2010年10月アーカイブ
菅直人首相とベトナムのグェン・タン・ズン首相と会談しベトナムが進めている原発2基の受注、レアアースの探査、開発、精製を両国が共同実施、ベトナムの港湾建設などに、計790億円の円借款を供与などで合意し共同声明。
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)遺伝資源の利益配分ルールを定めた新しい国際協定「名古屋議定書」「愛知ターゲット」に合意。ただ多くの対立した問題を先送りし、今後の交渉にゆだねられた。
ビキニ環礁とエニウェトク環礁は1946年から1958年までの12年間に67回の核実験が行われました。いまなお放射能に汚染され、島に住んでいた人々は故郷に帰ることができません。そのマーシャル諸島ビキニ環礁が世界遺産に登録されました。
アメリカが広島・長崎に原爆を投下して65年、オバマ大統領が掲げる「核なき世界」への構想が核兵器廃絶を望む私たちに勇気を与えたこの時期に、核開発競争の象徴的な場でもあったビキニ環礁が、世界遺産となったことは歴史的な意味を持ちます。
この機会に、ビキニ環礁の歴史と核実験被害を、多くの方に知ってもらおうとパネル展が開催されることになりました。
日時:2010年10月20日~2011年3月20日 9:00~16:00
会場:都立第五福竜丸展示館(入場無料)※12/29~1/3、1/11休館
JR京葉線、地下鉄・有楽町線、りんかい線「新木場」駅下車、徒歩10分。
内容:パネル展示
「世界のヒバクシャ」を取材し続けるフォト・ジャーナリスト、豊崎博光さんによる写真(約30点)と解説パネルの展示。(資料提供:島田興生、監修:岩垂弘)。
会期中に核実験関連の映像上映と解説あり。(詳細未定)。
主催:公益財団法人第五福竜丸平和協会
後援:日本ユネスコ協会連盟、東京都ユネスコ協議会、駐日マーシャル大使館
問い合わせ:公益財団法人第五福竜丸平和協会(TEL03-3521-8494/担当:安田、市田)
東アジアサミットに参加するためベトナム訪問中の菅直人首相が、会談直前に中国側より会談中止を伝えられる。中国側はハワイでの前原誠司外相とクリントン米国務長官による会談に反発。(30日、10分間の非公式会談が持たれた)。
ドイツ連邦議会(下院)が2020年までに全原発の運転を停止する予定を先送りし、17基の原発の稼働平均年数を12年間延長する改正法案を賛成多数で可決。メルケル政権は与党過半数割れの上院の承認を得ないまま改正法を施行する方針で、野党は憲法違反として、憲法裁判所に提訴の予定。
「同盟はアジア・太平洋地域における米国の戦略的関与の基軸」と明言。その後の記者会見でも日本人記者の質問に答えて「日米安保第5条の範囲に尖閣諸島が入ることを、再度明確にしておきたい」と語る。
国連総会・第1委員会(軍縮)は日本、米国など90ヵ国が共同提案国となった核廃絶決議案を賛成154、反対1、棄権13で採択。反対は北朝鮮、棄権は中国、南アフリカ、ブラジル、インド、イラン、パキスタンなど。
「チェルノブイリ子ども基金」発行、2011年のカレンダーをご紹介します。
お申し込みはチェルノブイリ子ども基金までFAX(03-5228-2680)
またはEメール(cherno1986@tokyo.email.ne.jp)で。
チェルノブイリ25周年救援カレンダー2011
チェルノブイリ25年 命・自然
2011年はチェルノブイリ原発事故後四半世紀という節目の年です。
「子ども基金」は1996年から救援カレンダーを制作しています。
その歩みをたどって、本カレンダーはこれまで表紙に使用した写真を中心に構成しました。
地球上のかけがえのない「命・自然」が脅かされることのないよう、これらの写真は「生」へのメッセージを発し続けます。
定価:1300円(送料2部まで200円、3~9部まで実費、10部以上は1割引き送料無料)
お申し込み:チェルノブイリ子ども基金 〒162-0816 東京都新宿区白銀町25メゾンド原207
TEL/FAX03-5228-2680 Eメール:cherno1986@tokyo.email.ne.jp
山口県・上関原発建設計画(中国電力)に反対する「原発いらん!in上関集会」が24日、上関町室津埋立地(雨のため途中で町中央公民館へ移動)で、県内外から約1000人の参加を得て開催されました。主催は「原発に反対する上関町民の会」「上関原発を建てさせない祝島島民の会」「原発いらん!山口ネットワーク」「長島の自然を守る会」「原水爆禁止山口県民会議」の県内5団体。原水禁からは、藤本泰成事務局長が参加しました。
上関原発を建てさせない祝島島民の会の山戸貞夫さんは、「島の生活を守るため原発建設中止まで粘り強くがんばる」とあいさつ。また、環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也さんによる「上関原発の不要性と自然エネルギーの可能性」と題した講演に、参加者は熱心に耳を傾けました。
雨の中、デモ行進が行われた後、「中国電力は、再生可能エネルギーへ方針転換するべき」とする集会宣言を採択しました。
北朝鮮の核問題を協議する6ヵ国協議議長国・中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表が参加国に協議が再開した場合、1ヶ月に1回程度の会合の定例化を提案していたことが明らかに。日本、韓国、米国は韓国哨戒艦沈没問題を理由に提案を拒否。
山口県上関町で計画されている、上関原発建設を強引に押し進めるために、中国電力は、連日の作業台船を上関の原発建設予定地に向け、埋め立て作業をしようとしています。19日には、中国電力側のミスで台船が座礁するというトラブルが発生しました。
しかし、連日繰り返される「埋め立て強行の行動」、現在まで祝島島民をはじめとする現地の人々の努力で阻止しています。これに連帯するために、20日、中国電力東京支社に、原水禁や原子力資料情報室、日本消費者連盟などの呼びかけで、緊急の抗議・申し入れ行動が取り組まれました。急な呼びかけにもかかわらず、20名を超える首都圏の市民団体・個人の方々が集まり、各自で持参した抗議文などを、対応に出た総務課の方に手渡しました。
東京支社自体は、ほとんど現地の様子がわからず、参加者からの質問には答えられない状況でした。「詳しくは本社に」とする姿勢は問題です。さらに対応に出た方は、田ノ浦現地(埋め立て予定地)に行ったこともないとのこと。豊かな自然を知らずして、埋め立ての正当性を主張する姿に、説得力はありませんでした。
※最近の調査で、国際自然保護連合(IUCN)絶滅危惧種であるカンムリウミスズメが世界で唯一、1年を通して生息しているばかりでなく、予定地あるいは周辺海域で繁殖している可能性も出てきました。(3月30日・現地周辺)
米国のガテマラー国務次官補(軍備管理・検証・順守担当)が「新START条約を年末までに批准するのがわれわれの計画で、楽観している。批准後にさらなる核軍縮をめざす」と共同通信のインタビューで語る。
中国共産党第17期中央委員会第5回総会(5中総会)開催され、政治局常務委員の習近平(シー・チンピン)国家副主席(57)が中央軍事委員会副主席に就任することが決まり、次期最高指導者となることが確定。
ルクセンブルグで開催されていた欧州連合(EU)の環境省理事会が、地球温暖化対策について、京都議定書から離脱した米国、議定書で削減義務を課されていない中国、インドなど「あらゆる主要経済国」に削減を義務づけることを条件に、京都議定書の暫定延長を検討する用意があると表明。
10月13日、参議院議員会館で、地元山口県の「長島の自然を守る会」の主催、「『日本の里海を考える』―瀬戸内海・周防灘・長島から―」と銘打ち、院内集会を開催しました。会場には、平日の昼間にもかかわらず、約40人の市民と国会議員が参加しました。
集会では、海藻研究所所長の新井章吾さんから、「里海の保全とその活用」と題して、漁業活動を通じて行われる、海の保全と再生について報告がありました。報告では、長島・祝島周辺は、生物多様性豊かで、将来に向けて持続可能な自然との共生が実現している、世界に誇るべき地域であり、まさにCOP10のモデルであると訴えられました。
長島の自然を守る会の高島美登里さんからは、「長島周辺の環境調査から」とする報告が行われ、埋め立て予定地である田ノ浦周辺はナガシマツボ、ヤママイシンなどの希少生物の宝庫であり、生物多様性のホットスポットであると訴えがなされました。また、田ノ浦周辺海域に生息する、国際自然保護連合(IUCN)の保護鳥「カンムリウミスズメ」の貴重な映像が上映されました。
「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の山戸貞夫さんからは、「自分たちや家族が育った島を売り渡すわけにはいかない。人間の誇りが生きる上でいちばん大切だと思う。」と力強い発言がありました。
夜には総評会館で、緊急市民集会「―奇跡の海― 田ノ浦の自然を守ろう!」が長島を守る会、原子力資料情報室、原水禁の主催で開催され、40人を超える参加者がありました。院内集会で報告があった、新井さん、高島さん、山戸さんのお話に続いて、原水禁山口の岡本博之議長から「平均年齢78歳の現地の皆さんのがんばりにすがるのは申し訳ないと思うが、私たちも“がんばらんにゃいけんね”と声をかけあって、全力で支える。」という発言がありました。
また、昨年から取り組まれてきた「上関町の『原発建設計画中止!』を求める署名」が現在90万筆に達しています。集約日は9月末日でしたが、100万筆を目指して2011年3月末日まで続けられることが確認されました。
10月13日、参議院議員会館で開かれた報告会には、専門的な内容にも関わらず超党派の議員11人をふくめて、数十人の参加者で会議室はいっぱいになりました。ヨーロッパ各国の政府など公共機関の委託研究を多く手がけているシュナイダーさんの報告は、豊富な統計データを示しながら、世界のエネルギー需給に占める原子力の役割の低下を明らかにするものでした。
気候変動問題で重要視されるCO2排出の抑制を考慮しても、あまり変わらないことも明示。主にフランス、ドイツ、米国の例を挙げながら、特に経済性に焦点を当てると、スマートグリッドを伴った再生可能エネルギーへの役割交代が明白です。
喧伝される「原子力ルネッサンス」の終わりを告げるかのように、印象的だったのが、紹介されたワシントンポストの記事。米国の大手電力、コンステレーション・エナジーが、米国で30年ぶりだった原発の新規建設を凍結した、というもの。ブッシュ前政権に続いて、原発推進のはずの米国政府が、電力会社に与える債務保証の条件が合わないという理由。つまり、高いリスクの原発に対しては、債務保証にも高いコストがかかる──債務保証を受けるのに、政府から求められた8億8000万ドルは、電力会社の負担できる額ではなかったのです。
対するに、いまだに『官民一体になって』原発輸出を目指している日本へのシュナイダーさんの評価は、「日本の納税者は、信じ難いほど寛容」というものでした。高リスクの原発へ債務保証を税金でまかなっている日本の経済観念はどこに?
詳しい発表資料などはこちらに掲載しています。
以下は、事前の紹介文です
ヨーロッパのエネルギー問題専門家:マイケル・シュナイダー報告会
フランスとドイツのエネルギー政策の分析から学ぶこと
自然エネルギーと原子力 — 両立は可能か?
日時:2010年10月13日(水)12:00〜13:30
場所:参議院議員会館 102号会議室(同時通訳つき)
フランスとドイツのエネルギ政策を産業、環境、システム面から分析します。現在、原子力の将来、自然エネルギーの普及率向上など、エネルギー政策の基本的な方向性がヨーロッパで議論されています。大規模集中型または分散型システムのどちらを優先するかが問われています。スマート・グリッドが持つ可能性は大きく、ドイツの市民電力供給への投資が進む中、大手電力会社は過去維持してきた立場を保つため苦戦しています。
このような最新情報を元に、仏サルコジ政権と米オバマ政権などが求める「自然エネルギーと原子力を両方促進する」政策ははたして可能なのかを分析します。
この機会に是非、エネルギー政策に関心の高い市民のみなさんの参加をお願いします。
マイケル・シュナイダー Mycle Schneider
1983 年、WISE-Paris(エネルギー情報調査室)を設立。2003年まで代表。現在、Mycle Schneider Consulting (エネルギーと原子力政策に関する独立コンサルタント機関)の代表を務める。ドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省の委託研究、「世界の原子?産業現状報告--経済性問題に焦点」を担当(2009年8月)。1997年以来、フランス及びドイツの環境省、ベルギーのエネルギー大臣、IAEA(国際原子力機関)、グリーンピース、核戦争防止国際医師会議、WWF、EC委員会、ヨーロッパ議会の科学技術選択査定パネル、フランスの放射線防護及び原子力安全性研究所等の依頼によって、原子力とエネルギー問題に関する研究・調査報告を提出している。1997年、高木仁三郎氏と共に、「もうひとつのノーベル賞」といわれるライト・ライブリフッド賞(Right Livelihood Award)(スウェーデン)を受賞。
共催:
グリーン・アクション
〒606-8203 京都市左京区田中関田町22-75-103
Tel: 075-701-7223 Fax: 075-702-1952
原子力資料情報室
〒162-0065 東京都新宿区住吉町8-5曙橋コーポ2階B
Tel: 03-3357-3800 Fax: 03-3357-3801
原水爆禁止日本国民会議
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館1F
Tel: 03-5289-8224 Fax: 03-5289-8223
北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使が、1日の菅直人首相の臨時国会での所信表明で「核とミサイル、拉致の包括的解決」を北朝鮮政策として打ち出したことを「自民党時代の踏襲で認められない」と共同通信記者に語る。
東南アジア諸国連合(ASEAN)10ヵ国と日、中、韓、米、ロなど域外8ヵ国による拡大国防相会議がハノイで開催される。ゲーツ米国防長官が「実力行使なしで、外交を通じて国際法に沿って解決されるべきと発言。
4日夜に菅直人首相が温家宝中国首相と話し合う。両国の戦略的互恵関係を発展させるとの原点に戻ることを確認。尖閣問題領有問題は平行線。
大阪地検特捜部の押収資料改ざん事件で最高検が犯人隠避の疑いで、前特捜部長大坪弘道(57)と前副部長佐賀元明(49)両容疑者を逮捕。2人は容疑否認。
広島県原水禁常任理事 金子 哲夫
2010年7月25日午前11時。1945年7月に連合国が、日本に降伏を勧告する宣言を発したポツダム会談に参加したトルーマン元米大統領が宿泊していた建物前の広場で、原爆で犠牲となった広島、長崎の人々を追悼し、核兵器のない世界を祈念する碑の除幕式が開催されました。会場には、主催者の予想を上回る400人あまりの市民が集まり、広島、長崎両市長からもメッセージが送られました。
「碑に広島・長崎の被爆石を」の願い実現
ドイツ・ポツダム市議会は、平和市長会議へ加盟したことを機に2005年12月、原爆投下の命令が出されたとき、トルーマン元大統領が滞在していた邸宅(現在もトルーマンハウスとして現存)の前の広場を「ヒロシマ広場」と命名することを決議しました。
そして06年から当地への記念碑建立のためのカンパ活動が始まり、翌07年7月に市民によって「ポツダム・ヒロシマ広場をつくる会」が結成されたのです。そして、被爆65年目である今年7月25日の完成をめざして活動が進められ、ついに完成を見ることができました。日本でもドイツからの呼びかけに応えて、08年7月に「ポツダム・ヒロシマ広場をつくる会広島」がつくられ、日本国内でのカンパ活動が開始されたのでした。
記念碑の設計・作成は、ノルウェーを中心に活動する石彫家・藤原信さんの手によって行われました。当初、ノルウェーの石のみで作成することが構想されていましたが、広島、長崎の被爆石も使用してほしいという私の思いを伝え、実現することとなりました。広島からは広島電鉄の路面電車の敷石が、長崎からは山王神社境内の石を、関係者のご好意により送っていただくことができました。
記念碑は、ノルウェーから運ばれた36トンの石と、広島、長崎の被爆石が乗る銘板が刻まれた石でつくられています。こうしたモニュメントに広島、長崎の被爆石が一緒に使われることは、初めてのことではないかと思っています。
記念碑には三ヵ国語で原爆廃絶誓う
式典で、広島の被爆者でドイツ在住の外林秀人さん(81歳)が、「原子爆弾の歴史の中で、ポツダムは大きな役割を果たしています」とドイツと核開発の関わりに触れるとともに「広島、長崎の被爆石は被爆者(の声そのもの)で、次のメッセージを持ってきました。核兵器は、人類史上で最悪の兵器。原爆の結果を忘れてはいけません。忘れるとまた再び起こります。……原爆のない世界を祈念します」というあいさつをされ、特に印象に残るものでした。記念碑には、ドイツ語、英語、日本語の三ヵ国語で以下の碑文が刻まれています。
「1945年8月6日と8月9日に/広島と長崎の投下された原爆によって/犠牲となった人々を追悼して/連合国によるポツダム会談が/1945年7月17日から8月2日まで行われ/その間、アメリカのハリー・S・トルーマン大統領が/正面にある邸宅に滞在していた。/1945年7月25日/アメリカ大統領の同意の下/ワシントンからの軍の原爆投下指令が下された。/原爆の破壊力は、数十万の人々を死に追いやり/人々に計り知れない苦しみをもたらした/核兵器のない世界を願って/上に埋め込まれた石のうち/左が長崎から、右が広島からきた石です/石はあの日、原爆によって被爆しました/現在はもう危険はありません」
広島・長崎の被爆石も使われた記念碑(7月25日・ポツダム市)
論争がその存在を広める役割果たす
この碑の建設をめぐって、ポツダム在住米国人から「原爆投下は戦争終結の重要な役割を果たした」「日本人は、広島の悲劇を訴えることで、自らを犠牲者としている」などとする反対意見が出ており、碑建立後も論争が続いています。しかしポツダム市は、「碑建立は、原爆廃絶の呼びかけであり、戦争犯罪の追及から日本人を逃れさせる意図はない」としています。こうした論争が、ある意味で記念碑の存在を広める役割を果たし、ドイツ人の関心を呼ぶ結果にもなったようです。
最後に様々なかたちでご協力いただいた原水禁の皆さんに心から感謝し、報告とします。
中国がASEAN、台湾と自由貿易協定結ぶ
今年1月1日、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)との間で「包括的経済枠組み協定」(ASEAN+1)が発効しました。この協定によって中国とASEAN10ヵ国(ASEAN10)は、石油化学、自動車部品、繊維、機械工業など主要製品が関税なしで取引されることとなりました。
こうしたアジアの新たな経済の流れに危機感を抱いた台湾・馬英九政権は中国と交渉を始め、6月29日に中国との間で「経済協力枠組み協定」(ECFA)を調印しました。これは自由貿易協定(FTA)に相当する協定で、中国は台湾側に農産物、労働力の市場開放を求めないなどの大幅な譲歩を行い、この協定によって台湾は2009年の実績で計算すると約1,100億米ドルの利益を受けると言われます(世界9月号、岡田充「中国―台湾、ECFAがひらく新潮流」)。台湾の野党(独立派)は協定によって国内の中小企業が圧迫されると強く反対していますが、今や台湾経済は中国との貿易抜きには成り立たなくなっており、この協定によって台湾がさらに利益を得るなら、今後、中台間の安全保障問題にも大きな影響を与えるでしょう。
馬政権は中台間の現状維持(独立でも中国との統一でもない)の立場で、今年1月には米国からミサイル防衛用のPAC3などを購入し、これが原因となって中国は米国との軍事交流を延期しました。しかし中国を中心としたASEAN10と台湾による新たな経済圏の出現は、各国の政治状況にも影響を与え、安全保障問題を含めた新たな流れがつくられることになるでしょう。
中国の脅威を強調する米・国防総省
米国は今年2月1日に発表した4年毎の「国防見直し報告」は、「アクセス拒否環境」下での戦いに大きな力点を置いていることを印象付けました。「アクセス拒否」(Anti-Access)はここ数年使われ出した軍事用語で中国を念頭に、防衛力が強くて接近できない状況を意味します。中国のアクセス拒否戦力の一つは潜水艦による防御で、もう一つは対艦ミサイル攻撃です。
しかし、中国が急速に軍事力を強化したとしても、米国との差は歴然としています。ただ、米国が抱える最大の問題はイラク、アフガン戦争によって膨張した財政負担と、リーマンショック後の経済不振によって、軍事予算の大幅削減を迫られていることです。
ゲーツ米国防長官は、今年5月3日にメリーランド州で開催された「ネイビーリーグ 海―空―宇宙エキスポ」で演説し、次のように述べています。「米国は11隻の大型原子力空母を保有する。大きさと攻撃力において、1隻でも同じレベルの艦船を保有する国は他にはない」「国防総省の計画では、2040年までに11の空母打撃群を保有するとなっている」が、「二つ以上の空母打撃群を保有する国が他にない状況で、今後30年間に11の空母打撃群を持つことが、本当に必要だろうか?」と問いかけ、今後必要なのは長距離無人戦闘機、新しい海からのミサイル防衛、より小型の潜水艦や無人水中軍事拠点などであると訴えました(TUP-Bulletin速報857号)。
一方8月16日、米・国防総省は議会に年次報告書を提出し、「中国はインド洋や太平洋のさらなる沖合でも行使できる軍事力の獲得を進めつつある。中国が保有する新型兵器は遠方でも操作できるよう性能が強化されている」と中国の脅威を表明しました。
こうした国防総省による報告を受ける形で8月27日、日本の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(新安防懇)は、12月に予定される「新防衛計画の大綱」に向けての報告者を菅直人首相に提出しました。
新安防墾の報告書は、「非核3原則」、「武器輸出3原則」の見直し、集団的自衛権の行使を禁じる憲法解釈の見直し、必要最小限の基盤的防衛力の見直しにまで及んでいます。行き着く先は、憲法改正の危険性ということがあります。
東アジアの平和に向けてイニシアチブを
しかし、米中両国は経済的にお互いを必要としていて、軍事的には牽制しつつも、政治的には共存関係を強める以外に道はない状態です。延期されている米中軍事交流も、両者は必要であると認識しているのです。
民主党代表選では、菅首相が再選されましたが、菅政権はどのような外交政策、アジア政策を示すのでしょうか。普天間基地の辺野古への移転は現状ではほぼ不可能な状況と言えますが、新しい状況への展望は見えてきません。流動する状況の中で、日本だからこそ東アジアの平和へのイニシアチブを取れるのに、逆に国民は危うい状況に導かれているという危惧の念を強くしています。
私たちは、普天間基地の辺野古への移転を阻止することから状況を変えていかなければなりません。この力で改憲へと進みかねない「新安防懇」の報告書への批判を強めていきましょう。
全国被爆二世団体連絡協議会 事務局長 平野 克博
私は、被爆者を親に持つ被爆二世です。私の母親は、原爆投下から2日後の8月8日、広島市で入市被爆をしました。私たち被爆二世は今、大変に中途半端な状況に置かれていると言えます。被爆者は、現実に被爆体験をしていますが、私たちに実体験はありません。
国による対策の不備が私たちを苦しめる
被爆者には、「被爆者援護法」が適用され、十分とは言えませんが、政府が対策を行っています。しかし、私たち二世には、年に一度の「被爆二世検診」があるだけです。この検診内容は、尿検査や問診など実に簡単なものです。しかも、法的な位置付けもなく、単年度の予算措置によるものです。政府はこの検診を行う目的を、「被爆二世に対する不安の解消」としていますが、何の役にも立っていないのが現実です。こうした、政府の対策の不備が、私たちを中途半端な立場に追いやっているのだと言えます。
広島と長崎に、放射線影響研究所(放影研)があります。ここは、被爆者や被爆二世への放射線の影響などを調査している機関で、日米両政府が資金を出し合っています。この放影研が2000年から07年まで8年かけて、親の受けた放射線の影響がその子どもの健康への影響の有無を調査しました。私たち、全国被爆二世団体連絡協議会は調査実施の前年に、この放影研と確認書を交わし、スタートしたものです。調査内容は、親の受けた被曝線量と子どもの生活習慣病(高血圧や糖尿病など)の発症率との関係を調査したものでした。
結果は、07年2月28日に発表されました。それは、「現在のところ、親の受けた被曝線量と二世の健康への影響はほとんど見出せなかった」というものでした。すなわち、「現時点では、親の被爆が二世へ影響があるのかどうかは、はっきりわからない」ということです。
親の被爆との関係は明らかではないけれど
世界中の多くの研究者は、ヒト以外の動植物では、放射線の次世代への影響を認めています。私たちの体験からしても、この調査結果は納得いかないことが多くあります。私のいとこも被爆二世ですが、急性白血病によって、30代で亡くなりました。私は3人兄弟でしたが、他の二人は死産でした。これらが、親の被爆と関係があるのかどうか明らかではありませんが疑いがある以上、十分な措置がとられるべきだと考えます。
このような中で私たち被爆二世協は発足以来、「被爆者援護法の対象に私たち被爆二世を入れるべきだ」と訴え続けてきました。しかし国は、先の放影研の調査結果を盾に何の対策をとろうともしていません。私たちは、放射線の影響がはっきりないと言えないのなら、何らかの対策を取るべきだと主張しています。
現在、被爆二世の平均年齢も50歳を超えました。私たちは喫緊の課題として政府に対し、「健康診断の中にガン検診を追加すること」を要求しています。また、日本の中に被爆二世の実態について、全く国は把握しようとしていません。そのようなことで、唯一の被爆国としての責任が果たされていると言えるのでしょうか。私たちは、「被爆二世実態調査」も要求しています。
08年9月の日韓被爆二世交流会(福岡)
全国の被爆二世とともに粘り強く取り組む
このような要求を持って9月30日に、私たちは今年二度目となる厚生労働省との交渉を行います。現在、各地で二世団体がつくられようとしています。今後、全国の被爆二世と手をつないで、私たちの要求を力強く政府に対して突きつけていこうと思っています。また、10月10日には韓国・釜山で9回目となる「日韓被爆二世交流会」を行います。
さらに、二世による被爆体験継承の取り組みも重要です。
困難な状況が続きますが、粘り強く取り組みを続けていきたいと思っています。世界中で、二度とヒバクシャやヒバク二世をつくらせないために。
福島県平和フォーラム事務局長 原 利正
「2回目の受け入れ」とアリバイ的三条件
8月6日、福島県の佐藤雄平知事は、福島第1原発3号機におけるプルサーマル計画の実施受け入れを表明しました。東京電力(東電)は現在、10月に営業運転を開始する準備を進めています。実施されれば、佐賀の玄海と愛媛の伊方原発に次いで、全国で3番目となります。
実は、福島県において知事が了解したのは、今回が2回目です。1998年に当時の佐藤栄佐久知事が全国で初めて事前了解を行った経緯があります。しかしその後、各地で明らかになった原発の燃料データ捏造、トラブル隠し、茨城県東海村のJCO臨界事故、関西電力のMOX燃料データ改ざん等の影響で、2002年に白紙撤回に至りました。
ところが、昨年2月に原発をかかえる自治体(大熊町、双葉町など)が、県と県議会に対し議論再開を要請、また東電からも要請があったことから、7月に県は、エネルギー政策検討会を、また県議会では、エネルギー政策議員協議会を再開し議論を開始しました。
県は検討会で、国や事業者、専門家の意見を聴くなどして検証作業を行ってきました。そして今年2月16日、県議会において佐藤雄平知事は、(1)第1原発3号機の高経年化対策、(2)同機の耐震安全性、(3)MOX燃料の健全性について、安全性が確認されれば、正式に受け入れると表明しました。
劣化が進んだ古いMOX燃料を使用
3条件について、東電や経済産業省の原子力安全・保安院の結論は、実施について問題なしとするものでした。しかも保安院は、耐震安全性の評価をこれまで行ってきた通常の期間よりも大幅に短縮するという異例の措置もとっています。これらの背景には、東電が6月から9月にかけて行う予定の、第1原発3号機の定期検査に合わせてプルサーマルを実施しようとの計画があり、まさに「プルサーマル導入ありき」ではないかと指摘されているところです。
元々、知事の示した3条件は、福島県の特別な事情を背景としています。実施予定の第1原発3号機は、76年運転開始という老朽炉で、また福島県沖は地震の巣であり、陸側にも断層が走っています。さらに、福島原発用のMOX燃料は11年前の99年に搬入されており、劣化が進んでいる上、不十分な検査体制でつくられた品質保証に問題があると言われています。
また、県が求めてきた保安院の経産省からの分離は実現しておらず、核燃料サイクルが確立していない中で使用済み燃料の処分の目途も立たず、行き場のない使用済みMOX燃料が原発内に蓄積され続けることも大きな問題です。
反プルサーマル福島県民集会でのデモ行進(2010年5月30日)
地元での闘いをさらに強化して
今回の知事の了解後、東電は、8月21日にMOX燃料装荷を実施したのに続き、9月17日には原子炉起動(実際には、トラブルによって18日)、22日に試運転(発電)を開始することとしており、10月26日には国の総合負荷性能検査を受けて営業運転を開始する予定とされています。これが行われれば、高経年化対策が施されている沸騰水型軽水炉で、しかも長期保管のMOX燃料による、初めてのプルサーマル実施になります。
しかし第1原発3号炉は、保安院の「保安活動総合評価」によれば「重要な課題あり」と判定されています。このまま、プルサーマルを実施すれば、将来に重大な禍根を残し、県民の安全を根底からゆるがすことになります。
このような動きに対して、福島県平和フォーラムは、昨年5月に、社民党県連合及び地元の「プルサーマルに反対する双葉住民会議」の三者で脱原発県民会議を結成して、実施反対の取り組みを進め、5月に続いて9月19日にも大熊町で反対集会を開きました。今後もこれを軸に運動を強化していきます。