2010年12月アーカイブ
12月23日、茨城県水戸市内で「東海第二原発のプルサーマルに反対する連絡会議」の結成総会と記念講演が行われました。東海第二原発では2015年までにプルサーマルの導入が計画されています。それに対して地元を中心に広く関東圏へも連絡会議への参加・賛同を求め、運動を拡げようというものです。
総会では、共同代表として川口玉留・茨城平和擁護県民会議会長をはじめ河野直践・反原発茨城共同行動代表、相沢一正・脱原発とうかい塾代表など5名を選出し、当面の活動方針として集会、学習会、シンポジウム、宣伝活動、事業者・自治体への申し入れなど、プルサーマル計画の撤回を求め、運動を強化することを確認しました。
続く記念講演では、元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二さんから「ますます危険を高める日本の原発-プルサーマルを中心に」と題してお話を伺いました。その中で小林さんは、「プルトニウム利用の本命は、プルサーマルではなく、もともと高速増殖炉であり、ただ単に、『余剰プルトニウムを持たない』とする国際公約でやっているだけ。六ヶ所再処理工場やもんじゅの破たんを隠ぺいするものでしかない」と訴えました。
また、資源節約の利点もほとんどなく、安全余裕を削り、わざわざ高い核燃料を使うことなど何のメリットもないことが指摘されました。さらに、使用済みMOX燃料の扱いについてまったく決まっていないことが大きな問題であり、そのことからもプルサーマル計画は破たんしていると訴えました。
■「『東海第2原発のプルサーマルに反対する連絡会議・結成総会』県民アピール」はこちら
●連絡会への入会と賛同も募集しています。
茨城県民をはじめ、日本中の人々を震撼させた1999年9月のJCO臨界事故から11年が経過しました。この間、被爆した周辺住民は健康に対する不安を抱え続けて生活してきました。被爆した住民がJCOに対して起こした裁判は、企業の論理そのままに住民の訴えを退けました。
史上最悪の原子力事故であったチェルノブイリ事故は25年が経ち、世界の人々は原子力事故災害の恐ろしさを肌で感じ、脱原発社会へ向けて歩み始める機会となりました。しかし、今なお危険と背中合わせの中で、原子力利用は続けられています。
日本はプルトニウムを約32トン保有し、今なお増え続けています。政府は、このプルトニウムの消費を推し進めるため、ウラン燃料を燃やすように設計された通常の原発で、プルトニウムとウランの混ぜ合わせたMOX(モックス)燃料を燃やすプルサーマル計画を進めています。
しかし、MOX燃料を原発で燃やすことは、これまでも危険性のある原発がより危険性の高いものになります。
プルサーマルは、無謀で矛盾に満ちています。
第一に、プルサーマルでは、燃料棒破損や原子炉の局所的な出力上昇が起きたり、中性子線増加による炉材の劣化が進んだりします。つまり、事故が起きやすくなるのです。
第二に、東海第2原発は、1978年に運転を開始し、すでに32年が経過した老朽原発であり、最近は事故・トラブル・運転停止を頻繁に繰り返しており、本来運転を止める時期となってきている原発でのプルサーマル計画は絶対やめさせなければなりません。
第三に、大事故が起きた場合、猛毒のプルトニウムやアメリシウム、キュリウムといった超ウラン元素の放出量が多いため、被害が及ぶ距離も拡大し、首都圏住民にまで健康被害の規模が拡大します。また、平常運転時でも放射性ガスの環境中への放出量が増えるのは確実で、労働者の被曝も増えて行きます。
第四に、プルサーマルが最終的に生み出すものは、使用済MOX燃料です。これは、通常のウラン燃料よりも発熱量が高いため、50年以上は使用済み燃料プールで保管しなければならず、100年間も冷却し続けてからやっと通常のウラン使用済み燃料と同じくらいの発熱量になります。こんなにも危険でやっかいな高レベル使用済み燃料が東海村に溜まっていくことになり、こんなことは絶対に許されません。
第五に、プルサーマル計画は、六ヶ所再処理工場での高レベル放射性廃棄物ガラス固化施設のトラブルによる計画延期や高速増殖炉もんじゅの度重なる事故により、すでに開発計画そのものが破綻しています。
このような何一つメリットのなく、住民を放射能の危険にさらすプルサーマル計画は一刻も早く中止すべきです。国内で、余っているプルトニウム利用の辻褄合わせとして、計画されたものに過ぎなく、日本原電は速やかにプルサーマル計画を撤回すべきです。
本日、ここに集まった私たちは、プルサーマル反対を改めて表明するとともに、多くの県民の方々にも、計画の撤回を求める運動に対するご理解とご協力を呼びかけるものです。
2010年12月23日
東海第2原発のプルサーマルに反対する連絡会議・結成総会
インドへの原子炉の供給や、第5世代と呼ばれる最新戦闘機の共同開発協力、ロシアの石油・天然ガス開発へのインドに対する協力を約束。
落下した中継装置の回収作業のため調査チームの設置すること、40%出力確認試験を11年度中に開始し、12年度の本格運転開始の行程表見直しを表明。
米軍増派とISAF(国際治安支援部隊)の尽力でタリバンの拠点・南部のカンダハル、ヘルマンド両州の治安回復、アフガン国軍の能力拡充など成果を強調。11年7月の米軍撤退開始に状況が整いつつあると指摘。
1 2月9日に中国の戴秉国・国務委員が訪朝し金正日総書記と会談した際、6ヵ国協議主席代表による緊急会合に賛成するも、非核化に向けた行動が先決とする米韓の主張は受け入れない。無条件開催の立場を表明していたことが明らかに。
空自第1補給処(千葉県木更津市)が05年~08年度の4年間に311件、約75億6千万円のすべてが官製談合。内216件は航空費修理費などから約60億円の流用も判明。自衛隊OB天下り先企業との癒着構造明らかに。外薗健一朗航空幕僚長退任へ。
米政府が地球上のあらゆる地域に1時間以内にピンポイント攻撃出来る「通常型即応グローバルストライク」(CPGS)の研究開発に、2011会計年度(10年10月-11年9月)から5年間で10億ドル(約834億円)を大幅に上回る額を投じる計画を明らかに。
ロシア外務省、北朝鮮の朴宜春外相がモスクワを訪問しラブロフ・ロシア外相と会談した際に、ラブロフ外相が北朝鮮のウラン濃縮に深い懸念を表明し、核・ミサイル開発を禁じた国連安保理の決議を順守するよう求めたと発表。
武特別代表が6ヵ国協議主席代表の緊急会合を求めるも、斎木局長が北朝鮮の自制や非核化への取り組みが先決との立場を主張、合意に至らず。
メキシコ・カンクンで開催されていたCOP16(国連の気候変動枠組み条約第16回締約国会議)が、発展途上国の対策を支援する「グリーン機構基金」新興国を含む排出削減検証の仕組みなどを盛り込んだ「カンクン合意」を決議して閉会。京都議定書の暫定的延長を多くの国が求めたが日本は強く反対。2012年に南アフリカで開催されるCOP17で最終合意を目指す。
両国は朝鮮半島を安定させる必要性、海上の安全確保の重要性で一致。ゲーツ米国防長官が12年1月10日-14日まで訪中することも合意。
『世界』の2011年1月「原子力復興という危険な夢」特集号に、原子力のたそがれ──米・仏・独のエネルギー政策分析から浮かび上がる再生可能エネルギーの優位性として、マイケル・シュナイダーさんの10月13日に参議院会館で開かれた報告会を元にした記事が掲載され、本日発売です。その時の発表資料などはこちらに掲載しています。
参考:
1995年12月8日に起こったナトリウム火災事故から15年目のもんじゅ。今年5月、14年5ヵ月ぶりに再開されましたが、わずか3ヵ月後の8月に、炉内中継装置が炉内に落下する事故が起こり、現在それを取り出すこともできず、またもや停止したままです。日本原子力研究開発機構(原子力機構)は、来年度中には40%出力運転に入ると表明していますが、そもそもどのように炉内中継装置を取り出し、炉内の安全点検をするのかも明らかになっておらず、今後長期にわたって停止し続けることが濃厚となっています。
そのような中で、12月4日、「‘10 もんじゅを廃炉へ!全国集会」が現地の白木浜と敦賀市内で、約700人の参加を得て開かれました。
それに先立って、前日の3日には、福井県知事と敦賀市長に対して「住民の命を預かる自治体として「もんじゅ」の運転を認めないように強く要請します」とする申し入れ書を、「‘10もんじゅを廃炉へ!全国実行委員会」(原水禁、原子力発電に反対する福井県民会議、原子力資料情報室など5団体で構成)提出しました。
福井県庁では対応した担当者に申し入れ書を手渡す
敦賀市役所では河瀬一治敦賀市長(右)に直接申し入れ書を手渡す
夕方には、現在各地で進められているプルサーマル問題を中心に「全国プルサーマル核燃料サイクル全国交流会」が開かれました。これまで運転を強行された玄海原発(佐賀)や福島原発(福島)の現地から、これまでの経過と反対運動の取り組みが報告され、この冬の定期点検にかけてMOX燃料が装荷されようとする高浜原発(福井)、浜岡原発(静岡)からは経過とともに抗議の声を全国からあげて欲しいとの要請がありました。また、今後予定されている島根原発(島根)や志賀原発(石川)、泊原発(北海道)などからも現地での反対運動を強化していくことが報告されました。その他にも六ヶ所村の再処理工場やMOX加工工場の問題やプルトニウム輸送の問題が訴えられました。
交流会で各地からの訴えに真剣に耳を傾ける参加者ら
4日には、もんじゅが見える白木浜において現地抗議行動が、全国から約850名の参加で行われました。主催者のあいさつの後、もんじゅゲート前までデモ行進して、抗議申し入れを行いました。(写真はゲート前に立つ日本原子力研究開発機構職員)。
左手にある白い建造物がもんじゅ(白木浜より撮影)
その後、敦賀市内のプラザ萬象で、全国集会が開催されました。主催者を代表して原子力発電に反対する福井県民会議の小木曽美和子さんから、もんじゅの運転再開以降、誤警報などのトラブルが相次ぎ、この8月の炉内中継装置の事故へとつながったこと。また、旧動燃の時代から繰り返される事故に対する組織対応など、安全を軽視した体質は何ら変わっていないことが指摘され、「原子力に頼らない社会を目指そう」と訴えがありました。
各地の動きとして、青森から再処理工場の現状、隣接する石川からは、志賀原発のプルサーマルの現状が報告され、大阪の市民グループ「ストップ・ザ・もんじゅ」による、空や海での放射能の拡散状況を調べる取り組みが紹介されました。その中で、風船では遠く千葉まで届いたこと。海では海流に乗って青森や北海道まで調査票が流れていったことが報告され、福井だけの問題でないことが明らかにされました。
フリージャーナリストの鈴木真奈美さんからは、「世界の高速増殖炉の動き」が報告されました。世界各国で、高速増殖炉路線からの撤退が進む中、日本だけがその流れに逆行しており、どの国も失敗を繰り返してきた歴史をみればわかるように、日本も早晩そのようになるとの指摘がありました。
最後に、元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二さんは、科学者の立場から今回の事故を分析しつつ、もんじゅにはこれまで1兆3300億円の国費が投入され、それ以外にも関連する研究・開発費と称して、5000億円が別途投入されていることが指摘されました。さらに、今後も維持費として、年間200億円もの税金が湯水のごとくつぎ込まれることも問題であり、もんじゅはもう廃炉にするしかないと訴えました。
集会決議を採択した後、参加者は敦賀駅まで「もんじゅを廃炉に」と訴えてデモ行進を行いました。
■福井県知事宛て申し入れ書はこちら(PDF)
■敦賀市長宛て申し入れ書はこちら(PDF)
■集会決議文はこちら(PDF)
1986年度から始まった10回目の実働演習で、陸海空自衛隊から約3万4千人、艦艇約40隻、航空機約250機、米軍は約1万人、艦艇約20隻、航空機約150機が参加。迎撃ミサイルを搭載した日米のイージス艦も展開。日本のPAC3配備基地も迎撃態勢と過去最大の演習。韓国軍もオブザーバーで初参加。
2010年12月1日
関西電力株式会社
代表取締役社長 八 木 誠 様
原子力発電に反対する福井県民会議
代表委員 吉 村 清
同 中 嶌 哲 演
同 田 嶋 公 人
高浜3号炉MOX燃料装荷に関する申入れ
関電高浜3号炉は、今日、明日にもMOX燃料が装荷され、12月中には運転を開始すると伝えられています。40年超運転に入った敦賀1号機、美浜1号機をはじめ多くの老朽炉がひしめき、その安全性確保が最優先されるべきときに、プルサーマル実施の新たな危険を持ち込むことに反対します。
私達は、軽水炉でプルサーマルを実施することの危険性について、99年9月のBNFL社製MOX燃料高浜搬入時から指摘してきました。国内で実証試験も経ていないことの住民の不安をまったく無視した計画が、装荷によって実施へと大きく動きます。
プルサーマルは軽水炉原発で発生した使用済み燃料の行き場対策であることは明白です。しかし、実施すれば、使用済みMOX燃料の処分はますます迷路に入りこんでしまうことは間違いありません。
複雑な使用済みMOX燃料の処分方法は、まだ決まっていません。先進国フランスでさえ、いまだに処分できず、ラ・アーグ再処理工場に保管されています。搬出先予定としていた第2再処理工場については、「05年原子力政策大綱で2010年頃から検討開始」から「これから10年で検討する」(近藤駿介原子力委員長発言)に大幅に後退しました。
こうした長期に搬出先も決まらない中でプルサーマルを先行させることは、実施した高浜原発敷地内に半永久的に保管せざるを得ないことになります。
先行き不透明な処分問題をあいまいにしたままのプルサーマルは、実施すれば確実に発生し、地域住民の将来にわたる重い負の遺産となるので、まずは装荷しないよう心から要請します。
以上
●「第五福竜丸の国」が果たすべき役割とは
マーシャル諸島共和国 駐日大使 ジベ・カブアさんに聞く
●エネルギー・プロジェクトの提言まとまる
「持続可能で平和な社会を」をめざして
原水禁副議長 原子力資料情報室共同代表 西尾 漠
●新しい国連決議を採択、重要な被害者支援
「劣化ウラン兵器禁止」へさらなる取り組みを
ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)運営委員 振津 かつみ
●戦略的互恵は民の犠牲の上には成立しない
非軍事外交が基本のアジア共生を
「第五福竜丸の国」が果たすべき役割とは
マーシャル諸島共和国 駐日大使 ジベ・カブアさんに聞く
藤岡副事務局長と握手するカブア駐日大使(右)
【プロフィール】
ハワイ大学卒業後、教育、外務、資源開発、環境部門の役職を歴任。ナモドリック環礁選出の上院議員を経て2008年より現職。カヌーの設計や制作、作曲など多くの趣味を持つ。60歳。
今年の3.1ビキニデー集会(静岡市)に出席し、「マーシャル諸島の核被害について」と題する特別報告を行った。冷戦時代に核実験が繰り返されたマーシャル諸島の「ビキニ環礁」は今年、広島の原爆ドームに続き、核兵器の惨禍を伝える「負の遺産」として、世界遺産に登録された。
――ビキニ被災から56年。マーシャル諸島周辺ではまだ健康被害を受けた方は多くいらっしゃいますか。
被害を受けた人数を、具体的な数字で挙げることはできません。ただ、健康面での異常に苦しむ人々は非常にたくさんいます。若い人が多く被害を受けました。核兵器による放射能被害というのは、ご存じのように、「スロー・デス」(ゆっくりした死)です。いつ、どのような健康障害が出て死に至るのかもわかりません。放射能による被害だと証明することも難しいのです。
67回も行われた核実験後で、多くの島々が被害を受けました。ビキニ、エニウェトク、ロンゲラップ、ウトリックの4島のみ補償があったのですが、その他の多くの島々も被害を受けています。白血病や甲状腺ガンなど、明白に放射能が原因の病気も多いのです。マーシャルの人々はキリスト教の影響もあり、とても謙虚な人々です。米国政府の言うことをそのまま聞いてしまいます。核実験後の医療についても、言われるがまま、特別な注射を受けていました。後でわかったことですが、放射能の影響を調査する実験台にされていたのです。マーシャルでは、亡くなる人が相次いで、ほとんど何の疑いもなく"治療"を受けました。島の人々は、多くの人が亡くなるのを目の当たりにしてようやく、核実験と自分たちの体の異常を結びつけて考えるようになったのです。
その後、米国から受け取った補償は十分なものではありませんでした。被害の状況もわからないうちに、非常に少ない金額で合意してしまったのです。合意の後になって、様々な被害が明らかになってきました。汚染された土地の除染などは補償に含まれておらず、農作物を育てることもできませんでした。米国は、私たちの要求を全く聞かないのです。私たちに必要なのは、米国にノーと言える強力な政治的リーダーです。米国との関係を今のような状態ではなく、新しいものに変えなくてはいけません。私たちの島々を取り戻すために、ヒバクシャやその家族の連帯が必要です。
文化的・社会的にも豊かだった島々の人は、汚染された土地を追われ、環境の違う島に移され、それまでの生活を奪われてしまいました。ビキニ環礁の住民が移住させられたキリ島などは、環礁でない単一の島で、全く生活環境が違います。
――汚染は現在も残っているのですか?
除染作業のされたところもありますが、全く不十分で、汚染された島の人々は、元の島に戻ることができていません。日本は自然が残っており、豊かな土壌で、いろいろな農作物をつくることができますね。しかし、マーシャルの多くの島では、作物がつくれません。根本的な食べ物の安全保障がないのです。全部輸入された、本来の文化的な背景のないジャンクフードを食べさせられて、多くの人が健康を害しています。与えられた食べ物を受け入れて、弱くなっているのです。
――日本では広島と長崎への原爆投下から65年が経過して歴史の風化も言われています。
日本はこれまでずっと、核兵器を拒否してきました。ところが現在、武器輸出をしない原則を変えようとしているようです。米国に追随してなのか、日本でも核武装しようという意見を耳にします。悲しいことです。
ヒバクシャの声をもっと皆さん聞くべきです。政治の世界に信頼というものがなくなっているように思えます。小さな島々の領有をめぐって大国同士が争っている。島や海は誰の所有物でもないはずです。島の人が漁をするのが当たり前ではないでしょうか。魚もみんなで分けて食べればよいのではないでしょうか。鉱物資源も一緒に開発すればいいのではないでしょうか。島の領有問題に私が助言するとすれば、フィフティー・フィフティーです。ノー・モア・ファイト。
オーストラリアとハワイの中間に位置するマーシャル諸島
――日本はミクロネシアやマーシャルを何十年も占領していました。
「占領」と言われましたが、私たち島の人間は、力で抵抗したことはありません。常にウェルカムでした。ドイツの人々が島に来て、家の鍵がほしいと言ったので渡しました。その後、日本人がやって来たときも同じでした。そして米国がやってきたわけです。資源を争う大国が問題を持ち込んできたのです。
しかし、昨年4月のオバマ米大統領によるプラハ演説は、世界の指導者として、巨大な武力を持つ米国の大統領として、初めて勇気を持って核廃絶について発言をしたものだと感じています。
――そのプラハ演説に対する評価についてもう少し聞かせてください。
演説で「核なき世界」を語ったこと。そのことについては尊敬しますが、決して十分というわけではありません。演説は演説に過ぎませんから。それに続いて軍事面、政治面の現実が追いつかなければいけません。イラクやアフガニスタンでの戦闘が終わらなければなりません。
戦争、テロリストというものを生み出す背景には、貧困や病気、豊かな国がますます豊かになり、他の国から資源を奪っていく、過剰などん欲さに支配されていることがあると思います。どん欲で巨大な企業が、世界の金融システムの中で世界の人々から豊かさを奪っていくシステムが進んでいます。生物の多様性の維持もそうですが、富を分かち合うということが大切です。先住民の利用してきた生物の遺伝子情報、たとえばマーシャルでしか見つからない珊瑚のある種の生物から、ガンの治療に役立つ薬品が見つかったのですが、先住民には何の権利も認められていません。
――核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドが日本との原子力協力をめざしています。
NPTには、核拡散に関して国際的に議論ができるという存在意義があると思います。これを言うのは気が引けるのですが、日本には、オバマ米大統領のプラハ演説に見られるような、勇気を持った政治家がなかなかいないようです。しかし、日本には世界に向けて果たすべき大事な役割があるのではないでしょうか。立ち上がって発言するべきだと思います。世界に対して、武器の生産、持ち込み、使用をやめるように。日本に、米国の軍事基地はいらないと主張することです。
──日本は憲法第9条がありますが、米国による抑止力に依存するとしています。
これは法律家や政治家のやるゲームです。抑止力というのは一つの神話ではないでしょうか。これが必要だ、米国に依存しなければならない、というのは法律家や政治家によって人々の思考にすり込まれた考え方でしかないと思います。その結果、米国に対して、武器を持参して日本に来てほしいと言っているのですから。今日は、マーシャル諸島の状況を知っていただきたいのと、核兵器の問題についてメッセージを届けたいと思い、インタビューをお引き受けしました。マーシャル諸島の核実験では第五福竜丸をはじめ、日本人も被害を受けました。マーシャル共和国と日本の友好で、核兵器のない世界をめざしましょう。
〈インタビューを終えて〉
成田からグアム経由で約9時間。サンゴが堆積し南洋群島に浮かぶ島国、マーシャル共和国は南太平洋の真珠の首飾りとも呼ばれている。約三千年前、火山島の周りに溜まったサンゴ(リーフ)が小さな島を形成した。しかし、1946年以降、米国によって67回の核実験が繰り返され、2010年には、負の遺産として世界遺産に登録された。核実験による被害は現在も続き、汚染された島では作物もつくれない。日本が核兵器廃絶と米軍基地はいらないというメッセージを発信するよう期待したいと語るカブア大使とマーシャル共和国になんとしても応えていきたい。〈藤岡 一昭〉
エネルギー・プロジェクトの提言まとまる
「持続可能で平和な社会を」をめざして
原水禁副議長 原子力資料情報室共同代表 西尾 漠
エネルギーは人類生存に不可欠な公共財
原水禁は今年7月、原子力資料情報室とともに原子力政策の転換に向けた提言を作成、「破綻したプルトニウム利用」(緑風出版、本誌10月号で紹介)として刊行しました。それに続いて、より広くエネルギー政策の提言を行うため、「エネルギー・プロジェクト」を組織し、11月に提言書をまとめました。以下に、その骨子を紹介します。
プロジェクトは、めざすべきエネルギー政策の目的を「持続可能で平和な社会」の構築としました。特に「平和な」という言葉を加えたのは、エネルギーが人類の生存にとって不可欠な、いわば公共財であり、何人も政治的な理由や紛争などによって奪われることなく供給されなければならないと考えたからです。核兵器やその他の兵器への転用が可能なエネルギーの利用を排するだけでなく、平和な暮らしを壊さない、安全で民主的な利用を実現すること。それを含んでの命名であることは言うまでもありません。
消費の縮小が政策の基本
「持続可能で平和な社会」の実現には、エネルギー利用の効率化により消費を小さくした上で、平和に反し持続可能でもない原子力や化石燃料の利用から早期に撤退して、再生可能な自然エネルギーを中心とした需給を実現することが必要だと考えました。
目先の経済成長にとらわれず、将来世代にも安定的な雇用やエネルギー供給を保障し、少しでもよい環境を保障するものでなくてはならないのです。
エネルギー消費を小さくすることが持続可能な政策の基本です。日本のエネルギー構造を見ると、実際に利用されるエネルギーは、投入分の3分の1強でしかなく、3分の2弱は利用されない「損失」となっています。とりわけ発電時の損失(温排水として捨てられているもの)が大きく、損失全体の4割弱、発電量の1.5倍です。
コンバインドサイクル(複合発電)化や燃焼技術の向上により発電の効率を上げれば、この損失を小さくできます。利用段階での損失も、機器や利用システムの効率を上げることで小さくできます。
小水力発電機。小川でも発電可能(長野県辰野町・10年7月撮影)
2050年に脱原発・脱化石燃料を達成
自然エネルギーは、消費を小さくすることにつながるエネルギー源です。「スマートグリッド」(情報通信技術を用いた次世代型の電力網)などの考えを上手に取り入れることで、大規模電源より、かえって使い勝手のよいエネルギーとなる可能性を秘めています。自然エネルギーを「基幹エネルギー」として利用できるようにするべく、普及に努めていく必要があります。
次に、建設・計画中の原発は中止し、既設の原発は順次廃止していくべきです。寿命を定めて段階的に止めていくことを基本とし、大きな事故を起こした原発や、特に地震被災の危険性の高い原発は寿命前でも止めていくという考え方が順当です。
石炭火力については、出力が小さく効率の悪い老朽設備を廃止、新しい設備はLNGコンバインドサイクル火力(天然ガスを燃焼させることで効率よく発電する)への転換を図ることが望ましいと考えます。将来的には全ての化石燃料からの脱却をめざすべきです。
一つの例として「2050年エネルギー半減シナリオ」のグラフを作成しました。エネルギー消費量がこれまでの実績の最高値から半減するとしたものです。実際、すでに減り始めています。当面は化石燃料をより効率よく、よりクリーンに活用することから始めて、消費を削減し、脱原発・脱化石燃料を達成することが可能であることが示されています。エネルギー利用計画を改め、このような方向へ舵を切ることが必要です。
このような考えのもと、政府に求める具体的な施策の提案を行っています。報告書を、近く冊子として発表し、原水禁のホームページにも掲載する予定です。
新しい国連決議を採択、重要な被害者支援
「劣化ウラン兵器禁止」へさらなる取り組みを
ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)運営委員 振津 かつみ
反対したのは戦闘で使用した国々
10月29日、ニューヨークの国連総会第一委員会(軍縮・国際安全保障関連)で、新たな国連決議「劣化ウランを含む兵器・砲弾の使用による影響」が、前回(2008年)を上回る賛成多数で採択されました。同決議は、これまでの2回の決議(07、08年)と同じく「非同盟運動」(NAM)諸国の統一案として、NAMを代表してインドネシアによって提出されました。採決では、賛成136ヵ国(2008年は127ヵ国)、棄権28ヵ国、反対4ヵ国でした。反対したのは前回同様に、劣化ウラン兵器を戦闘で使用したアメリカ、イギリス、そして同兵器を所有しているフランス、イスラエルです。日本は07、08年に引き続き、今回も賛成票を投じました。
新たな国連決議には、劣化ウラン兵器を戦闘で使用した国に対し、使用地域と使用量をできる限り詳細に、要請があれば、影響を受けた国に報告するように求めるなど、これまでの決議から一歩前進した内容が盛り込まれています(主文第6項)。これまで米軍は、03年のイラク戦争などでの劣化ウラン兵器の使用地域や量を一切明らかにしていません。このような現状の下で、同兵器使用に関する情報を公開させることは、被害調査や被害者支援を進めるためにも重要です。
NGOの活動で盛り込まれた「情報公開」
「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)が決議に入れるよう求めた「予防原則に基づく劣化ウラン兵器使用の中止」などは、残念ながら今回の決議には含まれませんでした。しかし同兵器使用に関する「情報公開」が盛り込まれたことは、バルカン諸国への調査団派遣や、イラクのバスラでの疫学調査支援などを行い、「情報公開」の重要性を国内外で訴えてきた私たちNGOの活動の成果です。
今回の採決では、米英と軍事的同盟関係にある北大西洋条約機構(NATO)諸国でも、オーストリア、ドイツ、フィンランド、アイスランド、イタリア、ノルウェー、オランダが前回同様に賛成票を投じたのに加え、前回08年には棄権したベルギー、ギリシャ、ルクセンブルグ、スロベニアも賛成に転じました。劣化ウラン兵器をめぐる立場の違いによる、NATO加盟諸国間での亀裂がより深まったと言えます。また、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マルタは、2008年には棄権しましたが、今回賛成に転じました。このような欧州諸国での変化の背景には、ベルギー、ドイツ、オランダをはじめとする国々でのICBUWの活動や欧州議会への働きかけなど、この2年間に展開された欧州でのキャンペーンがありました。
情報公開を求め抗議する「イギリス劣化ウランネットワーク」
(イギリスの米大使館前・11月12日)
日本は被爆国としてリーダーシップを
日本政府に対し私たちは、原水禁をはじめ全国の皆さんとともに、「国連総会に向けた日本政府への要請」を提出し、外務省への申し入れを行うなどの取り組みを展開してきました。前決議より前進した内容を含む新決議に、日本政府が引き続き賛成票を投じたことを私たちは歓迎します。
対人地雷やクラスター爆弾と同じく「非人道的無差別殺傷兵器」である劣化ウラン兵器の禁止のために国際社会でリーダーシップを発揮することは、「被爆国」として、また諸国民の「平和的生存権」(憲法前文)を謳う憲法を持つ国としても、当然の国際的責務です。また日本政府は米国に対し、在日米軍基地内の劣化ウラン兵器の貯蔵や、イラク戦争などでの使用の実態を明らかにするよう求め、国民に公表し、在日米軍基地内にある同兵器の速やかな撤去をアメリカに求めるべきです。
世界の人々の力で「ウラン兵器の禁止」に向けて着実に前進していることを確認し合い、ウラン兵器の危険性、非人道性を広く訴え、さらに運動を強めましょう。
戦略的互恵は民の犠牲の上には成立しない
非軍事外交が基本のアジア共生を
軍事覇権国家から降りる米国
11月に日本で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で来日した米・オバマ大統領と菅直人首相は首脳会談を行い、日米同盟の深化を確認しました。
現在の米国は深刻な経済危機から抜け出すことができず、大幅な防衛予算削減が求められています。11月10日に米国の「財政責任・改革国家委員会」(民主・共和の超党派で構成)は、2015年会計年度までに軍事関連費だけで、1千億ドル(約8兆円)以上を削減する草案を発表しました。
そこには欧州・アジアに展開する在外米軍15万人の3分の1削減や、開発中の戦闘機などの開発中止・調達削減など、細かく削減案が述べられています。特に注目されるのは在韓米軍2万8千人のうち、1万7千人を削減し、在韓米軍基地整備計画まで見直そうとしていることです。これは第二次世界大戦後、米国が一貫して維持してきた軍事覇権の座から降り始めたと見ることができます。
このような米国に対し、在日米軍へ思いやり予算を付け、海兵隊のグアム移転費まで負担する日本の存在は、オバマ政権にとっては強い味方といえます。しかし11月の沖縄県知事選では伊波洋一、仲井真弘多両候補とも普天間基地の県外移設を主張していますから、菅首相の思惑に沿った同盟強化には至らないでしょう。
展望が開かれない中国、ロシアとの関係
APEC期間中、菅首相は胡錦濤・中国国家主席、メドベージェフ・ロシア大統領とも会談しました。日中首脳会談では戦略的互恵関係の重要性は確認しましたが、今後の展望は開けていません。日ロ首脳会談もお互いの立場を表明するだけに終わりました。
特に日中関係は、当時の前原誠司国交相が尖閣諸島沖で中国漁船船長の逮捕に踏み切った後、外務大臣に就任し、中国を刺激する発言を続ける中で、仙谷由人官房長官が修復に奔走するという状況が続きました。
さらに中国漁船船長逮捕に至るビデオが、海上保安官によってインターネットの動画サイト・ユーチューブに漏洩するという事件まで発生しています。この中で日本の弱腰外交という言葉、さらにビデオを漏洩した保安官に対して "愛国無罪"という主張まで出てきて、こうした発言を一部マスコミは煽っています。尖閣諸島は日米安保第5条の適用範囲だから、心配ないと考えているならば、実態を知らなすぎると言えます。
13億の民が動き始める中国
ここで日本や中国で生活する私たちの目線で問題を考えてみましょう。APECを前に、突然TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に日本が参加すべきだとの議論が出てきましたが、その中で日本の農産物は安全だ、日本農業はそれを世界に売り込む、攻めの農業を考えるべきだとの意見が出ています。それは中国の農産物は不安だという認識の裏返しでもあるでしょう。
しかし尖閣諸島沖問題で出てきたレアメタルは、ウランなどとともに採掘され、周辺に強い環境汚染を作り出しているのです。その汚染された地域で人々は暮らし、農作物をつくり、それを食べているのです。環境汚染を抑えようとするなら、レアメタルの生産は減少し価格も上昇するのは当然です。日本のマスコミはこうした問題をきちんと取り上げませんが、私たちはこうした事実を知るべきです。
さらに同じ目線で、中国の13億の人々が日本と同じ暮らしを求めることを考えましょう。経済的な豊かさに伴って、食料はもちろん、鉱物資源も大量に必要とします。尖閣諸島沖の石油・ガス資源に中国がこだわるのは、領土拡張主義とは異なる問題があることを理解しなければなりません。尖閣諸島の領有権で争うのではなく、資源を含めてどう共生していくかを考えるべきです。
国の在り方を考える
菅首相はAPEC首脳会議で、TPP交渉参加国の首脳会議にオブザーバーとして参加することを表明しましたが、農業政策をどうするのかは不透明です。日本の農業を破壊させない、守っていくことは安全保障の基本です。
日中関係は未だ不透明です。中国の国家主席だった鄧小平は「韜光養晦」(とうこうようかい=能力をひけらかさず、控えめに)という言葉を述べ、この言葉は世界の国々とつきあう際の基本姿勢ともなりました。しかし今や米国に次ぐ軍事力と経済力を誇る中国は、積極的に自己を主張し始めたと言えます。それに対応するのが、米国との一層の軍事協力や対中国戦力強化の方向では、安定的な日中関係はつくれないでしょう。
日本は憲法9条で、「武力による威嚇、又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」と謳っていることを強調し、お互いに領土ナショナリズムを刺激しない外交が求められます。
日米共同開発のミサイル防衛・海上配備型迎撃ミサイル(SM3ブロック2A)を欧州への売却を可能とするため、米政府が「武器輸出3原則」の見直しを、昨年9月に公電として日本政府に求めていたことが、内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」によって明らかに。