません。私は放射能の恐怖に怯えて生きるのは嫌です。計測して今日の放射能は大丈夫、風向きも大丈夫などと言いながら生きていく社会は安心な社会ではないと思います。安心、安全だといって原子力を宣伝した人たちは、全く中身を理解していないのです。
技術者の立場から見ますと、核のコントロールというのは現実的ではないと思います。仮にそれをやろうとして、本当に安全な原子力はあり得るかという観点に立ったときに、私は無理だと思います。そのときに経済性を持ってきて仕方ないとすることがいけないのです。安全対策をきちんとやった上で、原子力プラントのコストが高くなってしまうのであれば、それは競争力がないのでやめるべきです。
原子力政策にかかわる現在の行政組織図
姿が見えない原子力安全委員会〈西尾〉
司会 本来安全を言わなければいけないのは内閣府の原子力安全委員会だと思いますが、今の安全委員会をどう見られていますか?
西尾 今回の事故に関して、ほとんど原子力安全委員会の姿は目に見えていません。記者会見を開いたのもだいぶ後になってからです。その前に2回ほど会議をやっているのですが、ホームページで会議資料を見てみますと配布資料なしと書いてあるのです。「配布資料もなくて、2回も会議をやっているのか」という思いがします。そして3回目に、ヨウ素剤は時間通りに飲まなければ効果がありませんよ、というようなことを事故から何日も経ってようやく言っているわけです。
あと、緊急の助言組織をつくって、担当を決めたというところまではホームページに書いてあるのですが、その人たちが何をやったかということは全くありません。おそらく、現地へは行っているのでしょうが。原子力安全委員会の評価以前に、何をしているのかわからないというのが実態ではないでしょうか。安全委員長は首相へいろいろ助言をしているそうなのですが、よくわかりません。おまけに、首相は安全委員長を信用していないらしく、別の助言者を付けているようです。そんなおかしな話はないだろうと思います。
後藤 原子力安全委員会について私の知る限り、技術を持った下部組織が独立して判断する機能を持っていないと意味をなさないと思います。経済産業省の原子力安全・保安院もそうです。メンバーはかなりいるのですが、そういう機能を果たしていません。メーカーが資料をつくって、電力会社が説明する。それを保安院がチェックするというのが建前ですが、実際には「本当にこれでいいのか」などといった、批判的な目で見ていないのです。計算間違いはないか、書類上の不備はないかといったレベルです。
西尾 電力会社が見たものを保安院が見て、それを安全委員会が見ているけれど、最初の電力会社の枠より外には出ていかないのですから、ダブルチェックしても本質的なところは見えません。そのことも含めて、原子力の安全規制のあり方というのを見直す必要があるだろうと思います。
内閣府原子力委員会は、原子力政策大綱の見直しということをやっていたけれど、事故後、3月中は休会になって、4月にやっと開きました。そこで何を決めたかと言えば、策定会議を中断しますということだけです。むしろ今こそ、これからの原子力政策をどう考えるかという大議論を起こすべきなのに。今の策定会議の枠組みでやるのがいいのかどうかということはあるにしても、中断しますというのはどういうことだろうかと思いますよね。
後藤 やはり、きちんとした技術的なバックを固めること。少なくとも電力会社に対して、きちんと指示したり評価したりすることが最低限必要だと思うのです。そういうことになっていないのではないか。そう見えて仕方ありません。マスコミでもそう言われていますが、本当にその辺りのことがどうなっているのか気になります。
ベントするような最重要事項に関して無責任であるということは許されないと思います。特に安全委員会はそうだと思います。嫌なことですが、これから仮に水素爆発でも起こったらどうするのですか。また同じことをやるのですかということが私は気になります。
司会 本日は、日々刻々と状況が変わる福島第一原子力発電所の現時点(4月6日)における事故状況とともに原子力発電所の持つ怖さ、東京電力や政府の対応の問題点、さらにこれまでの原子力政策と形骸化した政府機構の実態などお話しいただきました。今このときも、退避生活を強いられ、将来の不安につらい日々を送られている皆さんを考えると、一刻も早い解決と脱原子力、自然エネルギーへの転換が強く求められていると思います。
本日は後藤さん、西尾さん、大変ありがとうございました。
懸念される原発事故による放射能の影響
被災地・宮城と福島を訪問して
自然の猛威が人々の生活を押し流した(写真1)
津波で地上に打ち上げられた船(写真2)
4月7日~8日にかけて原水禁国民会議は、東日本大震災で被害にあった宮城県護憲平和センターと福島県平和フォーラムへ義捐金と援助物資を渡すために訪れ、その際に現地の被災状況の視察と放射線量を測定しました。宮城県内では、仙台市若林区、塩竃、松島などをめぐり、福島では、高い放射線を記録する飯舘村や20km内の避難区域の南相馬市小浜地区に入りました。
巨大津波の威力にがく然とする
宮城でも福島でも津波の被害を見て心底驚きました。集落が一瞬にして押し流された痕跡を目の当たりにしたとき、絶句して言葉がすぐに出ませんでした。広島・長崎の原爆投下後の写真は何度も見てきましたが、それと似たような光景が目の前にあったのです。立っていた場所から3km先の海岸線まで、壊滅した街の残骸が残る荒涼とした風景がずっと拡がっていました(仙台市若林区・写真1)。
改めて地震という自然災害がもたらす破壊力の大きさを痛烈に実感させられました。福島第一原発事故による甚大な被害も合わせて考えると、人間は自然に対してもっと「謙虚」であるべきだとの思いを、実際に被災地に立って強く思いました。
塩竃では、いまだ流された船が被災後1ヵ月を経過しようとするこのときにも、そこかしこに打ち上げられたままでした(写真2)。松島では遺体が発見された現場も見ました(写真3)。
遺体が見つかった場所には印が付けられていた(写真3)
原形をとどめない住居も数多くあった(写真4)
福島の南相馬市小浜地区では、集落の横を流れる太田川に沿って津波が押し寄せ、堤防を越えて、橋や住居をなぎ倒しながら、奧へ奧へと濁流が流れ込んでいった様子が想像できました(写真4)。今は避難地域とされて、住民が誰もいない町の中で、誰かに飼われていたとみられる猫が2匹近寄ってきました(写真5)。こうした小動物たちも今後、どのような運命をたどるのでしょうか。せっかく津波から逃れられたというのに……。
人間ばかりではない震災による被害(写真5)
今回、私たちは簡易放射線測定器を持って福島県に入り、各地で測定しました(写真6)。飯舘村は原発から30km以上離れた村で、このとき避難地域や屋内退避地区にはなっていませんでしたが、放射線量は場所によって避難地域(南相馬市小浜)や屋内退避区域よりも高い線量が出ていました。私たちがガイガーカウンターで測った数値では、東京で1分間17カウントだったものが、飯舘村役場付近で約994カウントを数え、周辺の集落(川俣村)の側溝では東京の60倍の1,278カウントを超えるところがありました。それだけ放射能が周辺にばらまかれている証拠です。
低い位置ほど放射線量は高い傾向にある(写真6)
今回の被災地訪問の後、政府は原発から半径20km圏外で放射線の累積線量が年間20ミリシーベルトに達する地域を「計画的避難区域」に指定し、1ヵ月以内での退避を要請することを決めました。飯舘村の放射線量の高さは、ずっと問題になっていたにもかかわらず、後手に回った対応であると言わざるを得ません。
保安院も認めた放射能放出の長期化
4月4日、平和フォーラム・原水禁が福島原発事故に関わる申し入れを行った際(申し入れ書は原水禁HP参照)、対応に出た原子力安全・保安院の担当者は、事態の長期化及び放射能放出の長期化と拡散地域の拡大が懸念されていること述べていました。
そして4月17日の東京電力の発表では、確実に原子炉を冷却し、放射性物質の放出を減少させるのに3ヵ月程度、それから原子炉を100℃未満の冷温停止と放射性物質の漏出を大幅に抑えるのに3~6ヵ月かかると発表しました。しかし、計画通りに事態が収束に向かうかどうかは、何ら具体性もなく、あくまで努力目標といったところです。保安院も認めているように放射能放出の長期化はもはや避けられず、避難民の早期帰宅はさらに困難になり、汚染地域の拡大も心配されています。
一刻も早い事態の収束を
まさに今後が心配されます。政府は、原子力施設事故の深刻度を表す国際原子力事象評価尺度(INES)を、チェルノブイリ原発事故と並ぶレベル7としました。政府や東電、そして推進派の学者は、放射能の放出量が「チェルノブイリ原発事故と比べて10分の1だ」などと言って、事故を過小評価しようと躍起になっています。しかし、現在に至っても事故が収束したわけでもなく、放射能放出は長期に渡って続き、被害が拡大していくことが明らかであり、具体的な被害の状況も、そう遠くないうちにチェルノブイリ原発事故を超えることさえ予想されます。そうなれば、今回の原発事故は、世界最大級の事故となってしまいます。だからこそ、一刻も早い事態の収束を願うばかりです。
これが本当に一時中断と言えるのか
上関原発準備工事の再開とその後の経過
原水爆禁止山口県民会議 事務局長 大久保 弘史
真夜中の準備で強引に再開された工事
2月21日、中国電力は1年3ヵ月ぶりとなる、上関原発建設のための海面埋め立て工事を警備員や作業員など600名、作業台船など約15隻を動員して強行、再開しました。警備員の配置は21日の午前2時前には終えて、午前6時には海岸で作業を始めようとしたのです。
祝島島民を中心とする原発建設反対派は、市民運動の応援もあって、約150人が抗議をくり返しました。鉄パイプで柵を設置し、海岸への立ち入りをじゃまする中国電力と、砂浜に座り込んで、それを阻止する住民が激しく衝突し、緊迫した空気が流れました。
一方、海域においては、20隻にも迫ろうかという大量の作業台船を投入し、冷却用海水の放出口で、強引に埋め立て工事へ着手しました。祝島の漁船を上回る台船の投入により、反対派をかく乱する手法はなりふりかまわない傲慢なものとしか言いようがありません。
午後4時30分過ぎ、突如中国電力の社員が仮設事務所から現れ、山口地方裁判所から妨害禁止仮処分の決定がされたことを告げました。祝島島民の会などが訴えていた通行妨害禁止仮処分のほうは却下されたこともわかりました。これを受けて中国電力の社員は、一斉に浜辺へ向かい、事前に用意されていた地裁決定の文書ビラを配布しながら、「裁判所決定に違反している、すぐに退去しなさい」。さらに、「海域における間接強制の決定で、妨害1日500万円の請求も決定どおり行う」とハンドマイクで威圧してきました。
緊迫する現地では住民に負傷者が
大量動員された作業員の中には、作業ができないいら立ちを隠せない者も出てきました。ひやりとする場面もありましたが、警察官の早急な対応によって、大事に至りませんでした。しかし、午後になってとうとう負傷者が出ました。大量動員は3日間の予定で計画されていたようなのですが、その最終日に、しびれを切らせたかのようにケガ人を出す事態となりました。
抗議のため座り込んでいた女性に警備員が倒れ込み、全身の圧迫によって総合病院へ搬送されました。しかし、診察を行った医師が診断書の作成を拒むなど、周囲ではかかわりを持ちたくないという動きも見られました。29年間、原発建設に反対してきた住民の皆さんは、普通の暮らしと命を守ることだけを願い続けてきました。そんな人々を傷つけながら、「地元の理解を得て、安全と環境に最大限配慮して原発建設を進めています」との言い方には、大きな憤りを感じます。
大量動員された警備員らと住民が激しく衝突した(2月21日)
3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原発事故を受け、準備工事は中断されました。中断に至るまで、13日には二井関成山口県知事と柏原重海上関町長から、今後の事態の推移を見極めて、慎重に対応をするよう求めたにもかかわらず、翌日には当然のように建設予定地で準備工事に取りかかろうとするなど、福島のことは関係ないと言わんばかりの態度でした。15日に工事中断が決定されましたが、原子力安全・保安院からの指示による、原子炉設置許可の審査に必要な地質の追加詳細調査は続けられています。この調査には発破作業も伴い、周辺から鳥類などの姿が見えなくなるなど、すでに環境への影響が出ています。
上関原発反対4団体は、3月22日に中国電力本社(広島市)へ、調査の中断を申し入れました。しかし、準備工事と詳細調査は別物であるとし、福島原発事故を受けて誰もが安全指針などの見直しが必至だと考えている状況下にもかかわらず、「今の基準で調査を進めていく」という全くおかしな対応でした。
中国電力は、準備工事は一時中断と言いながら、一方で調査は継続しており、原発建設に向けた作業を進めていることには変わりありません。日本中が福島の深刻な状況を見守る中、中国電力だけが原発建設を進めている状況と言えるでしょう。現地では、現在も調査作業が行われており、監視行動が続けられています。
新たなヒバクシャを生みだしている福島原発事故
被曝労災の認定疾病の抜本的拡大を
ヒバク反対キャンペーン 建部 暹
原爆症認定基準では被爆者を中心とする長年の闘いによって、全ての固形がん、白血病、五つの疾病が積極認定の対象となっています。一方、原発被曝労働者の労災認定では、法律(労働基準法施行規則)に対象として明記されている「がん」は白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺腫瘍、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫のみです。これは基本的に1947年に労働基準法が制定された当時の知見のレベルのままで放置されてきたものです。やっと2010年4月に多発性骨髄腫と悪性リンパ腫が追加されました。
原発労働者は過去にそうであった人も含め、30万人を超えています。労働者の被曝状況から考えれば、がん死者だけでも何百人もの被害者が出ると推定されます。しかし、労災認定が認められたのはJCO事故の3人と白血病5件、悪性リンパ腫1件、多発性骨髄腫1件の10件のみです。
労災補償において原爆症認定基準の考え方も参考にすべきであるとして、3月8日、原水禁、双葉地方原発反対同盟、反原子力茨城共同行動、関西労働者安全センター、原発はごめんだヒロシマ市民の会、原子力資料情報室、ヒバク反対キャンペーンの7団体の呼びかけで厚生労働省交渉を行いました。
がん・白血病は放射線に関連している
交渉には20人が参加しました。また、紹介議員のうち服部良一衆議院議員と秘書の方が最後まで同席されました。
まず、「原爆症認定基準で全てのがん・白血病が積極認定の対象となっていることは厚労省としてこれらの放射線起因性を認めていることと理解してよいか」との質問に、担当者は「最新の科学的知見に照らせば、全てのがん・白血病の放射線起因性が認められているとまでは言えない」と回答しました。私たちは、原爆被爆者の調査では、がん全体としての起因性を示す結果となっていることを主張するなど、強く反論しました。しかし、担当者は最初の回答をくり返すばかりでした。
厚労省健康局長は参院厚生労働委員会で、「がんと白血病につきましてこれまでの科学的知見に照らしましても、他の疾患と比べて放射線との関連が医学的にもあるいは国際的にも明らかだというふうに考えております。また、これまでの認定例でもがん及び白血病は数多く認定されてきているところであります」と答弁しています。
また、放射線影響研究所は最新の調査結果に基づいて、「被爆者のデータは、放射線が事実上すべての部位におけるがんの過剰リスクを増加させるという見解と合致している」とホームページに紹介しています。3月8日の担当者の回答は、これらの見解に反するものであり、この回答が厚労省のどのレベルで検討・作成されたものか、大きな疑問が残っています。
東電の海外向けHPに掲載された福島第一原発の様子(4月11日)
福島原発事故を「核時代の終わり」の始まりに
福島原発で三つの原子炉が炉心溶融事故を起こし、さらなる放射能大量放出の危険は今も去っていません。「私たちはヒバクシャを生み出させない!」「被害者の切り捨てを許さない!」ことをめざしてきました。福島原発で重大な事故が起きて、日々新たなヒバクシャが生み出されていることに対して、強い怒りを覚えます。
福島での事故を「核時代の終わり」の始まりにしなければなりません。事故の対応は、脱原発を前提に行われるべきです。事故に際しての基準緩和の動きは、すべて原発推進のためのものであり、労働者と国民の命と健康を守るためのものではありません。政府に一刻も早い脱原発の表明を強く求めたいと思います。
福島原発事故に伴い、労働者の被曝基準が真っ先に引き上げられました。これ以上の被曝の強要は認められません。基準を元に戻し、被曝労働の厳格な管理を行い、労働者の被害を最小に抑えるべきです。また、安心して避難できる条件づくりと高汚染地域からの一刻も早い避難、被曝した住民と労働者の健康管理を行わせること、さらに健康管理手帳の交付を求め、実現させましょう。