2011年2月アーカイブ
IAEA(国際原子力機関)の天野之弥事務局長がイラン核問題の報告書を理事会に配布。新しい情報に基づき、イランがミサイル搭載用の核弾頭開発につながる活動を行っている可能性を「依然懸念している」と強調した。
ロシア軍のマカロフ参謀総長が、フランスと共同建造するミストラス級強襲揚陸艦4隻の内、少なくとも1隻がウラジオストックを拠点とするロシア太平洋艦隊に配属され、北方領土の防衛任務に当たる可能性があると述べる。
これ以上犠牲者を出すな!-政策の転換を
相次ぐ原子力現場での自殺!
「もんじゅ」現場課長の自殺
またも痛ましい犠牲者が出てしまいました。新聞報道によると、原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で昨年8月に起こった炉内中継装置(燃料交換装置)のトラブルを現場で担当し、復旧作業にあたっていた核燃料課の課長が今月14日に自殺していたことがわかりました。
自殺の理由は、報道ではわかりませんが、容易にもんじゅのトラブルと関係しているのではないかと推測されます。昨年の夏のトラブル以降も、もんじゅは様々トラブルに見舞われています。そして今月21日から落下した炉内中継装置の回収に向けて準備作業にはいりましたが、果たしてうまく進むのかどうか、運転再開にむけての推移は不透明といったところです。これまで約1兆円もの国費が投入されているもんじゅいまだ完成していません。さらに昨年8月からの停止によって1日あたり5500万円も維持費がかかり、年間200 億円以上もの国費が浪費されています。その上、復旧作業に約9億4千万円、新しい炉内中継装置に約4億4千万円、関連作業を含めれば、さらに追加負担が強いられようとしています。そのようなもんじゅの失敗の重圧が、現場の担当者に重くのしかかったのではないでしょうか。
旧動燃時代のもんじゅ事故隠し事件に際しても、事故調査にあたった責任者が自殺しています(遺族はその真相究明を求めていました)。それに続く今回の自殺も、まさにもんじゅに押し潰されたと言えるのではないでしょうか。このまま「もんじゅ」のトラブルが続き、運転再開もままならなくなれば、その狭間に挟まれる労働者が、またも犠牲になる危惧があります。政策的・技術的に破綻しているもんじゅを強行的に押し進めることは、そのおそれを拡大させるのではないでしょうか。
六ヶ所再処理工場でも自殺者
自殺者はもんじゅだけではありません。六ヶ所再処理工場(青森県六ヶ所村)でも、昨年8月9日に再処理事業所内の事務棟で、再処理工場の運転部門の管理職が「転落死か」と報道される事件が起きています。その後の続報がなく詳しい状況が一切公表されていなので、「転落死か」との報道以外ありませんが、これも「自殺」と言われています。再処理工場も高レベル放射性廃棄物ガラス固化施設でのトラブルが続き、長期に渡って運転試験の停止が続き、管理職にとっても大きな重圧であったものと思われます。これも技術的・政策的失敗の犠牲となったと言えるのではないでしょうか。
島根原発でも犠牲者
その他にも、昨年4月13日には、島根原発1.2号機で発覚した点検漏れ問題で、中国電力の緊急対策本部で原因調査に当たっていた同社電源事業本部の部長が、松江市内のホテルの部屋から飛び降り自殺を図りました。当時、120を超える(その後511箇所)島根原発での未点検箇所により、原発が止まり、社内外からの批判にさらされ、検査の責任者と良心との板挟みになったのではないでしょうか。これも原発をめぐる重圧に押し潰されたと言っていいのではないでしょうか。
働く人たちのためにも政策の転換を
何か起こるたびに現場の労働者は、「原発推進」、「核燃料サイクル推進」の錦の御旗の下に沈黙し、心身をすり減らされていく中で、押し潰されていく現状があります。また自殺に追い込まれても、原因も明らかにされないまま闇の中に葬り去られています。死者が何を訴えたかったのか、私たちはもっと謙虚に耳を傾けるべきではないでしょうか。
原発は1日止めると1億円の損失と言われています。また相次ぐトラブルで運転の長期停止となった再処理やもんじゅの費用負担も莫大な額に上り、これ以上経費負担に余裕のない中で、一方では安全性が求められるという厳しい状況があります。それらの責任がすべて現場に降りかかってきています。ギリギリの中で進められる原子力発電や核燃料サイクルは、もはや矛盾だらけです。政策の転換が、働く人たちのためにも早急に求められています。
青天井の核燃料サイクルの経費
いったいどれだけ費用がかかるのか
現在の日本の原子力政策の基本は、原発で使い終わった核燃料を全て再処理し、ウランとプルトニウムを取り出して、もう一度原発や高速増殖炉で使用しようとする計画です。しかし、これらの計画の中核を担う「六ヶ所再処理工場」や「もんじゅ」は、相次ぐトラブルで止まったままです。その間、経費も膨れあがる一方となっています。政策の正当性も問われています。
建設費が青天井の再処理
六ヶ所再処理工場は、高レベル放射性廃棄物のガラス固化施設のトラブルで08年末から試験は中断したまま。当初、完成時期は1997 年とされていましたが、これまでに工場の完成が18 回も延期され、2012 年10 月に完工が延びました。しかし作業も遅れ、新たな試験でのトラブルも予測されるなどさらに大幅な延期が余儀なくされる可能性が大と言われています。すでに完成の遅れによって、新たな負担が2000億円に上ることが明らかにされました(4Pの記事参照)。さらに遅れが出ればますます負担が増すばかりで、昨年の4000億円もの増資すらアッという間に食い尽くしてしまうのではないでしょうか。これまで六ヶ所再処理工場の建設費は、当初7600億円の予算でしたが、すでに3倍の2兆2千億円を超え、まだまだ経費がかかることが明らかなっています。その負担は、全て私たちの電力料金に転嫁されています。
「もんじゅ」は1日5500万円の無駄遣い
もんじゅも、95 年12 月のナトリウム漏洩火災事故以来、14 年5ヵ月振りに昨年5月に稼働再開となりましたが、8月26日に炉内中継装置(燃料交換装置)の落下事故によって再度停止を余儀なくされました。再開は2012 年8月とされていますが、トラブルを起こした炉内中継装置の引き抜きや炉内損傷の検査などの課題が山積し、さらに延期が予想されています。
もんじゅは、すでに1兆円もの国費が投入されても完成していません。さらに今回の停止によって1日5500 万円も維持費がかかり、年間200 億円以上もの国費が、ただもんじゅを維持するためだけに浪費されています。その上、復旧作業に約9億4千万円を要し、新しい炉内中継装置の設置に約4億4千万円、付随する関連作業を含めれば、さらに追加負担が増えることになっています。さらに実用化(2050年ころに実用化の予定)に向けた開発にどれだけ経費がかかるのかわかりません。
核燃料サイクルは、まさに湯水のごとく莫大な資金が投入されていますが、いまだ実現されていません。こんなムダが続いていても誰もその責任をとろうとしていません。企業や政府にとっては、電力料金や税金に転嫁すれば済むかもしれませんが、大幅な国民負担増を強いる核燃料サイクル政策は許せません。再処理やもんじゅといった核燃料サイクル路線は、相次ぐトラブルや莫大な費用、その存在意義、危険性などによって破綻は明らかになっています。これ以上破綻の上塗りを続けることは明らかに間違いです。不確定な費用がますます膨らむ原子力政策の転換がいま求められています。
11年度の財政赤字が過去最大の1兆6500億ドルとなる。国防費を除く政策経費伸びを5年間凍結。
鳩山由紀夫前首相が共同通信とのインタビューで、「在沖縄海兵隊の抑止力について、辺野古しか残らなくなったときに理屈付けしなければならず、『抑止力』という言葉を語った。方便といわれれば方便だった」と弁明した。
米議会付属議会調査局が1月にまとめた日米同盟に関する最新報告書で、日本の憲法9条で集団的自衛権を行使できないとしている日本政府の解釈が日米の防衛協力を進める上での障害になっていると協調していることが明らかに。
同日ロシア国防省幹部が仏と共同建造するミストラル級強襲揚陸艦4隻のうち2隻を極東に配備することを明らかに。
名古屋市長選との投票が行われ、知事に大村秀章前自民党衆院議員、市長に現職の河村たかし市長が当選。市議会の解散を問う住民投票は解散が過半数に。
カンボジア北部の世界遺産「プレアビヒア」周辺で、タイ、カンボジア両軍が交戦。カンボジア側の民間人1人、兵士2人が死亡、負傷者12人。タイ軍兵士23人が死亡とカンボジアが発表。
原水禁では2009年に、「『原子力政策の転換』を求める署名」の取り組みを行い、同年10月2日に570,417筆を経済産業省へ提出しました。しかし、最終集約後も署名が届けられ、その数が29,102筆となり2月2日、これを内閣府へ提出しました。
応対した担当者には署名とともに、前回の提出後にまとめられたパンフ「原水禁エネルギープロジェクトからの提言」も手渡し、政府に対してエネルギー政策転換への取り組みを行うよう働きかけてほしいと要請しました。今回の提出で署名数は合計599,519筆となりました。
●脱原発への政策転換をめざして
原子力政策決定の現場で論陣を張る
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸
脱原発への政策転換をめざして
原子力政策決定の現場で論陣を張る
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸
原子力政策大綱の見直しを求める声
「破綻したプルトニウム利用―政策転換への提言―」(緑風出版)を刊行したのは昨年6月でした。これは原水禁と原子力資料情報室でまとめて世に問うたものですが、この中で6項目の「核燃料サイクル政策の転換を提言」しました。その第1項目が「原子力政策大綱の改定」でした。原子力委員会は昨年7月から見直しの必要性について、有識者23人に対して意見聴取を行い、「ご意見を聴く会」を福井市、青森市、東京の3ヵ所で主催し、市民から意見募集を実施してきました。私は7月の第40回原子力委員会で意見陳述しましたが、その際、上記の本の提言を意見書に載せました。
福井市では、原発反対福井県民会議の小木曽美和子さんが意見を述べました。また、一般からの意見募集では、1,205人から1,520件の意見が寄せられました。原水禁と原子力資料情報室も改定を求める意見の集中を呼びかけました。こうした声が功を奏して、昨年12月から改定作業が始まり、私は前回に続き、新大綱策定会議(新策定会議)の委員に選任されました。
原発推進は温暖化防止につながらないことを主張
新策定会議は、議事録の作成までは会議の映像をホームページ上で速やかに公開する、配布資料は会議当日のうちに公開し、市民からの意見を常時受け付けて議論に反映させるという点が新しい試みです。
読者のみなさんも、原子力委員会のホームページから意見をお寄せください。脱原発の立場は少数派ですから市民の意見は重要です。第1回会合から第2回会合(1月14日)までの間に11件の意見が寄せられましたが、すべて原発推進に反対する意見でした。私にとって勇気づけられる力強い支援となります。
新策定会議で想定される推進基調は、①温暖化防止に原子力をいっそう活用する、②原子力輸出に官民挙げて積極的に取り組む、③核燃料サイクルでは使用済み燃料の中間貯蔵の推進、高速増殖炉開発の継続、④高レベル放射性廃棄物の処分場へ国からの申し入れへの道筋などだと推察しています。これらに対して、上記の提言に沿った論を展開していきたいと思います。
特に、原発と核燃料サイクルに焦点を当てて書きます。経済産業省は昨年6月、「エネルギー基本計画」をまとめ、温暖化防止を口実に2030年までに14基の原発新増設をめざし、設備利用率を90%に高めると踏み込んでいます。これに対し、再生可能エネルギーは最大限の導入をめざすという抽象的な表現に留まります。
原子力を中心に据えていてはCO2排出削減につながらないことを新策定会議で、かなり丁寧に主張しました。そして、原水禁エネルギープロジェクトがまとめた提言「持続可能で平和な社会をめざして」を委員に配布して、省エネルギーを基本に再生可能エネルギーを基幹とするように政策転換を進めるべきとのメッセージを発信しました。3月ごろまではエネルギーと原子力に関する話が続くので、この主張をさらに補強していくつもりです。
2006年出版の「原子力政策大綱批判」
核燃料サイクルからの撤退を訴えていく
核燃料サイクルでは破たんの様相がいっそう明瞭になってきています。六ヶ所再処理工場は国産技術であるガラス固化処理でつまずいたまま数年が経過しています。日本原燃の対応は付け焼刃でしかなく、2012年10月の竣工は誰も真に受けていません。経年で施設の老朽化は進み、トラブルが増えると考えられます。
高速増殖炉「もんじゅ」は改良工事入りしたとは言いながら、警報装置のトラブルが相次ぎ、かろうじて出力0%の炉心確認試験を済ませたものの、燃料交換に使う炉内中継装置の落下事故によって、次の段階の試験は半年以上延期されました。他方、もんじゅは一昨年、昨年と二度にわたって事業仕分けの対象となりました。
核燃料サイクルの議論は3月ごろとなりますが、前述の書籍「破綻したプルトニウム利用」で行った提言に沿って、再処理、高速増殖炉、プルサーマルなどからの撤退を主張していきます。加えて、再処理の総合評価を現時点で再度行うことも求めていきたいと考えています。
2011年、核軍縮は膠着した状況で幕開け
2010年が核軍縮への期待でスタートしたのに対し、今年は核兵器をめぐってどう展開するのか、不透明な幕開けとなりました。
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核問題はこじれたまま越年しましたが、今年に入って、北朝鮮は無条件で南北対話の早期再開を提案しました。しかし延坪島(ヨンビョンド)砲撃に責任ある措置を求めている韓国は、1月5日に訪韓した米国のボスワース北朝鮮担当特別代表らとの会談で、6ヵ国協議再開には南北関係の進展が必要だとしながらも「良い条件とタイミングが必要」として、簡単に応じる気配はありません。
しかし、このまま膠着した状況が続けば、北朝鮮の核兵器開発が進むことは確実で、ゲーツ米国防長官も北朝鮮の核ミサイルは「5年以内に米国の直接の脅威になる」と危機感を表明しています。結局、朝鮮半島核問題を切り開く鍵は米国にあって、その米国がどう動くのか。1月18日~21日の胡錦濤・中国国家主席の訪米で、新しい展望が開けることを私たちは期待するものです。
米中協調の一方で新たな軍拡の動き
現在の米国は極端な財政危機の中にあり、経済は中国に頼らざるを得ません。当然軍事的にも中国との協調が求められます。こうして今年1月、ゲーツ長官は3年ぶりに中国を訪問しました。しかし中国人民解放軍はゲーツ訪中に合わせて、次世代のステルス戦闘機「殲20」の試験飛行を行い、軍事力のさらなる進展を誇示しました。
これに対する米国は、ゲーツ長官が訪中前の1月6日に記者会見を行い、2012年会計年度(11年10月~12年9月)から5年間の国防予算を780億ドル削減の発表とともに、部隊の統廃合、装備調達の効率化などで1千億ドルを捻出し、この費用で核兵器搭載可能な無人偵察機の開発やミサイル防衛など、優先順位の高い部門に集中的に投資すると語りました。
米国が新しく開発する核搭載可能な無人長距離爆撃機は、昨年1月に米国が発表した「4年毎の国防見直し」(QDR)で強調された、「アンチ・アクセス環境下―接近攻撃できない状況での戦闘」に対応する、今後の米空軍の中心となると位置づけられています。
米中間では協調の一方で、熾烈な軍拡競争が始まりつつあると言えます。
核なき世界へ向けた取り組みは続く
1月6日、一部マスコミで中国人民解放軍の戦略核ミサイルを扱う部隊「第2砲兵部隊」で、「核保有国との戦争で、国家存続の危機に置かれた場合、核兵器先制使用を検討する」との理論を部隊内で周知していると報じました。これは中国政府が、これまで「いかなる状況下でも、核の先制使用はしない」と発表してきた立場の変更ではないかと言われています。
しかし中国の核先制使用論は、核ミサイル保有国から通常兵器で攻撃され、戦況が国家存続の危機に直面した場合と限定しています。これまで中国が言明してきた「いかなる状況下でも」核先制攻撃はしないという立場からは外れますが、米国を始め他の核保有国も、核保有国に対しては一度も核先制使用をしないと言ったことはありません。
中国の洪磊(ホンレイ)外務省報道官は翌7日、「中国はいかなるとき、いかなる状況でも核先制使用はしないと厳粛に約束している」「報道は根拠がなく、他に魂胆があるものだ」と語っています。確かにマスコミ報道は昨年来の反中国路線に乗ったものと言えます。
しかし、核ミサイルを保有する国は、核ミサイル配備のその日から、一部の戦術核を除いて、標的に照準を合わせて配備しているという現実があります。私たちは昨年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、最終文書が作成される課程で、多くの原案が核保有国の抵抗で訂正・削除されたことを思い起こすべきです。
それでも最終文書の冒頭では「すべての国は『核兵器なき世界』を達成するという目標と完全に一致する政策を追求することを約束する」と述べています。これは私たちの希望です。私たちはこの目標に向かって、運動を広げていかなければなりません。そして日本では「核の傘」からの早期な離脱が求められています。
しかし2011年を迎えて、日本は軍縮とは逆の方向へ向かいつつあります。1月5日にはアジア太平洋からインド洋に及ぶ安全保障問題を討議する「日米印戦略対話」創設を決定。1月10日には日韓防衛相会談がソウルで行われ、日米物品役務相互提供協定(ACSA)、軍事情報保全に関する規則を網羅的に定める軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結に向けた協議入りに合意しました。昨年12月に政府が閣議決定した「新防衛大綱」「中期防衛力整備計画」などに対する、私たちの運動はまだまだ続きます。